作品タイトル不明
竜の討伐は無理じゃないかな?
バーンズ公爵は、クズ魔石の纏める遣り方、保冷剤や冷え冷えマフラーの特許申請と製品化は任せてくれと言った後で、少し考えて口を開いた。
「ゲイツ様は、南の大陸の竜の活動について、どう考えておられるのか……」
公爵夫人が「それならゲイツ様に直接お聞きになれば良かったのに」と肩を竦める。
その通りだけど、いきなり来て、言いたい事を言い放って、去って行ったからね。
「領地での魔法合宿、騎士合宿は、もしかして竜の飛来に備える為なのか?」
カエサル様の言葉に、公爵が驚く。
「そんな事は、王宮ですべき事だろう!」
私もそう思う! ゲイツ様に口で負けたけど、本当はそっちが正しいよね。
「私とペイシェンスもそう言ったのですが……少なくとも、私は修業が必要だと考えています」
悔しそうなパーシバル! 本当にゲイツ様って失礼だよね。
「それは、どういう意味なのか?」
竜の飛来の可能性があるのかと、バーンズ公爵の顔色が変わる。パーシバルが説明する。
「南の大陸の竜の活動が活発になっているのは事実です。アルーシュ王子が、ローレンス王国に留学されたのは、今のままの戦い方では、大被害になるのを案じておられるからだと思います」
バーンズ公爵とカエサル様の顔が真剣になる。竜の飛来があったら、ローレンス王国も大被害が予想されるからだ。
「でも、ゲイツ様は、北の大陸に飛来するかどうかはわからないと言っておられたわ。それに、竜を討伐できるとも言われたのですよ」
バーンズ公爵夫人がホッと息を吐いた。緊張した空気が少し緩む。
「そうか! やはりゲイツ様は、王宮魔法師だけあるな」
カエサル様は、何か腑に落ちない顔で私を見る。
「では、何故、魔法合宿と騎士合宿なのだ? 誰がメンバーに選ばれているのだろう?」
パーシバルがアルーシュ王子以外の参加メンバー告げると、カエサル様が首を捻る。アルーシュ王子を除いたのは、本当に参加するのか不明だからかな? 夏の離宮から帰国してくれたら良いのにね!
「言っては悪いが、ルーシー様やアイラ様、そして騎士コースの女学生は、実力不足に思える」
ああ、そうだよね! それは、私の弱味を突く作戦だと思うもの。頑張っている女の子は、応援したいのだ。
「うん? それは竜の討伐とは関係ないように思えるのだが?」
バーンズ公爵の言う通りだよ!
「ゲイツ様は、上級王宮魔法使いも厳しく鍛えると言われましたが……ペイシェンスの方が竜を倒せる可能性が高いから、鍛える必要があると考えておられるのです」
「確かに、ペイシェンスはゲイツ様、サリンジャー様に続く討伐数だったからな。だが、何故、魔法クラブの二人も一緒なのだ? 実は、あの二人も潜在能力があるとか?」
バーンズ公爵は、ふむ、ふむと唸る。
「そうか! 万が一、竜が飛来した時の事を考えておられるのだ。ペイシェンス様が最前線に出られる時、女性の魔法使いや女性騎士が付き添う必要があるかもしれない!」
えっ、そんな最前線で戦うの? 私が? マジ?
「ゲイツ様は、女性騎士の育成を王妃様から依頼されたと言われていましたけど? それと、ルーシー様達は王宮魔法使いになりたがっていますが、もう少し鍛える必要があるからです。私は、竜退治なんて、無理じゃないかしら?」
バーンズ公爵夫人も「そうよね!」と同意してくれたけど、他の人は思案顔だ。
「私は、常にペイシェンスを護る盾になりたいと考えています」
パーシバルは、ゲイツ様に挑発されたからね。ムキになっている。
「うううむ、確かにペイシェンスの方が上級王宮魔法使いより、多くの 雪狼(ニックスルプス) を倒していた。それに、パーシバルは準竜の 木の蛇(ヴィゾーヴニル) を討伐した。ゲイツ様は、それを見込まれたのだろう」
カエサル様はそう言うけど、あの時、パーシバルの目が負傷したのだ。竜なんかと戦うの危険じゃない!
「大丈夫ですよ!」と身震いした私をパーシバルが抱き寄せてくれる。
「万が一、竜が飛来したとしても、ペイシェンスだけを最前線に立たせたりしません」
ううん、それはありがたいけど、パーシバルにも竜の前に立って欲しくない。
「ゲイツ様は、竜の繁殖期は百年に一度ぐらいあると話されていました。この度は、ここ数百年よりも活発になりそうだから、注意が必要なのでしょう」
やはり、パーシバルは根っからの貴族だ。ローレンス王国を護ろうとの気概がある。
私は、自分の領地や弟達は護りたいと思うけど、できたら竜が避けてくれれば良いなと思う心の弱さがある。
だって、前世では普通の女の子だったんだもの!
パーシバルは、護ってくれるだろうけど、やはり怖いよ!
「王宮魔法使いや騎士団に頑張って、竜を討伐して欲しいです!」
えっ、バーンズ公爵夫人以外は、難しい顔をしている。無理なの? えええ……!