作品タイトル不明
トップシークレット法案
ゲイツ様の言い方には、納得がいかないけど、浄化の魔法陣を使えると助かるんだよね。特に、私の領地で使いたい案件がすぐに頭に浮かぶ。
「あのう、今は養鶏場は教会の司祭を派遣してもらうか、生活魔法が使える人に浄化してもらっているのですよね?」
ゲイツ様が、何を言い出すのかと怪訝な顔になる。
「生活魔法使いで、養鶏場の浄化ができるレベルの人が少ないから、相変わらず教会からの派遣に頼っていますね……ううむ、そうか! 浄化の魔法陣を使えば!」
私が言わんとする事をすぐに理解してくれる面は、楽なんだけどさ。
特に、ハープシャーの司祭は、あまり能力が高そうにないからね。卵は必要だから、グレンジャーの司祭だけに頼るのは心許ない。
浄化の魔法陣を活用して、養鶏場を清潔に保てるようになれば、嬉しい! 卵も安くなるかもね!
「これから、魔法省で一緒に考えましょう!」
スクッと立って、私に手を差し伸べる。そりゃ、活用できたら嬉しいけど、今は困る。
「いえ、私は領地に行く準備がありますから……それに、その魔法陣は機密扱いなのでしょう? それを他の方が目にできないようにしないと、実際には使えないのですよね。ゲイツ様、お願いします」
ゲイツ様が苦虫を噛み殺したような顔になった。
「こんな貴重な才能を寂れた領地の開発に使うだなんて、無駄使いも良いところです!」
そんな事を言われても、ゲイツ様の領地みたいに、放置してても大丈夫な体制が整っていないんだもの。
これから、少しずつ開発して、維持できる体制を整えたい。
「ゲイツ様、バーンズ公爵夫妻と御子息に話しても良かったのですか?」
サリンジャーさんが心配そうに口を挟む。パーシバルは、グレンジャー屋敷で喧嘩を売っているのを見たから、良いのだろう。
「やれやれ、サリンジャーは心配性で困りますね。バーンズ公爵夫妻やカエサル君は、ローレンス王国の不利になるような事はしません。それに、ペイシェンス様を危険な目に遭わせたりもしませんよ」
バーンズ公爵は「勿論です!」と答える。バーンズ公爵夫人も真剣な顔で頷く。
カエサル様は、あの流行病の時、私がゲイツ様と何かしたのだと察していたみたいで、黙って頷いている。
「兎に角、早く王宮に戻って、 機密特許(トップシークレット) 法案の条項を練り直しましょう! これが通らないと、夏休みは無しですよ」
サリンジャーさんが疲れているのは、いつもの仕事の上に、上級王宮魔法使いを鍛えたり、この法案作りがあったからかな?
「陛下が夏の離宮に行かれる前に法案を通したい。そうしないと、私がペイシェンス様の領地に行けなくなる」
サリンジャーさんに引っ立てられるゲイツ様。やっと退場かなと思ったら、扉の所で立ち止まる。
「ペイシェンス様がお嫌いなヴォルフガング教授、夏休みにグレンジャー館に行きたいと我儘を言っていたので、少し飴をちらつかせて王都に留めますから、ご安心下さい」
横で聞いていたサリンジャーさんが、ハッとして怒りだす。
「この忙しい時期に、下級王宮魔法使い達に古文書を書き写させたのは、ヴォルフガング教授に渡す為なのですか!」
ゲイツ様が、そんな親切な真似を? 夏に雪が降るんじゃないかな?
「まさか! 彼が持っていない古文書の写しを貸してあげると言っただけですよ。機密扱いの資料ですから、魔法省から出さないようにと注意しておきました。だから、ヴォルフガング教授と助手の殆どは王都から離れません」
ああ、去年の夏休み、格納庫の横の部屋から出た古文書! ゲイツ様が取り上げて、他の人に見せていなかったね。
カエサル様もピンときたみたい。少し見たそうな顔になっている。
パーシバルには、後で説明しよう! 去年の夏休み、デーン王国に行っていたからね。
本当に忙しいのか、ゲイツ様にしては、あっさりと王宮に戻った。
「嵐のようなお方ですわね」
バーンズ公爵夫人の言葉に、なんとなく申し訳なくて、居た堪れない気がする。
執事がやっとお茶を出して、皆で少し休憩する。本来なら、お客様が来たら、すぐにお茶を出すのだけど、機密の話が多くなったから、公爵が使用人の出入りを禁じていたのだ。
「ペイシェンス、そちらの箱には何が入っているのだ?」
私とパーシバルの座っている間に置いてある小箱、カエサル様は気になっていたみたい。
「これは、簡単な物ですのよ。チョコレートを領地のお土産にされる方が多いと聞きましたので、保冷剤を作りました。こちらのは、それの応用の冷え冷えマフラーですわ」
「これは、良い! すぐに生産させよう!」
チョコレートの人気は続いているので、バーンズ公爵はとても喜んだ。
「私の友達も領地にチョコレートを持っていきたいけど、板チョコならまだしも、中に色々と入っている高級チョコレートは、無理かしらと困っている方も多かったの!」
バーンズ公爵夫人も、手を叩いて喜んだ。
カエサル様は、仕様書を読み、とても安価な材料で作れるのに驚き、少し悔しがる。
「ペイシェンスの作る物は、庶民の生活に役に立つし、安価なのが良い! やはり、ロマノ大学で錬金術を学ぼう!」
バーンズ公爵がカエサル様を諌める。
「ペイシェンス様は、もうその必要がないレベルなのだよ。普通の特許では扱いきれない機密にしなくてはいけない物を作っているのだからな」
それに、領地に関して、素人だからね。そちらを勉強しなくちゃいけないんだ。