軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

春学期の成績

学期末テストの成績は張り出された。個人情報の保護とか異世界には無いようだ。

「ペイシェンス、ほぼ満点なのね」

「マーガレット王女も立派な点数ですね」

部屋の外なので、王女呼びだ。

「ええ、数学と家政以外はなんとか良い成績だわ。お母様に注意されないと良いけど……」

すっかり忘れていたが、家政の作品も展示された。1年のは縫い方の練習みたいな布だった。2年は化粧ケープ。ルイーズは時間切れだったみたい。作品の持ち出しは禁止されている。家に持って帰ったらメイドの宿題になるからね。

3年はエプロンに刺繍。マーガレット王女のは……卒業できるか不安なレベルだ。これを見たビクトリア王妃様の目が怖いよ。うん、私の化粧ケープは家で使う事にしよう。嫌味に思われるし、マーガレット王女は素敵な化粧ケープを持っておられるからね。

中等科の作品は玉石混交だ。4年生はワンピース、5年生はドレス、6年生はロングドレス。素敵なのもあるが、とても着られそうに無いのもある。石の方が多く感じるのは、玉の学生は修了証書を貰い抜けていくからかな?

美術も展示してある。私の絵には青いリボンが飾ってあり、他にも何点かリボンが付いている。

「貴女は手先が器用なのよね。ハノンだけでなくリュートも練習しなさい。そうすれば、私のハノンと合奏できるわ」

マーガレット王女の絵画センスは悪く無いと思う。ただ、音楽の半分でも熱意を注いで欲しいと思う出来栄えだ。手抜き感、半端ないね。

キース王子、ラルフ、ヒューゴ、ルイーズも好成績だ。やはりラルフはキース王子の上の成績を取らないように気を使っているのでは? でも、私の問題では無い。キース王子が気づいて、叱らないといけないと思う。

私は個人懇談でケプナー先生に、国語、古典、歴史、魔法学の修了証書を貰う相談をした。

「ペイシェンス、そんなに頑張らなくても」

呆れているケプナー先生に事情を説明する。

「中等科に飛び級したら文官コースを選択するつもりでしたが、マーガレット王女が家政コースを選択するので、2コース取る事になりそうなのです。必須科目が免除になれば時間に余裕が取れそうなので」

ケプナー先生はびっくりしたようだ。

「そんな、側仕えだからと家政コースを取る必要は無いだろ。ん? ペイシェンスはダンス以外の実技は免除なのか……なら、いけるかもな。国語、古典、歴史、魔法学の3年生と中等科の教科書をあげよう。夏休み中に勉強しなさい」

本当に夏休みは弟達と遊んだり勉強して過ごしたかったよ。ずしんと重い教科書を持って寮に帰りながらボヤいていたら、面倒なキース王子に見つかった。

「ペイシェンス、数学の修了証書も取ったそうだな。えっ、その教科書はもしかして全科目の修了証書を取る気か?」

他人の事などほっておいて欲しい。

「できれば取りたいと思っています」

何故かキース王子に睨まれた。

「私は負けないぞ! 来年、私も飛び級して3年生になる。そして、次の年は中等科2年に飛び級する。追いついてやるぞ」

苦手な古典を頑張ってね! と心の中でエールを送っておく。何を言っても怒らせそうなので、黙ってお辞儀して立ち去ろうとしたのに「持ってやる!」だって。

余計なお世話だけど、助かるよ。勿論、キース王子が言い出したけど、実際に持ってくれたのはラルフとヒューゴだけどね。王子様に運ばせられないようだ。

成績表は保護者に送られる。私の成績には父親も驚き、褒めてくれた。それは良かったのだが、机の上にはもう1通手紙がある。デジャビュだよ。

「夏の離宮には1週間後に出発するそうだ。朝早く、迎えに来ると書いてある」

此処に居たいと言っても困らせるだけだ。侍女の件、ワイヤットと相談しよう。

書斎を出て、ワイヤットの仕事部屋に向かう。

「お嬢様、どうされましたか?」

いつも全部知っているくせに、素知らぬ顔をする。

「お父様から1週間後に夏の離宮へ出発だと言われました。侍女を連れて来ても良いとビクトリア王妃様は仰いましたが、連れて行かなくてもメイドをつけてくれるだろうと、シャーロット女官は言われました。なので、私は1人で大丈夫です」

ワイヤットは少し黙っていたが、反対する。

「子爵様はメアリーに付き添えと言われました。令嬢が付き添い無しに旅行をするのはマナー違反です。例え、離宮に何十人女官やメイドがいようとも、グレンジャー家の令嬢にはグレンジャー家の侍女が付き添うものです」

「でも、メアリーしかメイドはいません」

ワイヤットは私の反論など歯牙にもかけない。

「屋敷にお残りになるのは男の方ばかりです。子爵様のお世話は日頃から私がしています。弟君達の世話はジョージとエバがします」

トイレも使えるようになったし、冬と違い暖炉の火もつけなくて良い。でも、ジョージには畑の世話をして欲しいのだ。

「お嬢様、屋敷の事は心配なさらないで下さい」

笑いながら、壊れた骨董品を3点も出して来た。本当に曲者だよ。

「それより、メアリーと旅行の用意をされないといけませんよ」

笑顔で追い出され、メアリーに「1週間後に夏の離宮へ行く」と伝えた。メアリー? 息しているよね?

「そんな大事な事を、何故……いえ、そんな事を言っている場合ではありません。成長された時にと取って置いた服を直さないと」

一瞬、息を止めたメアリーだが、そこからは凄かった。私もクタクタになるまで生活魔法を使った。

親戚の女の子のお古を何枚も新品にして、そのサイズ直しを2人で必死に縫う。

「メアリー、王妃様は服や必要な物は用意すると仰ったのよ。それに、生活魔法で綺麗にできるから、洗濯も必要ないし」

クタクタになって、メアリーにもう良いのでは? とお伺いを立てた。

「お嬢様、王妃様の用意される服は服です。有り難く着させて頂くのは良いですが、それに甘えてはいけません」

貧乏なグレンジャー家だけど、使用人も誇り高いのだ。午前中、弟達に勉強を教える時間だけが、私の心のオアシスだよ。