軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スレイプニル捕獲計画!

ユージーヌ卿に基地キャンプに連れて帰って貰った。

「お嬢様!」メアリーは心配していたみたい。

「お茶を淹れてね!」と言い捨てて、先ずはトイレだよ!

はぁ、疲れた! ユージーヌ卿と一緒にテントの中で暖かい紅茶とシュトーレンとチョコレートを食べる。

「ペイシェンス様のお陰で、今年の討伐は快適です」

テントの中にも撥水加工した布を敷いているけど、土足だから、泥や持ち込まれた雪が溶けたので、ドロドロだ。

メアリーや従者達が、掃除しても追いつかないみたい。

「綺麗になれ!」

掃除しておくよ。

「ペイシェンス様、こんな所で魔力を使って良いのですか?」

ユージーヌ卿に呆れられたけど、汚い床を歩くのは嫌なのだ。

「私は魔力は残っていますが、体力的に無理だったのです。もう少し身体を鍛えないといけませんわね」

やっと人並みの令嬢に追いついた程度なのだ。鍛えている騎士や男性の体力には負けるよ。

「乗馬の稽古を続けたら、体力もつきますよ」

流石のユージーヌ卿も私に剣術の稽古は勧めない。持ち方を教えて、才能のカケラも無いのがわかったみたい。

私とユージーヌ卿に「綺麗になれ!」と掛けてから、食事場に向かう。まだ12時にはなっていないけど、バラバラと班ごとに分かれて昼食を取るみたい。

「パーシバル様はいらっしゃらないかしら?」

期待して見回すけど、見当たらない! 残念だ!

「ふふふ、ペイシェンス様は本当にパーシバル様がお好きなのですね」

それは、ユージーヌ卿も一緒じゃないの?

「サリエス卿の事をお好きでしょう?」

まさか、適齢期を逃したくないから結婚するの? そんなタイプでは無いと思うけど?

「ええ、サリエス卿のことは好きですよ。それに考え方も好きだから、結婚しようと思ったのです。でも、ペイシェンス様のようにいつも目で追いかけたりはしませんね」

えええ、そんな事していたかな? していたかも?

「私達は付き合う前に婚約しましたから、今からよく知り合う必要があるのです」

ユージーヌ卿と恋バナしちゃったよ。

「今日も煮込みですね!」

ユージーヌ卿も、焼肉には飽きているみたい。

「ふふふ、野菜が食べたいから、嬉しいです。栄養学の教科書にも、バランスの良い食事が推奨されていましたもの」

マーガレット王女とリュミエラ王女の為に、栄養学の教科書を纏めたから詳しいよ!

「そうだな! 来年からは、少し食事のメニュー変更を提案しよう。ペイシェンス様のソースも是非とも採用して欲しい」

あらら、本当に売り出しても良いかもね? エバのお小遣いにしても良いし、屋敷に簡単な工場を作っても良いかも?

これは、帰ってから、エバも参加してもらって要相談だ!

ユージーヌ卿と仲良く煮込み料理を食べていたら、オーディン王子が乱入して来た。

「ペイシェンス様! スレイプニルは?」

ああ、そちらはデーン王国の騎士と第一騎士団に任せているから、知らない。

後ろから、キース王子とお世話の従者が走ってくる。

「オーディン様、騎士クラブのモリス部長にやっと秋学期中の馬房掃除で許して貰ったのに、勝手な行動をしたら、除名処分になりますよ!」

オーディン王子は、騎士クラブより、スレイプニルの方が大切みたい。それにしても、私を様付け呼びだよ!

「オーディン王子、貴方はテントで謹慎だと思ったが? スレイプニルは、騎士団が捕獲できるだけはしているだろう。黒のリーダーは逃げたかもしれないけどな」

そもそも、あの黒のリーダーが原因なのだ!

「黒のスレイプニル? もしかして、8本脚じゃなかったか? 前に黒の8本脚のスレイプニルを目撃したと主張していた人がいたのだ!」

ええっと、どうだったろう? ああ、そう言えば、そうだったかも?

雪狼(ニックスルプス) やフェンリルの方が、大変だったから、横に逸らしただけのスレイプニルの事は忘れていたよ。

「ああ、先頭を走っていたスレイプニルは、漆黒で美しい鬣を靡かせた立派な8本脚だった! だが、あれは人の手に落ちる事はないだろう。それに子フェンリルを蹴ったりするから、このスタンピード擬きが起こったのだ!」

横のユージーヌ卿の方が詳しく見ていたようで、うっとりとした口調で説明する。

「伝説の8本脚のスレイプニル! そこまで来ているのに、逃すのか? それに、この寒さの中で走り通して汗をかいていないか? 拭いてやらないと体調を崩してしまう」

スレイプニル愛は感じるけど、私はちっとも心を動かされない。

まだフェンリルの方が犬好きな私には可愛く思えるよ。もふもふの銀の毛が思いがけず柔らかかった。

「ふむ、手に入らないとはいえ、あそこまで美しいスレイプニルが弱って、他の魔物の餌になるのは可哀想だな」

魔物の餌! オーディン王子が泣き出しそうだ。

「駄目だ! スレイプニルは、野生の馬と交尾して、段々と純血種が減って6本脚になっているのだ。貴重な8本脚のスレイプニルが、弱ったまま魔物の餌になるだなんて、許されない大失策だ!」

きゃんきゃん、ここで喚かれても困る。

「モーガン大使に言ってくる! まだ8本脚のスレイプニルがいたとは知らないだろうから! 知ったら、絶対に保護したい筈だ」

ああ、走り去ったけど、謹慎中じゃなかったかな?

「ペイシェンスなら、スレイプニルも言う事を聞かせられるのだろう?」

オーディン王子を追いかけようとしたキース王子が、立ち止まって質問する。

「ペイシェンス様は、もうお疲れなのだ。 雪狼(ニックスルプス) を沢山討伐されたし、フェンリルも追い返されたのだからな!」

ユージーヌ卿が、何か言いたそうなキース王子を追い払ってくれたよ。

「ペイシェンスが 雪狼(ニックスルプス) やフェンリルを……」

呆然としたキース王子を従者が、テントに連れて行く。

横で煮込みを食べていたメアリーが驚いて、スプーンを落とした。

「お嬢様が 雪狼(ニックスルプス) やフェンリルを……」

令嬢らしくないと思ったのかも?

「パーシバル様が何と思われるかしら?」

昨夜は、こんな事で婚約破棄などしないと言ってくれたけど、嫌じゃないかしら?

「私なら誇りに思うけどな! それに、サリエス卿に惚れたのは、私より強いからだ! 嫁に行くなら、自分より強い相手だと子供の頃から考えていた。サリエス卿も私が 雪狼(ニックスルプス) やフェンリルを追い返したら、誇りに思ってくれるだろう!」

ああ、それは参考にならないけど、ユージーヌ卿とサリエス卿が信頼し合っているのはわかった。

「私もパーシバル様を、もっともっと信頼しなくてはいけないのだわ!」

「何を信頼しなくてはいけないのでしょうか?」

頭の上から、愛しいパーシバルの声が降ってきた。

「ああ、パーシー様! ご無事でしたのね!」

他の人達も、昼食を取る為に基地キャンプに戻って来ている。

「ちょっと派手にやらかしてしまったから、パーシー様に嫌われるかもと考えたの。もっと、貴方のことを信頼しないといけないのだと、ユージーヌ卿の話を聞いて反省していたのです」

隣に煮込み料理の入った器を置いて、パーシバルが座る。

他の人達も同じテーブルに座るから、メアリーとユージーヌ卿の従者は、他のテーブルに移動した。

「噂では、ペイシェンス様がフェンリルを手懐けて、帰らせたと言っていますが……本当ですか?」

パーシバルは、煮込み料理を食べながらも質問してくる。

「ええ、まぁ、フェンリルと言っても子供で、魔法耐性も弱かったですから。あの8本脚のスレイプニルのリーダーが、蹴ったから、追いかけて来たみたい。傍迷惑だわ!」

パーシバルがスプーンを置く。

「8本脚のスレイプニルですか!」

やはりパーシバルの萌ポイントは騎士関係が多いよ。

「早く食べないと冷めますよ!」

注意するけど、他の人達も食事どころでは無いみたい。

「ああ、立派な黒いスレイプニルだった」

ユージーヌ卿もうっとりと話す。

「本当に実在するのですね! 是非、見てみたかった!」

パリス王子まで、うっとりと夢想しているよ。

「北の大陸には、スレイプニルがいると聞いていたが、手に入るとは考えていなかった。ザッシュ、昼からはスレイプニル狩りだ! 一頭は捕獲したい」

おい、おい、アルーシュ王子! 他の魔物の討伐はどうなるの?

私の疑問は、リチャード王子の一言で解決した。

「昼からは、騎士団と騎士コースの学生は、スレイプニルを一頭でも多く捕獲する作戦に参加して欲しい! 冒険者と魔法使いコースの学生は、他の魔物の討伐だ! デーン王国のモーガン大使からの要請だが、ローレンス王国にもスレイプニルを確保できる千載一遇の機会を逃す訳にはいかない!」

「おー!」と鬨の声が上がった。

私は魔法使いだから、他の魔物の討伐だね。

「私は、スレイプニルの方に参加したい!」

「私もそちらに参加したいです」

そう言えば、アルーシュ王子もパリス王子も魔法使いコースだったな。

リチャード王子は、少し考えて「良いでしょう! 他に参加希望は?」と公平に他の学生にも訊く。

「私は、他の魔物討伐をする」

カエサルは大人だね! アーサー達も、魔物討伐を選ぶ。

騎士コースの学生ほどは、スレイプニルに興味が無いのか、全員がそちらにしたら魔物討伐に支障が出ると思ったのかも?

「パーシー様は、スレイプニルの捕獲に参加されるのですね? 怪我などされませんように! 凶暴みたいですから」

私はスレイプニルが欲しいとは、ちっとも思わない。

昼からは、ゲイツ様と魔物討伐だよ。孤児院に肉を寄付したいから、ビッグボア狩りをしたいな。

「何を他人事みたいに言っているのですか? 昼からは、スレイプニルの捕獲ですよ!」

行儀悪く、煮込みを立ったまま食べながら、ゲイツ様が私の所にやってくる。

「えええ、私は乗馬は無理ですから、スレイプニルを追いかけ回したりしたくありません。ゲイツ様がそちらに参加されるなら、休憩しておきます」

キチンと断らないと、ゲイツ様にごり押しされるからね。