軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拘束魔法から攻撃魔法!

木曜の午後からはゲイツ様の魔法教室だ。ある意味では、凄く贅沢なのは理解している。

メアリーが持っている剣が、テンションを下げる原因かも? 私が、ヒャッハーと剣を振り回すタイプだと良かったのにね。

ああ、そう言えば冬の魔物討伐に参加する魔法使いコースの女学生は、そんなタイプだと聞いたよ。

そんな女学生達を訓練した方が良いんじゃないかな? なんて、内心で愚痴りながら王宮に着いた。

「ペイシェンス様、ゲイツ様がお待ち兼ねです。今日は実技場に行きましょう」

今度もかなり王宮から離れた場所にあるみたい。

「これが実技場ですか?」

前世のコロッセウムを思い出す建物だった。

「ああ、観客席は、年に数回は実技大会が開かれるからですよ。それに、時々は騎士団に貸し出します」

ドナドナされる気分で、サリンジャーさんの後ろをついて行くと、実技場の真ん中でゲイツ様が待っていた。

「ペイシェンス様、ここに立ってみてください」

えっ、いきなりですか?

「ええ、冬の魔物討伐までに攻撃魔法を習得するのなら、さっさと拘束魔法は終わらなくてはね!」

下は土なので、脚を拘束されたよ。

「ペイシェンス様だから、脚だけにしましたが、首まで拘束すれば動けません。さぁ、解除して下さい」

「解除!」で動けるようになったけど、靴の中に土が入った。後で取り出そう。

「さぁ、今度はペイシェンス様が掛けて下さい」

土で拘束する。セメントで脚を固める怖いイメージが浮かんだ。

「駄目だわ!」首を横に振って、違うイメージを思い浮かべようとするけど、一旦、染み付いたイメージが抜けない。

「ペイシェンス様? 何かあったのですか?」

私は、ベンジャミンを拘束魔法で気絶させたのを話した。

「それは、油断した相手が馬鹿なのです。それに、そんなに甘ちゃんでは、駄目なのはわかっていると思っていましたけどね」

そうなんだよ。だから、今でも気は進まないけど、討伐に参加しようと決めたのだから。

「ペイシェンス様、ゲイツ様なら岩の中に閉じ込めても、破壊して出てきますから、大丈夫です!」

サリンジャーさん、優しいね!

「では、ゲイツ様を拘束しろ!」

脚をコンクリートで固めるイメージで掛ける。

「おお、かなり上手く掛けていますが、これでは魔法攻撃ができますよ!」

確かに、脚だけだと駄目かも?

「ゲイツ様を首まで拘束しろ!」

顔をセメント漬けにしたら、ヤバいから、ちゃんと詠唱する。

「キツイ! 解除!」

ハァ、とゲイツ様が大きな息を吐いた。

「サリンジャーが余計な事を言うから、岩の中に閉じ込めるイメージで掛けたのでしょう。でも、これは合格です」

岩じゃなくてコンクリートだけど、同じかもね。

火は掛けられるのも怖かった。

「ペイシェンス様、怖がらなくても、私が火傷などさせるわけがありません」

私の周りを火が囲んでいる。

「解除してみてください」

これって水を掛けるイメージが良いの? それとも空気を遮断した方が良いの?

迷っていると熱くなってきた。

「私の周りの火よ、消えろ!」

空気を遮断する方が、早く消える筈だ。サッと消えたよ。

「上手いですね! こんなに綺麗に消せるのはセンスがありますよ」

褒めて貰ったけど、掛けるのも怖い。

何か、良いイメージは無いかしら? 火の輪をくぐるサーカスのライオンしか思い浮かばない。

あっ、あれなら? シャボン玉の大きな輪に子供を入れて背の高さまで上げる感じだよ。

「ゲイツ様の周りに火の壁を作れ!」

炎の円柱の真ん中にゲイツ様が立っている。

「熱い! 解除!」

火の拘束魔法も合格したよ。

「あれっ? 私は生活魔法しか使えないのに?」

ゲイツ様が笑っている。

「ジェファーソン先生の言葉を忘れたのですか?」

ああ、それは覚えているよ。他の学生から下に見られる生活魔法しか授からなかったから、肩身が狭い気がしていた時に、励まされたからね。

「生活魔法を極めれば、何でもできる! ですよね」

「ふふふ……ジェファーソン先生は、可愛いお婆ちゃまでしょう。私の大叔母様なのですよ!」

ええええ、でも年は取っているけど、顔立ちは綺麗だし、似ているのかも?

「ゲイツ家に生まれたのに生活魔法しか使えなくて、寄子のジェファーソン家に養女に出されたのです。でも、曽祖父は見る目がありませんでしたね」

酷い話だよ。ぷんぷん!

「ジェファーソン家で婿養子を貰って幸せに暮らしていたのだから、同情なんてしたら失礼ですよ。それに、今でも生活魔法を使う学生達を指導している賢い大叔母様なのですからね!」

そう言えば、ゲイツ様のお母様も、私の母親に優しくしてくれたと父親が言っていたね。生活魔法しか使えない母親を、励ましてくれたのかも?

「さぁ、後は水の拘束です。空気の中には水も含まれていますから、それを使ったり、水場の近くなら掛けやすいですね」

それは理解できるし、火よりは何となくハードルが低いよ。

「でも、水の拘束は解けやすいから、凍らせる方が良いです」

えええ、凍らせるの? 霜焼けにならないかしら?

「大丈夫ですよ! 一瞬だけですから?」

手首と足首に氷の輪っかが付いている。冷たい!

「解除!」パキンと割るイメージで解除する。

「では、掛けてみてください」

まるでSMプレイみたいで嫌だけど、氷の手錠と足枷を嵌めるイメージで掛ける。

「ゲイツ様を拘束しろ!」

なのに掛ける一瞬、氷漬けのマグロが頭に浮かんだんだ。

「解除!」

一瞬、氷漬けになったけど、すぐに解除したよ。

「ペイシェンス様、これで拘束魔法は合格です。後は、繰り返し練習してください」

やれやれ、これでお終いだと思ったけど甘かった。

「今度は、剣に魔法を乗せて攻撃する練習をしましょう」

えええ、剣を持ってこいとは言われたけど、今日は拘束魔法だけで良いじゃん!

「さぁ、構えて!」

メアリーに渡された剣を、ユージーヌ卿に教わった持ち方で構える。

「おお、良い感じではないですか!」

ゲイツ様もいつのまにか剣を手に持っている。

「あのう、魔法使いって杖で攻撃するイメージなのですが?」

本の挿絵の魔法使いも杖だったよ。

「杖を持つ魔法使いもいますが、接近戦になった時、剣の方が杖で殴るより攻撃力は強いですからね」

えええ、そんな理由なの?

「では、これも風からにしましょう」

ゲイツ様が剣を一振りすると、空気が切り裂かれた。

「えええ、無理ですわ!」

これってエアカッターじゃん!

「無理ではありません。ううん、野菜を細かく切るイメージを思い浮かべて、それを剣に乗せるのです。あの的がキャベツだと思ったらできます」

微塵切りにするイメージは、前世のフードプロセッサーかな?

「微塵切りになれ!」

剣を振り下ろすと、ビュンと風の刃が的に当たって、木っ端微塵にした。

「おお、上出来です」

的ならできそう!

「今日は、この練習をしましょう。今度はスパッと切るイメージでやってみてください」

魚の頭を出刃包丁で切り落とすイメージだよね?

「真っ二つになれ!」

的に向かって大きな刃が飛んでいき、真っ二つにする。

ゲイツ様が手を叩いている。

「うん、これならビッグボアも一撃で倒せますね!」

いや、的とビッグボアでは大きさが違うのは明らかだよ。

「首を切り落とせば、大概の魔物も討伐できます。たまに、首が再生する嫌な奴もいますけどね。黒の森には、そう言うレアな魔物はいませんから、首をチョッパーしていけば楽勝です」

ゲイツ様は、簡単に言うけど、私は小市民だから魔物を見てビビりそうだよ。

「やはりペイシェンス様は技術よりも、心根の弱さが問題ですね。令嬢だから、優しいのは欠点ではありませんが、弱いのはつけこまれますよ」

ゲイツ様に一番つけこまれている気がする。

「サリンジャー、大きな的を用意して下さい」

大きな的は、ビッグボアの絵が描いてあった。

「これは、小さめのビッグボアですね。この何処を攻撃したら倒せるのかわかりますか?」

それは焼けた跡や穴が開いているから、一目瞭然だよ。

「首ですね……」

小さめのビッグボアでも、見上げる大きさなんだ。

私がぼんやりとビッグボアの的を見ている間に、サリンジャーさんは床にレールを敷いていた。

「練習場の床にレールよ伸びろ!」

サリンジャーさんが魔法を使うのは初めて見たよ。

用意してあったレールが練習場に敷かれた。

「これにビッグボアの的をセットします。真ん中にペイシェンス様は立って、早めに攻撃して下さい」

ビッグボアの的は、練習場の端にセットされた。

「さぁ、行きますよ!」

ビッグボアが勢いよくこちらに向かってくる。

「真っ二つになれ!」

的だけどかなりの迫力だ。慌てて、剣を振り下ろしたけど、外れたよ。

「ほら、外れたなら、もう一度!」

どんどん近づいてくるので、慌てちゃう。

「真っ二つになれ!」

慌てると駄目だ! また外れた。

少し落ち着くために深呼吸する。

かなり近づいている的をしっかりと見て「真っ二つになれ!」と首を狙うように剣を振り下ろす。

大きな風の刃が的に当たり、パキンと的が二つに割れた。

「そう! それで良いのです」

はぁ、疲れたよ。

「動いている魔物を討伐するのですから、こちらの練習をした方が良いですね。それと、なるべく遠くで仕留めた方が安全です」

それは、そうなんだろう。

「的でも慌ててしまうのに、本物の魔物を討伐できるのかしら?」

無理な気がする。

「ははは……、ペイシェンス様が倒せなかったとしても私がやりますから、失敗しても大丈夫ですよ」

それは、少しだけ安心だよ。