軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム

「放せ! いいからここを通せ!」

朝から激怒しているのは、アンジェだった。

ロボットたちが止めるのを、無理矢理押し通りアインホルンの廊下を進んでいた。

目指しているのはリオンの部屋だった。

息を切らし、ようやく部屋に到着するとついてきたクレアーレがヤレヤレといった感じで呆れている。

『朝から元気よね』

「落ち込んでなどいられるか! リビアがさらわれたというのに、何もするなとはどういう意味だ! たとえリオンの命令でも許せるものか」

ドアノブに手をかけると、アンジェの後ろからリオンの兄――ニックスがやってくる。

「リオン、お前はどういうつもりだ!」

アンジェのように激怒していた。

「義兄上」

「アンジェリカさま――違った、さん。あのヘタレ弟を叱りつけに来たのか? 奇遇だな。俺も同じだ」

リビアをさらわれ、行動しないリオンに腹が立っているようだ。

ドアを開けて二人が部屋に入ると、クレアーレはこっそりと部屋を覗く位置に来る。

『知らないわよ。マスター、かなりお怒りなんだけど~』

二人が部屋に入ると、リオンは椅子に座って片腕を机の上に置いていた。

人差し指でトントンとリズムを取るように叩いている。

二人が部屋に入ってきても、顔すら向けない。

その顔は何も考えていないような――無表情だった。

ニックスが大股で近付くと、そのままリオンの胸倉を掴み上げる。

「リオン! お前、屑だと言われては来たが、本当に屑になるつもりか! オリヴィアちゃんを見捨てるのかよ! ここまでされて黙っているつもりか!」

リオンの目は動じない。

アンジェもリオンを責める。

「抗議することも、リビアを取り戻すことも止めるとはどういうつもりだ! お前は――お前にとって、リビアはその程度のものなのか? 何もせずに部屋にこもるのか? たとえ勝てずとも、やれることはあるはずだ!」

目に涙を溜めているアンジェに、視線だけをリオンが向けた。

その瞳はいつもと違っていた。

アンジェが息をのむと、視線はニックスへと向かう。

「――放せよ」

普段と違うリオンの表情。

ニックスも何かを言いかけ、リオンの雰囲気に気圧され離れた。

服装を整えるリオンの側に浮かんでいるルクシオンは、部屋に入ってこないクレアーレに注意する。

『部屋には誰も入れるなと言ったはずです』

『アンジェちゃんに乱暴なことは出来ないでしょ。それより、どうするの?』

クレアーレの問いかけにルクシオンは答えない。

代わりに答えたのはリオンだ。

「リビアは助ける。だが、同時に共和国には滅んでもらう」

その言葉にアンジェは狼狽えていた。

「ほ、本気か? お前、自分が何を言っているのか分かっているのか?」

リオンは少しも動じていなかった。

「本気だ。正確には、今までの共和国を維持できないように叩く。何もしなければ――このまま普通に帰っていたんだけどね」

ニックスが冷や汗をかいていた。

「何を言っているのか分かっているのか? お前、共和国の騎士に負けたんだろ? アロガンツでも勝てない相手がいるのに、どうやって国と戦うんだよ」

リオンは笑った。

その笑顔を見て、アンジェもニックスも引いている。

「聖樹に頼り切っていた国だ。それがなくなれば、さぞ混乱するだろうよ。俺個人としても、問題が解決できて一石二鳥だからな」

クレアーレがオロオロとしていた。

『うわぁ~、それをやっちゃうの? やっちゃうのか~。しかも戦場は大陸の上よね?』

ルクシオンもそこを気にしていたが、

『先に仕掛けてきたのはあちらです。どうやら、短期決戦がお望みのようですからね』

ニックスが困ったように視線をアンジェに向けた。

「ど、どうなるんです? 聖樹がなくなると、国までなくなるんですか?」

共和国の内情に詳しくない義兄であるニックスに聞かれ、アンジェは共和国の未来を予想する。

「――本当に聖樹を失うのであれば、共和国は今までの統治が出来なくなります。ですが、周辺国への影響も相当なものになるでしょう」

ニックスが慌ててリオンを見た。

「そこまでするのか? いや、出来るかどうか分からないが、そんな事をしたらお前――この国の人たちが」

「選んだのはあいつらだ」

「――え?」

「兄貴はみんなをまとめてくれ。俺はアインホルン一隻でリビアを救助に向かう。アンジェはリコルヌで待機だ」

言われたアンジェが何かを言おうとしたが、決意は固いのかリオンの目は拒否を許さないとすぐに分かった。

それでも――。

「わ、私も行く。今のお前は危険だ。一人で戦うなどと馬鹿げている」

リオンは視線を下げた。

笑っている顔は、自分でも馬鹿だと分かっているような顔だった。

「そうだな。俺は馬鹿だよ。馬鹿だから――最後まで信じたのにさ」

リオンは顔を上げる。

「ルクシオン――行くぞ」

『――はい、マスター』

リビアが目を覚ますと、そこは知らない屋敷だった。

「え? 私は――」

いつの間にか着替えさせられている。

体を触り、何もされていないのを確認すると安堵した。

すると、昨日の偽物ノエルが姿を現す。

広い部屋だ。ドアを開けると音が響く。

「起きた?」

周囲にポール型のロボットが二体侍っている。

リビアは、サイドポニーテールにしている女子を睨んだ。

「どうしてこんなことをするんですか?」

女子は微笑む。

「あんたが聖女様だからよ」

「何を言っているんですか?」

ただ、本心では、

(そう言えば、マリエさんもそんなことを言っていたような気がする。そうだ、あの時もリオンさんのことを――夢でもルク君が私を聖女だって)

女子は名前を伝えつつ、リビアのベッドに腰を下ろした。

「私はレリア――ノエルの双子の妹よ」

「ノエルさんの妹さん?」

「色々とかき乱した連中がいたから大変だけど、これであいつらの切り札は使えなくなったわね。あの男が余裕を見せるわけよね。だって、婚約者が貴女だもの」

あの男というのがリオンだとすぐに理解できた。

「一体何が目的なんですか? 私にだって国際問題になるってことくらい分かりますよ」

レリアは笑った。

「そんな低次元の話じゃないのよ。これはもっと――そうね。高次元の話よ」

「高次元?」

この人は何を言っているのだろうか? 国家、政治――更に上の視点や次元とは何を意味しているのか? そんなことを考えていると、レリアは楽しそうに話をする。

「あんたには分からないでしょうね。けど、これが将来的には正しい選択になるのよ。共和国にとっても――王国にとっても利益のある話よ。あの外道から解放されるんだからね」

「正しい? そんなの嘘です。どうしてこんなことが正しいんですか!」

「あんたには分からないわよ。あの外道がかき乱すから悪いのよ。よりにもよってあんたを手元に置くなんて――マリエより最低じゃない。やっぱりあいつは外道よ」

外道が誰の二つ名であるかを知っているリビアは、レリアを睨み付ける。

その瞳には敵意があった。

「リオンさんは外道じゃありません。――リオンさんをどうするつもりですか?」

「力を奪って幽閉か、抵抗するならセルジュが倒すって言っていたわね」

「リオンさんは負けません。リオンさんは王国最強の騎士です」

「最強? 何それ。凄くチープな言葉よね。それに、あいつがセルジュに負けたことを知らないの? あんな男のどこが良いのよ」

リビアはレリアの顔を真っ直ぐに見る。

「優しい人です。外道などと呼ばれるような人じゃありません。ちょっとやり過ぎてしまいますけど、他人のことを思いやれる強くて優しい騎士です。貴方に貶されるような人じゃありません」

「――何よ。極悪非道の外道に弱みでも握られているのかと思ったのに。まるで惚れているみたいじゃない」

「みたい、じゃありません。私はリオンさんを愛しています」

その言葉にレリアは下唇を噛んだ。それから笑みを作る。

「騙されているとも知らずにのんきよね。頭がお花畑だと、見たいものしか見えないのかしら? あんな男、世の中に掃いて捨てるほどいるわ。あんた、頭おかしいんじゃないの?」

リビアは布団を握りしめた。

レリアは笑っている。

「でも、あいつはセルジュと戦うのが怖くてあんたを捨てて逃げるかもね。あいつ、口で言うほど強くないから」

リビアが何も言い返さないでいると、レリアはつまらないのか部屋を出ていく。

「下手なことは考えないことね。ここにいれば、安全だけは保証してあげるわよ」

レリアが出ていくと、リビアは膝を寄せて顔を埋める。

(――私はまた何も出来なかった)

部屋を出たレリアは、ラウルト家の屋敷の廊下を歩く。

その顔はリビアをいじめて楽しそう――ではなかった。

「何よ。最後まで信じています、って顔をしてさ。男なんて最後には裏切るのよ」

歩きながら呟く。

「――信じて裏切られるのが一番辛いのに、それも分からないなんて残念な奴よね」

レリアは思い出す。

前世の婚約者の顔だ。

片手で顔を隠した。

「柄にもないことをして、一生懸命尽くしたのに――男は簡単に人を捨てるのよ。それが分からないから馬鹿な女なのよ」

涙がこぼれていた。

セルジュの部屋。

そこには、怒鳴り込んできたアルベルクの姿があった。

「セルジュ、お前は自分がどれだけ馬鹿な真似をしたか分かっているのか!」

ソファーに座っているセルジュは、朝から元気な父親を見て呆れている。

「調子に乗った野郎をからかっただけだよ。まぁ、個人的に納得できるだけの理由もあったからな」

「個人的な理由で、お前は他人の婚約者を奪うのか! お前という男は、どれだけ情けない男だ!」

その言葉にセルジュが額に青筋を浮かべた。

「五月蠅いんだよ。自分の女を寝取られた男が、偉そうに説教か?」

「お前、まさか“あの話”を知っているのか」

驚くアルベルクに、セルジュは面白くなさそうに話す。

「詳しい奴がいたからな。寝取られた腹いせに、フェーヴェル家をレスピナス家にけしかけた最低の屑野郎はどっちだよ」

アルベルクは手を握りしめる。

「――子供のお前には分からない話だ。すぐにさらった女性は送り返す。お前は謹慎しておけ」

これ以上、何もするなと言って部屋を出ようとしたアルベルクだったが――。

『それは困りますね』

――部屋には武装した兵士たちに加え、ロボットたちがイデアルに率いられ入ってきた。

「な、何だ!」

『現当主はご乱心です。ここは、セルジュ様に当主代理を任せるとしましょう』

「ふざけるなよ、一つ目! お前たち、自分が何をしているのか分かっているのか!」

部下たちを前に、アルベルクが自身の聖樹の加護を掲げると――その後ろからフェーヴェル家の当主――ランベールが姿を見せた。

アルベルクと同じように聖樹の加護である紋章を掲げている。

「いけませんな、議長代理。わがままを言ってもらっては困りますよ」

「ランベール、貴様――お、お前たちまで!」

その後ろには、更に六大貴族の当主たちが揃っていた。

アルベルクは、金髪の美青年――フェルナンを睨み付ける。

「お前まで一つ目に加担したのか! お前は、バルトファルト伯爵と親しかったのではないのか!」

フェルナンは俯く。

「アルベルク殿、そこまで親しいわけでもないのです。それに――共和国の屋台骨を、これ以上揺らすわけにはいかない。王国に対する恐怖心をどうにかしなければいけないのです。強い共和国を取り戻す必要があります」

若く有能な当主が、自国の栄光を取り戻そうとしていた。

(期待していたが――若い。若すぎた。その程度の視野しかなかったのか、フェルナン!)

セルジュが立ち上がり髪をかく。

「手荒なまねはするなよ。一応――親父だからな」

その言葉に、アルベルクは肩を落とした。

「セルジュ、お前は何も分かっていない。お前の行動は共和国を危険にさらすと何故気付かない」

セルジュは鼻で笑っていた。

「あいつに俺が負けると思ったのか? 奴が来たら俺が倒してやるよ。それで、この国をまとめればいいんだろ? 簡単な話じゃないか。イデアルがいればすぐにでもまとめてくれるぜ」

イデアルの声は明るかった。

『はい。既に迎え撃つ準備は整えております。飛行船や鎧の改修作業は予定通り終了しております』

アルベルクに、部下である――部下であった騎士団長が声をかける。

「アルベルク様、イデアル殿の用意した鎧は凄いですよ。あのパワーがあれば、王国の騎士にも負けたりはしません」

アルベルクは奥歯を噛みしめ俯くのだった。

(これでは、振り出しに戻るよりも酷い状況ではないか!)

「――お前たちを罰しなかった私の罪か」

アルベルクが放り込まれたのは、鉄格子が用意された豪華な部屋だった。

六大貴族の当主であるため、急遽部屋を用意された。

ソファーに座っていると、見張りの兵士たちが席を外した。

(何かあったのか?)

顔を上げると、そこに立っていたのは――かつて愛した女性によく似た娘だった。

「レリア君と雰囲気が違う。――ノエル君かな?」

ノエルが面会に来たのだ。

その手に巫女の紋章があるため、見張りの兵士たちも席を外してくれたようだ。

共和国で聖樹の加護の紋章は大きな意味を持つ。

それが、聖樹の巫女のものならなおさらだ。

「呼び捨てで結構です。話をしたくて来ました」

アルベルクは自嘲しつつ答える。

「私の情けない話を聞きたいと? つまらない話だ。君が気にすることじゃない」

だが、ノエルは引かなかった。

「いえ、是非とも聞かせてください。私は――貴方の話が聞きたかった」

しばらくして、アルベルクはノエルに根負けすると淡々と過去を話すのだった。

「面白い話ではないし、君にとっても辛い話になるが?」

「構いません」

「――そうか。ならば話そう。君たちが生まれる前の話だよ。当時の私は、君たちの母上と婚約をしていた。理由は――私が聖樹の守護者に選ばれる予定だったからだ。そして、先に裏切ったのは我々ではなく、レスピナス家――君たちのご両親だ」