軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幕間 ルクシオンレポート その2

実家の自室で眠るリオンを、ルクシオンは見ていた。

建て直した屋敷で個室を与えられたリオンは、ベッドの上で幸せそうに眠っている。

起きているときはマリエへの罵詈雑言を繰り返していたが、この調子では明日の朝にはまた忘れて遊び回るかも知れないと思うルクシオンだった。

『マリエが聖女になるのはあり得ないと言っていたのに……ことごとく予想が外れるマスターを持って私は幸せです』

聞こえるわけでもない皮肉を口にするルクシオンは、二学期について振り返った。

『それにしても色々とありました』

学園の行事が多いため、それに合わせてリオンも大忙しだったと思う。

半分は自分の責任で忙しかったのを、本人は気が付いているか微妙だ。

『体育祭でお節介を焼いてしまったために昇進してしまいましたし』

ジルクの元婚約者を納得させて、昇進するきっかけを作ってしまった。

普通昇進は喜ぶべき事である。

だが、リオンにしてみれば爵位も階位も邪魔だった。

地位が高いということはそれだけ責任もあるということだ。

リオンがわざわざ工場を持ったのも、今後王国へ貢献するために仕方がない部分もある。リオンの持つ領地では、男爵家としての働きを期待されても無理なのだ。

しかし、更に昇進してしまい計画は更に見直しが必要になっていた。

『子爵で四位下、ですか。随分と昇進してしまいましたね』

学園祭では王妃であるミレーヌを口説き、カーラに言われるまま空賊退治を行った。そのおかげで昇進だ。

あの時の昇進……ルクシオンは、ミレーヌの支援があったと考えている。

『ミレーヌは何を思って昇進させたのか気になりますね。まぁ、調べるように言われていないので分かりませんが』

予想は出来るが、情報を集めようとはしない。だって命令されていないから。

『空賊退治くらいで昇進しないと言っておきながら』

本人としては、貴重なアイテムの回収が目的だった。

ついてきたブラッドやグレッグに功績を押しつければ何とでもなると思っていたのだろうが、そのせいで余計に昇進するきっかけを作っている。

『やることなすことが目指している方向とは違うというか……』

空賊退治の後は修学旅行だ。

そこで襲撃してきた公国に勝ってしまったのもいけない。

仕方がなかったとも言えるが、とにかくうまく収めてしまった。そのために、王国は公国を侮ってしまっている。

『マスターの頑張りはことごとく裏目に出てしまいますね』

ただ、黒騎士に追い詰められたのがショックだったのか、鍛錬を再開している。

『良い薬でしたね。まぁ、助けられたので見守っていましたが』

黒騎士を退けた功績自体はクリスに押しつけたが、クリスの実家はそのためにリオンに文句が言えなくなってしまった。

下手に相手へ恩を売ってしまい、それが昇進という形で戻ってきてしまったのだ。

誰もクリスの功績に文句を言わないのは、両家の間で和解が成立した条件だと勘違いしているからだ。

剣聖も下手に文句を言えば余計に恥をかくため、黙るしかなかった。

どれだけ憎く思っていても、今のリオンに手出しは出来ないのが現状だった。

そしてルクシオンの興味は他へと移る。

『オリヴィアの件も無事に終わって何よりです。それにしてもルク君ですか……彼女の保護対象のレベルは二段階上げておきましょう』

何故かオリヴィアに対して敵意を持てないルクシオンだった。

本来、ルクシオンはロストアイテム――旧人類の遺産であり、新人類とされるオリヴィアには敵意を持ってもおかしくない。

それが不思議と敵意を抱けなかった。

『これがマスターの言うオリヴィアの力なのでしょうか? というか、事前に色々と話して欲しかったですね。知っていれば対策も立てられたのに』

リオンは自分の中で自己完結しているところが多く、ルクシオンも後から知った情報が多い。そのためにマリエの件は後手に回った。

『まぁ、別に構いません。王国が滅びようとも、マスターとその関係者は救えますので』

いざとなれば逃げれば良い。

ルクシオンもその程度にしか考えていない。

王国の存亡などあまり興味がなかった。

『……ですが不思議ですね』

ルクシオンは二学期を振り返る。

『マスターが突き放したあの五人は精神的にたくましく成長し、逆にオリヴィアとアンジェリカが精神的に脆くなるとは』

特にリビアの精神的な脆さが今回は出てきた。

三人の関係も壊れたが、再び元に戻って安堵するルクシオンだった。

逆にたくましく成長したのはあの五人――主に三人だが、ブラッドとグレッグ、そしてクリスである。

『跡取りという環境から脱したことで、精神的に成長したのでしょうか? まぁ、女性の趣味は相変わらず悪いようですし、詐欺師に騙されていましたけどね』

女性版リオンみたいな女がマリエだとルクシオンは思っていた。

同じ転生者。

そして、自分のために行動するその姿勢。

性格も似ていると判断している。

リオンが突き放した五人の方が人として成長したのは皮肉な話だ。

リビアもアンジェも、リオンと距離が出来てからの方が成長していた。

『マスターは本当に邪魔だった?』

その結論をルクシオンは一旦置いておく。

流石にリオンが可哀想になってくる。

『それにしても、オリヴィアの見せた力は凄かったですね。出来ればもっと解析したかったのですが――』

修学旅行で見せたあのバリアは、ルクシオンでも驚愕する能力を持っていた。

『マスター曰く、最後に必要になるのは聖女の力ではなく、オリヴィア自身の力という事でしたが……マリエはその情報を知らないのでしょうか? もしくは、知っていてなおどうにか出来ると判断したのでしょうか?』

よくリオンが乙女ゲーの世界だから苦労するとか言っていたが、ルクシオンには異物二人を抱え込んだこの世界の方が苦労しているように思える。

二人がいなければ、何事もなく幸せな世界が待っていたのだろうか?

そしてルクシオンは二学期を振り返ってまとめる。

『……あの五人を面倒くさいと言っていましたが、マスターも十分に面倒くさい人間でしたね。人のことは言えないとはこのことでしょう』

リオンは攻略対象の五人並みか、それ以上に気難しかった。

拗ねるし、自分から距離を取るし、おまけに妙な自分ルールを大事にする。

ルクシオンを使っての勝利に制限をつけているのも、前世の価値観に引きずられているからだろう。

『まぁ、嬉々として大量虐殺をするよりマシでしょうけどね』

好感が持てるとルクシオンは思っていた。人間らしく駄目なリオンが、ルクシオンにとっては大事なのだ。

ルクシオンはリオンに近付き顔を覗き込む。

『さて、これからどうなるのでしょうね、マスター』

すると、リオンが寝返りを打ってルクシオンを叩いた。床に叩き付けられたルクシオンは、不気味に瞳を赤く光らせるとゆっくりと浮かび上がる。

リオンは幸せそうな顔をして寝ていた。

ルクシオンはそのままリオンの腹部の上に移動し、自身を落としてぶつける。

「ふぎゃっ!」

そんなリオンの声が聞こえてきたが、本人はまた寝息を立てていた。