軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二話 メロンカップのナイスバディ

リベルタがやらかす度に『なんとかしろ』と言われるトワレは、まるで我が子の躾が出来てないと怒られている親のような気分になる。

「出来るなら、とっくの昔にやっています」

24時間リベルタに付き合う同室のトワレにすれば、これくらい我慢しろというところだろう。

結局、常に強引にマイウェイなリベルタを止められるのはシャイネンしかいない。

しかし、当の本人が笑って受け入れているのだから、トワレ達には如何ともしがたいのだ。

「はぁ、疲れる」

「疲れるのは、クルーガー様だけではありませんから」

机に突っ伏すクルーガーに、トワレは口を尖らせる。

これが、マジックバッグ研究会の日常だった。

ただ、学生3人プラス担当教師での研究は、驚くほどの速さで進んでいた。

今では、馬車1台分の荷物が入る小さなバッグを持つことが社交界のブームになっている。

最近は、軍の方からもっと大きくて実用的なカバンを作れと突き上げられていた。

しかしリベルタの、

「え?可愛くないから、いや」

の一言で、軍事転用は実現されていない。

その裏でシャイネンが、兄である王に対して、

「まさかとは思いますが、子供に危ない玩具を作らせたりしませんよね?」

と根回ししていることも大きい。

彼は、自分の兄が年の離れた弟に甘いことをちゃんと理解し、それを利用できる強かな人間だった。

実は、まだ卒業すらしていないリベルタ達を無理矢理軍に引き抜き、監禁まがいの状態で軍用マジックバッグを作らせようという案を出した幹部たちもいたという。

そんな彼らが、秘密裏に更迭されたのは偶然ではないだろう。

こんな風に、友と切磋琢磨し、優しい大人に守られて、気づけばリベルタは十六歳になっていた。

中身の残念さはそのままに、体だけは乙女ゲームのお色気担当に恥じぬメロンカップのナイスバディへと成長していた。

黒を基調とした制服は若干修道女にも通じる禁欲的な匂いがするが、リベルタが着用すると、なぜか途端にエロくなる。

中に着た白シャツのボタンは、パツパツに発達した胸で今にも弾け飛びそうだし、ナインペタンバティのトワレは、

「後輩のくせに、図々しい」

と、鷲掴みにしては悔し涙を流している。

「もぉ、トワレは、私の胸が大好きなのね。全く、赤ちゃんなんだから」

揉まれ慣れたリベルタは、逆に揉みやすいように胸を張りながら、ふと、何か大切なことを忘れているような気がして頬に手を当てた。

「ねぇ、トワレ。トワレって、十八歳よね?」

「そうよ」

「もしかして、あと1年もしない内に卒業?」

「今更?」

「ちょっと、ちょっと待って。私、一人になるの?……嘘でしょーー!」

相部屋になって四年。

思い出が山積みの部屋を見回し、リベルタは、ショックで後ろに倒れる。

バタン

床でしたたか頭を打ち、痛みに涙目になった。

「やだぁ、やだ、やだ、やだ」

手足をジタバタさせても、状況が変わることはない。

「一緒に卒業するー!」

学力だけなら、問題ない。

卒業試験に受かりさえすれば、不可能なことではないのだ。

良い考えだと自画自賛したリベルタは、ムクッと起き上がると、

「先ずは、飛び級試験よ!」

と息巻いた。

そこに、

トントントン

誰かがドアをノックする音が聞こえた。

「ごめんなさい、取り込み中かしら?」

2人を訪ねてきたのは、寮母のミスローズだった。

「リベルタさんにお話があるの」

それは、寮の退去を知らせるものだった。

「つい先日、王都の教会で聖女様が誕生したの。十六歳の彼女は、来週からこの学園に通うことになるわ」

リベルタは、元平民の聖女が寮に入るシーンを、乙女ゲームのチュートリアルで何度も見た。

しかし、今、寮に空室はない。

そうなると、本来いるべきではない高位貴族のリベルタが出ていかざるを得ないのだ。

なにせ、彼女にはちゃんとしたお屋敷が王都の中心街にあるのだから。

「ヒロイン………忘れてた」

そう。

乙女ゲームの始まりは、リベルタが十六歳になった時。

聖女の入学を機に、ストーリーが始まる。

走馬灯のように、前世の記憶が脳内を駆け巡った。

フレルトに断罪され、断頭台に登らされるシーンはあまりにリアルで、

「………吐きそう」

ショックのあまり、気分が悪くなったリベルタは、口を手で押さえて蹲る。

「リベルタ、しっかりして!」

「トワレ……私、死にたくない……」

その一言を最後に、リベルタは、気を失った。