軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

「お前を愛することはない」と言われたけれど、ドレスをオーダーメイドすることになりました①

「旦那様、旦那様! あれ、食べたいです!」

ぐいぐいと旦那様の手を引っ張って進む。

すると、コロッケの食べ歩きをしている人とすれ違った。

「美味しそう!! あの、そのコロッケ、どこのお店のですか?」

旦那様の手を離し、コロッケを持つお兄さん二人組に話しかける。

「ん? これはそこの角を左に曲がって……」

「もし良かったら、店まで案内しましょう……か……?」

「いいんですか!? ありがとうございます!」

これで、確実にコロッケをゲットだ!!

「では、さっそく行きましょう! ……どうしました?」

お兄さんたちが指差した方に歩き出そうとすれば、私の頭上を見て、二人は顔色を悪くしている。

「お、俺たちは聞かれたから教えようとしただけで……」

「そうそう。女の子に話しかけられてラッキーなんて、これっぽっちも思ってないです」

「だよな。あわよくば一緒にコロッケ食べれたら……なんて考えてもないよな」

わたわたと意味不明なことをお兄さんたちは言う。

「……私に声かけられて、嬉しかったんですか?」

「え!? いや、その……」

「お店を教えてもらっても、おごりませんよ。私、無一文なんで。頼むなら、旦那様にするといいですよ。ね、旦那様!」

そう言って見上げれば、旦那様のお顔が──。

「 般若(はんにゃ) !! 誰です? 旦那様を怒らせたのは!?」

「……コレッティーナ。はんにゃと鳴いて驚く姿は可愛いんだが、それをこの男たちに見せるのはどうかと思うぞ?」

「はんにゃなんて、鳴いてません。般若って旦那様のことです。お顔怖いですよ。油っぽいものばかり食べたから、お腹が痛くなっちゃいましたか?」

貴族食に慣れ親しんでる旦那様の胃腸には、負荷が強かったのかもしれない。

あ! おトイレ我慢してるのかも!!

「すみません。この近くのおトイレどこですか?」

お兄さんたちに声を潜めて聞けば、黙ったまま二人揃って同じ方向を指差す。

コロッケを買いに行きたかったけど、背に腹は代えられない。

旦那様が漏らす前に、おトイレに連れて行ってあげないと!

「ありがとうございます!」

大丈夫。このコロッケの匂いは覚えた。

匂いを探せば、いけないこともないはず! というか、そうであってくれ!!

「旦那様、こっちです。我慢してくださいね」

「は? トイレに行きたいって、俺か?」

「そうです。我慢は良くないです。出し切ってきてください」

トイレの前につき、頑張れ! の気持ちを込めて、両手で握りこぶしをつくる。

「……コレッティーナ」

「はい。早くトイレしてください」

「俺は、トイレを我慢していない」

…………へ?

「じゃあ、何でさっき怖い顔してたんですか? ……あっ! 分かりました。旦那様、コロッケが苦手だったんですね」

「……違う」

「えー。じゃあ、お兄さんたちと知り合いで、実はとてつもない恨みがあったとか?」

「そんなわけないだろ」

じゃあ、何だったの?

というか、お腹痛くないならコロッケ屋さんの場所聞けば良かった……。

「ついでだから、トイレ行ってこい。まだ食べるんだろ?」

「……そうですね。せっかくだし、そうします。旦那様もごゆっくりどうぞ」

「だから、違うって言ってるだろ!」

うーん。今日の旦那様はいつもより怒りん坊だな。

イライラには、カルシウム!

小魚売ってるかなぁ……。

***

「よし、そろそろ甘いもの食べるか」

「デザートタイムですね!」

たくさん食べるぞ!

って、あれ? すごくお腹いっぱい……。

おかしいな。私には別腹があるはずなのに。

そんなに食べたっけ?

えっと……、食べたのはワイルドお肉、コロッケ二個、魚の塩焼き、焼きとうもろこし、焼きそば、ポテト……か。

でも、旦那様はもっとたくさん食べてたし、私だけお腹いっぱいなのは、おかしい!

たぶん、きっと、……いや絶対に気のせいだ!

まだいける、まだいける、まだいける……。

なんなら、お腹空いてるはず……。

お腹をなでなで、言い聞かせる。

「……デザートの前に、少し他のものも見ていいか?」

「あ、はい。大丈夫ですよ」

買いたいものでもあったのかな?

その間に、お腹をリセットしよう!

「ほっほっ……私は……その間お店の外で……ほっほっ……待ってますね……ほっほっほっ」

「……んんっ! な、なんで、 駆け足(か あし) してるんだ?」

「お腹リセットです!!」

おいしく、たくさんデザートを食べるための準備なのだよ!

その場で駆け足をしながら答えれば、旦那様は肩を震わせている。

「旦那様も一緒にやりますか?」

そう言った瞬間、旦那様は地面へと崩れ落ちた。

「……落ち着き……ましたか?」

駆け足ししていたら、小腹が痛くなってきたので、腕立て伏せをしながら聞く。

「あ……あぁ…………、そろそろ行こうか」

ぷるぷるしながら旦那様は立ち上がると、私の手の汚れを払い、ハンカチで拭いてくれる。

「コレッティーナのドレスを仕立てに行くぞ」

「え、いらないです」

服で腹は膨れないうえに、ドレスなんて高級品いらない。

「…………」

「何ですか?」

その残念なものを見る目は……。

「妻として、外に出ないといけないこともあるだろ。それに、これから社交も必要になる」

「えっ!?」

「作った商品の宣伝、社交界でやるのが手っ取り早いだろ?」

そ、そうなの!?

ずっとそばに控えている護衛騎士とアンネを見れば、無言で頷いている。

「安心しろ、コレッティーナ。俺も一緒に行くから」

「そうですか」

「…………美味しいものもたくさんある」

「ドレス作りましょう!!」

あ、実家の現状と立ち位置もついでに調べようかな。

不正のネタたちの料理方法を考えないとだし。