軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本日二つ目のお願い

ロータスが持ってきてくれた礼状書きの内職、いやもとい、作業のおかげで午後はしっかり潰れました。引き換えに私の腕の腱は痛んでますが。地味に自分で擦ってマッサージしていたら、ミモザがすっ飛んできてマッサージしてくれました。ありがたや。

しかし、さすがは公爵家。国中の全貴族から贈り物が届けられていたのではないでしょうか。そんな数でした。筋金入りの貴族ハンパネエです。

こうやってまざまざと公爵家や旦那様の箔を見せつけられると、ますます私の不釣り合い度合が目立ってしまいます。こんな私を面白くないと思っているご令嬢方はたくさんいらっしゃるでしょう。申し訳ない限りですが、闇討ちだけはしないでくださいねっ!

おおっと、また礼状を書く手が止まってしまってました。

「奥様? 夕食のお支度ができておりますが……」

闇夜は特に気を付けようなどと、ちょっと違う方向で遠い目をしていた私に、いつの間にか部屋にいたロータスが恐る恐る声をかけてきました。

「あらもうそんな時間? 今行きます」

驚いて窓の外を見ると、すっかり薄暗くなっているではありませんか。机の上を軽く片付け、扉のところで待ってくれているロータスの元へと急ぎました。

「夕飯もちゃんとリメイクしてくれました?」

「はい。仰るとおりに」

ダイニングに向かって廊下を進む私たち。先導するロータスの後ろに私、そのまた後ろにダリアとミモザがついてきます。

昼間は何かと使用人がうろうろしていて活気があったのですが、もはや夕刻で仕事も終えているのでしょうか、さっきから誰とも会いません。私を含め4人しかいなくなったかのようです。

もはや日没し暗くなっているのも相まって妙に寂しい感じです。

「ありがとう! でもまた一人であのだだっ広いダイニングで食べるのよね」

「そうでございますが」

「あれ、結構寂しいんですよねぇ」

今まで家族5人と使用人数名の、貧しいながらもほのぼのとした食卓だったのが、いきなりお一人様ですからね! 執事と侍女が傍に控えてるけれど、あくまでも控えてるってだけで、お相伴している訳じゃない。

「しかし、旦那様は別棟でお召し上がりになりますので……」

申し訳なさそうにロータスが言います。

「あー、旦那様はいいんですよ。ほら、ダリアとかミモザとか?」

旦那様と一緒にご飯食べるなんて考えてもいませんよ。そもそも夫婦とか家族らしいことを望まれている訳じゃないですからね。そうじゃなくて、私のすぐ周りにいる人ですよ。

しかし私の発言に渋面になったロータスは、

「ダリアもミモザも使用人でございますから、主様とご一緒するわけには参りません」

ピシリと言い切ってしまいました。

まあロータスの言うことは正論です。それでも私もここで引き下がる気はありません。負けるもんかと私はさらに言い募りました。

「ほら、美味しいものでも一人さびしく食べたら美味しくないのよ?」

「美味しいものは美味しゅうございます」

「楽しく食べたらさらに美味しさ倍増なのよ?」

「もとから美味しく作っております」

「むうう」

しかしさすがは執事というべきか、あーいえばこーゆー小僧(おやじ?)というべきか。取り付く島もありません。

そうこうしているうちにダイニングルームにたどり着いてしまいました。

ロータスに引かれた椅子に大人しく座る私。

眼前には、朝指示をした料理が並べられていきます。それもリメイクには思えないほど美味しそうです。ほんとここの使用人さんたちはいい仕事してますよね~。それでもまだ多いと思うのは、根っからの貧乏人……いや、清貧の考えからでしょうか?

「美味しいそうね! 私のわがままを聞いてくださってありがとう。ところで使用人の皆さんは何を召し上がっているの?」

「我々、でございますか?」

突然の私の問いかけに、ロータスがきょとんとします。

「ええ」

「我々は賄いをいただいておりますが」

「賄い? ああ、今朝も言ってたものね」

「はい。こちらにお出しする料理に使用しなかった端肉や野菜の残りを調理したものでございます」

ロータスは説明してくれました。今目の前に並べられているような贅沢な食事に慣れていない私としては、

「まあ! なんだかそちらの方に魅力を感じてしまうんですけど!」

思わず口をついて出てしまいました。貧乏憎んで人を憎まず!

しかしさすがは執事。今度は表情を崩さずに、

「滅相もございません! 奥様はキチンとしたものをお召し上がりくださいませ」

またしっかりと言い切られてしまいました。

「でもたくさんいらないのよ~。お腹壊しちゃうわ」

それでも食い下がる私に、

「……」

ロータスが目線を逸らせてとうとう黙り込んでしまったので、私は仕方なく食事を始めることにしました。

もぐもぐもぐもぐ。

……

カチャッ。

……

もぐもぐもぐもぐ。

……

……

カリャリ。

静かすぎる。美味しいはずのお料理が美味しく感じられないのは何故?!

「うう……」

「「「どうなさいました?! 奥様!」」」

突然カトラリーをテーブルに置いたかと思うと滂沱の涙を流しだした私に慌てふためいてロータス・ダリア・ミモザが駆け寄ってきました。

「だって寂しいんですもの~! 今までは家族5人と数名の使用人とで仲良くわいわい食卓を囲んでたんです。なのに慣れないおうちで一人ぼっちで……」

「奥様……」

3人とも目尻を拭っています。

「だからね、みんなと一緒に食べたいの」

涙ながらに訴えてみましょう。何とかなるかもしれません。ひたとロータスを見つめます。

「そう申されましても……」

しかしまだ困っているロータス。

「このダイニングで食べろなんて言いませんから、むしろ皆さんのところに入れてくださればいいんですの」

「ですが……」

ダリアとミモザも目を見交わして逡巡しています。

あともうひと押しね。

「お願い……」

ぽろぽろ涙をこぼしながらお祈りポーズで上目遣いにおねだり。

ああ、今日は何回このおねだりポーズをやるんだか。全然キャラじゃないんだけど☆

翌朝。

私はご機嫌で厨房横に作られた使用人のダイニングで、侍女たちと一緒に朝食を摂っていました☆

そういや昨日は旦那様のお姿見ませんでしたねぇ。

別棟に直接帰られるのかしら? ま、深く聞くのはやめておきます。余計なことを聞いたりしたら契約違反になっちゃうわ。