軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見てはいけないもの!?

「それでは、何かございましたらダリアかカルタム、ベリスにお申し付けください」

「大丈夫よ〜! 今日は旦那様もお休みで家にいるから。ロータスはゆっくり休んで来てね!」

「ありがとうございます」

そう言ってロータスは一礼するとサロンを出て行きました。

今日はロータスのお休みの日です。ついでに旦那様もお休みで家にいますが。

「最近しっかり休みを取ってるな、ロータスは」

ロータスの背中を見送りながら、旦那様が言いました。

「そうですね〜。サーシス様がちゃんと家のお仕事をされるようになって負担が減ったからじゃありませんか?」

「はい、ごもっともです」

旦那様の言うとおり、最近のロータスはお休みをきっちりとるようになりました。やっぱりアマリリスのためにもちゃんと休まないといけないと思ってるんでしょうか? そしてデートでもしてるんでしょうか?

過ごし方はどうであれ、オーバーワーク気味だったロータスがしっかり休んでくれるのは、私も安心します。

「でもなんで、僕の休みに合わせたかのように休みを取るんだろう?」

「偶然じゃないですか?」

「いや、これでもう四回連続だよ。意図的なものを感じるんだけど。どう思う、ダリア?」

旦那様がダリアに意見を聞けば、

「それは、ロータスが不在の間にもし何かございました時、旦那様にとっさの判断を下していただくためでございますわ」

答えるダリアの口調は断定的。なるほど、そうでしたか。そしてこれは使用人さんたちの間ではすり合わせ済み、共通認識ということですね。なんで私には言ってくれなかった!!

「そうか」

「確かに、誰よりも旦那様が判断するのが一番ですもんね!」

「でもなぁ」

理由がわかればスッキリです。

私は大いに納得したものの、旦那様はそうじゃなさそう。というのも、今現在サロンのテーブルには、ロータスの置き土産、 公爵家(いえ) の仕事の資料が山積みされているのですよ。

「私が帰ってくるまでに処理しておいてください」とかなんとか言ってロータスが置いて行きました。

「毎回休みのたびにどっさり仕事を置いていくのはやめてほしい!」

資料を前にげんなりしている旦那様です。

なんでこんなに溜まってるんだよ、せっかく僕らも外出しようと思ってたのに……とかなんとかブツブツ言ってるので、

「じゃあ、早く終わらせたらお散歩に行きましょう! できることは私もお手伝いしますから」

と私が提案すると、

「わかった!! 超・超・超頑張る!」

旦那様は早速書類をかき集めて自分の書斎に運び始めました。

私にできることって、旦那様の署名の横にハンコを押すくらいだと思うけど。ま、いっか☆

一心不乱に書類の山と格闘する旦那様のためにちょっとお茶を淹れてあげようと思い書斎を出たところで、アマリリスを見かけました。

普通にお仕着せを着てお仕事しているようなので、今日はロータスだけがお休みなんですね。まあ、いつも一緒にお休みってわけにもいかないか。

でもロータスのお休みかぁ。なんか想像つかないですよねぇ。何してるんだろ?

一日中寝て過ごすとか、絶対ありえないよね。つか、想像できない。ちょっと今度ロータスに聞いてみようっと。

旦那様のお仕事は、適度に休憩入れつつ、お昼前にはなんとか処理できたようです。

「なんとかなった……」

旦那様が机に突っ伏しています。お疲れさまでした〜! こんなに早く終わるとは思いませんでしたよ、旦那様ってばやっぱり仕事はできる人なんですね!

「早かったですね〜! ロータスが加減して置いて行ってくれたんですか?」

「ちがーう!! 純粋に僕が頑張ったんです!!」

私がペラペラと書類をまくりながら言えば、即ツッコミが返ってきました。ツッコミ早いね旦那様!

「失礼いたしました〜。まあそれは冗談ですが、もうそろそろお昼ご飯が用意されてますよ。食べたらお散歩に行きましょう」

「そうしよう」

今日はお天気がいいのでちょっと足を伸ばしてローニュの森—王都の端にある広大な森林公園−−でお花を愛でるのもいいですね! 新たにワタシ庭園に導入する花を探そうかな。

カルタム特製ランチをいただいてから、私たちはローニュの森を目指しました。

「今はどんな花が咲いてるんでしょう?」

「久しぶりに行くから、花の種類もすっかり変わってるだろうね」

「楽しみですね〜! でも見ると欲しくなるという……」

「じゃあ、帰りに花屋に寄って帰ろうか。それともベリスに頼む?」

「花屋さんに寄って帰りたいです!」

爽やかな風が吹き抜けるローニュの森の遊歩道を、旦那様と二人で散歩します。

しばらくは森の中を行くのですが、そこを出れば広場になっていて大きな池があり、そこかしこに花が植えられている綺麗な場所に出ます。とりあえずそこを目指してブラブラ歩いて行きました。

ようやく森の遊歩道を抜け、広場に出た時です。

「「あっ!?」」

前方に見知った顔を見つけ、二人同時に足が止まりました。

「……サーシス様、私、ちょっと疲れているのでしょうか?」

ちょっと見てはいけないものが見える気がします。

「……いや、僕こそ書類に根を詰めすぎたようだ」

旦那様も同じ方を見てじっと固まっています。

そう。私たちの前方に、ロータスがいたのです。……子連れで。

離れてはいますが、それでもしっかりはっきりロータスだとわかるくらいの距離を、ロータスが子供の手を引いて歩いてるんですよ!

フリージアと同じくらいの年代でしょうか、服装からすると男の子……かな。

ボーゼンとその光景を見ていたから案外冷静に観察できましたが、そんな余裕ぶっこいてる場合じゃないっ!!

男の子が躓いたのをロータスが抱きとめたのを見て、ハッと我に返った私たち。

そこからは一気にパニックに襲われましたよ!

「ササササササーシス様っ!!」

旦那様の腕を掴みガクガク揺らします。

「ちょ、ちょっと落ち着こうヴィー!」

「いやちょっとも何も落ち着いてられますかっ! あれはどういうことですか!?」

「僕もわからないって! あれは、ロータスの子か? いやそもそもあれはロータスなのか!?」

「ロータス新婚ですよあんな大きな子供できませんて!」

「とりあえず移動しよう。向こうから丸見えだ」

「りょーかいです!」

そう言って二人でその辺にあった適当な木の幹に隠れ、そろっと顔だけ出してロータスたちを窺うことにしました。森って便利☆

「アマリリスが連れてきたのか? うちに子供なんていなかったはずだ……自信はないけど」

「え〜? さすがにそれはないでしょう。お屋敷に子供の気配なんてこれっぽっちもありませんでしたしね」

お屋敷中を熟知している私が言うんですよ? 使用人さんダイニングですらすっかり公認ですからね、そんな私に死角なし! それに、ロータスたちの部屋に隠しているとしても、限界ってものがあるでしょ。

「ずっと屋敷にいるヴィーがそう言うなら間違いないだろう。ふむ、じゃあ……?」

「実は町に恋人がいる、とか? アマリリスと離れている間にまさかの浮気!? ロータスに限ってありえません!」

ロータスを見ながらグルグルと考える私たちですが、あまりいい答えにたどり着きません。

「じゃあ一体……あ、動き出した! ヴィー、こっちくるから隠れて!」

「はいっ!」

ロータスたちがこちらに向かって歩き出しました。こっちに来るということは、王都の中心街の方に行くということです。

私たちは見つからないように、こそこそと幹を盾に移動しました。

ロータスたちが近くを通り過ぎた時に子供をよく見れば、キャメルブラウンの髪に青い瞳をしていました。う〜ん、ロータスはグレーの髪に黒い瞳だし、アマリリスはプラチナブロンドに茶色の瞳だから、二人の子供ではなさそうですねぇ。

「ロータスの子だとしたら、色素は全部母親譲りってことか」

「でも顔の雰囲気もロータスとは全然違いますよ?」

「じゃあ丸ごと母親似ってことか」

木陰からゴソゴソボソボソ、観察結果を話しあう私と旦那様。

そんなことをしているうちにロータスたちがどんどん遠ざかってしまいます。

「よし、後をつけよう!」

旦那様、今日は気が合いますね! 私もそう思ってたとこですよ。

「そうしましょう!」

グッと親指を立て、私は大きく頷きました。

王都の街中を私と旦那様はロータスたちに気付かれないよう、つかず離れずついていきます。

私たちに気づいていないロータスたちは、時折楽しそうに笑いながらゆっくり歩いていきます。

「ふむ、子供に歩調を合わせるとは。やるな、ロータス」

「優しいですね〜。こうやって二人が手をつないで歩いていると、本当の親子みたいですね」

「ちょっと複雑だけどね」

旦那様が苦笑いしまいた。

「このまま二人はどこに行くんでしょうか? はっ! もしや……」

あの子のお母さんのところに……って、私が最悪のシナリオを思い描いていると、

「いや、そうじゃないことを信じよう」

きっぱり言い切る旦那様。思考を読まれたわ。

それはいいとして、こっちの方って……。ハッと気がついた私です。

「確かこっちの方って、学校があるんじゃありませんでした? ロータスたちの通ってた専門学校が」

ロータスたちの向かっている方は、住宅街どころか学校が立ち並ぶ区画です。

裕福なおうちの子女が集まるセレブ学校(我が弟も通ってます)や、私が通っていた庶民学校、そして騎士様の卵たちの通う訓練学校なんかもあります。もちろん専門学校も。

見ていると、二人は専門学校の門をくぐっていきました。

そしてしばらくするとロータスが一人で出てきました。ということは、男の子は……寄宿舎?

専門学校は全員寄宿舎に入るのが決まりです。

「専門学校の寄宿舎にいるのか。どうりで屋敷では見かけないはずだ」

「なるほど〜。って、それはおいといて! あの子はロータスの一体なんなんでしょうか?」

「いやそれ、僕もわからないし」

遠ざかるロータスの背を見ながら、二人で悶々としています。

どうしよう。すごいものを見てしまいましたよ!