軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

プチ別居

ダリアたちが淹れてくれたお茶でほっこりくつろいでいると、玄関で警備をしてくれている騎士様から「ダリアをお願いします」と取次がきました。

「ダリアに? なんでしょ?」

「さあ……? 少し失礼いたします」

ダリアに用事って、本館で何か大事な用事ができたのでしょうか。まあ重大な何かがあるなら報告もあるでしょうと、私たちはまたお茶を飲み、雑談を始めました。

「ただいま戻りました」

そう時間も経たないうちに、ダリアが戻ってきました。

「あら、早かったのね? 何か本館で問題が起こったとか?」

だとしたら家出してる場合じゃないですからね。

私がダリアに呼び出しの内容を聞こうとしたのですが、

「なんでもございませんわ。奥様がご心配になるようなことではございません」

真顔で拒否されました。あら、取りつく島もない。

「え、そう?」

「はい。なんでもございません」

やけにきっぱりというダリアです。

しかも『これ以上つっこむな』という雰囲気がビシバシ出てますしね。ダリアがなんでもないっていうんです、はい、もう忘れます。

ダリアのお茶が温くなってしまったのでもう一杯熱いお茶を淹れようかとなったのですが、今度はミモザに取次がきました。

リビングを出て行くミモザを見送っていると、いきなりピンとひらめいた私。

ダリアの次は、ミモザですよ。

はは〜ん。そうなんだよ、きっと!

「これは、さっきのダリアへのお客はカルタムね。そして今のはベリスよきっと」

こっそりステラリアに耳打ちすれば、

「まあ、おそらく」

苦笑いが返ってきました。

ミモザもすぐに戻ってきました。こちらもあまり機嫌よさそうじゃないですねぇ。こういうときはそっとしておきましょう。

さ、次こそ熱いお茶!

「次は違う種類のお茶が飲みたいなぁ」

私がダリアにリクエストすれば、

「じゃあ、次はミルクティーにしましょうか。もうそろそろおやすみの時間でございますし」

「わぁ! お願いするわ」

次のお茶はミルクティーになりました。

カップにミルクが注がれ、その後からお茶が注がれます。ふわっと広がるお茶のいい香りにうっとりしていると、また護衛騎士様が取次をお願いしてきました。入り口近くにいた侍女さんが対応に出て行きました。でももう呼び出される人いなくね?

私が首をかしげていると、対応に出ていた侍女さんが戻ってくるなり、

「あの〜奥様、おくつろぎのところ申し訳ございませんが、旦那様が外に来られているようでございます」

おずおずと言いました。

はい? 旦那様? まさかの旦那様!

「旦那様? 今頃何しに来られたんでしょうか?」

また何かお小言を言いに来たとか?

「まあ、やはり仲直りしようと思われたのではございませんか?」

「ええ〜? さっきはとっても不機嫌だったじゃないですか。ケンカ別れしてからそんなに時間も経ってないから再燃とか嫌だしなぁ。もう今日は会いたくないです。それに今、せっかく美味しそうなミルクティーが入ったばっかりだし早く飲みたいし。しばらくみんなと別棟でワイワイしてみたいし」

「まあ、わかりますが」

「旦那様には『しばらく別棟で過ごします』って言っておいてくれる?」

「かしこまりました」

そう言って侍女さんは、私の伝言を旦那様に届けに行ってくれました。

それからは女ばかりの楽しいおしゃべりタイムです。

今日ばかりはダリアも厳しいことを言わず好きにさせてくれていて、お茶を飲みながら静かに私たちの話を聞いています。

「ところで奥様、明日の朝ごはんは何を調達してきましょう?」

「えーと、そうね。パンと、卵と、薫製肉かな〜? あ、サラダ用の野菜も。それから、果物も少し欲しいですね」

「了解です!」

「ね、ダリア。明日は私が作ってもいい?」

「ええ、よろしゅうございますよ」

「奥様の手料理かぁ! 私も食べたいです!」

「私も」

「私も〜!」

「じゃあ、張り切ってみんなの分作るわよ〜!」

まるで学生時代を思い出しますね! あの頃はよく女の子だけでワイワイおしゃべりしましたねぇ。ああもう、別棟暮らし楽しい! もう本館帰らなくてもいいかな?

楽しいティータイムも終わり、本館に帰る侍女さんたちが出て行きました。

別棟に残るのは私とダリアとステラリア、そしてミモザだけです。

別棟には寝室が一つしかありません。わたし的には妊婦さんであるミモザにベッドを譲る気だったのですがミモザが頑として『ダメです!』と譲らなかったので、それならいいものあるじゃん、と、物置にしまってあった簡易ベッドを持ち出してきました。ええ、懐かしのあのアイテムです! 初めて旦那様と一緒のお部屋になった時に担ぎ出してきたアレですよ。とまあ、どうでもいい回顧はほどほどに。

簡易ベッドをリビングに置き、ミモザの寝床確保。ダリアとステラリアはそれぞれソファーで寝ることにしました。う〜ん、家出の時のことを考えて、もう一部屋余分に作っておいたほうがよかったかもですね。

翌朝、本館からこちらにきた侍女さんたちが 出勤がてら(・・・・・) 厨房からもらってきてくれた朝食の材料を、ダイニングテーブルの上にずらっと並べてくれていました。

「わぁ〜、ありがとう!」

「カルタムが、『奥様が料理を食べてくれないなんて、作りがいがないです』って言ってしょぼくれてましたよ」

「よ〜し、それはスルーの方向で。さ、頑張りますか」

侍女さんの言葉に耳を塞いで、私は材料を持ってキッチンに向かいました。

キッチンをのぞいてみれば、小さいながらも機能的で使いやすそうです。実家のキッチンはちょっと使い勝手の悪い、古いタイプでしたからねぇ。テンション上がるわぁ!

ということで、ワクワクしながら調理開始です☆

サラダを作る班、果物を切る班、そして出来上がったものをパンとともにお皿に盛り付ける班と、みんなで手分けして朝食作りです。薫製肉と卵を焼くのは私がやります。

学校で習った、料理の実習のようで楽しいです。(実家では毎日のように料理してましたけどね☆)ヤバイ、楽しい。ずっとこうやって暮らしてたい……!

「奥様? どうしたんですかニヤニヤして」

「楽しすぎて! ずっとみんなで別棟でくらいしたいなーって!!」

「「「「「あ〜……くすくす」」」」」

私が一人でニヤついていたら、侍女さんにつっこまれました。でもそのあとのビミョーな笑いは何ですかね?

そんな楽しい別棟暮らしも三日目に入りました。

そろそろ本館においてきた旦那様方が気になってきました。それと同じく、ダリアとミモザも普段とそう変わりない感じでいますが、大丈夫なのかな、とか。まだケンカしてるのかな、仲直りしないのかな? ええ、自分のことは棚にあげますけど何か?

そういえば二人とも、さっきから姿を見ないけど。

「ダリアたちはまだケンカしてるの?」

私がこっそりとステラリアに聞いたら、

「もう大丈夫なようですよ。ミモザの方も大丈夫なんじゃないでしょうか」

そんな答えが返ってきました。

「え、うそ!? いつの間に!?」

「いつでございましょうねぇ? うふふ」

そう言って意味深に微笑むステラリアです。

ほんともう、いつの間に仲直りしたんですか? あ、今か? 今なのか!?

自分の答えにハッとしてステラリアを見ると、にっこり笑って頷いています。おおう、考え読まれた!

「そ、そっかぁ。でもよかったわ、仲直りして。ちょっと気になってきてたの」

こうなると、ケンカしてるのは私と旦那様だけですよね。……ああ、ステラリアの次のセリフが想像できる。

「奥様も、早く仲直りできるといいですね」

またまたステラリアがにっこり笑って言いました。やっぱりね。

バツの悪くなった私はプイッとそっぽを向きます。

「わ、私はいいの! それより例の業者の娘さんの話はどうなったの? あれが解決しないことには仲直りも難しいんじゃ……」

「それも無事解決しましたわ! 最後は旦那様がビシッと決めてくださいました」

「旦那様が?」

「ええ。業者の処分は『出入り禁止』ということなんですけれど、それを旦那様が即決なさったんです」

ロータスでなく旦那様が! 私は驚きに目を見張りました。旦那様がおうちの仕事してる!

「そ、そうだったの。でもあの業者さん自体は悪い人じゃなかったんだけどねぇ……」

ちょっと口は軽かったけど、人のいいおじさんでしたよ。そっか、出入り禁止ですか。

でもフィサリス家を出入り禁止になったことが世間様にバレたら、業者さん、仕事しにくくなるんじゃないですか? 理由も理由ですし。

私が業者さんの行く末を考えてちょっとかわいそうに思っていると、

「まあ、この後のことは私たちにお任せくださいませ。奥様が気にやむことはございませんわ」

またステラリアに考えを読まれました。

ダリアもミモザも仲直りしたんだったら、そろそろ本館の部屋に帰してあげないといけませんよね。

こうなったら私一人で別棟に引きこもろうか。掃除洗濯家事炊事、侍女さんいなくても全部一人でできますしね!

なんて本気で考えていたのですが、

「旦那様、この四日ほど寝ずに別棟の警備をしていたそうでございますよ」

って、ステラリアが言ってきました。

はあ? 寝ずに四日も!? そんなの体壊しますよ旦那様、大丈夫ですか!?

それを聞いてびっくりした私、

「旦那様の体調は大丈夫なの? 寝ずになんて、仕事に障りはなかったのかしら?」

ステラリアにガシッと取り付き、矢継ぎ早に質問しました。

「お加減は変わりありませんが、奥様が怒っていらっしゃるのをとても気にされていて、落ち込まれています」

「それは〜、旦那様も悪いというか……」

「はい、それはとても反省していらっしゃるようでございますよ?」

「だからって」

「今日はお休みだそうで、本館にいらっしゃいますが……」

「ちょっと行ってきます!!」

「は〜い、行ってらっしゃいませ〜」

ものすごくいい笑顔のステラリアに見送られ、私は本館へと急ぎました。