作品タイトル不明
犯人探しが終わりました4
結論から言うと、じゃがいもは半分程度は残っていた。灰による土壌改良のおかげでたくましく育ったじゃがいもの根が、ルビィの力に勝ったのだろう。
潰されたり切断されたりしたじゃがいもは、いつもの通り家畜の餌として使われることになった。そもそもじゃがいもは家畜用の食糧で、収穫後に細かく潰して天日で乾燥させるのが常だ。ちょうどロイの声かけで柵を直すために集まってくれた領民たちが家畜用じゃがいもの加工も手伝ってくれて、作業は夕方には完了した。
「アンジェリカの灰すっとぼけ大作戦」の結果もしっかり回収した。それぞれの畝で灰の分量を変更していたのだが、残されたじゃがいもから推察するに、真ん中の畝の育ちが一番良かった模様だ。まだまだ研究の余地はあるが、ひとまず次の春には今回の結果を踏まえて灰を撒いてみたいと思う。
思わぬ展開となった秋植えチャレンジだが、パーフェクトとまではいかなくとも求めていた結果は得ることができた。ただ、残った後味の悪さが解消されるにはまだ時間がかかりそうだ。
そして後片付けを含む作業が一段落ついた頃、ルビィの処遇についての話し合いが行われることになった。
ルビィの取り調べは父とロイが担当した。被害者は私だが、何せ6歳児なので司法という大人の世界にはさすがに介入できない。
事情聴取が長引いているためか、6時の夕食の席に父の姿はなかった。私は継母と2人きりの夕食を済ませ、湯あみも終えた。ルビィの犯行が明るみに出て以降、継母は言葉少なだ。
無理もない。長年、姉のように慕って信頼してきた者が、あんな事件を起こしたのだ。彼女にどういう処罰が下されるかは父次第だが、継母は気が気ではないだろう。
(きっと私とルビィの間で揺れている——)
甲斐甲斐しく私の世話をしながらも、その横顔はいつもより生気がない。
(後悔しているのかな……)
私がここに来ることがなければ、今回の事件は起きなかった。私を引き取ることを父が独断で行ったとは思えないから、きっと継母も了承したはずだ。だがここにきてその決断を後悔しているのかもしれなかった。継母と私との関係は決して悪くはなかったと思うが、所詮ルビィとの関係の何十分かの一程度のつきあいだ。
沈んだ態度の継母に対してかける言葉が見つからない。話しかけて、もし私を引き取ったことを後悔しているという言葉が返ってきたら、さすがのアラサーメンタルでも少し耐え難い。
そして気づいた。私はこの人のことが好きなのだ、と。
継母は私のことを普通の6歳児だと信じている。6歳の女の子との生活を楽しんでいる継母を見るたび、アンジェリカの中身が違う人間なのだということを、どこか心苦しく感じていた。そんな気持ちをごまかしたくて、この人との関係はアラサーの私との間に築かれたものではなく、本物のアンジェリカとの間にできているものなのだと思い込もうとしていた。
継母が心から可愛がっているのは6歳のアンジェリカ。前世の私ではない。
彼女が私の外見だけを慕っていたとしても、中身の私はこの人が好きだし、この人を悲しませたくはない。いつでも幸せに笑っていてほしいと思う。
同じことが父に対しても言えた。父にとっては血を分けた娘の中身が、別人と入れ替わっている状態だ。彼の本当の娘は私ではなくアンジェリカ。だが本物のアンジェリカはもう、私の一部になってしまっている。あぁ、なんだかややこしい……。
そんなことをつらつら考えていると、ようやく父とロイが戻ってきた。
「ルビィの話を聞いてきたよ。ひとまず逃亡の恐れはないとみて、今夜も使用人棟の部屋で過ごしてもらう。夜間はロイもマリサも近くで眠っているから、何かあれば気付けるだろう」
そう言いながら、父は時計を確認した。
「もう7時を回っているのか。続きは明日、と言いたいところだが、おまえたちも気になって眠れないだろう。ルビィから聞いた話を伝えよう」
そして父は応接室に移動し、事情聴取の内容を私たちに話してくれた。