軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

滞在を満喫します

リカルド様との商談を実現させるために、詰めなければならないことがたくさんあった。

マリウムはサボテンに関する知識をもっと得たいとマリアさんの元に通うことになり、彼女の助けの元、トゥキルスの美容に関する情報収集を始めた。規格外で時折暴走するのが玉に瑕だが、化粧品技術者としての技量や情熱はピカイチだ。リカルド様の姉であるマリアさんは一歩引いたたおやかな女性に見えがちだが、接しているうちに締めるところは締める堅実タイプだとわかった。弟のリカルド様がある意味破天荒で深く考えない性質だから、彼とマリウムの組み合わせはまあまあ恐ろしいのだが、マリアさんのような常識人になら彼を預けられると判断した私は、マリウムと別行動をとることにした。

リカルド様はリカルド様で、今回のチャレンジを実現すべく、各方面に働きかけを始めてくれた。私は……というとお留守番だ。正直ビジネスに関して、前世アラサーの私にはある程度の知識と経験がある。この世界でもじゃがいもの食用化からポテト料理店の運営までいろいろこなしてきた自負もある。ただし9歳の子どもの意見がまかり通ったのは、自分がセレスティア王国の貴族だったからという理由と、周囲の大人たちの理解が良かったからだとわかっている。

右も左もわからないトゥキルスという国では、いくら王族の一員であるリカルド様が敬意を払ってくれているとはいえ、ただの子どもだ。自分がビジネスの交渉の場にしゃしゃり出るのは無茶な話だと弁えているから、この国の中のことはリカルド様に任せることにした。この商談が波に乗り、細かな契約ごとが必要になったら父の力を借りることにしようと思う。

というわけで身体の空いた私。2日ほどかけてもう一度王都を見学したり、トゥキルスに出店しているポテト料理の店の視察を行ったりした。トゥキルスにしかない香辛料などを入手し、王都の事務所で働いているケイティへのお土産にすることも忘れない。かつて母親のサリーと一緒に、アッシュバーン領でポテト料理の普及に努めた娘のケイティは、今では部下も数名従えるキャリアウーマンに成長した。今はチェーン店のメニュー開発を手がけるほか、王国内の店舗を管理する仕事を担ってくれている。170センチ以上あるスレンダーな長身を女性用のスーツに包んできびきび働く彼女からは、以前のような内気な性格は見受けられない。かといってでしゃばりすぎるわけでもなく、颯爽と振る舞う姿は実に輝いて見えた。私や父が王都を空けても安心していられるのは彼女の管理能力のおかげだ。つくづくいい人材をスカウトできたなと思う。ダスティン領で執事のロイと再婚し、1歳の娘の育児に追われるメイドのサリーも鼻高々だろう。

ちなみに、香辛料やトゥキルス独特の料理を参考にするのにギルフォードが大変役に立った。食欲脳筋魔神は健在で、慣れない香辛料ごときで彼の胃が潰れるはずもない。「うまい」か「普通」かの一言ですべての料理を判別する(「まずい」という言葉は彼の辞書にはない)彼の、「うまい」だけを拾って香辛料を買い付け、レシピを入手した。もう売れる匂いしかしない。

そんなふうに仕事をこなしつつ、あっという間に過ぎたトゥキルスの滞在。あさってにはセレスティアへ帰るという日、かねてから願い出ていた許可が私たちの元にもたらされた。

それは私ではなく、伯爵翁様が強く希望していたこと——トゥキルス国軍の見学の許可だった。