軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追い詰める

「それから、もう一つ。王宮の腐敗した官吏とモロー伯爵と結託して、オリバー商会を通じてうちの古参の使用人たちを、怪しい者たちに入れ替えましたね」

ローザはさらに追及する。

「ちがう。私は」

「見苦しいぞ。アレックス、私たちはお前とエレンの密会を見ている」

そこへイーサンが現れた。

アレックスが彼を見てぎょっとする。イーサンは腰かけず四阿の支柱に背を預けた。

前もってローザとイーサンが打ち合わせをしていた。

いくら無謀なローザでも、王族に一人立ち向かおうとは思わない。

「だから、なんだというのです? 別に本気ではありませんでした。私はただ彼女に同情しただけです。よくあることでしょう?」

アレックスは開き直る。

「あなたは、私の実家の後ろ盾が欲しかっただけですよね。だから、私と婚約し、立太した暁には私を捨てようとしていた」

「誤解だ。君を捨てるなんて考えたこともない。それにクロイツァー家を敵に回すなど、私はそんな愚か者ではない」

きっぱりと言い切る。

事情を知らないものが見れば、アレックスの堂々とした誠実な話しぶりは、まるで真実を語っているようだ。

「ところができるのですよね? 私の家の使用人たちを買収もしくは、脅迫なさっていましたね。王家への反逆罪と他国への内通罪をでっち上げ、家門ごと潰そうとなさっていたのでしょう?」

ここにきて、初めてアレックスがわなわなと怒りに震える。

「そんな大それたことを言っていいのか? いくらクロイツァー家の人間とはいえどただではすまないぞ。だいたい証拠はあるのか?」

アレックスはクワッと目を見開く。

今度は脅してきた。

「証拠ですか?」

そう言ってローザは余裕の笑みを浮かべる。

「うちにもぐりこんできた、殿下の手先である使用人を取り押さえてあります。それから、辞めていったうちの使用人の証言もあります。金をつかまされたり、弱みを握られたりと、ずいぶん卑劣な真似をなさいましたね」

父とフィルバートは、ローザが狙われている間も根気強く、突然辞めていった古参の使用人たちの追跡調査を続けていたのだ。

「どこにそのような証拠がある。それに所詮は平民の言うことだろう? 王族である私が言うことが正しいに決まっているではないか! ローザ・クロイツァー、不敬だぞ」

「アレックス、証拠もそろっているんだ」

激昂するアレックスとは反対にイーサンは落ち着いた口調だ。

「イーサン、私を窮地に陥れ、クロイツァー侯爵家と手を結ぶつもりなのか? やはり、王位を狙っているか? それで私が邪魔になったのだろう!」

旗色が悪いと見たのか、今度は矛先をイーサンに向ける。

「私は今の地位に満足している。自らの策で窮地に陥ったのはお前だ、アレックス。それに私が王位を狙っているという噂を流そうとして不発に終わったらしいではないか?」

イーサンがふっと笑みを浮かべると、アレックスは頬を紅潮させむきになる。

「バカな、私は何一つ加担していない」

「あなたはモロー家と私、ひいてはうちの家門を利用しました。ご自身の手は一切汚さず。それから、この髪飾りに見覚えがありませんか?」

ローザが箱に保管されていたエレンの髪飾りを見せる。

彼には、証拠品がこの髪飾りであるということは伏せられていた。

アレックスは、一瞬驚いたような顔をするが、すぐに態勢を立て直す。

「さあ、見覚えはないよ。それが何か?」

ローザは彼の卑劣さに怒りに震えた。

「この髪飾りについては、宝石商に確認を取ってあります。殿下がつくらせて、エレンにおくったものなのです」

「ローザ、いったいどういうつもりなのだ。宝石商は軽々しく顧客のことは口にしない。かりにそれを購入したのが私だとしても、誰に何を送ったかなどといちいち覚えてはいない」

あきれたように言う。

「殿下、これは特注品で大変高価な物です。それに犯罪の証拠です。だから宝石商も協力してくれたのです」

「え? 犯罪の証拠? どういうことだ」

アレックスが虚を突かれたような顔をする。

(なかなか芝居が上手いわね)

ローザは懇切丁寧にエレンの事件をアレックスに説明した。髪飾りが重要な証拠であることも。

「可憐に見えてなんて、なんて恐ろしい女性なんだ」

アレックスは衝撃を受けたような表情を浮かべた。

「少なくともエレンは最後まであなたを愛しているといっていました」

「冗談じゃない。あの女が愛しているのは自分自身だ。気持ち悪い」

アレックスが吐き捨てる。

確かにそうかもしれない。

ある意味彼らは似た者同士だったのだろう。

「それから、殿下。ふたつほど疑問があるのですが?」

ローザがアレックスの目の前で優雅に指を二本立てる。

「今度はなんだ」

アレックスが一瞬びくりとして、身構えるのが分かった。

「私が馬に蹴られた件です」

「あれは君の自作自演だろう?」

挑発に乗ることなく、ローザは冷静だった。

「違います。殿下は出発前、私に何をなさりました」

ローザは馬に蹴られたショックで忘れていたが、つい最近思い出したのだ。

みるとアレックスは顔色をなくしている。