軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ

百鬼怪道から帰還した、翌日。

「ああ。やっぱりあのボス部屋、普通に入れたんだな」

いつもの酒場にて、助けに来るまでの経緯を三人から聞いていた俺は、そんな相づちを打っていた。

「そりゃそうでしょ。トラップからしか入れないボス部屋なんてあり得ないし」

テーブルの正面に座るテトが、当然のように言う。

「普通に階段から三十層に降りられるんだよ。そこからは竹林の迷路みたいになってて、抜けた先に大きな家と、目立つ転移床があるんだ。それに乗ると、あの変な部屋がいっぱいあるボス部屋に転移できる」

「そういう構造になっていたんだな」

本来の攻略ルートがどんなものだったのかはずっと気になっていたから、こうして聞けてよかった。

できれば、自分の目でも見てみたかったが。

「それにしても、俺たちが三十層にいるだなんてよくわかったな。いきなり消えて、手がかりも何もなかっただろうに」

「何言ってるんですか。アルヴィンさんが教えてくれたんじゃないですか」

「え?」

「ほら、あの状態異常でのメッセージですよ!」

「……あーっ! あれか!」

ココルの言葉に、俺はようやく思い出す。

「あんなのでよくわかったな……事前に打ち合わせもしていなかったのに」

「へへ、当然です!」

ココルが胸を張って言う。

「前に組んだ大規模パーティーで、リーダーの人がメンバーに同じようなことを示し合わせてたんですよ。遭難対策だって言って」

「へぇ。俺は村のじいさんに教わったんだが、やっぱり似たようなことを考える奴はいるんだな。その時もまったく同じやり方だったのか?」

「あ、いえ……その時は、自傷ダメージの回数で表してましたね……」

「ああ、そっちか」

じいさんのやり方でも、自傷ダメージは使っていた。

状態異常で階層数を伝えた後に、ダンジョンのマップを縦三、横三で九分割し、自傷ダメージの回数で大まかな座標を表すのだ。

俺たちの場合は、未マッピングの場所だからそこまで伝えられなかったが。

「普通の戦闘と区別さえつけば、そっちの方がわかりやすいんだよな。でもそれなら、毒や麻痺の回数が三十を表してるなんてよく気づいたな。かなりややこしかったと思うんだが」

「え、えーっとそれは……へへ、と、当然です!」

「ま、解読したのは私だけどね」

うろたえるココルの向かいで、メリナが杯を傾けながらすました調子で言った。

「ココルに言われなきゃわからなかったのは確かだけど」

「ねえ、ボク結局あれ、よくわからなかったんだけどさー」

テトが両腕で頬杖を突きながら言う。

「なんで、麻痺四回と毒一回で三十なの?」

「二進法よ」

メリナが杯を置いて説明し始める。

「状態異常は全部で四種類、毒、麻痺、睡眠、気絶とあるでしょ? それぞれの回復アイテムは必ずこの通りの順番で並ぶから、まずは毒から順に、〇、一、二、三と番号を振る」

眉間に皺を寄せるテトに、メリナは構わず説明していく。

「このうち、メッセージに使える状態異常は毒と麻痺だけよ。睡眠は自然回復までに時間がかかるし、気絶は自分でなる方法がない。となると、〇と一だけですべての数字を表現する必要があるわ。そこで使えるのが二進法よ」

「その……二進法って、何?」

「簡単に言えば、二で繰り上がる記数法ね」

眉間の皺が深くなるテトだったが、メリナは構わず続ける。

「〇と一はそのままだけど、二は一〇、三は一一、四は一〇〇という風に表記するの。アルヴィンの状態異常は、麻痺、麻痺、麻痺、麻痺、毒だったでしょう? 麻痺は一、毒は〇だから、数字に直すと一一一一〇。これは十進法でいう三十よ。二十九層で消えた人間から送られてきたメッセージとしては、わかりやすすぎるくらいね」

「はぁ~。メリナさん、すごい難しいこと知ってるんですねぇ……」

「……神学校なら、数学はもっとずっと難しい内容をやるはずだけど?」

「いやぁ、不思議ですね~。何者かに記憶を奪われたんでしょうか……」

てへへと笑うココルを、メリナは呆れたように見つめている。

「俺も村のじいさんから教わっただけなんだが……まさか何もないところから解読されるとは思わなかったな。誰かが知っていればと思って、ダメ元で試しただけだったんだが」

「こういうの考えるのが好きなだけよ。それに……あのメッセージに気づけなくても、結局三十層には行っていたと思うわ」

「? どういうことだ?」

首を傾げる俺に、ココルとテトが説明してくれる。

「アルヴィンさんとユーリさんがいなくなったあと、私たち、二十九層でレベル上げをしていた他のパーティーに聞き込みをして回ったんです。どこかで姿を見ませんでしたかー? って。そしたら……」

「なんとあの竹筒転移トラップのこと、知ってるパーティーがけっこういたんだよね」

「……え? そうなのか?」

「はい。どうやら一人か二人でいると、低確率で竹筒が出てくるらしくて。引っかかっちゃった人が他にもいたみたいです」

「まだ情報屋にも出回ってない、新しい情報だったみたいだけどねー。竹林の迷路の抜け方とか、変な部屋に出てくる中ボスとかトラップのこともついでに教えてもらったよ。なんとタダで!」

「さすがに部屋にある転移床が、それぞれどこに繋がっているかまでは調べられなかったですけどね。でも、皆さん親切で助かりました……」

「高レベルパーティーは余裕あるんだねー」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。もしかして……」

のどかに話す二人の説明を、俺は思わず遮ってしまう。

「あのトラップに引っかかって、帰ってきた奴がいるのか?」

「え? はい」

「本人から聞いたよね。焦ったー、って笑いながら言ってたよ」

「その時は全然笑い事じゃなかったでしょうけどね」

二人の答えに、俺は愕然として言う。

「あ……あのボス部屋、撤退不可じゃなかったのか!?」

俺の言葉に、二人は顔を見合わせた。

「あー、えっと、厳密には撤退不可みたいです。帰還アイテムが使えなくなるので。でも……」

「入り口の転移床からは普通に出たり入ったりできたね」

「な……なんだそりゃ! いったいどうして……」

「転移床だったからじゃない?」

と、そこでメリナが口を挟んだ。

「ほら。撤退不可のボスって、扉が閉まってそこからの出入りができなくなるじゃない? でももし部屋の中に、転移床があったなら……」

「……まさか、それでなら出られるってことか?」

「実際そうだったわけだしね。入って来られるんだから、当然出られもするでしょ」

俺は思わず脱力してしまう。

確かに、追加で冒険者がやってくることは初めから期待していたが……俺たちが一方通行だったせいで、出られる可能性については完全に頭から抜け落ちていた。

ボス戦の前、俺とユーリのマッピング率は七割を超えていたはずだ。場合によっては……出口の転移床を見つけていても、おかしくなかったわけか。

「お、俺はてっきり、どこからも出られないものだと……」

「まあ、そう思うのも無理はないわ。他に例がないし……『記憶の地図』が使えなくなっていたのなら、私も同じ判断をしたと思う」

「わたしたちが話を聞いた人も、出られるとは思ってなかったみたいです。ヤケクソになって適当に転移を繰り返していたら、たまたま出口の転移床を見つけられたみたいで」

「あとは、攻略に来たパーティーに助けられた人もいたみたいだよ。でも、そこまで運が良くなくて……普通に死んじゃった人も、きっと何人かいただろーね」

「それは……そうだろうな」

軽く言うテトだったが、冗談ではなくその通りだろう。

あのボス部屋には中ボスもいた。階層に見合わないレベルの冒険者も多かった中で、トラップに引っかかった全員がうまく立ち回れたわけもない。

ただそれはそれとして、俺は気になっていたことを口にする。

「だが、それなら……別に、わざわざボスを倒す必要はなかったんじゃないか?」

「……」

「……」

「……」

「入ってくる転移床から出られたんだろう? そこまで案内してくれればよかったのに」

なぜか気まずい沈黙が流れる中、ココルが口を開く。

「そ、それがですね……わたしたちも、どうやったら戻れるのかわかんなくなっちゃいまして……」

「……はああ?」

「急いで攻略してたので、どこの転移床がどこに飛ぶのか、メモしてなくてですね……」

「ほ、ほら。そういうの今まで全部、アルヴィンがやってくれてたじゃない? だからその、私たちも頭から抜けてて……」

「あはははっ。みんなアルヴィンがやってると思って、誰もやってなかったんだよねー。アルヴィンいないのにさー」

テトは笑って言うが、全然笑い事じゃない。

俺は呆れて言う。

「あのなぁ……二次遭難してたかもしれなかったんじゃないか」

「さ、さすがにそれは大丈夫よ! 部屋もそこまで多くなかったから、適当に 彷徨(さまよ) っていてもそのうち出られたと思うわ!」

「まあ、きっと大変だったとは思いますけどね……」

「最悪なのはボスにも出口にもずっとたどり着けないことだったから、ボスは見つけ次第ぜったい倒そうって三人で話してたんだー。ダンジョンがクリアされれば、アルヴィンたちの危険もなくなるし」

「うーん、まあ、合理的と言えばそうかもしれないが……」

三人のレベルや、職業のバランスを考えれば別に無謀でもない。

時間経過で中ボスが復活でもしたら面倒だったろうから、ある意味一番手っ取り早い方法ではあった。

「ま、まあいいじゃないですか! みんなちゃんと無事に帰って来られたんですし!」

「竹筒の主も見られたし、ボスドロップも手に入ったしねー」

「でもその代わり……一部の冒険者からは、恨まれるかもしれないけどね」

メリナが苦笑して言う。

「せっかくのレベル上げの場を、消しちゃったから」

ボスが倒されれば、ダンジョンは消滅する。

モンスターやストレージに入れていないアイテムなどはすべて消失し、一時間も経てば、中にいる冒険者たちは全員外に転移させられてしまう。

後には、入り口の痕跡すらも残らない。

冒険者の中には、儲かるダンジョンはクリアするべきでないという者もいる。

その意見も、わからなくはない。

だが……俺は溜息をつきながら言う。

「そんなことを言われてもな。ダンジョンはいつでも早い者勝ちだ」

お互いそこに文句は言わないというのが、冒険者の文化だった。

こんな生活をしていてまで、何かに縛られてはたまらない。

テトも、俺に同調するように言う。

「そーそー! 文句言う奴らなんてほっとけばいいよ!」

「あのままだと、何も知らずにトラップに引っかかる人が増えてたかもしれませんしね」

「そうね……。人助けをしたと思えば、いいかしら。でも……」

メリナは、また苦笑して言った。

「私たちの噂、これでまた増えるんでしょうね」

****

それからさらに、数日が経った。

「あ、アルヴィンせんぱい! いらっしゃいッス!」

例の武器屋の扉を開けると、緑髪の少女がカウンターの奥で顔を上げた。

俺はユーリに、軽く手を上げて挨拶する。

「よ。今日はユーリだけか?」

「はい。店長に用事だったッスか? 申し訳ないんスけど、また二日酔いで寝込んでて……」

「仕方ない。用事はまた今度にするよ」

俺は苦笑を返す。

「そういえばユーリ。新しいパーティーはもう決まったのか?」

「いやぁ、それがまだなんスよねー」

「そうか、それなら……」

俺は、少しだけ真剣な口調で言う。

「やっぱりしばらくの間だけでも、俺たちとパーティーを組まないか?」

百鬼怪道から帰還してすぐに、俺はユーリを『暁』に勧誘していた。

なんとなく、五人でもうまくやっていけると思ったこともそうだが……四十層のボスドロップという強力すぎる武器を渡してしまった責任を、少し感じていたのだ。

ユーリが新しく加入したパーティーが、あまりに簡単にモンスターを倒せるせいで、身の丈に合わない階層へ潜り始めないとも限らない。

だから、せめてレベルが30を超えるくらいまでは、面倒を見てやらないとと思っていたのだが……。

「いえ! 前にも言いましたけど、遠慮しとくッス! ウチは『暁』には入れません」

と、こんな具合で、きっぱりと断られてしまっていた。

俺は肩を落として言う。

「そうか……後衛に腕の立つ弓手がいると、楽な場面が増えて助かるんだが……」

「なーに言ってんスか。ウチ、ちゃんとわかってるッスよ」

ユーリが、冗談を聞いたような顔で言う。

「ボス戦でウチが活躍できたのは……みなさんが全部、ウチに合わせて動いてたからだってことくらい」

「……」

「ココルせんぱいのバフもそうですし、アルヴィンせんぱいやテトせんぱいの立ち回りも。メリナせんぱいだって、いつでもウチの助けに入れるよう見ててくれてた気がするッス」

口を閉じる俺に、ユーリは笑顔で言う。

「これ以上迷惑はかけられないッスよ! ウチはウチの目標のために、自分で強くなるッス!」

「……そうか」

俺はふと笑って、そう答えた。

まあ……ユーリなら、きっと大丈夫だろう。

「……そういえば、ボス部屋でも目標を決めたと言っていたが……結局どんな目標なんだ?」

「へへ、実はウチ……パーティーリーダーをやってみたいんスよ」

「え、リーダーをか?」

「はい。強い仲間を集めて、信頼できるリーダーになって、ダンジョンの最前線に挑戦できるパーティーを作る。それがウチの目標ッス!」

堂々とした主張するユーリに、俺は少し意外に思いながら言う。

「そ、そうか。それはまた……珍しいな。パーティーリーダーなんて、必要に駆られて仕方なくなるものだと思ってたが……」

結構大変なので、あまり積極的にやりたがる冒険者は少ない。

「どうしてなんだ? やっぱり、前のパーティーリーダーのせいで嫌な思いをしたからか?」

「そんな後ろ向きな理由じゃないッスよー。……こうなりたい、って人がいるからッス。その人がリーダーやってるんで!」

「へぇ……」

ニコニコするユーリに、俺は一応アドバイスしてみる。

「だったら、その人のパーティーに入るのが一番いいな。やっぱり近くで見ている方が勉強になる」

「ダメッスよ! ウチじゃまだまだレベルも経験も足りてないッスからね。ウチの勉強のために迷惑はかけられないッス!」

「はぁ、そうか。なかなか難しいな」

どこのパーティーかは知らないが、前線クラスならユーリでも断られてしまうかもしれない。

それならまあ、仕方ない。

それに……やってやるという気概さえあれば、意外となんとかなるものだ。

俺もほとんど独学でここまで来たのだから。

「は~、でも、先のことばかり語ってもいられないんスよねぇ」

と、ユーリが、カウンターの上に顎を乗せて脱力したように言う。

「そろそろまたダンジョンに潜らないとまずいッス……主に手持ちの問題で」

「そんなに金欠なのか? 百鬼怪道のドロップが結構な収入になったはずだろう」

「今のウチにとっては貴重なアイテムばっかりなんで、あんまり売りたくないッス」

「ああ、それは……気持ちはわかる」

「とはいえ、売らざるを得ないッスかねぇ……。ダンジョンへ行きたくても、さすがに弓手のソロは怖いですし。さっさとどこかのパーティーに入っちゃうのが、一番いいんスけど……」

悩ましげなユーリに、俺は訊ねる。

「そんなにいいパーティーが見つからないのか?」

「実際、そんなことはないと思うんスけど……みなさんと冒険したせいか、どうも高望みしちゃって」

「ああ……まあユーリ自身も、力がついたしな」

「それと、前にいたパーティーが全然合わなかったせいで、慎重になってるのかもしれないッス」

「うーん……」

俺は悩んだ末に、また少しアドバイスをしてみる。

「どうしても入りたいパーティーが見つからないのなら、同じくフリーの冒険者を探して、新しくパーティーを立ち上げるのもありかもな」

「え、パーティーを新しく作るッスか?」

「ああ。ギルドの掲示板を使えば意外と簡単だぞ。 回復職(ヒーラー) はなかなかいないから、四人以上のパーティーを組むとなると苦労するが……弓手なら 盾職(タンク) と二人パーティーを組むだけで、いけるダンジョンが結構出てくるからな」

「あー、雲海楼とか大氷窟ッスか。なるほど、それもありッスね……」

ユーリが真剣に考え始めた、その時。

「ごめんくださぁい……」

キィ、という音と共に、一人の客が扉から顔を見せた。

少し背が高いが、気弱そうな栗毛の少女。装備からするに、どうやら冒険者らしい。

あまり店番の邪魔をするのも悪い。そう思って、ユーリに別れの挨拶をしようとしたその時……、

「あっ!! ユーリちゃん!!」

客の少女が、ユーリの顔を見るなり目を見開き、でかい声で叫んだ。

対するユーリはというと……、

「あーっ!? なっ、何しに来たッスか! 今さら!!」

カウンターの向こうで立ち上がり、同じく叫んでいた。

知り合いなのか、と訊ねる間もなく、二人は言い合いを始める。

「よく顔を見せられたもんッスね!! お前に売る物なんてないッス!! さっさと出て行くッスよ!!」

「そ、そんなこと言わないで……。話を聞いてよ、ユーリちゃん……」

「今さらどんな話があるって言うんスか!」

「お、落ち着け、二人とも……」

俺は思わず口を挟んでしまう。

「何があったのかは知らないが、ここはひとまず……」

「何言ってんスか、アルヴィンせんぱい! せんぱいだって知ってるじゃないッスか、こいつがウチにしたこと!」

「え、いや、知らないが……そもそも初対面だし……」

聞いたユーリは、一瞬ぽかんとした後……客の少女を指さして言う。

「暗黒騎士ッス」

「え?」

「ウチを追い出したパーティーの暗黒騎士ッスよ、こいつ!」

「……えーっ!? この子がか!?」

あの時は漆黒の全身鎧を着ていて、しかも一言も喋っていなかったから全然気づかなかった。

まさかこんな女の子だったとは……。

思い出してみると、そういえば少し華奢だった気もする。

「あっ、あの、『暁』のアルヴィンさん、ですよね……?」

暗黒騎士の少女が、ずいと近寄ってくる。

「あ、ああ」

「ファンです、サインください……」

「こらーっ! せんぱいに馴れ馴れしく近寄るなッス! 結局お前は何しに来たんスか!」

「そ、そうだった……」

栗毛の少女が、慌ててユーリに向き直る。

「お願いユーリちゃん。パーティーに戻ってきて……」

「は、はあ? いきなり何を言い出すんスか」

「ユーリちゃんがいなくなってから、もうパーティーは滅茶苦茶なんだよ……」

暗黒騎士の少女が、泣きそうな顔で言う。

「トラップにはしょっちゅう引っかかるし、大きな群れにはうっかりタゲ取られるし……それだけならしょうがないけど、今まで倒せてたモンスターにも苦労するようになって……。もう全部グダグダなんだよ。薄々こうなるだろうなとは、思ってたけど……」

「……」

「今までリーダーが無茶をやってもなんとかなってきたのは、全部ユーリちゃんのおかげだったって、これでみんなもやっと気づいたと思う。あの時、わたしが止められてればよかったんだけど……喋るの苦手だから……」

「……」

「リーダーも、さすがに……たぶん、反省したんじゃないかな。ううん、もし反省してなくても……わたしが言って、絶対ユーリちゃんに謝らせるよ! だから……お願い。帰ってきて、ユーリちゃん……」

昔の仲間の懇願に、しかしユーリは仏頂面で答える。

「無理ッス」

「そ、そう言わないで……」

「無理って言ってるッス。だってウチ、もう斥候じゃないッスからね」

「え……」

暗黒騎士の少女が、目を丸くする。

「転職、したの? もしかして……弓手に?」

「そうッス」

「そっかぁ……ユーリちゃん、弓、すごく上手だったもんね。それなら……仕方ないかぁ」

少女が肩を落として言う。

「それじゃあ……わたしもあのパーティー、抜けよっかなぁ。このままいても、たぶんいいことない気がするし……」

「ふん……さっさと抜けるべきッス、あんなパーティー。お前は一番レベルが高かったんスから、どこか別の…………ん?」

その時、ユーリが何か思いついたような顔をした。

それから眉をひそめて、少女へと訊ねる。

「……ほんとに抜けるんスか?」

「う、うん。わたし、 盾職(タンク) だから……リーダーが無茶して一番苦労するの、わたしだし……」

「ふうん、そうッスか」

そして――――ユーリは、にっと笑って言った。

「じゃあ、ウチとパーティー組むッスよ!」

「ええっ、ユーリちゃんと……?」

「今、ちょうど 盾職(タンク) を探してたとこだったッス」

いい考えだと言わんばかりのユーリと、突然の提案に目を白黒させる少女。

二人を見ながら、俺は思わず笑ってしまう。

「ついさっきまで悩んでいたのに、もうパーティーができそうだな」

「アルヴィンせんぱいがアドバイスくれたおかげッスよ! ……で、どうなんスか?」

「ううん、ユーリちゃんとパーティーかぁ……」

暗黒騎士の少女は、迷うように言う。

「二人パーティーって初めてだけど……でも、おもしろそうかなぁ。 回復職(ヒーラー) の人とか、他の前衛も、ちゃんと探してくれる……?」

「冒険しながら探すッスよ。いずれは四人パーティーにしたいッス!」

「そっかぁ、それなら……入ってみよっかな。よろしくね、ユーリちゃん……」

「よーし、決まりッスね! じゃあパーティー名をどうするかッスけど……」

あっという間に結成されてしまった新パーティーに、俺は思わず笑みがこぼれた。

パーティーができるきっかけなんて、こんなものだ。

縁があって、冒険者同士が出会い、そして自然と仲間になる。

なんてことのないきっかけでできた仲間が――――時に、長い付き合いになることもある。

それは俺自身も、実感しているところだ。