軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【ドロップ率減少・特】①

「アルヴィン。悪いが、君にはパーティーを抜けてもらいたいんだ」

酒場の壁際に設えられた、二人がけの席にて。

真向かいに座る、パーティーリーダーである魔導士の男が言った台詞に、俺の酔いは一気に 醒(さ) めた。

「は……はぁ?」

「実はもう、君の代わりの剣士は見つけてある。明日から来なくていい」

「い、いや待てよ」

動揺を深呼吸で抑え、努めて冷静に話そうとする。

「なぜだ? 俺はこのパーティーに最も貢献していたはずだ。レベルは一番高いうえに、スキル数だって誰よりも多い。最大の戦力だったじゃないか」

「アルヴィン……」

「六層近辺でうだうだしていたお前らが、今や二十層にまで潜れるようになったのも、俺が深層で一人一人のパワーレベリングに付き合ってやったおかげだろう! なのになぜっ!」

「いい加減にしてくれっ!」

魔導士の男は突然叫んだ。

そして、大きく溜息をつく。

「アルヴィン……君だって察しがついているはずだろう」

「っ……」

「わからないか? なら自分のステータスを開いて見ろ。さあ、開け。ほら!」

俺は表情を歪めながら、左手の指を振った。

宙空に現れた半透明のステータス画面を、魔導士の男が指さす。

「スキル欄を見てみろ。何がある? 君が生まれ持った数々の強力なスキルの、その一番下にはなんて書いてあるんだ」

リーダーに言われずとも、俺の視線は自然とそこに飛んでいた。

七つものスキルが並ぶリスト。

【剣術】、【筋力上昇・大】、【敏捷性上昇・中】など……そのほとんどが、俺の 職種(ジョブ) である剣士にとっては有用なものばかりだ。

だが。

リストの一番下。

それら恵まれた才能の代償とも言うべき呪いのスキルが、そこに記されていた。

【ドロップ率減少・特】。

「君がどれだけモンスターを倒しても、アイテムがほとんどドロップしない」

魔導士の男が眼鏡を直しながら、うんざりしたように言う。

「ダンジョンの深い階層に潜っても、うまみが少ないんだ。赤字になることすらある」

「お、俺がいなければ、お前らはそもそも深層に潜ることすらできなかっただろうが! それに赤字になったのは、パーティーの平均レベルに合わない階層にまで潜って、俺の負担が増していた証拠だ。俺は止めたのにお前が聞き入れなかったからっ……」

「そうだね。だからもう、僕らは君に頼らず、自分たちのレベルに合わせた冒険をするよ。そう、十五層あたりでね」

「……は、十五層だと?」

俺は思わず失笑を漏らす。

「ついこの間まで浅層冒険者だったお前らが? 笑わせんな」

「なぜだい?」

「 冒険者(プレイヤー) スキルがまるで足りてない。俺抜きでそんな層に潜っていたら、そのうち痛い目見るぞ」

「レベル帯としては適正なはずだけど」

「レベル帯だけはな。で? 自分たちが十分強くなったら、レベル上げ担当でマイナススキル持ちの俺はお払い箱ということか?」

「……パーティーメンバーの総意だ。受け入れてくれ」

「そうかよ」

俺は脱力し、背もたれにぐったりともたれかかる。

もう、考えるのも嫌だった。

魔導士の男は、テーブルに金貨を一枚置くと席を立つ。

「ここの支払いだ。釣りは取っておいてくれ。僕からの、せめてもの餞別代わりだ」

「……手切れ金の間違いだろ」

俺の言葉に、背を向けかけていた魔導士の男が振り返る。

「……君のことは、正直好きになれなかったな。腐っていて恩着せがましい。境遇に同情はするけれど、その性格は直した方がいいよ。もっとも、直したところで次のパーティーを見つけるのは難しいと思うけどね」

俺は反射的に金貨を掴み、去って行く男の背に投げつけようとして……やめた。

舌打ちと共にぬるい酒をあおる。

……結局、またこうなるのか。

次のパーティーを見つけるのが難しいだ? そんなの俺が一番よくわかってる。

【ドロップ率減少・特】などという、特大のマイナススキルを抱えながら、これまで冒険者をやってきたんだから。