軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

愛の告白は時と場所を選びましょう

…………うま……。

あまりのショックで意識が異次元に飛びそうになる。

「え? でもだって、髪色が金色って……?」

「ああ、立派な金色の 鬣(たてがみ) だ。月毛のサラブレッドは珍しいから貴重なのだ」

…………

……やらかしたーーー!!

恥ずか死ぬ! 穴を掘ってでも入りたい!

そうだ、それを私の墓穴にしよう!!!!

膝から崩れ落ちてプルプルしている私の横で、旦那様がオロオロしている気配がする。

「アナ、ま、まさか……自分の事だと思ったのか?」

旦那様の問いかけにゆっくりと頷く。

「何故そんな誤解を!?」

それな。

いや本当に、今から思えばあり得ない勘違いをしたのだと理解は出来る。

理解は出来るのだが、最近本物の夫婦がどうとか、跡継ぎの事やら子供の事やらばかり考えていたので、聞こえてきた話があまりにタイムリー過ぎたのだ。

しかも、月毛って! 何の偶然だよ、紛らわし過ぎる!!

「そんな事を言う訳がないだろう!? 私は、アナを失う位なら跡継ぎなどいらないぞ!」

私の手を握って必死に訴える旦那様を見ていると、この人を疑った自分がほとほと馬鹿だったと感じる。

「アナは私が信じられなかったか?」

「信じられなかったというか、そもそも本物の夫婦……というのが、私にはよく分からなかったのです」

「うん? お互い想い合う、真実の愛で結ばれた夫婦の事だろう?」

見解の相違! そしてまさかの真実の愛!!

「だ、旦那様……」

「うん?」

「真実の愛は、平民の間では胡散臭い愛の代名詞です」

「そうなのか!?」

「あと、『本物の夫婦になりたい』だけでは、偽装結婚をやめて跡継ぎを作りたいのかな? 位にしか私には通じてませんでした」

「そうなのか!??」

これが育ってきた環境の違いと言うものなのか、はたまた私と旦那様が底抜けにスットコドッコイなのか……。

「そうか、すまない。しっかり態度で表していたつもりだったのだが、愛情表現がまだ足りなかったのだな! これからはもっと……」

「いえいえいえいえ!! 態度は十分甘かったです! はっきり好きとか何とか言われた事が無かったので、なんか私が考え過ぎて迷走したというか!」

「…………!??」

私の発言を聞いて、何やらフリーズしてしまった旦那様は、しばらくするとまたガバッと私の手を握りなおして身を乗り出して来る。

近い近い近い近い!!

「すまない! 確かに口に出して無かったかもしれん! いつも心の中では、好きだ好きだと思っていたから、当然伝えた物だと思っていた!!」

顔がブワッと赤くなったのが自分でも分かる。

ちょ、好きだ好きだって? いつも!?

「アナ! 好きだ、愛してる! 私を見捨てないでくれ!!」

ひいぃぃぃー、自ら蒔いた種とはいえとんでもない事になった!!

「旦那様、声が大きいです! こんな所で大騒ぎしては……あ」

人気が無かったはずの広場には、いつの間にか騒ぎを聞きつけた領民達が集まっていた。

みんなバッチリしっかり私と旦那様を目撃してしまっている。

『お、おい! あれ伯爵様じゃないか!?』

『一緒にいるのは誰だ?』

『アナスタシア奥様じゃないぞ!?』

『やだ、不倫!』

『え、あれアナちゃん?』

ざわざわざわ……

おう……事態は最悪だ。

どうしよう。このままでは旦那様の好感度が大変な事になってしまう。

考えろ、考えろ。私の蒔いた種だ。

何か、起死回生の妙案を思い付かねば……!

『しょうがないなー! もうこうなったらこれっきゃないでしょ!』

そう言ってギュインッと凄いスピードで飛んできたフォスが、私にニッと笑って見せるとペンダントを持ち上げた。

『そーれ!』

すると、私が止める間もなくクンツが魔石を蹴っ飛ばし、飛んでいった魔石をカイヤがキャッチする。

魔石が外れた事で金色に戻った私の髪が、ブワッと風に舞った。

途端に騒めきが一層大きくなる。

『金色の女神だ!!』

『え? 何、どうなってるの?』

『アナスタシア奥様だー!』

もはや収拾が付かなくなった事態に私が困惑していると、旦那様がスッと立ち上がって領民達の方へ向き直った。

「皆! 騒がせてすまない!!」

それまで騒いでいた領民達が、ピタッと声を止める。

「夫婦喧嘩だ!! 許せ!!」

一瞬の静寂の後。

領民達からどっと笑いが起こる。

広場は割れんばかりの歓声や拍手、冷やかしや絶叫で溢れ、その日街は、伯爵領史に残る程の盛り上がりをみせたのだった。