軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旦那様の本音?

「……なんか、街に活気がある??」

約半月ぶりの領地は、何故か開いているお店も増えて心なしか活気が出て来た様に見える。

私達の乗っている魔導馬車は伯爵家の家紋入りで、当然領民にも領主の馬車だと認知されているので、いつの間にやら沿道に集まった人達が歓声をあげて迎え入れてくれた。

領地の精霊達も相変わらず絶好調の様で、馬車の周りが山盛りの精霊達にも囲まれる。

『アナー!』

『アナおかえりー』

「これは……凄いな」

「ほんとですね!」

人間にも精霊にもこんなに歓迎して貰えるなんて、私達はつくづく幸せだ。

旦那様と顔を見合わせて思わず笑う。

「ただいまーーー!」

領地の伯爵邸に到着をすると、マーカスを筆頭に領地の使用人達が出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ、ユージーン様、奥様。長旅お疲れ様でございました」

「ああ、ただ今帰った」

マーカスは相変わらずニコニコしていて、本当は後ろに控えるダリアに駆け寄りたい位だろうに、そんな気持ちはおくびにも出さない。

ダリアもダリアで私の荷物を持って、スッと姿勢良く立っている。うーん、2人ともプロだ。

これは、私も本気で見習わなくては……

ダリアも前に領地に来た時にはマーカスをガン見していたので、ある意味今の方が心にゆとりがあるのだろうか。

やはりお互いの気持ちを確かめ合うというのは大切だ。

私が心の中でウンウン頷きながら、マーカスの先導で邸の中へ入っていると、マリーがスススッと私の後ろにやって来て耳打ちする。

「奥様、奥様。馬車の雑談の中で、『ダリア&マーカス《馴れ初め編》と《後日談》』仕入れときましたよ!」

マジか! 聞きたい!

これは部屋へ入ったら早速ティータイムだ。

「……奥様、それ本気で言ってます?」

久し振りにマリーとダリアと領地の自室でお喋りタイムを楽しんでいたのだが、何故だか段々と話の矛先が私に向いて来た。

マリーが『最近の伯爵様と奥様は仲睦まじくて憧れます!』と言ってくれるので、私としては旦那様が私を好きなのか実は良く分からない、とカミングアウトしたらこうなったのだ。

「で、でも旦那様から好きだとかそういう事は言われた事ないし……」

「「言われてないんですか!??」」

「みんな知っての通り、私達は政略結婚だったし……。最近は旦那様も私の事を認めて下さったのかな、と嬉しくは思っているのだけど」

「いや、どう見てもデレデレじゃないですかね……」

「失礼ながら、ジレジレモダモダやってんな、とは思っていたのだけど、いい大人がまさかここまでとは……」

マリーとダリアが何やらヒソヒソ話している。

2人の言いたい事も分かる。最近の旦那様が私にとても甘いという自覚もあるし、大切にして貰ってるのも分かってる。

でも、みんなは知らないからだよ!

私アレやられてるんだぜ!

もはや大衆娯楽小説でもあまりお見かけしない

『君を愛するつもりは無い、勘違いするなよ!』

て奴。最初に『勘違いするなよ』と言われたからには用心深くもなるってもんだ。

相手はお貴族様な訳だし。純粋培養だけど。そんな器用な人には見えないけど。

マリーとダリアがそれぞれの仕事に戻った後で、私も気合を入れて立ち上がる。

うん、旦那様のところへ行こう。自分の気持ちをちゃんと言おう。

邸の中をウロウロと歩きまわって旦那様を探すけど、こういう時に限って姿が見つからない。

もしかして外かな? と思って玄関から外に出ると、精霊達がふよふよ沢山飛んでいた。

「ねぇ、誰か旦那様を見なかった?」

『ユージーンいたよー、あっち』

『きゅうしゃ!』

きゅうしゃ? 厩舎か! ふふ、可愛い。

最近うちの精霊トリオはベラベラ喋って容赦なくツッコんで来るので、領地のふわふわ精霊が何だか可愛く感じる。

あ、勿論うちの子達も可愛いですよー!

精霊達に癒されながら、足取りも軽く厩舎へ向かう。

角を曲がるとすぐに旦那様の姿が見えたけど、私の知らない人と何か真剣に話をしていた。

何となく邪魔をしてはいけない雰囲気で、声はかけずに角で待っていると、微かに声が聞こえて来る。

「……ああ、そうだ。子が出来れば……分からんが、……のも惜しい……な」

「かしこまりました。歳も若く健康……。母体として……都合良い……、が金色ですからね。それだけでも……として価値が……」

ドクン……と、心臓が嫌な音を立てる。

旦那様達は話をしながらこちらに近付いて来ている様で、どんどん話の内容がはっきり聞こえて来た。

「子が生まれればこちらが確実に引き取りたいが、母親はどちらでも良い。そのまま伯爵家で引き取っても良いし、戻すとしても金銭的な謝礼は十分しよう」

「いずれにせよ、子をなすのが最優先という訳ですね?」

「始めはまさかこんな事になるとは思わなかったが、まぁ、これも縁という奴だな。上手く子をなして欲しいとは思っている」

これはまさか……私、の話ですかね?

そのままペタンとその場にへたり込みそうになったが、根性で踏ん張ってそのままフラフラ邸へ戻る。

あれはつまり、やっぱり私は跡継ぎを産むのに丁度いいから、そのまま本物の夫婦とやらになろうと言ってたって事でファイナルアンサー?

健康で若いし? 金髪だし??

自室に戻ってベッドに倒れ込むと、自分の金色の髪が顔にかかって無性にイラッとする。

……あー、なんかクリスティーナがザクッといった気持ちも分かるかも……。

やさぐれた気持ちでうっかりクリスティーナに共感なんぞを抱いていると、旦那様の言葉が蘇ってきた。

『私は好きだぞ。アナのその、金色の髪』

…………

言うかな? 旦那様が私にあんな事……。

いや、でも聞いたしな……。

そもそも、旦那様が言ってた事は貴族として何も間違ってないし。追い出される訳じゃないなら別にいいのかな?

……ていうか、こんなにショックって……何だかんだ言って、私、自分が旦那様に愛されてるとか思ってたんだな……。

…………

うおぉぉぉ、これは恥ずかしい!

この手の勘違いは本気でいたたまれない!!

ベッドの上でゴロンゴロンと転がり回り、ひとしきり悶え苦しんだ後。

少し頭を冷やしたいと思った私は、ふとさっき通った街の様子を思い出す。

そういえば、なんか街の様子が変わってたんだよね。

……見に行きたいな。

この金色の髪を茶色に変えて、町娘の格好をして1人で街へ行く。それは何故か今の私が凄く求めている事の様な気がした。

みんな、ごめん! 危ない事はしないから!

私はそう心の中で懺悔すると、自分のクローゼットに飛び込んだ。