軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逃亡

「どういう事?」

お義父さんが俺に尋ねて来ました。

なのでこの元康、お義父さんの質問には誠実に答えますぞ。

「どうやら俺のループにはタイムリミットが存在した様で、最初の世界で死んだ時の時間を過ぎるとループが作動してしまったのですぞ」

「そうだったのか?」

「ちょっと待ってください。じゃあ今の僕達はどういう状況なんですか?」

錬と樹が近づいて聞いてきますぞ。

それを今から説明する所ですぞ。

この細かい事に騒ぐ感じはまさしく錬と樹を仲間にしたループと言った感じですな。

「そこはまだよく分かってないけど、槍の勇者はまたループするようになってしまって、無くなってしまっていたはずのループした世界に戻ってくる場合があるなの」

「つまり今の僕達のループに元康さんは戻ってきた……と言う事ですか」

「物わかりが良くて助かるなの。槍の勇者の龍刻の長針が真となっているらしいなの」

「そ、そうなんだ……で、ガエリオンちゃんは言っていた通りにループに便乗出来たの?」

「なの! ガエリオン、いろんなループに便乗して槍の勇者が言う最初のなおふみ、ワイルドなおふみにも会って来たなの」

「そう。どうだった?」

「ワイルドなおふみはツンデレでラフーと仲良しだったなの」

「あらー」

お姉さんのお姉さんがお姉さんの話を聞いて微笑みました。

ありえた出来事が事実である事を知って笑っていらっしゃるのですな。

「ツンデレって言われるのはなんだかな……」

お義父さんが照れ臭そうにしていますな。

しかし、ループしてきた俺達の辿った時間が長い事を察してくださっているのか、とても優しげですぞ。

「それでガエリオンさんはループして尚文さんの童貞を狙うようでしたが野望は叶いましたか?」

「樹……また妙な事に興味を持って……」

「ふふ……相思相愛になれたループを経験してガエリオンは成長したなの」

「ああ、そうですか」

「自分から聞いた割に軽い返答だなぁ……」

「で、この世界にはどれくらい滞在の予定で?」

「その辺りはわからないなの。まだまだ調査の範囲なの」

などと錬と樹はライバルと話をするのに夢中になっているので、お義父さんと俺は話をする事にしましょう。

「あちらは盛り上がっているみたいなので、お義父さんには俺がこっちで色々と話をしますぞ」

「うん、わかったよ」

ライバル達の輪から少し離れた所で俺はお義父さんと視線を合わせますぞ。

フォーブレイに向かった時のお義父さんですな。

「えーっと、おかえりって言うべきなのかな? 元康くん」

「そうですな。ただいまですぞ」

「俺としては無かった事にならなくなったって事らしいし嬉しいよ」

「お義父さん、今までのループで色々と分かっている事があるのですぞ」

「へー……どんな事がわかったの?」

お義父さんにはしっかりと説明すべきですな。

「そうですな……サクラちゃんがフィーロたんだった事が一番の発見ですぞ」

「ああやっぱりそうなんだ? 色々と条件を照らし合わせるとそうなんじゃないかって思ってたよ」

「んー?」

近くでサクラちゃんが首を傾げておりますぞ。

ループする際にサクラちゃんがいるとやるやり取りですな。

「サクラちゃんはサクラちゃんですぞ。なので深く考えなくて大丈夫なのですぞ」

これまでの世界で俺はフィーロたんへの想いを更に強めたのです。

例えこの世界でフィーロたんに出会えなかったとしても大丈夫ですぞ。

何より元は一緒であろうとサクラちゃんはサクラちゃんですからな。

「んー?」

「サクラちゃんをフィーロちゃんにするとか言わないんだね」

「ライバルを問い詰める際にフィーロたんと一緒にループ出来ないか問いただしましたが無理だと言って場所を寄越さないのですぞ」

「まあ……ガエリオンちゃんが特別って事なんだろうね。元康くんもだけど」

お義父さんが苦笑していますぞ。

「それで役立ちそうな情報とかあった?」

「新たに始まったループでは錬や樹が死んでもループしないのですぞ! なので制限が軽くなったのですぞ!」

「「なんだって!?」」

声に振り返るとライバルと話をしていたはずの錬と樹がこっちの方に近づいて来ていて、驚愕の表情をしていました。

おや? ライバルとの話で忙しかったのではないのですかな?

「どうしてワザワザ僕達から離れた所でそんな話を尚文さんにしているんですか!」

「そうだそうだ!」

「別に理由は無いですぞ。ライバルと話をするのに夢中なようでしたから先にお義父さんに報告しただけですぞ」

何やら錬や樹が緊迫した様子でお義父さんの方に回り込み俺の射線に入らない様に言ってきますぞ。

「まさか面倒だからって今までのループで俺達を殺してきたんじゃないだろうな!」

「さすがの槍の勇者もそこまでの事はしてねーなの」

「何となく気持ちはわかるけど疑い過ぎだよ」

「元康さんならやっても不思議じゃないからですよ! 特に僕はウザいとかそう言った理由で召喚された直後にいきなり流星槍! とか言って消し飛ばしたりしてそうじゃないですか!」

それは錬ですな。

樹はブリューナクですぞ。

この樹に会う前に何度か既にやってますが?

とは思いましたが……言うべきですかな?

「あー……腹いせに仕留めるのはこのループに来る前にコイツ、既にやってるなの。ループするのを分かっていてやってるなの」

「僕達と話をする前からやってるんじゃないですか!」

「そうだそうだ!」

錬と樹のテンションが無駄に高いですな。

そういえば錬と樹が一番元気なループ群ですぞ。

「と言うか戻ってきたって事はループの続きにも来るって事かな?」

「そうなりますな。錬と樹も必要に迫られない限りは殺してないですぞ。放置してたら勝手に死んだ事があるだけですな。無様にもタクト如きにやられてましたな」

タクトに二人揃って殺された周回を思い出しますぞ。

「アイツにか……」

「既に処分済みですね。死体撃ちに成りますが、その周回の僕達の無念を晴らしたいですね」

「出来ないんだから諦めろ。死体撃ちなんてしても意味がない」

錬が樹を宥めますぞ。

何を甘い事を……そんな事はありませんぞ?

タクトとそれに関わった者は惨たらしく死んでもらいますぞ。

「ガエリオンが観測している範囲では剣と弓の勇者を腹いせに仕留めたりはしてないから安心しろなの」

「そうですぞ。そんな事をせずとも錬と樹とは話が出来る方法がわかっていますからな」

「それは良かったですね。いえ……頑固な僕達をどうやって……?」

「だな。言っては何だが失敗しないとわからないだろ。自分が正しいと思い込んでいるんだ……正面からボコボコにしても無理な俺達をどうやってやったんだ?」

「錬も樹も自虐的な……」

お義父さんが呆れるように錬と樹を見て言いますぞ。

「あらー、本当、楽しそうなやり取りね」

「これで楽しいのかなー?」

ふふふ……大発見なのですぞ。

基本的に錬も樹も簡単に手懐ける事が出来る方法がわかって苦労が解消されましたからな。

「それはですな、フレオンちゃんとブラックサンダー……クロちゃんを錬と樹にそれぞれ紹介すれば良いのですぞ」

「なんだそいつ」

「聞いた事の無い人ですね。おそらくフィロリアルだと思いますが」

「錬と樹と相性の良い専用フィロリアル様ですぞ」

「ついに俺達のフィロリアルを見つけたのか」

「ちょっと欲しかった気がしていたんですよね」

「仲が良くなって元康くんありがとうって錬と樹が信じてくれたのかな?」

まあそんな感じですな。

闇聖勇者とV3の錬と樹はそんな感じですぞ。

「尚文さん、ちょっと甘過ぎなんじゃないですか? 僕達ですよ?」

「だからなんで自虐的なの……」

「今までの話を聞いていて、俺達がフィロリアルと仲良くなった程度で素直に言う事を聞くと思うか? いや、無い」

「断言しちゃったよ」

「まあ……槍の勇者の言う事に概ね間違いは無いなの」

ライバルが呆れ顔で何やら言ってますぞ。

「その反応という事は何かあるんですね。どんな裏があるんですか?」

「それは――」

と、ライバルと俺はそれぞれフレオンちゃんとブラックサンダーと出会った錬と樹に関して説明しました。

俺はあの世界の錬や樹の様に幸せにしてやろうと思っていますぞ。

「それって僕達を洗脳して意のままに操っただけじゃないですか!」

意のままとは心外ですな。

お前等は自身の望むままに行動しつつ俺達の話を聞くようになったのですぞ!

俺がお前等に何かを命令した事は一度もありませんぞ。

「何が話が出来る方法だ! 操り人形にしたんだろ!」

「そんな訳でこの周回でもフレオンちゃんとブラックサンダーをお迎えに行ってきますぞ! ユキちゃん、仙人に会う為に一緒に来て欲しいですぞ」

「なんだかよくわかりませんがわかりましたわ!」

少し離れた所でお話を聞いていたユキちゃんを手招きして呼びますぞ。

その隣にいるのはサクラちゃんですぞ……。

ああ、この周回ではフィーロたんはいないのでしたな。残念ですぞ。

「何がそんな訳ですか!」

善は急げですぞ!

ポータルは……まだ波の影響が若干ある様で使用できませんな。

しょうがありませんな。

「ユキちゃん、俺の背から落ちない様にしっかり掴まっているのですぞ」

「はいですわ! 元康様のお背中ですわ!」

ユキちゃんを背負って俺はモードチェンジですぞ!

「ドライブモードですぞ!」

「な、槍を車輪にして……なんだアレは!?」

「こ、これは……!?」

ユキちゃんが驚きの声をあげてますな。

大人なユキちゃんに大ウケでしたので自信マンマンですぞ。

「ギュイイイイインですぞー!」

土煙を上げて俺は急いでポータルの使用可能範囲まで走りだしますぞ。

ついでに周囲に落ちてる魔物の肉を食料にしておきましょう。

「人間バイク形態!?」

「だ、誰か元康を止めろ! ハンドレッドソードⅩ! 流星剣Ⅹ」

「そうです! この周回でも僕達を洗脳して操るつもりなんです! アローレインⅩ! イーグルピアシングショットⅩ!」

うお! 何故か錬と樹が俺に向かってスキルを放って追いかけてきますぞ!

強化が万全な世界だけあって、その速度と威力は桁違いですぞ。

ですがここでやられるわけにはいきませんな!

フロートランスで飛んでくる攻撃を弾きながら爆走して範囲外まで逃げ切ってやりますぞー!

ギュインギュインですぞ!

「なんですかあの走行は! ネット内の冗談にしか見えませんよ!」

「樹の世界でも何だかんだあるんだね……俺もそれにしか見えない。元康くんはどこへ行ってしまうんだろうか」

「再度ループをするようになってからよくやる様になったなの。もはや見慣れた光景なの」

「す……素晴らしい……ですわ……」

ユキちゃんが俺の走行スタイルを褒めて下さいました。

ただ、フレオンちゃんと再会出来た時の大人姿のユキちゃんよりも元気が無いですな。

「誰か! フィロリアルでも良い! 俺達を乗せて元康を追いかけるんだ!」

「負けませんぞー! フハハハハ! フレオンちゃんとブラックサンダーが待ってますぞー!」

と、あっという間に錬と樹、お義父さん達が小さくなりポータルが出来る範囲まで行った俺はポータルで移動して仙人の下へと向かったのですぞ。

そうしてフレオンちゃんを仙人にユキちゃんを見せて交渉して譲って頂き、ブラックサンダーもスカウトしてしっかりと育て上げてお義父さん達の下へと俺達は行ったのですぞ。

仙人はこの周回のメルロマルクの暴走などに関しても耳にしており、俺の事は快く受け入れて下さいました。

やはり仙人は仙人ですぞ。

フレオンちゃんやブラックサンダーは伸び伸びと育ってくださいましたな。

「ただいまーですぞ! おや? 錬と樹はどこですかな?」

拠点に帰って来て早速フレオンちゃんとブラックサンダーを錬と樹に紹介しようとしたのですが二人は何処にもいませんぞ?

「二人とも逃げたよ」

お義父さんがお姉さんのお姉さんと一緒に呆れ顔で言いましたぞ。

それから一週間ほど経過した頃、錬と樹は帰ってきました。

樹は何故かヘッドホンを着けておりましたな。

錬は分厚い伊達眼鏡を着けて地味めな鎧に変わっておりました。