軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

復活のクズ

「ジャック、ね。喋るコンパクト……てっきりフィーロ達に持たせる訳じゃないからドラゴン素材のDから取ってドキドキ☆コンパクトとかドップルとか、そんな名前かと思ったんだがな」

『そんな名前、嫌ギャウ!』

「確かに……俺と話が合いそうだな、お前」

『……』

「まあ解読機の留守中のお守り役って事で預けたんだろうな。どこまでも気を利かせて行く奴だ」

「気に掛けてくれているのは分かるんだけど……」

なんて様子で助手は言葉を濁しますぞ。

「もっとゴミを見る目で拒絶すればいいのではないですかな? お前など妹ではないのですぞ! とか」

お義父さんに拒絶されると俺はきついですな。

何だかんだお義父さんはお優しいので心の底からの拒絶は無いのですぞ。

「そこまでじゃないのよねー……妹とは別と思ってるけど嫌い……じゃないの」

「奴もループ能力者だしな。距離感が掴みづらいが悪意があってやってるわけじゃないから困るって奴か。気持ちは分かるぞ」

「ナオフミ様は私との距離感をもう少し測る様になってほしいですけどね」

お姉さんを撫でながらお義父さんは助手に同情していますな。

「ラフゥ」

「あれだな、ラフタリアの場合、メルフィロやメタルな洗脳戦士より愛と勇気のラフガールの方が良いかもしれんな」

「まだその話、続いていたんですか!?」

ともかく、何やら助手の胸元に監視役の喋るコンパクトが追加される事になったのでした。

その日の夜……散歩しているとコンパクトがふわふわと浮いてお義父さんの家に飛んで行ったので追いかけました。

どうやら助手が寝てから来た様ですな。

するとコンパクトが泣きべそを掻きながら自分が助手の親でライバルの親であると自供したのですぞ。

気づいたらこんな格好にさせられていて、謎の魔法で縛られて助手のお守りにされていたとか何とかですな。

お義父さん曰く、助手はすくすくと育っているとお前に見せたかったんだろうって仰っていました。

後は俺とライバルの知識で逃げるのが分かっているから逃げない様にする意味もあったんじゃないかって話ですな。

しかもこのコンパクト、ライバルが竜帝の核石の力をかなり押し込めていて、変身すると助手の力をとんでもなく引き上げられる話ですぞ。

更にコンパクトの任意で助手を変身させられる機能までついており、いざって時のピンチでも命の危険は回避出来るだけの力が宿っているそうですぞ。

「何だかんだ言って解読機にとってウィンディアは大事な姉って事なんだな……留守を預けるのにぴったりな奴も封じ込めているって事で」

『別世界の娘であろうと我をこんな所に封じ込めるな!』

プンスカと怒っていますがお前の威厳は微塵もないですからな。

むしろライバルにもオスのライバルにも寄生しないで助手と一緒に居られる落とし所なのでは無いですかな?

なんて思いつつ、助手が新たなメルフィロとして婚約者とフィーロたんと時々活動する事になったようなのですぞ。

「さて、後は波が終わればこの周回でライバルに遭う事はありませんな!」

ともかく……これでうるさい奴が消えましたな。

後はのんびりお義父さんとフィーロたんとフィロリアル様達との楽しいライフが始まるのですぞ。

「帰る算段があったようですけど?」

「帰りも波で帰ってくるんじゃないか?」

「ならその波を即座に終わらせて閉じ込めてやりますぞー!」

「お前と解読機は本当、仲が良いのか悪いのかわからんな……」

「きっと槍の勇者の……ナオフミ様、私を隙あらば撫でるのやめて下さい」

そんなお姉さんはお義父さんのお願いで獣人姿になっておりますぞ。

「ああ、すまんな。ついな」

「いえ……まあ、良いですけど、話をですね。きっと槍の勇者の考えなんて分かっているでしょうから別の手で帰って来るんじゃないですか?」

「ありそうだな……手口を言ったら封殺されるから言わずに行ったんだろう」

く……ライバルめ! お前は別世界の方で得た知識で暴れているのでしたな。

ならそっちの世界で胸を張っていろですぞ!

「槍の人ーガエリオンの事きらいなのによくいたよねー」

「奴が絡んで来たのですぞ、フィーロたん」

「んー……でもガエリオンねーフィーロが飛べるようになる方法を槍の人に教えてたよ?」

「フィーロたん。奴はドラゴンですぞ」

「うん。ドラゴンきらーい。けどありがとうは大事だよ?」

おお……フィーロたん、なんと慈悲深いのですぞ。

ドラゴンが相手でも敬意を忘れないのですな。

心が洗われる様ですぞ。

「うるわしゅー」

「今日のおやつはプリンですぞ」

「わーい」

槍から取り出してフィーロたんに差し出しますぞ。

そのままフィーロたんはプリンを受け取り飛び上がって行ってしまいました。

「ところで錬と樹はどこをほっつき歩いているんだ? 最近見かけないだろう。まあどうせどこかでヒーロー活動をしているんだろうが……まったく、波の時くらい参加してほしいもんだ」

錬は元より樹も修業を終えて出かける頻度が増えていますからなー。

それでもよく村には来ていますがな。

ですが……確かに最近見かけませんな。

具体的にはライバルがあっちの世界に行った辺りから見かけた覚えがないですぞ。

とはいえ、噂は聞くのできっとフレオンちゃんやブラックサンダーと楽しくやっているでしょう。

「元康様! 後で峠に行きましょう! 仙人様直伝のより速く走れる奥義が知りたいのですわ」

最近ユキちゃんは俺を相手にドライブをしたがりますぞ。

尚、峠とは俺が名付けたフィロリアル様とドライブする言葉ですな。

ちなみにユキちゃんは見返り美人ポーズが大好きですぞ。

「順調だから解読機があっちの世界に行ったんだが……こっちでする事はあるのか?」

「大体片付いてますぞ。転生者もほぼ駆逐しました。今までのループで特定した所在不明の奴が多少いる程度ですぞ」

どこかで野たれ死ぬ事は稀ですが、いない訳ではないですぞ。

転生者同士の殺し合いとかですな。

そうなるといるはずなのによくわからないって事になりますからな。

「そうか。ところで元康、ラフ種をもっと増やす方法は無いのか? 例えば村の魔物共の中からラフ種になりたい奴に施すとか」

「最初の世界のお義父さんはやってましたな」

「……ナオフミ様?」

殺気ですぞ!

お姉さんからとてつもない殺気が放たれておりますぞ。

尻尾がぼわっと膨らんでいますからな。

「ラーフー」

ラフ種がお姉さんを宥めるように両手を広げていました。

「なんだラフタリア? もっと撫でて欲しいのか?」

殺気など感じていないとばかりにお義父さんは脅しているはずのお姉さんを撫で始めました。

途端にシュンとお姉さんの殺気が引っ込みましたな。

尻尾が左右に揺れていますぞ。

「うっ……こ、これだけは引き下がる訳にはいかないんです。ナオフミ様! いい加減にしないと私も怒りますよ。聞いているんですか、ナオフミ様!」

撫でられて霧散する怒りを再度点火して注意するお姉さんですが、先ほどの様な殺気は無くなっており、お義父さんは聞く耳を持たないとばかりに撫で続けておりますぞ。

そんなお義父さんはとても優しげな顔をしておりますな。

「あらーお姉さん羨ましくなっちゃうー。ラフちゃん、お姉さんもクラスアップさせて貰おうかしらー。お姉さんどうなっちゃうかしらねー」

「ラフー」

「サディナ姉さんも便乗しないで下さい!」

黙って見守っていたお姉さんのお姉さんがお義父さんとお姉さんのやり取りに混ざろうとしてきました。

「お姉さんのお姉さんは……ラフ種を作ったおかしくなったお義父さんに改造されてトドみたいなラフ種のような獣化が出来るようにされていましたな」

「ラフ種の毛並みなら何でも良いのか?」

「治療して出来なくなったはずなのにお姉さんのお姉さんは時々変身して遊んでいたのが印象的ですぞ」

「あらー……楽しそうねー」

「ナオフミ様! さすがに本気でやめてくださいね!」

「そこまでじゃねえよ。やるならもっとラフタリアみたいになる様にするさ」

「それもやめてください!」

なんて感じで平和に波を終えて解散しました。

その日の晩……メルロマルクの城から婚約者経由で伝令が来たのですぞ。

「ナオフミ! それと槍の勇者」

「なんだメルティ? フィーロとダンスか何かの練習でもしに来たのか? それとも三人目のメルフィロについてか?」

「ナオフミは私をなんだと思ってるのよ!」

「なにって……女騎士の代わりに領主をしつつ、悪と戦う正義の戦士メルフィ――」

「あーきこえなーい! それよりも聞きなさいよ!」

フィーロたんと一緒にお義父さんの領地を盛り上げる興行をしている婚約者がひっ迫した様子で来ましたな。

「父上が城を抜け出して行方知れずになったの!」

「何!?」

ここで蚊帳の外とばかりに騒ぎを聞きつけて立っていた虎男が一歩踏み出して尋ねますぞ。

「アトラはどうなってる!」

「安心して、無事よ。アトラさんは城に居るわ」

「クズが逃げた? 正体を現したのか?」

「なんとも言えないわね……最近では母上の罰で屈辱しか感じないであろう衣装や看板を付けていても堂々とした面持ちで城内は元より城下町で歩いてて、そんな父上に苦痛を味わわせる女王は間違っている、なんて意見が出始めていたし……」

「……滅多に城の方には行ってなかったからよく知らんが、お前の両親、何やってんだ?」

見世物ですぞ!

指差して笑う所ですな!

HAHAHA!

「間接的に俺の風聞に問題が出そうな事になってるな……で、クズが逃げたって何があったんだよ」

「私も現地で話を聞いた訳じゃないんだけど、どうも見張りの兵士が父上が出ると言ったのでこう……人を惹きつける威厳に押されて見送ってしまったそうよ。アトラさんには『ワシは罪滅ぼしをする為に出かけてくる』と言って出て行って帰って来なかったって……」

「チッ! 面倒な事になりやがったな……城に行って女王に話を聞きに行くぞ。元康、こんな事は今までのループであったか?」

「ありますぞ。クズが俺とお義父さんに復讐する為にタクトと手を組んで悪さをしようとしたループですぞ!」

とうとう正体を現しましたな!

今度こそ報いを受けさせてやりますぞ!

しかしお義父さんは難しそうな表情になりました。

「……メルティの言う通り、確かになんとも言えないな。妙な事にならなきゃ良いんだが……ラフタリア、フォウル」

「はい!」

「アトラ!」

と言う訳で俺達は一路メルロマルクの城に急いでポータルで飛びました。

もちろん婚約者も同伴しております。

「母上!」

玉座の間に到着した俺達を女王が出迎えてくれましたぞ。

「クズが逃げたと聞いたが、本当か?」

「はい。クズが逃げた事を見張りの兵士が隠していたのです。どうやら隠しておいてほしいと言付けをしたようで」

「脱走を許すとはな……元康共の知識や女王の信用なんてのも案外役に立たないもんだな」

「返す言葉もありません。クズがこの様な暴挙に出るとは私も読み違いをしておりました。逃亡を幇助した兵士を尋問してはいるのですが、クズのカリスマに影響を受けて後悔は無いの一点張りでして……責められる事を承知で逃がし、クズも汲み取って逃げた様です……」

クズはどれだけ苦汁を飲んでも家族が大事な奴ですからな。

目の前で赤豚を殺した復讐をする時以外は女王の傍からは離れませんぞ。

罰であろうとそこは変わらなかったのですぞ。

ただ、やはりこの国の警備はザルですな。

「……で、クズの目的は? 俺達への復讐か?」

後日お義父さんがここで何を思っていたのか教えて下さいました。

どうやら赤豚を俺が毒殺した事をクズが気付いたか囁いた者が居たんじゃないかと考えていたそうですぞ。

「いえ……おそらくそれは無いでしょう。クズは日々、私と顔を合わせる度にとても力強く、過去を思い出す顔付きで『ワシに何か出来る事は無いか? イワタニ殿、勇者殿達の力になれぬか?』と言っておりまして、しかもその手には杖の七星武器が輝いていました……」

「杖の七星武器が?」

「はい……亜人達への憎悪に凝り固まったクズの手から消えた杖が再度姿を現して、クズに力を貸している……これが何を意味するかは私も測り知る事が出来ません。ですが、全盛期の英知の賢王であると想定して動くべきかと」

「そこはどの程度か俺はよくわからんが……元康、お前は分かるか?」

「そうですなー……杖が出る程となると基本的に作戦では負けなしですぞ」

少なくとも俺の知るクズで杖をその手にしているのは最初の世界とお姉さんのご友人を助けたループくらいですぞ。

他は少なくとも杖を出すまでには至っていませんな。

しかもその全ての世界で敵ではなかったので敵に回った場合の強さは未知数ですぞ。

ですが杖の七星武器も大きなミスをしましたな。

このループのクズはハートブレイクしていますぞ。

ここで俺が引導を渡してやりますぞ! 後任はきっと女王ですぞ!

「作戦で負けなし……ね」

「仮に敵として相対した場合は……相応の被害が出るのは間違いありません。クズの性格からしてイワタニ様はメルティと常に共に居て身を守って下さい。クズは家族はとても大切にする者ですので、下手に手は出さないでしょう」

「どこまで信用できるかは……いや、その部分に関しては理解出来るか」

お義父さんがお姉さんを見て頷きました。

「ナオフミ様? ラフちゃんじゃないですよね?」

お姉さんは疑心暗鬼に囚われてしまっていますな。

きっとお義父さんはお姉さんの事を本当に心配していますぞ。

「他に手掛かりだとアトラさん曰く、窓辺で誰か力強い者と話をしていたとの証言がありました」

「謎の協力者か……」

「声は女の子だったとの話です」

「女か。なんとも嫌な空気だな……いや、窓辺?」

フレオンちゃんなら一発ですが、違うでしょう。

きっと塔をよじ登った奴が居たのでしょうな。

それ程難しい事ではないでしょう。