軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迷探偵タクト

「犯人は一つ大きな間違いを犯してやがる。いや、この見立て殺人を行ったつーことはな、次に行わねばならない殺人がバレバレだって事だぜ!」

などと言いながらタクトは島の伝承に照らし合わせた犯行を事前に抑え込む作戦に出た様ですぞ。

ふむ……ちょっと手が出し辛い状況になるでしょうな。

ちなみに幾ら隠れていると言っても建物内を俺は自由に出入り出来ないと思うでしょうが、ソウルイータースピアにある壁抜け技能で鍵が掛けられていても中に簡単に入れるのですぞ。

そんな訳で苛立って貧乏ゆすりをしながら推理をするタクトの前で踊ってやりますぞ。

犯人は俺ですぞー!

お前の目に犯人が見えますかなー?

「みんなのアリバイを炙り出して整理しろ」

「ブヒ!」

白衣豚がタクトに命じられて豚共のアリバイ整理をしている様ですな。

アリバイ? 犯人が豚共の中にいると思っているのですかな?

残念ですな!

犯人は外から来た俺なのでアリバイなど無意味ですぞ!

次は誰を消してやりますかな。

タクトの青ざめた表情が心地良いですぞ。

いつまでもタクトを挑発したい所でしたがそろそろ次の犯行の時刻ですぞ。

お前等のバカンス期間中……少しずつ恐怖を味わわせてやりますからなー!

と今夜、行う最後の屠殺に手頃な豚を見繕っていると……。

「ブ――」

「ブヒ――」

メイド豚がタクトや他の豚が見えない所で俺が本来するはずだった豚を毒殺した後、亡骸を斧で真っ二つにしました。

伝承に見立てておりますな。

なんでも七星武器に因んだ方法があるとかなんとか。

これは……便乗殺人ですぞ!

メイド豚が豚を殺していますぞ。

「ブーヒブヒャッヒャッハヒャアアアアアア! ブヒーブヒーブヒトー!」

ヒィイイイイ……コイツが纏う空気はわかりますぞ。

昔刺された脇腹に思わず幻痛が走りました。

キュッとするのですぞ!

病んだ豚は苦手なので一旦俺は引く事にしました。

後でライバルに報告した所。

『抑圧された女をタクトは甘く見過ぎだったなの。さてルール・七裂魔王は心の病んだ者に手を下す事を躊躇うっとなの!』

なんて言っていたのですぞ! どういう意味ですかな!

ともかく、ここに来てメイド豚が豹変して便乗を始め、二つの見立て殺豚を行ったのですぞ。

タクトはそうして仕留められた豚を見て悲しみと怒りの声を上げつつ犯人は誰かを特定してやると息巻いていました。

寝ずの晩とばかりにタクトは豪邸内を含めて周囲に気を張り続けておりましたな。

お前程度の気など俺からしたら簡単に抜けられる代物ですがな。

翌朝ですぞ

サメ豚が浜辺に流れ着いたのを豚共が発見した様ですな。

「魔王の復活した島に訪れた者は誰も帰って来なかった……とでも言う気か! くそおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

タクトが地面に拳を叩きつけておりました。

フハハハハハハ! ざまあないですな!

ちなみに豚共はこの頃になると疑心暗鬼になっており、周囲をじろじろと落ち着きなく見ておりますぞ。

「ブブヒ! ブブ!」

ここでポイント稼ぎとばかりにメイド豚がタクトの肩に手を置いて鳴いております。

慰めているつもりですかな?

お前も犯人ですぞ。

「ああ……絶対に犯人を見つけ出して報いを受けさせてやる! 俺が名探偵だ!」

迷探偵の間違いではないですかな? 全く犯人に気づいていませんぞ。

もちろんメイド豚が行った見立て殺人もタクトは気づいておりませんでした。

名探偵が聞いて呆れますぞ。

頭脳は幼稚、身体は性欲、魂はおっさん! 転生殺人鬼タクトですぞ!

それから嵐は止む事無く、メイド豚主犯の見立て殺人が次々と起こって行きました。

手を変え品を変え、時に共謀しながらメイド豚は徐々に他の豚共を排除して行きました。

解釈で銃殺出来るのもあるとはメイド豚の奴、推理物が得意だった様ですぞ。

いえ、タクト直伝の怪しまれない殺人術が骨身に染みているという事ですかな?

ちなみにタクト派閥の影豚は早いうちに俺が始末しました。

俺を見つける可能性がありましたからな。

ああ、もちろん俺の方も動いておりますぞ。

何匹か豚王への献上用として生け捕りにして攫っておきました。

やがて豚共の中からタクトが七裂魔王なのではないか、という意見が本人の居ない所で囁かれ始めたとライバルが言っていました。

タクトなど信じられるか! と島の木を力技で切っていかだを作り無謀にも嵐の海へと出て行ったのですぞ。

「勝手にしろ! 何かあっても守ってやらねえからな!」

「ブブー!」

「ブブヒー!」

とまあ愚かな豚は愚かなまま嵐の海へと進んで行きました。

もちろん……俺とライバルが処理しましたがな!

更に疑心暗鬼は加速……だけではないですな。

ライバルが豚共が飲む飲み水に薄めたウロボロス劇毒を混ぜており、その効果で豚共が攻撃的な人格へと変貌して行ったとの話ですぞ。

「お前等やめろ! 落ち着けっての! 何殺し合いしてんだ! そんな事をしていたら魔王の思惑通りだろ! 冷静になれ! クールになるんだよ! いつも通り身の程知らずの野郎を仕留めるみてーによ!」

とまあタクトは説得をしようとしましたが豚は既に自己保身で全てが敵に見え始めていた様ですぞ。

「いて! こら! 俺に当たるのを――いい加減にしねえと殺すぞ!」

タクトの短い堪忍袋の緒が切れ始めた様ですぞ。

「ブヒ!」

「ブヒブヒ!」

豚共はタクトを更に挑発し、数で圧倒しようと何人もの豚が銃器でタクトを狙いました。

メイド豚がタクトを守る様に立ちはだかろうとした所でタクトが前に出ましたな。

HAHAHA!

どうせお前等全員死ぬんですぞ!

赤豚の同類がよく言う言葉だそうですぞ。

「てめぇら……お前等がそのつもりならやろうってもんじゃねえか! 我が身かわいさに俺を信じられねえビッチ共め! 魔王より怒らせたら怖い奴がいる事を教えてやらぁ!」

とばかりに……タクトは怒りにまかせて自らの豚を何人か仕留めてしまったのですぞ。

「複数犯なら犯行は可能だ!」

愚かにも程がありますなー!

探偵が殺戮をしたらもう推理ではないですな!

一方その頃、お義父さんはと言うと……島での日々も終わりが近く、フィーロたんと楽しく泳いでいるはずですぞ!

HAHAHA!

さて……頃合いですな。

ライバルが更に島に魔法を施し、豚の亡骸がムクリと起き上がり襲いかかる様に成りました。

「ブ、ブヒャアアアアアアアアアアアアアァァァァ!?」

示し合わせた様に調査していた白衣豚がライバルの魔法を受けてタクトの目の前で魔物に変質して行きますぞ。

「ブヒ!」

メイド豚が魔物化し飛びかかってきた白衣豚を仕留めましたぞ。

もはや仲間の豚を殺す事に躊躇いは無くなった殺豚鬼ですな。

「な、なんだこりゃあああああ!? ま、魔王がマジで実在したってのかよ!」

「ブヒィイイイイイイイイイイイイイ!? ヴァアアアア……」

とまあ死んだ豚達がどんどん豚共に襲いかかりゾンビ豚が増えて行きましたぞ。

もちろんウロボロスの使徒化した豚等もおり、島は阿鼻叫喚の地獄絵図にタクトは思っているでしょう。

豚共も島中に散り散りになり、魔物とゾンビ、ウロボロスの使徒を相手に逃げ回り始めましたぞ。

「しゃらくせぇ! 俺は最強の勇者だぞ! 俺の力を受けてみやがれ!」

タクトは負けじと鞭を抜いてゾンビや魔物共を屠って行きますが……そうは問屋が卸しませんぞ。

隙だらけの背後からクローキングランスで近寄り唱えますぞ。

「愛の狩人が命ずる。聖武器よ。眷属器よ。愛の狩人の呼び声に応じ、愚かなる力の束縛を解き、目覚めるのですぞ!」

「な、何!? 力が抜ける! どこのどいつだ!?」

折角の催しでお披露目した投擲具を含めてタクトの持っていた七星武器は全てその手から離れて俺の方に飛んで来ましたぞ。

……からのースリープランスですぞ。

「ぐあ――」

タクトは俺を見る暇なく七星武器を奪われて意識を失いましたな。

「ブブヒ! ブヒトブヒブヒ!」

病んだメイド豚が俺に向けてライフル銃を向けました。

「タクトの事を心配している暇はあるのですかな? 正直お前が苦手でしたからコレが良い結果ですな」

「ブヒ……ブヒャアアアア!?」

そう、丁度メイド豚の背後にゾンビ化した豚共が群がり、メイド豚はその仲間入りをする末路を辿ったのですぞ。

「カクカクシカジカなの。ツメ、ゲットなのー!」

くっそライバル!

剥奪したフィーロたんの物になるかもしれないツメを俺の死角から奪いやがりましたぞ。

「さて槍の勇者、今回の催しももう少しで終わりなの……後はエピローグの収録だから処理をするなの」

ライバルが指を鳴らすとゾンビ共は朽ち果て魔物化した豚共は一部は元に戻り、残りはそのまま殺し合いをした様ですぞ。

で、ウロボロスの使徒化した者共は俺のブリューナクとプロミネンスで滅却処理をしてやったのですぞ。

数時間後……タクトは誰も居なくなった豪邸で一番大きな自室のベッドで目を覚ましました。

既にライバルは嵐を散らし、島には平穏が戻って来ているのですぞ。

「ここは……俺の部屋? 全ては夢だったのか? いや……」

手にあるはずの七星武器が無い事に気付いたタクトは夢じゃない事を理解した様ですな。

であると同時に部屋にぶら下がっている代物を不快そうに見ますぞ。

「首つりしろってか! ふざけるんじゃねえよ!」

首つり用のロープを配置してやったのですが気に食わなかった様ですな。

「みんな! おい!」

と、タクトは島中を歩き回りましたぞ。

豚共の争った痕跡や亡骸を見て恐怖で顔が引きつっております。

HAHAHA、その顔が見たかったのですぞ!

そうして豪邸に建築されていた時計台までタクトはやってきました。

まあ、豚共の亡骸を不自然に配置しておきましたからな。

「てめぇか……てめぇがこんな事をやりたがったのか!」

タクトに背を向け外を見る形で俺は立っている所でタクトが身構えて俺に殺気の籠った台詞を吐きました。

「どうでしたかな? これが血塗られたお前の末路と豚の本性ですぞ。正直、もっと恐怖で慄いて欲しいですな……恐怖はまだ始まったばかりなのですぞ?」

「何言ってやがる!」

そう……タクトは本来、霊亀騒動時に外界との連絡を立ち切り、ここで欲望の赴くままに肉欲に溺れているのですぞ。

反吐が出るクズですな。

波が起こっている最中だと言うにですぞ! バカなのですかな?

もちろん、ライバルの話では関係各所で他の七星武器所持者達の特定をさせていたらしいですがな。

どちらにしても波が起こる世界でしばらくの間、隔絶した島で呑気にバカンスをする愚か者には相応しい末路なのですぞ!

「お前とは話が通じないのはわかっていますからな。ライバル」

「なのーん」

バサァっとライバルが舞い降りてタクトのドラゴンの姿に化けておりますぞ。

ネタバレで言うと狐やグリフィンを仕留めた際、ライバルはそれぞれの亡骸に鍵を持たして密室を作り出し、最終的にライバルは新しい体用の卵を飲み込んでタクトのドラゴンから乗り移って腹で孵化し、腹を食い破ってタクトのドラゴンを仕留めたとの話ですな。

「レ、レールディア!? お前が犯人だったのか!」

「ふふふ……なのーん」

タクトが殺意に満ちた眼差しを向けて来ますぞ。

今の俺なら分かります。

アレは寝取られたと思っている目ですぞ。

心の底から心外ですな。

何が悲しくてタクトのドラゴンを寝取らなければいけないのですかな!

ですがコレがタクトに効くとライバルが言っていたので従って見ているのですぞ。

確かに気分は僅かばかり良いですな!

「その顔が見たかったのですぞ!」

相手がお義父さんだったら必死に違うと言いますぞ。

ああ、お義父さん……俺は罪深い男ですぞ。絶対に償わねばいけません。

タクトは別ですがな。

ですが寝取り男と思われるのは心の底から勘弁してほしい物ですぞ。

「タクト、犯人が誰かわかったなの? 正解だったら苦しめずに殺してやるなの」

「うるせぇ! ぶっ殺してやる! うおおおおおおおおおおおおおおお!」

と、タクトは頭に血が上った表情で拳を握りしめて駆け出してきました。

「お前にはもっと苦しんでもらわねばなりませんからな、パラライズランスⅩ!」

「ぐあ――くううううう……おおお……」

「まだ地獄は始まったばかりなのですぞ。憎悪に染まりながら……死ねですぞ!」

という訳でタクトを捕縛して連行したのですぞ。

恐怖に歪む愚かなタクトは見物でした。

フィロリアル様達を苦しめた罪は償いきれませんがな!

「旧犯人、ここはセオリー通り自供とかしておくなの?」

「そう……お前は別の世界で無数のフィロリアル様を……なんて乗る訳ないですぞ!」

これだからライバルは面倒なのですぞ。

そうして密かにタクトを捕獲し、既に話を合わせた豚王の下へと連行し、タクトと関係を持った豚を集めて献上するとの取引は既に終わっているのでした。

七星教会の明かりもライバルと教徒が結託して表向きは明かりの変化も無いとの話ですぞ。

タクトの豚共は集めて処理をしなければ激しく面倒なのは学習済みですからな。

各地から続々とタクトの声を聞いて豚共が豚王の下へと向かう手筈でしたな。

セブン島はかつての喧騒が消え、静けさを取り戻したのですぞ。

仮に不老不死の魔王が本当に存在したのならば神狩りによって滅されるだろう、と最初の世界のお義父さんなら仰るでしょうな。

意味も無く現世に起こされた魔王には、もう安らかに眠ってもらいましょう。

おや?

フォーブレイに向かった時の錬と樹が『殺人鬼がなにを感傷に浸っているんだ!』と言っている気がしますぞ。

まあ気の所為ですな。

こうして、セブン島事件は終わりを迎えたのでした。