軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パンダの祖父

そうして翌日……。

何やらドシンと音がした気がしますな。

俺が起きて外の空気を吸いに出ると、確かに稽古をパンダ老人はパンダやエクレアを連れてやっていましたな。

……ゾウも一緒ですぞ。

尻もちをついていて、クレーターが地面に出来ております。

お義父さんとサクラちゃんは観戦しているようですな。

模擬戦でもしているのか、パンダ老人が大きな煙管を抜刀状態で構えておりますぞ。

パンダを含め、エクレアやゾウが若干へばっているようですな。

「動きは随分と早いが、その分、単調になっているな。ワシも危なかったと思ったわい」

くるくると煙管を振り回してパンダ老人が元気に言いますぞ。

「Lvや資質向上で技術をおろそかにしてしまいそうだと抑制して相手をしていたが……ここまで追い詰められ、息も切らさせないとは……」

「相変わらず化け物みたいな腕前をしてるねぇ」

「ラーサと相手をするノリで戦ったらまさか投げ飛ばされるとは……」

ゾウが立ち上がりながら言いました。

あの巨体を投げるとは、中々やりますな。

「すごーい」

サクラちゃんは朝が早くて若干眠そうにしておりますが、戦いの感想を述べていますぞ。

「エルメロ、空飛んでたー」

コウが目をキラキラさせてゾウが飛んでいたとの話をしました。

サクラちゃんとコウに大好評ですぞ。

俺でも投げ飛ばせますぞ!

「凄いですね」

「それほどではない。何だかんだワシも見よう見まねなのでな」

パンダ老人が褒めるお義父さんに答えますぞ。

「ほら、ラーサ。お前は盾の勇者様の護衛をするのが仕事なのだろう。この程度で本当に守りきれるのか?」

「うるさいね。あたいが守らなくてもガッチガチだよ、こいつは!」

そう言いながらパンダは立ち上がって砂を払いながらパンダ老人相手に構えますぞ。

まだ戦う感じですかな?

「さっきよりも早く行くよ!」

パンダが竹を出して反動で突撃気味にLvによるごり押し突撃をしますな。

「だから動きが単調だと言っているだろう!」

バッと……パンダ老人の体から気のような物があふれ出しパンダの突撃を滑らかにかわした後に滑るように煙管を巻き込んではね上げました。

おー……パンダが空高く跳びましたな。

「わぁああああああああああ!?」

ドシャッとパンダがそのまま落下しました。

「さすがはラーサ殿の祖父と言うべきか……この先の戦いに教えを請うべきではないか? それ程に完成されている」

「勘弁してほしいねぇ……」

「というより、これほどの技術はキタムラ殿を彷彿とさせる……」

ふむ……此処らでお義父さんに俺の強さを見せつけるべきですな。

俺は最初の世界のお義父さんに注意されていたので、Lvだけではなく、技術にも磨きを掛けているのですぞ。

「俺の出番ですな」

「元康くん、相手は強くても老人なんだから、手加減というか殺したりしないでね?」

「当然ですぞ」

「おや? 槍の勇者様が相手をしてくれるのかい?」

パンダ老人が煙管を肩に乗せて手招きしますぞ。

長物を使っている感じでしょうから武器としては似た感じに戦えますかな?

「では行きますぞ。もちろん……技術での勝負ですな」

腕前の程を知るのにLvによるごり押しは無粋でしょうな。

俺もそれなりに加減はしますぞ。

「槍の勇者様の腕前、拝見しますねぇ」

やはりなんとなくパンダの口癖が混ざっておりますな。

「でりゃあああ!」

パンダ老人が煙管を俺に向けて叩きつけてきますぞ。

俺はそれをよけますが、切り上げの要領であると同時に気を織り交ぜて絡めて来ているのが感じ取れます。

「よっと、ですぞ」

しかも気を俺の方に流し込んで踏ん張りづらいようにしているような感じですな。

なので俺も槍に気を混ぜて対抗しつつ受け流し、逆に流し込みを掛けますぞ。

「おや?」

槍を一回転させて攻撃を受け流すと、パンダ老人はそのまま突きに移行してひっかくように俺を手繰り寄せようとしますが、俺もそれを反らして槍で地面をついて距離を取り、逆に胴を石突きの部分で突いてやります。

もちろん、気を織り交ぜてより吹っ飛ぶようにですな。

「おおう……これは凄い。血が滾る」

パンダ老人が空中で軌道をそらすように煙管で地面を叩いて俺の吹き飛ばしを流すや、着地して突進してきますな。

今度は流れるような肉弾突撃と蹴りが合わさっている様ですぞ。

「よ、そ、は」

俺はそれを見切って受け止めますが、受け止めた槍を軸にパンダ老人が足払いと槍を軸に一回転投げをしようとしてきました。

アクロバティックなパンダですな。

腕前だけならタクトは元より、お姉さんのお姉さんクラスではないですかな?

俺はその投げを流れるように受けて着地して回転するパンダ老人を振り回して投げますぞ。

「よっと! まだまだー!」

凄く楽しげな笑みでパンダ老人は猛追をしてきますな。

執念がすさまじいですぞ。

戦いを楽しんでいる感じですな。

で、その攻撃の一つ一つに気が混じっておりますぞ。

これでは未熟な者では手も足も出ないでしょうな。

「おおお……ハー、ハー……」

それからしばらく攻撃を受けながら時に反撃しましたが決定的な攻撃をさせるには至らずにいるとパンダ老人が距離を取った際に息切れして煙管を杖にして休み始めました。

もう少し攻撃的に行けばねじ伏せることは容易い程度の腕前ではありますな。

最初の世界のお姉さんのお姉さんより少し弱い程度の技術ですぞ。

「槍の勇者様の腕前、確かに拝見しましたね……はぁ……はぁ……」

勝負は終わりですな。

「爺さん相手にここまでやるなんて、やっぱ槍の勇者は化け物だね」

「いろんな意味でそうなのは認める」

「どうやったらあんな攻防が出来るんでしょう」

「カンフー映画見てるような動きだったね。ワイヤーアクションとかしてるみたいだったよ」

パンダ老人と俺との稽古を観戦していたお義父さん達が各々感想を述べますぞ。

反応は上々ですな。

「随分と動きが良いですな。それはどこかで習ったのですかな?」

「はぁ……はぁ……いいや、これはさっきも言った通り見よう見まねさ。昔、メルロマルクとの戦場で化け物みたいに強い奴と幾度も戦ってね。そうしている内に自然と似た動き、似た力の流れを覚えた結果、出来るようになって作った我流さ……」

強い奴と何度も戦って見て動きを覚え、そして自らの戦闘スタイルに昇華したと。

これが我流とは凄いですな。

俺もある意味我流ではありますがな。

気を意識的に使っているのか無意識なのかは俺では判断しづらい所ですな。

「どれくらい前だったか……あいつが戦場に出てこなくなって、さびしくなったものだ……」

パンダ老人が懐かしむように呟きました。

戦死でもしたのでしょうな。

「あの時の血湧き肉躍る戦いがまた出来るとは……やはり歳には……いや、鍛錬が足らなかったか。また本格的にやるのも悪くない……ラーサ、ワシから教わりたくなくて逃げているのだろうが、このままでいいのか?」

「勘弁して欲しいねぇ。あたいにどこまで期待をすれば良いんだい。そもそも何かあったら槍の勇者様が全部かっさらっていくんじゃないかい?」

「この前の戦争を思い出すと否定はできないけれど……」

「怠けて良い理由にはならんな。私は是非ご教授の為、城に戦闘顧問としてお願いしたいと思ったくらいだぞ」

「毎日投げ飛ばされるのは勘弁してほしいですが、確かにこれからのシルトヴェルトの為にも流派として広めるべきかと思います」

エクレアとゾウがパンダ老人から教えをもらおうとしておりますな。

パンダがゲーっとした表情になりますぞ。

「槍の勇者の方が腕前が上だから良いんじゃないかい?」

「戦いなら俺も教えられますぞ」

お義父さんに俺が有能であることをアピールするいい機会ですぞ。

「いや、元康くんは何だかんだ言ってアイドル活動が忙しいから、する暇ないんじゃない?」

そういえばそうでしたな。

俺の使命はフィロリアル様達のアイドル活動を支援する事。

休日は程々にしないといけませんな。

「まあ、ポータルは記録したからいつでも行き来は出来るようになったけどね。ラーサさんも安心して実家に戻ってこれるよ」

「それはそれで嫌な話だねぇ……」

「どちらにしても槍の勇者様、また機会があったら相手をしてほしいさね」

「うん。みんなの為にもお願いするよ」

「お義父さんに頼まれたのですから、頷かない訳にはいきませんな」

戦ったらお義父さんが褒めてくれるようですから相手をしてやりましょう。

何よりサクラちゃんやコウがとても楽しげな目で見つめておりますからな!

みんなに俺のかっこいい所を披露するのも良いですな。

そんなわけで俺達はパンダの実家に遊びに行き、帰ってきたのですぞ。

「――なんて感じだったよ」

お義父さんは土産話といった様子でシルトヴェルトの城での夕食を食いに来たライバルに経緯を説明しておりました。

ああ、もちろんパンダが居る場でですぞ。

パンダの許す範囲での説明って奴ですな。

仲間くらいなら良いとパンダも思っているのか黙々と飯を食っていますぞ。

「な、なのぉ……」

で、お義父さんの話を聞いていたライバルが額に手を当てていますな。

どうしたのですかな?

毒物が入っていて死にそうなのですかな?

ざまぁですぞ。

「おい、槍の勇者。何か言う事はないなの?」

「何がですかな?」

「これは完全にわかってねえ顔なの」

ライバルがなぜか俺を馬鹿にするような目になりました!

なんですかな!

また何か理由をつけて俺を下げるつもりですかな!

コイツはきっと、パンダの祖父との稽古で上がった俺の株を下げるつもりですぞ。

「ラフーの時も似た様な感じだったなの。もしかしてわざとだったりするなの?」

「意味がわかりませんな」

この話に何故お姉さんが出て来るのですかな。

全く関係ないはずですぞ。

「パンダ、そのハクコの奥さんが人間だって話聞かなかったなの?」

「んー……又聞き程度には聞いたねぇ。混血のハクコだって話だよ」

「間違いねえなの」

「だから何なのですかな?」

ライバルが思わせぶり過ぎて腹が立ちますぞ。

「ガエリオンちゃん、何か知ってるの?」

「知ってるなの。むしろワイルドなおふみの世界は元より、他のループでも会った事があるなの」

「そんな奴いましたかな? 俺の知る奴など限られますぞ」

誰の事を言っているのですかな?

ハクコ種がどんななのかは覚えていますが、俺が知るのは勇猛果敢にお義父さんを始めとしたフィロリアル様を守った虎娘とその情けない兄だけですぞ。

「槍の勇者、お前が脳裏に挙げている奴なの。虎兄妹なの」

「いやいや、さすがに世の中広いですぞ。きっと違いますぞ!」

「なんで結びつかないなの! やっぱりお前は馬鹿なの! 重病持ちの妹を持った兄妹でどこかへ行ってしまったハクコ種なんて特徴的な連中、間違いなくあの兄妹なの!」

「バカバカうるさいですぞ! バカっていう奴がバカなんですぞ! アーホですぞ!」

「元康くん……」

お義父さんが何やら可哀想な者を見ているような視線でライバルと俺を見ますぞ。

ほら見ろですぞライバル、馬鹿はお前なのですぞ!

「ちょうど良いからそいつらは保護したら良いなの」

「いえ、お待ちください」

ここで今まで黙っていたシュサク種の代表が手を上げますぞ。

「何分、混血とはいえハクコ種を盾の勇者様が直接保護するのは出来れば避けた方が良いかと思います」

「それは……えっと、もしかして国内の情勢の為?」

お義父さんが尋ねるとシュサク種の代表が頷きますぞ。

「ええ、国に評価される武勲などを挙げた者だからこそ、盾の勇者様の仲間は現在の形として認められている所が大きいのです。ここでシルトヴェルト代表四種に連なる者が所属するとなると、やはり権力が絡む事になり……」

どうやら虎兄妹をお義父さんが世話をするのは難しいみたいですぞ。

伝統やら情勢やら、シルトヴェルトはこの辺りが面倒ですな。

「槍の勇者様方が話をしている別の時間軸での話はメルロマルクでの事が大きく関わっているのは元より、盾の勇者様の支持率が上がっていなかったのが理由かと……今現在、シルトヴェルト国内では、戦争でのやり取りは元より、波を鎮めようと尽力している勇者様方の評価は加速度的に上がっていますので……その……」

「うん、言いたい事はわかったから安心してほしい」

お義父さんが気を使うシュサク種に対して理解を示しました。

まあやり方は色々とあるはずですぞ。

実際、以前行っていたループではクズの所に置いて来ましたからな。

「別にあたいも保護してほしいなんて思っちゃいないよ?」

「理由はそれだけじゃないなの」

ライバルがここで更に推してくるようですぞ。

お前もしつこいですな。

「ガエリオンちゃん、何か他にも理由が?」

「もちろんあるなの。というよりも近々この件を提案しようと思っていたから丁度良いなの」

ライバルがここで頷いてから俺の方を見ますぞ。

「そもそも槍の勇者……英知の賢王の件があるのになんで動かないなの」

この辺りの案件はシルトヴェルトでは把握している者の見極めが難しいですぞ。

クズが錆びついていて、脱走して暗躍しているのは一部ですしな。