軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パンダの恩人

「あの子を拾って……育てて……本当の両親や一族を探して色々な所に行きました……途中戦争に巻き込まれて立ち往生もしましたし……」

クジャク獣人がアルバムらしき物を出して詳しい話をしてくれました。

パンダはある日、物心着く前にクジャク獣人に拾われたそうですな。

まるで隠れるようにクジャク獣人が発注した商品の箱に寝かされる形で入っていたそうですぞ。

その段階で親を捜しはしたけれど見つからず、本人も名前以外はよくわからないという事で、やむなくクジャク獣人が世話を始めたのだとか。

当時はぱっと見は耳が黒いクマ系の亜人種っぽい人種ってだけで、身元が分からないとの話だったそうですぞ。

幼少時は割とおとなしい性格だったとか色々と説明されましたが、俺としては微妙に眠くなってくる話題ですな。

お義父さんは真剣に聞いています。

俺はサクラちゃんの寝顔に夢中でほとんど聞き流しますぞ。

「大変だったんですね」

「ラーサ殿の一生は波乱の連続なのだな……この集落が平穏そうで何よりだ」

「ええ……あの子が戦うようになったのは……そうですね、戦場で知り合ったハクコ種の猛者から色々と教わった頃からだったかと思います」

「うむ? ハクコ種?」

「ええ……先ほどの話になりますが、ラーサの初恋の相手が――」

そこでドカドカと急いで駆け寄ってくる音が聞こえてきました。

「おい、何を話してるのさね!」

「何ってラーサ、盾の勇者様にお前をより知ってもらおうとしているんじゃないか」

「あのねー!」

パンダがこれまでにないくらい、声をあげてますぞ。

やがて諦めるようにお義父さんの顔を見てからパンダは腰掛けてブスッとした表情で肩肘をついておりますぞ。

「もう面倒になってきたし、父さんに言われるのが嫌だからあたいが言うよ」

「そこまで根掘り葉掘り聞くつもりはないんだけど……」

「ここまでズケズケ来ておきながらよく言うよ。大方、あたいが何にそんなに金を使ってるか興味があるって話だろ!」

「結果的に言えばそうだけどさ……借金じゃないって話なのはわかるよ。エルメロさんの話じゃラーサさんのツケの代金ってそこまでじゃないらしいし、故郷への送金が全てじゃないって話でもあるし」

パンダがクジャク獣人を睨みますぞ。

「しょうがないねぇ……さっきの話の続きで言えば、小さな戦争に巻き込まれて孤立した街に収められた時の事だよ。危機をハクコ種の奴に助けられてね。縁あってしばらくそいつと一緒に居たのさ。父さんは今でも繋がりがあるんだろ?」

「当人とはないけどね」

「そうなんですか?」

お義父さんが答えるとパンダもクジャク獣人も揃って頷きました。

そして補足する様にパンダが言いました。

「戦死したって話さね。けど、その周囲の親しい者達とは未だに繋がりがあるって関係さ」

「えっと……ラーサさんの初恋の相手なんだよね?」

「小さい頃だからね。初恋っちゃ初恋だろうけど、相手には妻子がいたから元から実るもんじゃないよ」

「へー……ハクコ種って俺が聞いた話だと随分と雄々しい人種だって聞いたな。シルトヴェルトがメルロマルクに敗退した際に権力が失墜したとか」

「うむ。私もそう聞き及んでいる」

エクレアがお義父さんの返答に同意しました。

メルロマルクとシルトヴェルト、双方から認識されているという事ですな。

「らしいねぇ……英知の賢王に作戦負けして歴史的敗退の所為で色々とあったらしくってあたいが父さんに引き取られた経緯もそこから尾を引いた争いだったそうだよ」

クズの逸話ですな。

最初の世界では相当優秀だったと聞きました。

それに色々と作戦勝ちしたとか。

俺もあの時は戦うだけだったのでよくわからないうちにタクトに勝てた感じでした。

あの状態のクズは最初の世界のお義父さんが信頼する程に有能だったみたいですぞ。

「にも関わらずハクコ種が助けてくれたんだ?」

「あの人は他のハクコ種って連中と比べたら大人しい奴だったと思うよ? 力だけじゃなく頭も重要って注意してたね」

パンダが若干照れたような口調でお義父さんの質問に答えますな。

「カリスマも確かにあったさ。あの時、あの方が居るだけで私達は戦時中だというのに安心して寝食が出来ました。今を生きているのも、あの方が守ってくれていたお陰でしょう」

クジャク獣人がパンダの話に合わせますぞ。

「戦いの無い時はラーサは毎日のように稽古をつけてもらっていたね」

「憧れっちゃ憧れていたからねぇ……それくらい雄々しくて、頼りになって、面倒見が良くてね」

なんとも、昔、日本に居た頃に豚の憧れの先輩とかの話を聞いたような感覚ですな。

大体が失恋したり、実は憧れとは大きく掛け離れた外道だったりする事が俺が出会ったケースでは多かったですぞ。

もちろんパンダの思い出を穢すつもりは微塵もありませんし、故人を悪く言うつもりもありませんが。

「なるほど……ラーサさんはその人みたいになろうってしているんだね」

「人を茶化すのはやめろっての!」

パンダがお義父さんに向かって怒鳴りますが説得力が足りませんな。

別にお義父さんは茶化して居ないと思いますが?

「……タイランの不肖の息子って疑惑があったらしいが、実際はどんな事やら……」

後で聞いた話によると問題があったハクコ種の大将の名前らしいですぞ。

パンダ老人がそんな風に補足しておりますな。

「でも亡くなったんだよね?」

「そうさね。別れて随分と経った頃に、あたいも耳にしてね。四大種族のハクコ種の大将だし、結構な土地の管理もしていたらしいんだけどね。あんなに強い奴が呆気なく死ぬんだ。戦いってのはいつ死ぬかわからないもんだね」

パンダは思い人の死を反芻するようにお義父さんに、淡々と語りますぞ。

「で、ここからが本題さね。あんたがあたいの金の行く先がどうも気になるってのはこの辺りと関わっていてね」

「うん」

「あんまり言うんじゃないよ? そこの騎士様もだよ! 言わなきゃ言われるから渋々言ってやってるんだからね!」

「何もそこまで入念に注意しなくても……」

「盾の勇者様ってのは好奇心旺盛だからね。変な所で吹聴しそうだから念を押してるんだよ」

「私はむしろその類はフィロリアル達に聞かれないようにする方がいいと思うぞ」

エクレアが寝息を立てるサクラちゃんを見て言いました。

フィロリアル様が悪く言われていますぞ。

ですが、フィロリアル様達が噂好きなのは事実。

パンダの過去が明るみになればすぐに周知の事実となるでしょう。

なので反論したら逆にフィロリアル様達の立場を悪くしてしまうかもしれません。

ここは無言を貫きますぞ。

「まあねー……あんまり広めるのは良くないのは俺だってわかるよ。節度くらいは持ってるよ」

「そうだと良いんだけどねぇ」

「ラーサさんが嫌がるからあんまり話をしないようにね。元康くんも、フィロリアル達はしゃべるのが好きなんだから」

「ぶーですぞ」

サクラちゃんの真似をしてお義父さんに抗議しますぞ。

お義父さんは困った表情で俺から視線を外しました。

「それでラーサ殿、貴殿の金銭の行く先とどう関わりがあるのだ?」

「……」

非常に言い辛そうにパンダが目線を反らしますぞ。

「命を助けてくれた礼として、余裕がある時にそのハクコの子供達に援助しているんだよな?」

クジャク獣人が言い辛そうにしているパンダの言葉を代弁しますぞ。

ほう、慈善活動ですな。

俺の中でパンダの認識が少しだけ良くなりました。

「母親も後を追うように亡くなったそうでね。仲の良い兄妹ではあるそうなのだけど、妹の方は難病を抱えていると、あの方も言っていたさ」

「ああ……そうさね。言っちゃなんだけどあたいも柄じゃないとは思ってるよ? けど、金に余裕がある時くらい、多少はね」

クジャク獣人の説明に、パンダは早口で捲し立てるように言いますな。

「難病?」

「そうさね。なんでも月に二度、イグドラシル薬剤を服用しなきゃ死ぬほどの難病で、結構な遺産を持っていたけど、あっという間に借金地獄に落ちてやむなく売れるもんを売ってそのまま出て行っちまったって話さね」

「後味悪い話だね……だからラーサさんはお金を?」

「知り合いの伝手で余裕がある時に、薬代の足しにってね……絶対に言うんじゃないよ?」

パンダは出来る限りの殺気を放って俺達を脅しますぞ。

全然怖くないですな。

お前の部屋がきっとファンシーな所為ですぞ。

それにこんな事を吹聴して回る程、俺はクズじゃないですぞ。

またループした際にお義父さんにチクる程度ですな。

「親を失った大変な子に援助かー……立派だね。その子達は今どうしてるの?」

「残念ながら会った事もないからねぇ。どこにいるのかすらも知らないけれど、生きちゃいるくらいは又聞きで耳にしてる程度さ」

「ラーサさんらしくない不確かなやり取りだね」

「うるさいね。勇者が広めたお賽銭みたいなもんなんだよ。汚い仕事に手を染めたりしているアタイの余裕がある時にしている、おまじないみたいなもんさね!」

フンとパンダは腕を組んでへそを曲げますぞ。

そんなパンダにお義父さんが優しく微笑んで、サクラちゃんをなでるように手を伸ばして頬をなでますな。

「別に笑ったりはしないよ。ただ、やっぱりラーサさんは良い人なんだなって思っただけ」

「うむ、とても立派な使い道だ。誇って良い事だ」

お義父さんとエクレアはパンダの行っている事を褒めていますな。

会っても居ない初恋の相手の子供に資金援助とは、俺も立派だと思いますぞ。

援助ですか……う……お姉さんにぼこぼこにされた記憶が。

「ラーサ殿にそんな事情があったとはな……私は傭兵などと穿った目で見てしまった己を恥じている。貴殿のその行ないは騎士として、いや、人として誇れる行ないだと私は思う」

「勘違いはしないでほしいね。金を集めるのだって好きさね」

「誰に似たのやら」

パンダ老人がクジャク獣人に向かって言いますが、クジャク獣人も腕を組んで首をかしげていますな。

「本当、どうしてこうなってしまったのか……」

パンダはそんな二人を面倒そうに手で追い払うようにシッシと振っていますな。

全然似てないし誰譲りなのか特定不可能って事でしょうな。

その場合は本人の資質でしょうな。

「じゃあこの前の稼ぎとかも」

「ここに三分の一、あたいの懐に三分の一、残りは……って感じさね」

「良いと思うよ。やらない善よりやる偽善ってね。いや、この場合は打算とかない訳だし、やる善なのかな?」

「そうであるな。正直、ここにきてよりラーサ殿を知れてよかったと思う」

「仲良しごっこは趣味じゃないよ」

錬を豚にしたような奴ですな。

守銭奴が実は難病の子供の為に支援をしているなど、クロちゃんと仲良く出来そうな気がしてきました。

「んー……」

サクラちゃんが寝ぼけ眼で顔を上げますぞ。

「おはようサクラちゃん」

「んー……まだ夜ー?」

「そうだね」

「せっかくですからお風呂の準備をするさ」

クジャク獣人が立ち上がりどうやら風呂の用意をする様ですぞ。

「んじゃ、ワシは薪でも割っておくか」

パンダ老人も似た様子で家事に戻ったようですぞ。

改めて思いますがパンダの実家では、養父と祖父の二人暮らしなのですかな?

奇妙な関係ですな。花が無いですぞ。

集落が賑やかだから良いのでしょうかな?

「ラーサさんのお父さんってこの集落で商売してる感じかな?」

「離れた町と行商を兼任しながらここの連中に勉学も教えているさね」

「働き者なんだね。お爺さんは?」

「農業とついでに狩りをしてるねぇ。昔は相当腕が立ったらしくってね。家にいると稽古させようとして来て面倒だよ。絶対に明日の朝に稽古させられるさね」

なんて様子でパンダは実家の状況をお義父さん達に説明していたのですぞ。