軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

竜信仰

で、町並みの視察として従業員の生活区域を確認した所……ゼルトブルの路地裏よりも環境が悪い様でした。

戦時下の下町以下……人々は食べて生きているだけで精一杯な感じですぞ。

タクトは一応、錬金術等も併用した医療福祉にそれなりに力を入れて病死等への治療は安く出来ているようでしたが、同時に厳しいノルマを課し、働かねば薬等の支給を打ち切る体制をしていたそうですぞ。

いろんな意味で生かさず殺さず金銭を吸い上げる体制だけは人一倍整っていたとの話。

ちなみにシルドフリーデンでは道路整備として各都市にアスファルトが敷かれる事業が進められていた様ですぞ。

大型トラックなんかも作られ、流通が潤う予定だったようですな。

問題は燃料の確保なのですが……タクトや豚共が秘匿した技術か何かで動く代物だとか?

どうもよくわからないのですが、解析待ちですぞ。

最初の世界では……確かゼルトブルの商人が技術を買い取って魔法エンジンを作ったのは耳にしました。

まあ、フィロリアル様達がいらっしゃるのであんまり儲けにならなかったそうですがな。

どちらにしても徹底的にフィロリアル様を駆逐しようとするこの方針は理解できませんな。

そうして工場視察を終えた俺達はポータルでシルドフリーデンの首都に戻りました。

お義父さんは眉間に拳を当てて頭を抱えていますぞ。

「俺の発明で大儲け、みたいな話の負の側面を見ちゃった気がするよ。回さなきゃ金なんて腐る様なモノなのに貯め込んで、何かする訳でも無かったって……せめて商売で負けた相手への慈悲で補填でもしてくれていれば良い物を……しっかりと潰してるとか……」

「転生者が暴れる所為で色々と文化が衰退するらしいですからな」

「こうやって後世に残り辛い発明品を作っては既存の商品を根絶していたんだろうね……良い物でも残れば良いけど、残らない訳だし、敵も上手い事やってくるね」

ヒトの寿命を超えた、長過ぎる作戦ですな。

敵の思惑通り進み、最終段階になった時、既に負けが確定している、という事でしょう。

そういう意味ではいやらしい敵ですぞ。

「あたいとしては色々と見れてそこそこ楽しめたけどねぇ。戦場で金になる代物を見抜く目を養えたよ」

「ラーサさんは逞しいなぁ……」

「で? 盾の勇者から見て、シルドフリーデンを属国として運用出来そうかい?」

そうでしたな。

今までと違い、俺達の所属はシルトヴェルトとなります。

シルドフリーデンは波に勝つ為に使えるかどうかが重要なのですぞ。

とはいえ、タクトの所為でガタガタになっている様に見えましたな。

「正直賠償金は元より、借金なんかの類で財政は火の車、議員の利益とかを全部没収して回したってどうにかなる未来が思い浮かばないよ」

「そうは言っても盾の勇者の権利を使って賠償金の支払いを止める、なんてのはやめさせた方が良いのはわかってるかい?」

「うーん……正直あの惨状を見た後だと、それくらいはすべきかもしれないと揺らいじゃうね」

「あのね。あたいもシルトヴェルト代表四種共に言われてるから詳しくわからないけどね。仮に賠償金請求を止めるとね。各国に示しが付かないし、悪しき前例になりかねないって話だよ」

「……そうなんだろうね。どこまで八方塞がりなんだか……タクト残党を捕えて奪われた金銭を取り戻しに出るのが建設的に見えて来るよ」

そこまで追い詰められているという事でしょう。

お義父さんでも匙を投げる程とは、奴等の執念も恐ろしいですな。

「焦土にしますかな? 残党を炙り出せますし、ゼルトブルに一坪幾らかで売れば金にもなりますぞ」

「元康くんは黙っててね。まだ……国民が一丸になればどうにか出来る可能性もあるし、あんまり言いたくないけど、大きく改革をしなきゃいけないだろうね。ああ……真面目にがんばる政治家な気分だよ」

真面目な政治家がいるのですかな?

俺のイメージとの違いが、お義父さんの世界にもあるのかもしれません。

「フォーブレイの方でタクトの財産を没収をしたらしいけど、それでもかなりの量が流出しちゃってるんだろうな……タクト個人の金だっただろうし、他にも隠し財産があるはず、という話もあるみたいだよ」

「あんまり埋蔵金に頼るのは感心しないね。そもそもその金はシルドフリーデンの物じゃないだろう?」

「そうだね……名目的にはフォーブレイ行きは確実だね。こりゃあ揉めそうだ。どこからどこまでがシルドフリーデンの金なのか調査させないと……」

なんて感じにお義父さんは証言を纏めてからシルドフリーデンの議員達との会話に臨む事になった様ですぞ。

重い空気が辺りを支配しております。

議員達もお義父さんがタクトの工場視察をしたのを把握しておりますからな。

「シルドフリーデンの生産工場、確かに拝見しました」

お義父さんがやや仰々しい言い回しで議員達に説明しますぞ。

「表と裏の状況が随分と激しい様だね。しかも生かさず殺さず……奴隷商人さえ顔を青くさせる様な労働環境だったよ」

奴隷商人ですかな?

確かにある意味、奴隷を見させられた気分でしたな。

ですが……確かに、奴隷よりも労働環境は悪いかもしれませんな。

あれでは奴隷紋が無いだけの悪環境に身を置かれた奴隷ですぞ。

ちなみにこの世界での奴隷と言う立場は、拷問奴隷や決闘奴隷、性奴隷等を除けば、それなりに待遇は悪くないのですぞ。

あくまで労働を強いるだけですからな。

奴隷はそれなりに高価な資産ですからな。

体を壊されては元も子もないと言う事でしょう。

「よく暴動が起きなかったもんだって感心するね。いや、暴動も鎮圧されて黙殺されていたんだっけ……さすがに同情するよ」

「は、はい……」

タクト派閥の連中は一応、限界突破するほどの強さを持っておりますからな。

下手に暴れようものなら力によって抑え込まれたのでしょう。

しかも官僚達は腐り切っていてズブズブだった……どうしようもない状況だったのでしょうな。

どこの修羅の国ですかな?

これだけの国土があってこんな政治では先が思いやられますぞ。

そもそもゼルトブルとフォーブレイを足して割った後、色々と劣化した国ですからな。

「まず方針としては自国の生産能力の向上を図りつつ、タクト残党を捕縛、奪われた膨大な金銭の回収を行い、自国の生産能力を更に引き上げないとね。その為には国民に増税をしないと、多大な賠償金を支払う事は不可能だ」

「で、ですが! そんな真似をすればそれこそ暴動が起こります! 勇者様方はネリシェンやタクトと同様にシルドフリーデンから搾取を行うつもりですか!?」

「随分と強気に出ますな。ではこの国を消し飛ばして無かった事にしますかな? そうすれば金の心配など無用ですぞ」

「……別にこっちも好きでやっている訳じゃないんだけどね。少なくともまだシルドフリーデンの国民の生活に多少の余裕がある箇所が見受けられるから言っているだけだよ」

富裕層と下級層の差が激しいのがシルドフリーデンの特徴だそうですからな。

この差を縮める事にお義父さんは活路を見出したのでしょう。

「工場区画の者達は既に支払っている様なものだからそのままとして……残された裕福な者達にはその分の補填をするしかない。賠償金支払いの時間稼ぎは可能なはず。今の状況だと国外逃亡はタクト派閥として扱われる事になるだろうし」

お義父さんの指摘に議員達は拳を握りしめて異議を言いたそうにしております。

ですがそれは不可能ですからな。

俺が許しませんぞ。

しかし……議員、貴族等はどこでも碌な奴等が居ませんな。

「勇者様の意見、理解致しました。ですが一つ……とても大きな問題が我がシルドフリーデンの国民調査で判明しました」

「……今度は何?」

「まず富裕層と中流層の国民に関してなのですが、とある理由により盾の勇者様の権威には従えないとの意見が大多数となっております」

お義父さんがシルトヴェルトから派遣されている者達に視線を向けると、同様に頷かれましたな。

まだそんな事を言っているのですかな?

「下級層の者達はシルトヴェルトと同じく盾の勇者様を信仰していらっしゃるのですが……」

「下級層と富裕層、中流層が同じ宗派なのにどうしてそんな事に? その理由というのは?」

お義父さんが面倒そうに頭を傾げながら尋ねますぞ。

「えー……それは……我等シルドフリーデンで信仰となっている、アオタツ種と神竜の存在が大きいからです。その二方の寵愛を受けていたタクトだからこそ、槌の勇者様を押し切り、国民の支持も信頼も厚かったのでして……」

そう言えばここまでの経緯で槌の七星武器を持った勇者に関して完全に忘れ去られていましたな。

誰も意識していなかったくらい、肩身が狭いですぞ。

話によるとシルドフリーデンがどうにかこうにかシルトヴェルトから槌の七星武器に関する権利を毟り取った歴史があったとか。

にも関わらずこのような扱い。

既にタクトによって消されている訳ですが、実に哀れですな。

ですが安心すると良いですぞ。

最初の世界ではお姉さんを所持者に見出されておりましたからな!

お義父さんの片腕という一番の大役を担う武器にまで上り詰める……七星武器の出世頭ですぞ!

今回に関しては知りませんが。

「つまり、ただ反発しているって訳じゃないんだ」

そういえば労働者達はお義父さんに好意的な反応でしたな。

あれも盾信仰が根強い下級層だったからという事でしょうか?

「神竜というのは?」

「はい……話に拠ればシルドフリーデンで崇められる神竜の再来と呼ばれるドラゴンを勇者様方が討伐してしまったとの話。仮にシルトヴェルトから新たなアオタツの者が派遣されても、この問題をどうにかしない限りは富裕層と中流層から募るのは難しいかと」

なんちゃって民主主義だからこそ起こる面倒臭い所ですな。

とはいえ、理由がハッキリしていれば解決方法もありそうですぞ。

しかし神竜……ドラゴンですか……。

「つまり表だった宗教は盾の勇者を掲げているけど、実際には国内に二つの宗派があって、中流より上の層が竜信仰、下級層は盾信仰が根強いって事なのか」

工場の労働者達が態々社畜ドリンクの現物を残していたのはシルドフリーデンの上層部……つまり富裕層を信頼していないという感情の現れかもしれません。

富裕層と下級層の間に宗教という大きな認識の溝が出来ているのですな。

ここがシルトヴェルトとの大きな違いという事でしょうか?

本当に面倒な連中ですな。

などと考えているとシルトヴェルトの者達が言いました。

「シルドフリーデンは自身が敗戦国である事を理解しているのか?」

「貴様等は侵略者であろうが!」

「盾の勇者様と槍の勇者様の慈悲によって現状で済んでいるのだぞ? 世界の敵タクトと共謀していた国なのだ。財産を全て没収し、国民全てを奴隷としてもおかしくないのだぞ!」

シルトヴェルトの者達は相当お冠みたいですな。

さすがの俺でもそれはやり過ぎだとは思いますが、気持ちは理解出来ますぞ。

最終的に面倒臭くなって全て丸投げして良いのなら、それでも良いのではないですかな?

「自分達の立場をわかっているのか!」

「ですが、現状タクト一派への捜査を国民が妨害しているのも事実。この問題をどうにかしなければ難しいかと。罰せられる覚悟の上で申し上げております!」

ドンと力強くシルドフリーデンの議員の一人がお義父さんに向かって言いました。

なら罰してやれば良いのではないですかな?

自分達の立場を理解させてやれば良いですぞ。

そもそもタクト派閥を匿った者はフォーブレイ直々に世界の敵というお触れが出ているのですから、財産を没収する大義名分に出来るはずですぞ。

ばれなければ問題ないと思っているのなら救いようがないですな。

そんな無礼な態度にシルトヴェルトの者達が再度立ち上がろうとした所をお義父さんが片手を上げて止めました。

「つまり……シルドフリーデンの宗教的な所で盾の勇者以外の信仰対象として、アオタツ種、もしくは親しまれていた強力なドラゴンを味方に付けない限りは、富裕層と中流層は金を死んでも出さない……と?」

「はい。ですので、どうか勇者様方に国の新たなシンボルとなるべく強力なドラゴンを従える事を提案いたします」

「まあ、それ位なら……」

と、お義父さんが譲歩しようとしております。

直後、俺の頭にこんな声が響いてきますぞ。

『なのーん。出番なのーん』

確かこんな感じだったはずですぞ。

お前などお呼びでないですぞ!

ブリューナク!

『後七話で登場なのーん!』

今日はエイプリルフールではないですぞ!

俺は頭の中でライバルを光にしてやりました。

お義父さん、惑わされてはいけません。

「ドラゴンを従える……? 話になりませんな」

ドラゴンはみんな敵ですぞ。

応竜になったり、媚を売ったり、ループに便乗したり、チョコレートになったり、喋れるのに言葉を喋らなかったり、と迷惑しか掛けてきませんからな。

特にループに便乗してお義父さんに擦り寄るなのなのうるさいアイツなど論外ですぞ。

前回の世界の様に、大人しくしていれば良いのですぞ。

「一人一人出て来いですぞ! いえ、今から殺しますぞ!」

俺がテーブルに乗って槍を構えますぞ!

よりにもよってお義父さんにドラゴンを育てろとは、どういう了見ですかな!

絶対に許しませんぞ!

「元康くん落ちついて!」

お義父さんが俺を注意していますがこれは譲れない問題ですぞ。

ドラゴンがいるから何なのですかな?

そんな信仰をする様な連中は駆逐してやりますぞ!

しかもお義父さんが用意しない限りタクト派閥を匿う等、言語道断!

万死に値しますぞ。

むしろドラゴンなど不要ですぞ。

前回のループでもそれは証明出来ております!

限界突破など無くても俺とお義父さんさえ居ればみんなでどうにか出来るのですぞ!

「気持ちはわかるけど、今はどうにか抑えて!」

お義父さんが立ち上がって俺を羽交い締めにしました。

ええい! お義父さんでなければ振り払っている所ですぞ!

俺が力を抜くとお義父さんは言いました。

「……こんな状況でも国を想って俺達に向かって強く意見をした事は高く評価する。わかった……けど少しだけ待って欲しい。会議も行き詰っているし、少し休憩を挟もう」

「はい。こちらこそ申し訳ありません。本来私の様な者が意見するなどあってはならない事かと思います。ですが、どうか……勇者様方が提案を受け入れてくれる事を祈ります」

そう言って俺達は別室で休憩する事になったのですぞ。

お義父さんは休憩室まで来るように手を握って俺を連れて来ました。