軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゾウ獣人

何がドラゴンで神竜ですぞ。

思い出しても腹立たしいですな。

あの議員……八つ裂きにしてやりますかな?

「お義父さん、何故あんな暴論を素直に聞いているのですかな!?」

「あの人はおそらくまともな人材だよ。槍の勇者の強さ……元康くんがどんな人物か位は伝わっているはずなのに意見したんだ。国の為に死ぬのも覚悟だったはずなんだよ」

お義父さんは先ほどのドラゴン推進野郎を高評価していますぞ!

それは大きな間違いですぞ!

ドラゴン共は権力者に媚を売るのが上手いだけなんですぞ。

「それに、ここまで酷い状況になっている所に具体的な改善案を持ってきてくれた」

「ここまで面倒ならシルドフリーデンなど放置で良いのではないですかな?」

ハッキリ言って、お義父さんがシルドフリーデンの面倒を見てやる理由などありません。

タクトの搾取によって酷い状況だとは思いますが、そんな事を言っている余裕もないはずですぞ。

「……このまま放置するともっと面倒な事になると思うんだ」

「そうなのですかな?」

「シルドフリーデンは富裕層と下級層で大き過ぎる亀裂が出来てる。今まではタクトが幸せな夢を見せて誤魔化していたけど、それが無くなった。つまり暴動が起きる寸前なんだ」

幸せな夢……タクトが居る内は上手く回っている様に見えるのでしょう。

しかし、リソースに限界がある以上、全ての者を満足させる事は出来ません。

得をする者と損をする者は一定数存在するのですぞ。

実際は見えない様に隠した誰かに負担を押し付ける事で回していたという事ですな。

その者達が下級層という事になります。

下級層達による暴動が起きれば、敗戦によって多額の賠償金を払わなければいけない状況に加え、内乱という事になりますな。

これ自体はそれ程の問題ではないと思いますが、内乱で混乱している状況はタクト残党にとって都合が良い状況という事になります。

「それでも! ドラゴンなんぞ不要ですぞ!」

「だけどこのままじゃタクト派閥の残党を匿おうって勢力は一定数残る。匿った場合は一族郎党罰せられるとしてもね。相手を黙らせる程の金銭、コネクションを奴等は持っているんだ。そうでなくても宗教っていう感情で動く人達だから出来れば抑えておきたいんだけど……」

くっ……あの時、俺が取り逃した事でここまで厄介事になってしまうとは。

幾らなんでも酷すぎますぞ。

あの雑魚その物のタクトがここまで面倒な問題を残すとか、いい加減にして欲しいですぞ!

「金も貯め込んでいて、色々と裏でも繋がりがあるなんて面倒極まりないねぇ……」

「タクトは転生者……俺達と違って何年も前から動いていた訳だから、地力の差が出た感じだね。そして、本人が問題を隠蔽していて、居なくなると噴出する。元康くんの話していた転生者の特徴に一致する流れだよ」

……転生者はこの様な流れで後に残る物を抹消していたのでしょう。

本人が居なければ成立しない状況とでも言えば良いのですかな?

タクトが消えたから最初の世界でも、この世界でも、シルドフリーデンは崩壊していく事になる、という事でしょうな。

「復讐心で動いている連中がこんなにも面倒だとは思いもしないよ……もっと出来る事があるだろうに……とは言ってもタクトから得られる利益や立場に甘んじていた連中なんだから当然でもあるのかな」

シルトヴェルトに来たお義父さんはそう言った事で深い悩みを持っていたのを覚えております。

言い方は悪いかもしれませんが、この世界はループ的に初期の世界なのですぞ。

故に情報が少なかったループなのです。

俺が伝える事が出来た情報も少なかったので、お義父さんが取れる選択肢も多くはありませんでした。

だからこの様な状況になっているのでしょう。

「豚共の親戚一同は全て駆逐すれば良いだけなのですぞ!」

「既に世界規模でやってるよ。だけどそう言った勢力も潜伏して機会を窺ってる。フォーブレイやシルトヴェルトの権力があったとしても……全てを駆逐出来る訳じゃないんだ」

ああ、最初の世界や今までタクトを迅速に処分出来た世界はあんなにも楽だったと言うのを痛感しますぞ。

害虫の様な奴等が増殖していてイライラしてきますな。

軍でも組織して群がってくれば俺が滅ぼしてやるのですが。

「まあ……この辺りの知恵が回る様な者はタクト派閥の中でもそう多くはないと思うけど、そう言った連中を逃がしてしまったのは痛かったね」

「そのツケでお義父さんがドラゴンを育てるのですかな!?」

「元康くんが嫌がるなら俺がやるしかないじゃないか」

「お義父さんが育てるのもイヤなんですぞ!」

ドラゴンはどいつもこいつも碌な奴が居ないのですぞ。

妙に情けない自称最弱、性転換を望む変態、そして無駄に肉食の媚び媚びですぞ!

そしてタクト至上主義の見当違い。

……俺の感情を抜きにしても碌な奴が居ないのではないですかな?

こんな奴等の仲間を増やしてどうするのですぞ!?

「槍の勇者はワガママだねぇ……たかがドラゴンを一匹育てるだけじゃないのかい?」

「ワガママではありませんぞ! サクラちゃんだって良い顔をしませんぞ! フィーロたんだって嫌がりますぞ!」

常にフィーロたんはドラゴン共と喧嘩をしておりました。

例え何があろうとも、俺はこんな状況でお義父さんにドラゴンを育てさせる訳にはいかないのですぞ。

今までのループではやらねば波を乗り越えられないと判断していたから渋々了承していただけなのですぞ!

もう波は乗り越えて平和になる事がわかっている今、不要な連中なのですぞ。

「元康くん落ちついて」

「落ちつけないのですぞ! ドラゴン何ぞいなくたって、限界突破をしなくても世界は守れるのですぞ!」

「限界突破……? そう言えばタクトのドラゴンの核を利用すればLv限界突破の儀式が出来るんだったね」

しまった、ですぞ!?

お義父さんが考えの片隅に置いていた限界突破に気付いてしまいました!

戦後処理やシルドフリーデンの問題で忙しかった事もあり、完全に忘れていたという事でしょうな。

前回のループでは不要との印象操作でどうにかしたのに、ここでまたも俺は大ポカをしてしまいました。

ですが! 俺はバカじゃないですぞ!

「無くてもどうにでもなるのですぞ!」

「そう言えば元康くん……このループに来るまでにループに便乗する様になった厄介なドラゴンがいるとか言っていたよね?」

うっ……このループに戻ってきた際、感極まった俺はお義父さんに多少ではありますが色々と語っていました。

以前、敵の情報を知る事は重要だと教わりましたからな。

それを素直に実践したのですぞ。

「お、お義父さん?」

やがてお義父さんは視線を落として熟考を始めてしまいました。

サーっと先ほどまでの怒りが冷めていく様な気がしますぞ。

元康、お前は致命的なミスをしてしまったな?

そんな俺自身の声が聞こえてきた気がしますぞ。

だ、大丈夫ですぞ。

お義父さんがどんな意見を言ったとしても俺が聞き入れる事はありません。

ドラゴンなど、邪魔でしかないのですからな。

前回のループがそれを証明している以上、揺らぎ様の無い真実ですぞ。

「うん……この方向なら……」

そうお義父さんが呟いたかと思うと顔を上げますぞ。

「何か良いアイデアがありそうだね。槍の勇者を納得させる事が出来るか、見物だね」

「まあね」

「お義父さんのお言葉だとしても、ドラゴン育成は認められませんな」

「落ちついて元康くん。少し視点を変えて見るんだ」

視点を変えても揺らぐ気はしませんぞ。

数多のループ経験からドラゴンを全方位から観察してきました。

その結果、ドラゴンが敵であると結論付けたのですぞ。

「元康くんが話をしていたドラゴンって、元康くんと同様にループする……確か槍の中に記憶を保存して乗り移る形式だったよね」

「そうですぞ。それが何なのですかな?」

「よく考えるんだよ、元康くん。君がこの世界に来て悩んでいるのは何? 既にいるサクラちゃんが別世界ではフィーロちゃんなんだよね?」

……?

どうしてドラゴンの話をしているのにフィーロたんとサクラちゃんの話になるのですかな?

「そ、そうですぞ」

お義父さんの説得に……何やら俺自身の背筋にイヤな汗を感じますぞ。

フィロリアル様と鍛えた野生の勘が告げております。

お前はお義父さんの説得に勝つ事は出来ない、と。

絶対に拒絶してみせますぞ!

「じゃあ……そのドラゴンを説得して方法を理解すれば、この世界では無理だとしても以降のループ世界でサクラちゃんになっても、フィーロって子へと記憶を引き継いでくれるんじゃない?」

「なんと!? 俺と永遠にフィーロたんが共に居てくれるのですかな!?」

グフ!?

ゴスッとドラゴン駆逐を掲げる俺の中の元康が、お義父さんの拳を受けて倒れ込んでしまいました!?

『う、受け入れてはいけませんぞ。そんな提案……絶対に失敗するのですぞ』

ドラゴン駆逐元康! もう立ち上がるなですぞ!

ここでフィーロたんへの愛元康がドラゴン駆逐元康に近寄ります。

『全てはフィーロたんと真の平和を得るためなのですぞ! その為に、一時の痛みは受け入れるべきなのですぞ!』

ゴスッとフィーロたんへの愛元康がドラゴン駆逐元康を踏みつけ追い打ちをしました。

そして馬乗りになり、逆エビ固めをドラゴン駆逐元康に仕掛けますぞ。

『ぐああああああああ――何をするのですぞ! ドラゴンの力を使うなど恥を知れですぞ! お前等、絶対に後悔するのですぞ! 呪ってやりますぞぉおおおお!』

カンカンカン!

と、俺の脳内で勝利者のコールと無数の元康達の喝さいが起こりますぞ。

そしてヒーローインタビューの如く、フィーロたんへの愛元康がマイクを取って提案しました。

『何もライバル共を利用しなくても新たなドラゴン……どんな事にも例外はありますぞ。悔しいですがフィロリアル様と仲良く出来てしまったドラゴンは存在するのですぞ』

な、何故、その様な禁忌をここで言い出すのですかな!?

お前はフィーロたん愛元康ではなかったのですかな?

しかしながら事実、過去にその様な状況が存在しました。

『その子を竜帝にさせれば良いのですぞ。竜帝となればスペックはきっと同じですぞ。そいつに槍を解析してもらってライバルが使っていたスペースを利用すれば良いのですぞ』

おお! それは名案ですな!

フォーエバー!

エターナルフィーロたん計画ですぞ!

全世界、全ループが望んだ最強のフィーロたん誕生ですな!

「それは名案ですな! 是非ともやるべきですぞ!」

俺の言葉にお義父さんは優しく頷きました。

さすがお義父さん、相談しておいて良かったですぞ。

ループにおける問題の解決に向けた具体的な案が浮かんだので、やる事がハッキリしましたな。

うぉおおおお、がんばりますぞー!

「ほー……こりゃ凄い。アンタも槍の勇者の扱いに手慣れたもんだねぇ」

「まあ、大分馴れて来たからね。この提案なら頷いてくれると思ったんだ」

俺だってお義父さんの素晴らしいお考えを聞けば心を入れ替えますぞ。

それだけの魅力がお義父さんの話にはあったのですからな。

「ですがお義父さん、育てるドラゴンはしっかりと選定させてもらいますぞ」

「元康くんが納得出来るならそれで良いよ。じゃあシルトヴェルトに戻って倉庫に保管していた竜帝の核を入手しに行こうか」

と言う訳で方針が決まった俺達はシルドフリーデンの者達との会議に戻り、提案を受け入れる事が決まったのですぞ。

そして俺達は……その足でシルトヴェルトにポータルで戻る事になりました。

一瞬でシルトヴェルトの城へ到着ですぞ!

一足先に戻って居たシュサク種の代表とゲンム種の翁が俺達を出迎えてくれました。

「――と言う訳で、シルドフリーデンでの支持率を上げるためにドラゴンの育成をする事になったんだ」

「嘆かわしい者達だ……」

「そう言うてやるな。元々シルトヴェルトに馴染めなかった者達が作った国。盾の勇者様への信仰が少ないのもわかり切っていた事じゃろう」

それぞれの代表が答えますぞ。

当然ではありますが、シルドフリーデンの連中に対して軽蔑的な反応ですな。

「そもそも強すぎる信仰心故にワシ等も盾の勇者様を困らせていたじゃろう? 本来はシルドフリーデンくらいの信仰者の方が勇者様方のお力にもなりやすかったのかもしれん。もちろん、タクト一派等の野心を持つ者を除外してだがの」

「しかし……」

「ゆくゆくドラゴンを通じてシルドフリーデンも盾の勇者様を信仰するように導けば良いだけじゃ。ここが新たな歴史の始まりだと思えば良いのじゃよ」

そうですな。

お義父さんはシルドフリーデンの者達に教育を施しているのですぞ。

つまり、俺もフィーロたんとループ出来るという新たな歴史の始まりにいるのですな。

何とも胸が熱くなる展開ですぞ。

ループするフィロリアル様……今年をループフィロリアル元年と名付けましょう。

「……わかりました」

シュサク種の代表は一歩下がりました。

「では城の宝物庫に収めた核石を献上致します」

そう言って兵士達に指示を出し、お義父さんが注文した核石を取りに行かせました。

フィーロたんとループする為に必要な材料だと思えば、竜帝の核石への嫌悪も多少は減りますな。

時間に余裕が出来たらもう少し集めておきましょう。

「ではその間に……」

何やら妙な雰囲気を宿しながらシルトヴェルトの代表二種は怪しげな笑みを浮かべました。

お義父さんもそんな両者に向かって怪訝な顔を向けております。

こやつ等……一体何をするつもりですかな?

「彼女をここに……」

「既に待機させております」

「では呼んで参れ」

なんてやり取りの後、若干の大きな足音と共に玉座の間に一人の獣人が正面からやってきました。

そやつは……大きなゾウ獣人ですな。

飾り立てた騎士の衣装でやって来て、玉座に座らされたお義父さんに向かって腰を落として敬礼をしました。

「お?」

ここでパンダがゾウ獣人に向かって何度か瞬きをしながら声を上げました。

お義父さんは代表二種に向けて首を傾げながら眉を寄せております。

「彼女はエルメロ=プハント。シルトヴェルトでも有数の力を持つ家柄に属し、世界各地を回って見識を広げる旅をしていた者でもあります」

「物は言い様だねぇ……家を継げないからって半ば好き勝手に諸国漫遊していた名ばかりの放蕩なんちゃって騎士じゃないさね」

パンダがそう言うとギロッとゾウ獣人がパンダを睨みますぞ。

ですがそれも一瞬の事で、お義父さんの方を見て緊張した様子で敬礼のポーズを取り続けています。

お義父さんはパンダの方を見て知り合い? って感じで合図を送りますぞ。

するとパンダは頷きました。

「昔、ゼルトブルで力試しをしていた時にちょいとね。戦闘に関しちゃ……あたいの知る限り、勇者の庇護を受けた者達とタクト派閥を除いたら五番以内に入るよ」

「へー……それで、そんな人がどうしてここに?」

「彼女は此度の騒動の後、フォーブレイ方面に派遣され、タクト残党の重要人物ナナ=アルサホルン=フォブレイを捕縛した立役者でございます」

どこかで聞いた様な名前ですな。