軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

矢印

「ぶー……サクラ、ナオフミ達と一緒に行きたいのにー」

「コウもーリファナと遊びたい」

「我慢するのですわ。どうやら非常に不服ですが、ドラゴンと交渉しなくてはいけない案件、いえ……この案件が終わればドラゴンが傘下に下る……遠回りに私達が上位であるのを示す事が出来るのですわ」

「んー? どういう事ー?」

「戦力の為にイヤイヤ私達に、上限突破のクラスアップをするのですから、ドラゴンからしたらこれ以上無いほどの屈辱であるはずですわ」

ユキちゃんがフフフと笑いながらサクラちゃんとコウに説明しましたぞ。

おお! さすがユキちゃん、賢いですな。

「若干黒いですね」

「そうだな。天然に見える中で黒い奴が混じっている。それがフィロリアルだな」

「錬さんの場合、クロさんは完璧に黒歴史ですよね」

「う!? それとは関係ないだろ」

錬は言葉に詰まりながら樹に言い返しますぞ。

俺はユキちゃん達を宥めながらその様子を聞いております。

「山にピクニック! 何か楽しそう!」

「うん!」

「強い魔物が出て来て危険なんだから十分に気を付けるのよ。お姉さんとナオフミちゃんとの約束よ」

「「はーい」」

「じゃあ……行こうか。元康くんは道を知ってるよね?」

「もちろんですぞ。では行きますかな」

俺が先頭に立って道案内とばかりに歩き始めました。

東の村は前回と同じくまったく荒廃しておりません。

ま、性根は腐りきった連中でしょうが仕留める意味はありませんな。

で、俺は前回と同じくライバルの親が本来は死ぬであろう場所を目指して歩き始めました。

その道中、さすがの俺も違和感を覚えましたぞ。

「……おかしいですね」

樹が先に気付きました。

「何が?」

「こんな山奥まで歩いているのに魔物の一匹にも遭遇しません」

「そういえば……そうだね」

「勇者である俺達の強さを感じ取ったんじゃないのか?」

「それにしては変じゃない? 言っては何だけど一匹も出て来ないなんてさ」

「確かにそうですな」

前回来た時も魔物が出て来て襲いかかってきましたぞ。

にも関わらず不自然な程、魔物の気配がありません。

「こうして歩いている限りは平和な山にしか見えないわねー」

「うん。凄くのどか」

お姉さんとお姉さんのお姉さんが山を見渡しながら答えます。

そうですな。

完全に勇者達が揃って息抜きに登山をして居る様な構図ですぞ。

「元康くんは何か知ってるの?」

「わかりませんな」

こんな事は初めてですな。

そういえば最近、不自然にメルロマルク内で野生のドラゴンと遭遇しませんぞ。

ドラゴンの宝や経験値を目当てに探しまわったのに、ことごとく見つかりません。

一応、他国に遠征して山奥で戦っておりますな。

「うーん……こういう時こそ警戒を強めた方が良いかもしれない。みんな気を付けてね。俺も流星盾は切らさない様に行くから」

「尚文さんは役立ちますよね」

「不意打ちに対応できるから便利だな」

「ゲーム知識を基準にしていたらバカにしているでしょうが、実際にこうして守ってもらっていると羨ましく思う時がありますよ」

「そこ、お世辞は良いから、受けることしか出来ないって結構不便なんだよ?」

「わかっている。サンドバッグになって耐えるだけなんてストレス溜まりそうだから尊敬してるんだ」

「とんでもない事を言われた気がする」

お義父さんががっくりと肩を落としておりますぞ。

「大丈夫。私やラフタリアちゃん、サディナお姉さんがなおふみ様の代わりに戦うから」

「うん!」

「そうね。守る事しかできないナオフミちゃんだけど、お姉さん達と狩りに行くと、色々と助かるわね」

「大きな魚の魔物とかの突進を受け止めて、サディナお姉さんの攻撃を補助してたのは凄いと思った」

お姉さんの友人は我が事の様にお義父さんを褒めたたえますぞ。

そうでしょうそうでしょう。

お義父さんこそ、最強なのですぞ。

「リファナちゃんやラフタリアちゃんもがんばってるもんね。とりあえず注意して行こう」

なんて感じに、前回と同じくライバルの親が出現する場所へとたどり着こうとしておりました。

「お義父さん、交渉は任せますぞ」

「うん、わかったよ。元康くんも交渉材料に手土産を宜しくね」

「もちろん、持ってきてますぞ」

こんな事もあろうかと、俺はタクトのドラゴンから採取した核を袋に詰めて持ってきました。

実は俺自身が魔法でコーティングして封印状態にあります。

何らかの手で俺の手を離れたとしても簡単には解けませんぞ。

仮にタクトのドラゴンが核石の状態で暴れても即座に打ち砕いてやりますぞ。

それくらい厳重な封印を俺はして持ち運んでおります。

注意しないと行けないのはドラゴンが混ざった魔物にこれを奪われてしまう事ですからな。

乗っ取られる危険性がありますぞ。

「じゃあ……目的の場所に付いたら、出てくるまで待機しようか」

なんて様子で、俺達はライバルの親が本来死んでいる開けた場所に付き……首を傾げました。

「ん?」

「なんだ?」

「えーっと?」

お義父さん達が揃って俺に視線を向けます。

俺も首を傾げますぞ。

ライバルの親が死んでいるはずの場所は若干窪地になっている場所なのですが……そこに見覚えの無い矢印が刻まれておりました。

そして、矢印の行く先には盾の形をした中にハート型が刻まれていますぞ。

「なんですかな? これは」

「元康くんがわからない事を俺達が理解するのは難しいと思うけど?」

「尚文さん、待つんですか?」

「うーん……とりあえず少し待って何事も無かったら矢印の方向に歩いて行ってみるしかないかなー……」

「露骨に罠臭いな。全く関係の無い、誰かのいたずらだと思いたい所だが、そんな事は無いだろう」

そんな訳で、俺達はしばらく、ライバルの親が出てくるのを待っていました。

しかし出て来る気配はまったくありませんぞ。

前回はすぐに出てきたはずなのですがな……。

雑談交じりに待機していましたがいい加減煩わしくなってきました。

「しょうがないですな。助手がいるはずの洞窟へ偵察に行きますぞ。少々拗れるかもしれませんが待たせたのが悪いのですぞ」

「そうだね。無駄足になる訳にはいかないし……じゃあ行こうか」

「やっとか。いい加減村に帰るか考えたくらいだぞ」

「交渉事ですから、僕達は不必要ですもんね」

「よく考えたらなんで俺達が一緒にいるんだ? 帰った方が良くないか?」

「そんな元も子もない事言わないで付いて来てくれても良いじゃないか」

お義父さんが半眼で錬と樹に言いましたぞ。

「わかってますって」

「相手が相手だしな。その助手って奴も気になる」

「そうですね。事の成り行きは任せますが、傍観者として状況を楽しませてもらいますよ」

お義父さんは完全に呆れたとばかりに錬と樹を見ました。

「はぁ……完全に傍観を楽しむつもりとか……まあ、付いて来てくれるだけ良いけどさ」

そんな訳で矢印の方角に俺達は歩いて行きました。

道中、俺はライバルが宿ったと思わしき卵の事が脳裏に何度も通り過ぎていきました。

まさかですぞ。

まさかライバルが先回りしていたとかありえるのですかな?

物理的に難しいと思いますぞ。

野生のドラゴンとなっているライバルが、こんな短い期間でのし上がって来れるのですかな?

きっと気の所為ですな。

なんてやっていると矢印は、ライバルの親の巣穴まで続いておりました。

「えーっと、あそこで良いのかな?」

「完全に僕達を招待してません?」

「だな。何が出てくるかわからないが、行くしかないだろ」

「嫌な予感がしますな」

そんな感じで……巣穴の中を見ますぞ。

何故か今まで来た時よりも大きく掘削が進み、ちょっとしたホールみたいになっております。

宝を含め、ライバルの親は何処ですかな?

確かライバルの親のハーレムがここにあるはずなのですぞ。

その奥に……何やら大き目な石造りの玉座っぽい物がある様に見えましたぞ。

「……なーの。お食事中に来たなのー?」

玉座の方からいやーな声がしましたぞ。

「ここは違った様ですな。ささ、お義父さん達は早く帰るのですぞ」

「も、元康くん? 凄く露骨な態度が非常に気になるんだけど?」

「ああ、何か声が聞こえてきたぞ?」

「危険な魔物でもいたんですか?」

「ある意味正しいですぞ」

バアっと洞窟内の壁に掛けられていた松明が一斉に明かりを灯し、天井にも謎の明かりが出現しました。

雰囲気は完全に何処かのRPGとかにある魔王の出現ですぞ。

「お迎えごくろう、なの!」

明かりが灯り、石造りの大きな玉座には……一匹のドラゴンが座っておりました。