軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四霊結界

「ユキちゃん達の被害は?」

と、お義父さんが尋ねると助手もユキちゃんも顔を逸らしますぞ。

「倒す事は出来たのですが、使い魔の攻撃が苛烈で、被害者は多数です……わ」

そういえばみんなボロボロですぞ。

特に傷は無いのは俺とお義父さんだけですな。

それだけ困難な任務だったのですぞ。

「で、霊亀が死んだかと思ったその時……霊亀の奴、淡い光となって消えちまったんだよ」

「光となって消えた……?」

「そういえば……」

俺は辺りを見渡しますぞ。

先ほどまであったはずの応竜の死骸が欠片も見当たりません。

「……麒麟も倒した時に死骸があったけど、あの光が通った後に消えたね」

「鳳凰もですわ」

お義父さんが深く考え込みますぞ。

「ところでお義父さん、俺の視界にループする時に手にしている槍、龍刻の長針の効果。分岐する世界というアイコンが出てますぞ」

「え?」

俺はお義父さんに視界に浮かぶアイコンと選択肢、そして少しずつ減って行く残り時間を説明しました。

「それ……あーもうなんでかわかったかもしれない」

「どういう事ですか?」

お義父さんがウンザリした口調で手で顔を覆っています。

そこに女王が駆けよって尋ねました。

なんですかな?

お義父さんは詳しいですな。

婚約者や怠け豚も辺りをキョロキョロと見渡して不安そうにしていますぞ。

「たぶん……俺達は四霊を倒す事に失敗したんだ」

「ど、どういう事ですかな? 俺達はちゃんと倒しましたぞ」

「いや、まあ四霊自体を倒す事は半分は成功したんだけど……それよりも先に四霊の目的が遂げられちゃったんだよ」

「詳しく教えてほしいですぞ」

「つまりね。世界の生命の三分の二を犠牲にする事で波から世界を守る結界を作る。その目的を、霊亀が達成しちゃったんだ。最後の一撃で」

コップに並々と入った水の淵に僅かに水滴を垂らす事で漏れだす様に、とお義父さんは言いましたぞ。

「あたいの所為だって言いたいのかい?」

「いや、そうじゃないよ。どちらにしろギリギリだったんだと思う。もしかしたら四霊自体の魂を犠牲に……なんて場合も十分考えられる」

お義父さんが深く溜息をしますぞ。

確かにあの巨大な霊亀……いえ、四霊ならば足りない量は補えそうですな。

「そういえば俺の視界に次の波の到来時間が出ていないよ。多分、こうして多大な犠牲を出したけど世界は波の脅威から救われたという事なんじゃないかな?」

結果良ければすべてよしとはいかないね、とお義父さんは投げやりに言いますぞ。

「で、元康くんの視界に浮かぶのは……これで良いか? という選択と、その猶予時間だ」

「つまり『はい』を選べばループは終わるのですかな?」

「たぶんね」

「では選びますぞ」

「ちょっと待った!」

俺が選ぼうかと思った直前、お義父さんが前に出て呼び止めますぞ。

「どうしたのですかな?」

「こんな結末が良いはずないでしょ! 世界の三分の二が失われたんだよ?」

「ですが、波の脅威にさらされる危険は無くなりましたぞ」

「元康くん、君はどう言った経緯でループするようになったか……未来で負けたことしか覚えていないんでしょ?」

俺は頷きますぞ。

何者かにやられた記憶はあるのですが、よく覚えていません。

「この結末と同じ結果になったとは思えないけど、ありえない話でもない。もっと未来を見据えて見てほしい。この後の世界の何処かで抗えない脅威に晒されてたのかもしれない」

そう言われると、そんな気もしてきますぞ。

ですが……なんとなく波に敗れた様な気がするのですが?

「それに、元康くんの初心は何? フィーロっていう俺の娘になるフィロリアルと出会うんでしょ?」

「平和になった世界で探しますぞ」

「これだけの被害を出しておきながらフィーロって子の卵が無事だと思えるのなら凄いよ……」

なんと! 確かにフィーロたんを探すのは骨が折れそうですぞ。

いえ、もしかしたらフィーロたんは四霊の犠牲者に混じっているかもしれません。

それはとんでもない事ですぞ。

ああ、時が巻き戻るなら戻してほしいですぞ。

「やっと理解したみたいだね。とにかく、こんな結末でいいはずがない」

「そうですな」

「たぶん……元康くんに最後の選択が委ねられていて、『いいえ』を選ぶことで巻き戻る……と思いたい」

なるほど、確かにその可能性は高いですな。

では俺はどうすれば良いのですかな?

波が起こらない世界とフィーロたん、どちらを選べば良いのでしょうか!

「そんな……じゃあ、俺達の苦労は水の泡なのか!?」

「え……いや、そんなのイヤ!」

キールと婚約者が首を横に振りますぞ。

お義父さんはキールと婚約者の視線に合わせて屈みました。

「キールくん、村を再興するにしても……これだけの犠牲が出ていちゃ村の生き残りだってどうなっているかわからない」

「……でも……」

「もちろん、もしもさ――」

「全て無かった事になったら、ナオフミ様の事を私は忘れてしまうの? この気持ちは無かった事に……なってしまうんですよね」

婚約者が眉を寄せて救いを求めるように尋ねます。

「そう……だね。だけど――」

「ブブブ――!」

怠け豚が発狂した様に何やら続けざまに言ってますぞ。

周りの者達が少々不快そうにしています。

「エレナさん、勝ち馬に乗ったんだから無かった事になるなんて死んでも御免って言っても、これだけの被害から復興するのにどれだけの苦労があるかわかってるの? きっと数年なんて規模じゃない位、復興に時間が掛かるよ?」

話を続けさせてとお義父さんは立ち上がって周りの人達に言いましたぞ。

「元康くんが『いいえ』を選んだからって巻き戻るとは限らない。元康くんだけ……時間が飛ぶのかもしれない。そうなったら俺達は、この世界で生きていく事になると思う」

「そうなったらガエリオンはお姉ちゃんと一緒にがんばるの! 次代の竜帝として生きていくの!」

「竜帝の欠片……消えちゃったもんね」

「反応があるの! きっと応竜が最後に吐きだしたの! 探して集めるの!」

「うん、そうだね。魔物の王様が協力してくれるのなら世界の復興は早いかもしれない」

「……がんばったけど、結果は実らなかった……ごめんなさい。私が剣の勇者を殴ったりしなかったらこんな事には……」

助手がワナワナと震えておりますぞ。

お義父さんは助手を優しく抱きしめます。

「……ウィンディアちゃんの所為じゃないよ。だからそんなに自分を追い詰めないで、錬と樹を説得できず、止められなかった俺達が悪かったんだ」

「でも……」

「それにね、たぶん、ウィンディアちゃんが殴らなくても錬と樹は結局、鳳凰の封印を解いたよ。俺と元康くんが霊亀を見張っていると思ってね。だから君はこれからの事を考えよう?」

優しく、お義父さんは助手の鼻先に人差し指を添えて言いました。

助手はお義父さんの優しさを受けて涙を拭って頷きますぞ。

「さてと、元康くん、これから何をしようか。時間はあんまり無いんでしょ? 今出来る事をしよう」

「お義父さんの視界には何か浮かんでいないのですかな?」

「まだ……ね。もしかしたら元康くんの選択の後に浮かぶかもしれない。元の世界に戻るか否かとかね?」

なんと、少々嫌な結末ですが、こうしてお義父さんは元の世界に戻れるのですかな?

未来のお義父さんは元の世界に帰る為に戦っているとおっしゃってました。

と言う事は、こうして望みが叶えられる瀬戸際にいるのでしょうか?

俺の幸せ、お義父さんの幸せ……。

「こんな後味の悪いまま、俺は元の世界に戻る気は無いけどね。こんな風になってしまったのは勇者である俺が原因だ。責任を取る……なんて訳じゃないけど、俺は生き残った人達の為に残された時間を使いたい」

お義父さんは真剣な表情で告げました。

それは前回のループの最後で見せた表情に似ています。

きっとお義父さんは覚悟を決めたのでしょう。

俺は……どうすれば良いのでしょうか。

「元康くん」

「なんでしょうか?」

「さっきは『いいえ』を選べ、みたいに言ったけど、俺は元康くんに決めて欲しい」

「……何故ですかな?」

「俺達は色々な物を抱え過ぎたんだ。今まで一緒に歩んできた人達との時間を、全てを無かった事にしてしまうのは凄く辛いと思う」

今まで考えませんでしたが、確かにこれまで何度もループして沢山の人、お義父さんやフィロリアル様と出会いました。

そして俺はループの度になにもかもリセットして来たのです。

これまでは強制的にループしましたが、今回は選ぶ事が出来るのですな。