軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盾の悪魔

「行商しながら行くのですね」

「まあな。旅費の捻出もあるが武器の制作費も兼ねている」

「ですよね」

「何だかんだで鳥の食費がな」

馬力はあるけど、その分消費も激しい鳥への餌代は馬鹿にならない。

魔物を餌にしているけど、賄いきれる量じゃないんだよなぁ。

何処で金を消費するか分からないから、今のうちに稼いで行くのは道理だろう。

宿泊する村や町で物を売れば良いし。

そう思いながら、俺達の旅が始まった……のだが。

「やっと追いついた!」

その日の夕方の事だ。

城下町で因縁をつけてきたクソガキが追いついてきた。

宿を決めて、行商をしていたら馬を走らせて来たのだ。

「しつこいなクソガキ……」

「わたしの話は終わってないの!」

「はいはい。お前の父親ね。だからどうした」

「だからどうした? ですって!」

クソガキの顔が見る見る赤くなる。感情豊かなガキだな。

ぶっちゃけヒステリーがウザイ。

「父上、あの盾って怒っている」

「そうかそうか、良かったな」

「よくない!」

うるせーこのガキ。

泊まる場所も決めて宿代も払っているしなぁ。無視したいところだがしつこい。

どこまで追いかけてくるつもりだ。いい加減にして欲しいもんだ。

「どうしたの?」

フィーロが近くで遊び飽きたのか、帰ってきた。ちなみにある程度離れていても、パーティーメンバーが魔物を倒せば経験値が入る。時々、経験値が俺の視界に浮かぶので、フィーロには行商中は邪魔なので遊んでもらっていた。

土産と称して素材を持ってくる事もある。

「あ……」

クソガキがフィーロを見て、また止まった。

「馬車を引いてたって事はフィロリアル?」

「ああ、良く分かったな」

「わたしの知るフィロリアルと全然違う。この子、初めてみる」

まあ、フィロリアル・クイーンなんて見たことがある人は少ないらしいからな。国内でも俺だけだろう。

「ごしゅじんさま、何かあったの?」

「しゃべってる!」

「最初からだろ」

お前と会ってからずっとフィーロは喋っているだろ。

「はーいって鳴くのかと思ってた」

「違うよ。フィーロは言葉を話せるよ」

「わぁ……すごーい!」

「えへへーすごいって言われちゃった」

クソガキがフィーロに近づいて触れる。

フィーロの方も満更ではないのか、受け入れている。

まあ外見的に精神年齢が近いのかもしれない。

……これは使える。

「何ならそのフィロリアル、フィーロと遊んで行っても良いぞ」

「ホント!?」

「ああ、気が済むまで遊んで行け、遊び終わったら帰れよ」

「うん!」

クソガキは笑顔でフィーロを撫でる。

「ごしゅじんさま。フィーロは?」

「その子と遊んで来い。怪我をさせないようにな」

「うん!」

フィーロはクソガキを翼で抱え上げて、背中に乗せた。

みるみるクソガキの表情が明るくなっていく。

「わぁ! 高い高い!」

「じゃあ、あそぼ!」

「うん!」

クソガキを乗せたフィーロは仲良く走り去っていった。

後ろにいる騎士達は困惑の表情で追いかけていく。

「やっと静かになったな」

「ナオフミ様、なんか邪悪な顔をしてます」

「問題あるまい。あのクソガキはこれで因縁を付けるのを忘れるだろ」

「クソガキ……ナオフミ様、子供嫌いなんですか?」

「別に。嫌いなら、お前やフィーロを捨ててるだろ」

「まあ、そうなんですけどね」

因縁をつけてくるから嫌いなんだ。

降りかかる火の粉は払うのが常。

「俺達が隣国に入る頃には追ってこなくなるだろ」

動物好きっぽいし、フィーロと遊ばせればどうにか撒ける。

「……ですね」

その日、フィーロはずいぶん晩くなるまで帰ってこなかった。

沢山遊んだとか大興奮で、新しく出来た友達の自慢話を聞かされたのはどうでも良い話か。

ちなみにあのクソガキの名前はメルちゃんというらしい。

翌朝。

朝食を軽く取った後、俺達は足早に宿屋を後にした。そんな街道。

「まてえええええええええええ!」

眉間に皺を寄せて俺は手を当てる。

わかってはいたが、こんなに早く追いつかれるとは。

こいつが忘れているうちに村から離れようと朝早くから出発したというのに。

「あ、メルちゃんだ」

フィーロが立ち止まったので、馬車を降りてクソガキを出迎える。

「よく考えたらフィーロちゃんと遊んでいただけで盾の勇者に謝ってもらってない!」

「ごめん。これで良いか?」

「わたしじゃなくて父上に謝って!」

うるさいなぁ。

相手なんかしていられないんだけどな。

「謝らないならみんなが許さないんだから」

そう言って、後ろの騎士っぽい奴が剣を抜く。

戦う気か?

勇者を相手に?

あれ? 一番の後ろの奴が水晶玉を俺とクソガキに向けている。

なんだ、あれは?

そこでふと気付く。

コイツ等……俺を見ていない。

背筋にヒヤリと嫌な気配が支配していく。

ビッチに騙された時のような嫌な予感染みた雰囲気というのだろうか。ここ数ヶ月で培った、誰かが人を陥れようとしている空気って奴だ。

咄嗟に騎士っぽい奴に向けて走り出す。

その予感は現実の物となって俺達に降りかかった。

クソガキに向けて騎士は剣を振りかぶったのだ。

「キャアアアアアアアアア!?」

「エアストシールド!」

クソガキが絶叫を上げる。咄嗟にエアストシールドを出して妨害する。

「……なんのつもりだ!」

腰を抜かすクソガキの前に出て敵を睨む。

「おのれ、盾め! 姫を人質にするとは!」

「は?」

姫?

自分達が手を掛けようとしていたにも関わらず、何を言っているんだ。

クソガキの方もそこを理解しているらしく、顔色が青い。

「盾は悪! 最初からそう決まっているのだ!」

そう言いながら敵たちは俺達に襲い掛かってきた。

俺はクソガキを引き寄せて庇う。

ガキンという金属音が辺りに響き渡った。

「く……」

敵は魔法を詠唱し、上から火の雨を降らす。

しょうがない。マントでクソガキを覆い魔法をやり過ごす。

「おのれ……盾の悪魔め!」

「フィーロ、ラフタリア!」

「はい!」

「はーい!」

俺の指示に従い。ラフタリアとフィーロは敵に向って駆ける。

反撃を察知して敵は馬に乗って走り出す。

「馬鹿が」

フィーロの脚力は馬よりも早い。一瞬にして敵の一人を落馬させる。

「ぐあああああああああ!」

「あ、悪魔なんかに」

更に追い討ちをかけるのだが、一人、二人と倒しているうちに何人かを捕り逃してしまった。

「一体何なんだアイツ等」

クソガキの護衛とかじゃなかったのか?

しかも姫とか。

ここは問い詰めるしかないな。

縄で縛った敵に尋ねる。

「さて、貴様等、なんでこの子を俺の目の前で殺そうとした? 理由を話せ」

「悪魔に話す口など持たぬ」

「へぇ……」

悪魔、ね。ここまでストレートな罵倒は久しぶりだ。

盾の勇者だと知られるや、この言葉を発する奴が何度かいた。

「お前等さ。立場を分かってる?」

俺はフィーロに指示を出す。

「ごはん?」

敵の奴、若干顔を青くした。

「例え我等が死んでも、それは聖戦の犠牲となっただけ……神が導いてくださる」

……宗教系か。

この手の狂信的な連中は命が尽きても脅しが通じないんだよなぁ。

「クソガキ、心当たりはあるか?」

クソガキはフルフルと恐怖で震えながらも首を振る。

「ふむ、じゃあお前らが信仰する宗教は何なんだ? どうせどこぞのクソ宗教なんだろうがな」

「三勇教会だ! 悪魔め! 我等が神を愚弄する気か!」

やはりか。この手の連中は自らの信仰する宗教を馬鹿にすると我慢ができなくなる。

後は口八丁手八丁で聞き出せばこっちの物だ。

「この国の宗教ですよ」

ラフタリアがポツリと呟く。

「知っているのか?」

「というか、この国の方は殆どが三勇教ですよ。私は両親が別の宗教だったので、入っていませんが」

「……じゃあ、コイツ等の所持品から宗教関連の道具を探せ」

「あ、はい」

ラフタリアが縛り上げた連中からロザリオっぽいアクセサリーを見つける。

「ソレを地面に置け」

「はぁ……」

変なシンボルだ。三つの武器が折り重なっている。

剣、槍、弓?

嫌な武器勢ぞろいだなぁ。

「さて、お前等、素直に話さないとこの道具を俺が踏むぞ」

「や、やめろおおおおおお!」

敵の奴、青筋を浮かべて切れた。

ぶち切れるの早いな。

こんな金属の塊がそんなに大事かねー。

見た感じ普通のアクセサリーで、特殊な付与もされていない、唯のファッション品だ。

俺の世界でも宗教で戦争を起こす連中がいるから、それに近いのかもしれない。

「ほれほれ」

変なシンボルに足を乗せる直前で何度も上げ下げを繰り返す。

「盾の悪魔め! 絶対に我等の神が許さん!」

「知るか、さっさと殺そうとした理由を話せ。それとも何か? お前等の信仰とはその程度なのか? あ?」

「ぐ……」

「大事な神が目の前で悪魔にシンボルを踏むことを許すのか? ずいぶんとお優しい神様ですなぁ?」

踏み絵の逆だ。

俺を悪魔と認識しているのなら、悪魔の行う蛮行にコイツ等は我慢ができない。

「素直に吐いたら踏まないでいてやる」

「あ、悪魔の甘言に答えるつもりは無い!」

「あっそ」

ぐりっと地面にめり込む程思いっきりシンボルを踏みつける。

「くそがああああああああああああああああああ!」

うーむ……どうしたものか。

とりあえず身元だけでも明らかにするか。

「なあクソガキ、コイツ等は一体何者だ?」

「ああう……」

殺されそうになった恐怖からまだ立ち直っていないクソガキは青い表情で言葉が出ない。

「メルちゃん。ごしゅじんさまとフィーロが居るから大丈夫だよ?」

「……フィーロちゃん」

平静を取り戻したクソガキが俺を見て呟く。

「えっとね。この人達は父上の騎士達」

「そういや、お前の親父って誰なんだよ」

「父上?」

「ああ、どこぞの貴族だろ?」

「ううん」

貴族じゃないのか? じゃあ誰だ?

見た感じ、かなり育ちが良いし、有名な商人の令嬢か?

アクセサリー商の娘とか? それじゃあ俺に悪意を持っている理由にはならないな。

……大事なパパのお気に入りとかで嫉妬されていると言われれば無理矢理説明できるが、コイツの言動からそんな感じじゃなかった。

やっぱり無難に貴族の娘って所が妥当だ。

「父上はこの国の王様」

「……は?」

「オルトクレイ=メルロマルク32世。私はメルティ=メルロマルク……この国の第二王女」

こうして俺は、なんだかとんでもない陰謀に巻き込まれているのを自覚した。