軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

槍の勇者の勇者会議【下】

「というか錬や樹の強化方法は二人しか知らないはずだし、それを知っている事が証明なんじゃないの?」

「そう言って俺を油断させるつもりなんだろうがそうはいかないぞ! 全ての黒幕!」

お義父さんの疑問に対して、何故か俺が指を向けられました。

「それはゲーム知識か何かですかな?」

「ああ、そうだ。ブレイブスターオンラインのクエストにお前の様に強い力を持ったNPCが存在する。ストーリーイベント用NPCの力をお前は宿しているんだ!」

何を言うかと思えば……。

MMORPGにはイベントで物凄く強い能力を宿している設定の人物が出てきたりしますぞ。

イベントで強靭なボスをプレイヤーの前で倒した……という設定などですな。

まあイベントであってボスは棒立ちのNPCだったりするのですが、外見は設定上最強クラスのボスだったりしますぞ。

そのボスを倒した更なる敵……イベントのNPCとかが土壇場で裏切ってプレイヤーと敵対とかあったのですかな?

俺がイベントの黒幕の力を宿しているんだとか無理やり結び付けているのでしょう。

俺の武器の中に黒幕が潜んでいるとかは……考え過ぎですかな?

とにかく、そう言う事を考えていそうですな。

似たようなイベントは有りましたが、俺の場合は波からのボスに憑依された実は善人の英雄という設定の人物でしたぞ。

「ありえませんな。俺はお義父さんに忠義を誓った者ですぞ。全ては愛の為ですぞ」

「錬、樹、冷静になるんだ。幾ら元康くんが強いからと、武器の仕様違いだとか、自分が出来ないと思ったら出来ないんだよ。この強化方法は相手の話を信じないと出来ないんだから」

「ふん」

錬はステータスを確認するように試してはいましたぞ。

樹も同様ですな。

ですが、心から強化方法を信じないと出来る物も出来ませんぞ。

出来るかもしれないでは出て来ないのが問題なのですぞ。

「やっぱり出来ないじゃないか」

「この大うそつき! どうやら元康さんが全ての黒幕だった様ですね! 僕は尚文さんの様に踊らされたりしませんよ!」

「思い通りに操れると思ったら大間違いだ!」

「出来ないも何も、信じなきゃできないって言っているじゃないか。今の錬と樹が元康くんの話を信じている様には見えないよ」

「当たり前だ! こんな異常者を信じろって方が無理がある!」

「その通りです!」

「落ちついて! 自分よりも強いかもしれない相手が出たからってそんな敵意を持っても何の得にもならないよ。俺や元康くん、錬や樹は何のためにこの世界に召喚されたと思ってるの?」

お義父さんの言葉に錬も樹も不快そうな表情を変えようとも思っていない様ですぞ。

それにしても、何の為に召喚された、ですか。

決まってますぞ。

フィーロたんと出会う為ですぞ。

俺はフィーロたんとの運命の出会いを通して、世界を救うと誓ったのですからな。

「強くなって自慢する為じゃないでしょ? 世界を救う為に召喚されたんだ。こんな所で憎み合って、騙し合って何の得があるって言うんだ」

「知りませんよ。ですが何かあるんでしょう。その目的を僕が暴いてみせますよ!」

「ふん。チートを手に入れて良い気になるな。絶対にお前の力を超えて見せる!」

お義父さんの言葉など聞く耳持つ気は無い様ですな。

ここで俺の強さを見せつけるために正面から死なない程度に痛めつけても良いですが、お義父さんが止めそうですな。

「いい加減にするんだ。錬、樹……君達は何のためにここにいるのかちゃんと考えるんだ。誰かを出し抜いて自分が正しいと主張するためにいるの? 誰かを悪人にして、誰かを殺して、それで満足なの?」

「また同情を誘っているんですね。騙されませんよ」

「そうだ。そんな同情を誘って俺達を引き込んで、この世界を手にしようとしているんだな」

お義父さんが錬と樹の返答に心底ウンザリした様な溜息を吐きましたぞ。

俺も同意見ですな。

こんな世界など征服して何の得があるのですかな?

むしろそういう事を言う時点で、錬や樹がやりたいのではないですかな?

「調子に乗っていられるのも今のうちだ。すぐにお前等に追いついて見せる」

「そうです。少し強くなったからと言って調子に乗っていられるのも今の内ですよ。いずれどちらが正しいかは分かるはずです」

「それは自分の方が正しいとでも言いたいわけ? 正しい正しくない、なんてくだらない事をしている場合じゃないんだ。元康くんは未来で負けているんだよ? 元康くんを倒せる程の驚異が迫っているんだ。俺達に、この世界に喧嘩をしている余裕なんて残ってないんだ」

お義父さんが必死に訴えますが、錬と樹は聞く耳を持たずに言いました。

「どうやら、得られる話はなさそうだな」

「そうですね。失礼します。不正な力に頼る人達のチート方法など聞いても耳が腐るだけです」

もう面倒臭いですな。

錬も樹も説得でどうにかなる様な次元では無いですぞ。

「それはこの島でのLv上げが終わったら行くボスの武器で、目に見えた強さが得られると思っているのですかな?」

ここでは俺が先に手を打ちますかな?

錬と樹が不愉快そうに振り向きますぞ。

図星ですな。

最初の世界で俺はカルミラ島を出た後、更なる驚異的な強さが得られると自惚れていましたからな。

教皇相手に苦戦したが、あの武器があれば今の二倍以上の強さが得られると……あの時の俺は思ってました。

それほどに、弱いボスなのに優秀なドロップを持っていると思っていたのです。

霊亀のレア武器は、今までの店売りの武器や魔物の素材で出た武器よりも優秀な武器ですからな。

MMOの時は霊亀のレア武器は高額で取引されるので有名でしたぞ。

もちろん他の四霊に比べれば劣りますが、次の四霊を狩るには最低限必要ですからな。

まあ、がんばればなくても勝てる可能性はありますが、相当Lvを上げないと厳しいでしょうな。

「霊亀は弱いから足がかりに調度良いと思っているのでしょうから止めますぞ。あれは今の錬や樹では手も足も出ない化け物ですぞ」

ゲームでは手の出しやすい相手だったのですぞ。

Lv的にも余裕だと……思っていました。

だから錬や樹が封印を解いたと聞いた時にも納得したのですぞ。

もちろん……全てが間違っていたのも事実。

実際に霊亀の素材で出た武器はMMOの時よりも性能は低かったのですぞ。

ただ、お義父さんの盾や錬の剣は優秀だったらしいですが。

それも素材を使って新たに新造した武器だと錬が言っていましたな。

「何度でも言いますぞ。霊亀に挑むのはやめた方が良いですぞ。俺の目が黒い内は絶対に阻止してみせますぞ」

「元康くん……」

これは俺の決意ですぞ。

そして俺の後悔でもあります。

もしもあの時、俺が愚かにも霊亀の封印を解かなかったらと、何度も後悔をした日があるのです。

もちろん霊亀に敗北した事実があったからこそ、俺は真の愛に目覚めたとも言えますが、やり直すチャンスがあって阻止しない理由にはなりません。

「ふん。そうやって俺達が強くなるのを妨害する気だな」

「強さを独占する気ですね。なんて卑劣な!」

「強さの秘密はお義父さんが教えてくれた強化方法ですぞ。俺の話に嘘偽りなどありません」

「何処まで邪魔をすれば気が済むんだ! まったく、何の役にも立たない会議だったな!」

「そうです! 僕は貴方達の我がままに付き合う程暇じゃありません!」

二人は立ち上がり部屋から出て行こうとしています。

「錬、樹、今はお互い頭に血が上って相手の話を聞き入れられないかもしれない。でも、これだけは聞いて欲しいんだ」

「まだ何かあるんですか」

「ふん」

「この世界は確かにLvやステータス、強化方法なんかがある。俺達はゲームに似ているから錯覚しているけど、この世界に生きている人達にはここが現実なんだ。これは魔物だって変わらない。命は一つなんだ」

お義父さんが当たり前の事を言っていますな。

まあこの頃の俺はやられても大丈夫などと考えていました。

やられても治療院で復活するとか、謎の自信を持ってましたな。

普通に考えてここがゲーム内で無い以上、死んだらそこで終わりですぞ。

ループしているこの状況が奇跡という訳ですな。

「また説教ですか。いい加減にしてください」

「なんで凶悪なドラゴンを倒した事を咎められなければいけなんだ」

「違うよ。別に魔物を倒す事に異議を唱えている訳じゃないよ。ゲーム感覚で命のやり取りをしていると、取り返しの付かない事になるかもしれないから言っているんだ」

取り返しの付かない事……霊亀の犠牲者ですな!

後、ドラゴンの死骸における疫病の事でしょう。

きっとこのまま行けば、錬や樹は霊亀を復活させて取り返しの付かない事をしでかしますぞ。

もちろん俺が阻止しますし、仮に復活しても被害が出る前に倒しますが。

それにしてもお義父さんのこの言葉、どこかで聞いた気がしますな。

ああ……最初の世界でライバルがそんな感じの事を言っていたとか、お義父さんが錬に注意していましたな。

俺はその場に居たので覚えていますぞ。

なんでもライバルは錬に遊び感覚で殺された事に憤っていたとか、そんな内容でした。

あのドラゴンは野生ですから、殺される事自体に怒りを持った訳ではないのだとか。

そういう意味ではライバルは俺達がゲーム感覚で居た事を見抜いていたのですな。

後、お義父さんが弱肉強食とか言っていましたな。

ゲーム感覚なのがダメとかなんとか。

つまり殺すなら命を奪う覚悟を持て、という事ですな。

そういえばあの頃の錬は今よりも落ち着いていて、魔物と戦う時に『これも命のやり取りなのか……』とか中二病みたいな事を言っていましたな。

お義父さんや助手の言葉に共感したのでしょう。

ですが今の錬にはまるで届いていない様ですぞ。

「ふん、敵を倒して何が悪い。どう戦おうと俺の勝手だ」

「煙に巻いた様な事ばかり言って、まるで意味がわかりませんよ」

錬が不快そうに部屋を出て行き、樹もそれに続きますぞ。

こうして勇者同士の会議は最初の世界よりも悪い様な結果で終わりましたぞ。

「はぁ……」

お義父さんの溜息が深いですな。

「まさかあそこまで頑固だなんて……強化方法も信じてくれたら多少はマシなのに、全然聞いてくれないし、しかも元康くんが全ての黒幕とか言っちゃうなんて……」

「どうしようも無いですな」

「まあ、異世界召喚で勇者なんて言われたら自分が主人公だと思っちゃうよね。少なからず俺もそういう部分があるし、元康くんの圧倒的なまでの強さに自分が主人公じゃないかもしれないって慌ててるのかもね」

「そうですな。錬と樹は勘違いしていますぞ。主人公はお義父さんですぞ!」

「っ……」

俺の言葉にお義父さんが呆れた様に頬を引き攣らせました。

何かおかしな事を言いましたかな?

「そうじゃなくってね……こう、自分を主人公として見た時、自分より圧倒的に強い相手が出てきたら敵としか思わないのはちょっとね……」

「あれですな。自分よりLvの高い相手は死ぬか裏切る、という王道ですな! ハハハッ」

「それ笑えないよ!?」

ははは、つまり俺とお義父さんは錬や樹の犠牲になって死ぬ。

あるいは裏切って敵対する訳ですな。

きっとそんな風に考えているのでしょう。

「あの……ナオフミ様。私はどのように通達を致せばよいでしょうか?」

婚約者が落ち込むお義父さんの肩に手を添えて尋ねますぞ。

「とりあえず、メルティちゃんも聞いていたと思うけど、錬や樹達が霊亀の封印されている地へ行かない様に注意しておいて」

「はい、わかりました」

「上手く行くと良いですな」

「そうだね。とりあえず会議は失敗したけど、追ってまた何か……錬と樹を説得するためのイベントと……フォーブレイの方での問題に関して取り組んで行こう。もちろん、錬と樹の手綱はちゃんと握る様にしてからだけどね」

お義父さんが疲れ切った表情で立ち上がり、部屋を後にしますぞ。

俺もそれに続きます。

「活性化中のカルミラ島ではポータルを使えないので、錬達がいきなりいなくなる事はありませんぞ」

「それを聞いて安心……かな。当面は錬と樹と和解できるようにがんばって行かなくちゃね」

と、ややお疲れの笑顔を向けたお義父さんは話を続けますぞ。

あの調子では難しいと思いますがな。

とはいえ、そうやって諦めてしまったら何もかも無意味になってしまいます。

俺はフィーロたんと約束した平和な世界の為、どんな苦境も乗り越えて見せますぞ。

「とりあえず、これまでの疲れを取る為に、島でゆっくりとして羽を伸ばしておこう。先は長いんだからさ」

「ですな! やっとフィロリアル様達の卵……いえ、フィーロたんの卵を探すことが出来ますぞ」

俺が元気よく言うとお義父さんは苦笑いをしております。

「元康くんは元気だね。何度もループしているとは思えない程強いメンタルだよね」

「何を言っているのですかな? フィロリアル様達が増えれば万が一でも対処する事は可能だと思いますぞ」

「まあ……最悪の事態に陥った時に、人手が多ければ被害を最小限に抑えられるかもしれないからね」

「そうですぞ」

仮に錬と樹が霊亀の封印を解いてしまっても、俺とお義父さんが素早く対処すれば最低限の被害で抑えることがきっと出来ると思いますぞ。

さすがの錬と樹も霊亀に負ければ自分の愚かさを理解するでしょうからな。

もちろん、そうさせない為に最大限妨害をしますが。

「ですからお義父さん、少し肩の力を抜くと良いですぞ」

「……そうだね。もしも錬と樹が暴走しても、俺達がどうにかすれば良いんだ。その後で、未来の俺と同じように錬と樹を説得すれば良いんだよね?」

お義父さんの表情が若干明るくなりました。

「メルティちゃん、最悪の事態に備えておいて」

「はい。母上に伝えておきます」

「お願いね」

こうしてこの周回における勇者同士の会議は終わりました。

明日からはフィロリアル様の育成に入りますぞー。

楽しみで楽しみで今日寝られないかもしれませんな!

フィーロた~ん!