軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四本

「嬢ちゃんは何にする?」

「剣は二本欲しい」

「サクラちゃんも二刀流で戦うもんね」

その点で言えばサクラちゃんの戦闘スタイルは異質な方に分類されますな。

フィロリアルクイーン形態でも両方の腰に剣を下げています。

サクラちゃんはお義父さんと共にしか戦いませんが、お義父さん曰く、二つの剣を持って舞う様に戦うそうですぞ。

天使の姿でも、フィロリアルの姿でも変わらないそうです。

ふむ、早く見てみたいですな。

「となると良い物を揃えるには金が掛るな」

「今の所は盗賊から奪った剣で繋いでいるけどね」

「キール坊はどうするんだ? 魔物用のツメとか牙を特注する事は出来るが、付けるか?」

「俺は魔物じゃねえ!」

「獣人で獣寄りだからだよ。人用の武器となると……何が良いかな。正直な所、軽い武器なら何でも良いぜ」

「キールくんは今の所、短剣を使ってもらってるよね」

「うん! サクラちゃんより短いけど二刀流だぜ!」

「アンちゃん。色々と大変だな」

「あはは……」

サクラちゃんとキールで計四本も武器を使っているという事ですか。

メルロマルクでは節約する必要がある為、予算的に少々厳しいかもしれません。

この際、二つ武器を使うならキールにはクローや牙を持たせるのはどうなのですかな?

最近では常時子犬に変身していますからな。

「予算額にも寄るし、素材にもよる。アンちゃん達はそこまで魔物を倒してる訳じゃねえから、強い装備ってのも限界があるぜ」

「うー……ん」

お義父さんが唸りますぞ。

ですが、ご安心を。

武器屋の親父さんには俺が渡しておいた素材がありますぞ。

お義父さん自身もお願いすれば凄腕で、良い装備を作ってくれたと偽ることが出来ますな。

親父さんもその辺りは理解しているでしょう。

無言で設計図を出しますな。

「嬢ちゃんの方は素材を加工して作る。キール坊はー……一本購入して、もう一本は俺の所の在庫品を恵んでやるよ」

ほら、親父さんがウインクして俺に合図を送ってくださいました。

俺は親指を立てて答えます。

「最後はアンちゃんと槍のアンちゃんの鎧だな」

「元康くんにも良い装備を渡したいんだけどねー……」

シルトヴェルトの方ではドロップの鎧を着ていますが、今は盗賊から奪った鎧ですからな。

小手とかの小物は安物で買い揃えていますぞ。

「まずはお義父さんの鎧が一番だと思いますぞ」

「そうだ! アンちゃん達の所はフィロリアルが多いんだからそれぞれの羽とかを集めりゃ良い装備が作れるぜ」

ふむ……フィロリアル様の鎧ですと?

俺も着た覚えがありますぞ。

鎧にみんなの羽を装飾して着るのです。

とても幸せな気持ちになります。

しかもネイティブアメリカンみたいな羽飾りの頭装備を付けて馬車で颯爽と走ると楽しくなりますぞ。

きっとそのような素晴らしい装備なのでしょう。

「槍の兄ちゃん。これでもかってくらい目をキラキラさせんなよ」

「ご飯時のキールくんみたいな目をしてるね」

「俺ってあんなに目を輝かせてんの!?」

「うん。凄く嬉しそうだから作るこっちも嬉しくなるくらいね」

「えー……ここまでキラキラしてないよ」

フィロリアル様の鎧。

素晴らしい、やはりこの武器屋の親父さんは名工ですな。

「元康くんはユキちゃん達の抜け羽根とか大切に保管してたからこの際作ってもらう?」

ああ、そういえば最初の世界のお義父さんはフィーロたんに良く似た着ぐるみを所持していましたな。

謎の豚が中に入っていたような気がしますが、あの装備が欲しいですぞ。

アレを着れば俺はフィーロたんに包まれているかのような幸せな気持ちになれるかもしれません。

どうやってアレを入手したのかも聞きたくなってきましたぞ。

ですが、今のお義父さんが知るはずもありません。

あの装備を手に入れれば……。

「おーい。元康くーん? 聞いてるー? ダメだ。自分の世界に行ってて帰ってこない」

「……アンちゃんの方はそうだな。この素材なら蛮族の鎧ってのを作って俺なりにアレンジしてやるよ」

「蛮族……なんか野生的な響きだね」

「カッコ良さそうだな。兄ちゃん」

「まあね……キールくんとサクラちゃんの防具も買い揃えたいんだけど……」

「俺は胸当てが良いぞ兄ちゃん」

「サクラは窮屈だから良い」

「そう? わかったよ。エレナさんは自分で武器と防具を持ってるから、今の所は大丈夫そうだし……じゃあお願いします」

「毎度、金も足りてるみたいだな」

「行商の成果があっという間に飛んで行っちゃったね……」

お義父さんが財布が軽くなったのを嘆いていますぞ。

そんなに困るのでしたら、もう少し売る薬の代金を上げるか進言しますかな?

お優しいお義父さんは相場よりも若干低めに売っていますからな。

まあ、それもバイオプラントの改良研究が進めば解決に向かうと思いますがな。

そもそもクズ達が天下を握っていられるのは期限があるのですぞ。

後一ヵ月半なのですから、それまで堪えられれば大丈夫だと思いますな。

というよりも……二度目の波が過ぎたら時期的に否応なく強引な手を使ってくるでしょうし、指名手配されたらポータルでシルトヴェルトで預けている装備を持ってくればいいですからな。

「まあ……これである程度、良い所へ行けるなら儲け物かなー……」

力が抜けたようにお義父さんは装備の発注を終えましたぞ。

「アンちゃん、良い仲間が得られて良かったな」

「本当にその通りだよ……」

お義父さんが親父さんの言葉に笑顔で頷きました。

その笑顔はとても晴れやかでしたぞ。

「この後はどうしようか?」

武器屋を出た後、お義父さんが俺に聞いてきましたぞ。

「龍刻の砂時計の方へ行きますかな? メルロマルクの波の到来を教えてくれますぞ?」

「そうだね……」

「ただ、最初の世界では波の一日前に来ていたようでしたぞ?」

「合わせる必要がある?」

俺は最初の世界での出来事を思い出しますぞ。

「錬と樹に偶然再会出来ました。もちろん、俺もですが」

あの時は赤豚達のクラスアップに来ていたのでしたな。

樹や錬も似たような感じでしたぞ。

思えばMMOの法則と同じく、弱い時にLv上げをするのでは時間が掛りますが、強い者がパワーレベリングすればそんなに掛りません。

現に俺が育てたユキちゃん達のお陰で、お義父さん達は既にLv40越えですからな。

あの時の俺は40過ぎだった事もありますが……間違いなくそれよりも稼げていると思いますぞ。

「んー……波での情報交換って訳じゃないけど、経過報告とか連携の為に会うのも手かな? 何だかんだで元康くんも錬や樹達の状況とか気になるんじゃない?」

そうですな。

樹の仲間をしていた燻製を仲間になる前に暗殺した手前、変化を見ておきたいという気持ちがありますな。

あの燻製の所為で樹の仲間は変なのか、それとも樹自体の所為で変なのかを調べるには良い機会でしょう。

何より樹には赤豚が同行しているはずです。

最初の世界では俺と一緒に行動していた赤豚が樹と行動するとどうなるのか、知っていて損は無いでしょうな。

燻製の影響と合わせて調べておきましょう。

それに錬の方も不安ではありますからな。

最初の世界と比べて、錬はメルロマルクに不信感を抱いている様ですし、それがどの様な差異を産むのか見当も付きません。

もちろん差異が無いのならそれはそれで問題ないですし、あるのでしたら対処すればいいのですが。

情報を収集する意味でも波の前日に行くのが良さそうですな。

「そうですな。では波の前日までは行商などをしながらゆっくり致しましょう」

「ついでに勉強とかして文字を覚えた方が良さそうだしね」

と、俺達は馬車に乗り込んで出発したのですぞ。

波の前日。

武器屋の親父さんの所へ行くと、親父さんが待っていたとばかりに手を上げましたぞ。

「おう! やっと来たな、アンちゃん達」

「どう? 頼んだ品は完成した?」

「一応な、後はアンちゃんの鎧も完成してるぜ」

何だかんだで武器屋の親父さんは俺が渡した装備を元に、色々と加工してくださっている様ですな。

見覚えのあるお義父さんの装備、蛮族の鎧ですが所々に俺が渡した防具が使われていますぞ。

土台が既にあるのでしたらオーダーメイドするのも早くて済みますな。

キールの胸当ても似たように、俺が渡した防具を元にしている様ですぞ。

武器の方もその辺りがチラホラとあります。

簡単な加工をしてくださっているのですな。

安物に見せて、切れ味は抜群の剣をサクラちゃんとキールが手にしております。

「ありがとうございます」

「そこまで負担はねえからな良いって事よ。出来れば……アンちゃんの鎧みたいに本格的なオーダーメイドを、今度は頼むぜ」

「はい……自然と必要になってくると思います。その時こそ、良い品を頼むと思うのでよろしくお願いします」

「はは、アンちゃんの期待に是非とも答えてやらねえとな。明日は波らしいから頑張れよ」

「がんばるぜ! もらった武器が火を吹くぜ! 兄ちゃん!」

キールが前に出てお義父さんが言うよりも先に宣言します。

良いのではないですかな?

「キールくん、危ないからここで素振りはやめてね」

「わかってるよ」

サクラちゃんはボーっとした目で、渡された剣の刀身を見つめております。

「良い切れ味……かな?」

「二人共気をつけてね。二刀流って意識が散漫になって自分を切ったりするかもしれないから」

「うん、わかった」

「大丈夫だぜ、兄ちゃん!」

サクラちゃんとキールは心配するお義父さんに元気良く返事をしております。

しかし……キールは最近、ずっと犬の姿ですな。

まあ、豚でいるよりはマシですが。

「じゃあ行こうか、元康くん」

「わかりましたぞ」

「また来てくれよアンちゃん」

「もちろん、必ず来ます」

こうして俺達は当初の予定通り、龍刻の砂時計のある建物へと向かったのですぞ。