軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

過小評価

「ブー……」

「え? エレナさんは馬車で留守番してる? また?」

龍刻の砂時計のある建物の近くで馬車を止めると怠け豚がそうお義父さんに鳴きましたぞ。

どこまで面倒臭がりなのですかな?

この元康、隙あらば怠け豚を殺すか考えますぞ。

……実際にやったらお義父さんに怒られてしまうので、我慢しますがな。

尚、怠け豚は貴族の子女である為、龍刻の砂時計の様な重要施設に顔を出すと、三勇教や他の貴族に目を付けられるかもしれない、という理由で馬車に待機するそうです。

やはり豚は己の事にだけは知恵が回りますな。

「まあ……そこまで大きな用事は無いから割とすぐに帰ってくるし……じゃあエレナさんは留守番しててね」

「ブー……」

「サクラは行く」

「コウもー」

「シルトヴェルトでも見たのと殆ど変わりは無いですぞ」

「そうなのー? じゃあコウは待ってるー」

「私は行きますわ」

ユキちゃんはどうやら付いてくる様ですな。

サクラちゃんはお義父さんを守る事を使命にしているので、キールと共に同行するご様子。

子犬状態のキールを抱えておりますな。

「しゅっぱーつ!」

ワンワンと尻尾を振ってキールが元気よくサクラちゃんに抱えられて手を突き出しております。

その様子をお義父さんは、微笑ましいと言う様な目で見ておられますです。

目指すは龍刻の砂時計ですぞ!

「ブー」

龍刻の砂時計のある建物に入ると豚が出迎えました。

態度は……あまりよろしくないですな。

衝動的に槍を向けそうになりました。

時が来たらコイツも消し炭にしてやりましょう。

「ああ、明日が波らしいから来た」

お義父さんがなんとなく嫌そうな表情をしながら答えますぞ。

豚の案内で龍刻の砂時計の前にまで行きますぞ。

……龍刻の砂時計はシルトヴェルトでもお義父さんは見ているので特に感想は無いようですな。

そうそう、最初の世界で俺達がポータルスキルの手に入る武器である素材の龍刻の砂時計の砂は、この日にもらったのでしたな。

お義父さんが不愉快そうにお姉さんと出て行ってから、豚が持ってきたのですぞ。

もちろん、素材として頼んだのもありますがな。

その後のお義父さんとの会話を考えるに、砂時計の砂をお義父さんはもらっていなかったはず。

俺が話すまで知らなかった様なので間違い無いでしょう。

……これは手ですぞ。

「お義父さん、ちょっと小耳を貸して欲しいですぞ」

「ん? 何? 元康くん」

俺は思いついた事をお義父さんに囁きました。

「え? うん……わかったよ」

頷いたお義父さんはそのまま龍刻の砂時計の前に立ちます。

すると砂時計からお義父さんの盾に向かって光が伸び、波の到来時間を教えてくれますぞ。

「うん。やっぱり明日、波が来るんだね」

波の到来時間を確認したお義父さんが何度も頷きました。

俺達が最初に戦う波ですからな。そんなに苦労はしないはずですぞ。

明日の波を越えれば、また行商に専念できるので素早く片付けたい所ですな。

「ですな。今回のお義父さんからしたら初めての波ですが、怖がらずに挑んで欲しいですぞ」

「大丈夫、出来る限りの準備は……出来たと思うから」

「サクラもがんばる!」

「俺も俺も!」

なんて話をしていると 予想通り樹が後方から声を掛けてきましたぞ。

「おや? そこにいるのは元康さんと尚文……さんでは無いですか?」

そういえば俺は龍刻の砂時計のある建物の内部を見て回っていたのですが、お義父さんと会った時には樹や錬がちょうどやってきたのでしたな。

そもそも錬と樹がこないのなら、今ここいる必要などありませんからな。

振り返って樹の方に目を向けますぞ。

む? 赤豚らしいのがいませんな?

何処ですかな?

奴の動向も探っておきたかったのですが……。

などと樹の周りをキョロキョロと探していると錬とその仲間がやってきました。

「なんだお前等? 何か集まりでもあったのか?」

「いや、別に何かある訳じゃないけど……」

「アレから会う事は無かったが……尚文もある程度仲間が出来たようだな」

錬が淡々とした口調で言いました。

どうやら錬はお義父さんを多少気には掛けていた様子。

赤豚とクズ王の暴挙に不信感を持っていましたからな。

当然の反応と言えるでしょう。

「ま、まあね」

「歯切れが悪いですね。やはり何か心当たりでもあるんじゃないのですか?」

お義父さんがムッとした表情で樹を睨みました。

お前に言われる筋合いは無いと言いたげな表情です。

そうでしょうとも! 樹に言う資格は微塵もないですからな。

このメサイアコンプレックスが!

豚の涙を見たら疑う余地を持たないなど、愚か者がする事ですぞ。

そう! まさに過去の俺の様に!

豚とは、自分の為にいつだって偽りの涙が流せる外道生命体なのですからな。

全ての豚は駆逐されるべき存在なのですぞ。

今回も時が来たら、あの赤豚は消し炭にしてやりましょう。

「「「……」」」

沈黙が辺りを支配しましたぞ。

空気が悪いとお義父さんは言うのですかな?

話をするにしても特に話題が無いようです。

確か、最初の世界ではお義父さんが不愉快そうに出て行った後、樹と錬の仲間のクラスアップをしたのでしたな。

では俺が進行役を勤めましょう。

「錬と樹は仲間をクラスアップさせに来たのですかな?」

「そう……ですけど」

「お前等は違うのか?」

「えっと……」

お義父さんが返答に困っておられます。

既にクラスアップ済みなのですが、メルロマルクで行なっていない以上、既にしていると言ったら今までの行動が全て無意味になってしまいますぞ。

なので、クラスアップ云々はまだ先、という事にでもするのが無難ですな。

教会の管理をしている豚がこちらをニヤニヤしながら見ている気配がありますぞ。

大方、クラスアップする程、Lvも無いくせにとでも思っているのでしょうな。

お義父さんが馬鹿にされそうな気配にだけは敏感で、この元康、内心笑いを堪えるので精一杯ですぞ。

これこそお義父さんが今日まで行なった計画の一端。

敵がこちらを過小評価すれば、その分戦い易くなるのですぞ。

どうやらその効果は十分に発揮されてきているようですな。

「波までの時間を調べようと思って」

「ま、それで良いんじゃないか? 弱いんだから波で無茶をするんじゃないぞ」

「……そ、そうだね」

上から目線で答える錬にお義父さんは不快な気分になっているのが伝わってきますぞ。

ですがお義父さんはグッと堪えて、笑顔で答えました。

「はいはい。じゃあこっちはクラスアップの見学でもさせてもらおうかな?」

「ま、その程度の装備じゃクラスアップはまだ遠そうだな」

「そうですね」

一瞬、お義父さんの眉が跳ねましたが蔑む様な笑顔を作りました。

まあシルトヴェルトでの装備は錬と樹が着けている物よりも数段階は上ですからな。

錬、樹、お前等は精々今の内に優越感にでも浸っていると良いですぞ。

「なんだと! 兄ちゃんはな――」

そんな錬と樹のセリフに激怒したキールが食ってかかろうとしたのを、お義父さんが後ろから押さえて止めました。

「大丈夫だから……ね? サクラちゃんも怒りを抑えてね」

サクラちゃんが腰に付けた両方の剣の柄を握ろうとしているのを、お義父さんは注意しました。

そうしないと二人が死んでしまいますからな。

今の錬と樹ではキールにもサクラちゃんにも勝てないでしょう。

……仮にも勇者ですからな。

さすがにそこまで弱くは無いですかな?

まあ俺のイメージでは戦力的に同等位ですが。

「しかし……変わった仲間を連れているな」

錬が俺とお義父さんの仲間を見て答えますぞ。

フィロリアル様が変わった仲間とはどういう意味ですかな?

フィロリアル様達は究極にして至高の存在なのです。

お前の様なボッチと一緒にするな! ですぞ。

「背中に羽の生えた亜人……か?」

錬はじろじろとサクラちゃんとユキちゃんを見つめます。

全然違いますぞ。その目は節穴ですな。

フィロリアル様の高貴なお姿を亜人と間違えるなどとは……錬のゲーム知識も高が知れていますな。

まあ、俺のゲーム知識も似た様なゴミクズだった訳ですが。