軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三着の服

俺の言葉にお義父さんとエクレアがギギギと音でも鳴りそうな動きで顔をこちらに向けました。

懐かしいですな。

盗賊共が溜め込んだ金品を奪っていく華麗なお義父さんの姿。

そこから捻出された金銭で様々な事をするんですぞ。

「何!? イワタニ殿はそんな事までするのか!?」

「知らないよ! というかなにそれ!? なんなの、その突然の蛮行暴露は!」

おや? お義父さんが突然困ったかのようにうろたえましたぞ。

こういう時のお義父さんは、自信に満ち溢れた王者の貫録を見せてお姉さんの注意を無視していた様な気がしますが。

「元康くん!」

「そうですな。盗賊は資源だ! 殺さずリリースすることで、しばらくすればまた収穫できると言っておられましたぞ」

「イワタニ殿! まさかそんな事をする為に召喚されたと言うのか?」

「未来の俺は一体、何を仕出かしてるんだ!」

おや? 騒ぎが大きくなってきたような気がしますな。

何故でしょうか?

「奴隷をコキ使っておられたではありませんか」

「それは聞いたけど、盗賊を生かして逃すとか、何してたわけ? その盗賊の所為で困った人とか居たんじゃないの?」

「確かー……ここで俺達が盗賊を捕まえたとしても、別の盗賊が支配域を広げるだけで、結果は変わらないとおっしゃってましたな」

エクレアが呆れるように手を額に当てております。

「キタムラ殿がイワタニ殿に嘘を言うとは思えない。そうなると今のイワタニ殿を見ていて思うのは、未来のイワタニ殿がどんな地獄を経験したらそのような事を言えるのだろうか……という事だな。むしろ我が国の所為でそこまで歪んでしまったのだと……ここで詫びたい」

「というかそんなに溢れる程盗賊って多いの? まったく救いが無いんだけど!」

「確かに倒しても倒しても湧きましたな」

「『浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ』と、過去の勇者が盗賊退治をした時に呟いた言葉があるが……呆れた物であると同時に、未来のイワタニ殿の逞しさの片鱗を見た気がする」

「そんな経験したくない!」

何やらお義父さんが混乱したように喚きました。

まあ気持ちはわかりますな。

愛の狩人として覚醒する前の俺は物事を良い方にしか捉えておりませんでしたから。

更に言えばお義父さんがしている事を軽蔑までしていました。

まったく……俺は呆れ果てる程に愚かな男でしたな。

「待てよ……元康くんの話じゃこの世界はループしているんだよね? こういう時、バタフライ効果とか歴史の強制力とか、本来の時間軸に戻ろうとする現象が起こるんじゃなかったっけ?」

「そうなのか? ではイワタニ殿はこれから地獄を経験する事に……」

「嫌だ……ホームレス経験とか無一文で放り出されるの?」

お義父さんがシルトヴェルトの使者を怯えた様子で視線を向けます。

バタフライ効果……何かのSFで聞いた事がありますな。

残念ながら以前の俺はネットゲームと豚にしか興味が無かったので詳しい事は思い出せません。

「盾の勇者様! そんな事は何があろうとも絶対にさせませんから落ちついてください!」

「んー……? ナオフミどうしたの?」

状況を飲みこめずにサクラちゃんは首を傾げております。

「尚文様が将来、酷い経験をして、とても悪い事を平気でするようになるそうですわ」

「そうなんだ? でもサクラはナオフミを守るし見捨てないよ?」

「盗賊を狩るの? 美味しいかな?」

「しないよ! 変に纏めないで! あとコウは食人を経験しちゃダメだからね!」

何やら騒がしくなってきましたな。

暗いよりは良い傾向でしょう。

などと遠目に見ているとお義父さんが言いました。

「元康くんも他人事みたいな顔しないで!」

「待て、良く考えてみればキタムラ殿のあの行動……頷ける」

「納得しちゃダメだよ! 俺は悪人になりたくない!」

お義父さんの叫びが辺りに木霊しました。

「いやだ……そんな経験したくない……」

「その為に強くなっておけばよいのだ、イワタニ殿」

「そ、そうだよね」

こんな感じの騒動があった後、お義父さん達はフィロリアル様全員を連れて狩りに出発する事になったのですぞ。

俺は町で服作りをするので、お留守番です。

「ではいってらっしゃいですぞ」

「いってきまーす!」

「うわ――もっとゆっくり走ってくれ――でないと私達はー!」

「て、手に羽毛が絡みついて! 抜け、抜けない! 盾の勇者様ぁああああ!」

エクレアとシルトヴェルトの使者が呻いておりますな。

ですが、何事も慣れが必要ですぞ。

ちなみに今日もユキちゃん達の資質向上をさせてLvを低下させております。

40のままでLvが上がらないよりは遥かに良いでしょう。

日々強くなっていくフィロリアル様達を見ているのは心が和みますな。

「ナオフミ、いこー」

「うん……」

「大丈夫ー何があろうともサクラがナオフミを守るよ?」

「ありがとう。サクラちゃん」

「えへへー」

お義父さんとサクラちゃんは本当に仲良しですな。

「じゃあ行ってくるね」

「気を付けるのですぞ」

「うん。元康くんに守られてばかりじゃなく、盾の勇者としてみんなを守れるよう頑張るよ」

お義父さんは手を上げて、サクラちゃんと共に出発いたしました。

さて、俺は出発前に生地にする事に成功したフィロリアル様達の魔力の生地を持って宿の部屋に戻りましたぞ。

三着ですな。

色合いを考えて染めるのも必要でしょう。

染料は十分ありますし、ユキちゃん達に似合う服を作りますぞー!

やがて……昼過ぎですかな。

「出来ましたぞ!」

自分でもテキパキと出来たと褒めたくなりますな。

ユキちゃん達に似合う服が完成いたしましたぞ。

フィロリアル様はそろってワンピースが似合いますぞ。

ですが、デザインも基本は重要ですな。

ユキちゃんは白い髪色故に、ベージュをベースにしたワンピース。

コウは動きやすいように、且つ本人の希望でオーバーオール風にしましたぞ。

紺色のデニムっぽい色合いが絶対に似合うでしょうな。

サクラちゃんはお義父さんと仲が良いので若草色で統一したワンピースにしましたぞ。

これをみんなが着る姿を想像すると、堪らぬ幸福感に支配されますな。

とはいえ、みんなの服が出来たので、暇になりました。

窓から外を見ます。

すると、建物の影に人がいるのがチラッと見えました。

前よりも多い様です。何やら嫌な予感がしますな。

ユキちゃん達の服を荷物袋に入れて、しまいこみますぞ。

ザッザと足音が聞こえ、宿の外には大量の人が集まっているみたいですな。

「槍の勇者様!」

どんどんと宿の防衛をしていた屈強な亜人が駆けつけてきますぞ。

「どうしたのですかな?」

「三勇教徒らしき者達が集まっております。このまま、ここに居るのは危険かと」

「ふむ……」

と、話をしている最中、辺りに高密度の魔力反応があるのを感じ取りましたぞ。

お義父さんがみんなを守って欲しいと言っていたのを思い出して俺は扉を開けて亜人を足元に引き倒します。

と、同時に宿の上に巨大な石が降り注ぎました。

轟音を立てて、このままでは宿が倒壊いたしますな。

「ふんっ!」

降り注ぐ巨岩を槍で受け止めましたぞ。

「あ……ああ……」

倒れた亜人が絶句していましたな。

確か、この宿に現在居るのは護衛の亜人と、宿の店主達……。

面倒ですな。

とはいえ、お義父さんの言いつけですから被害者を余り出さない様に致しましょう。

巨岩を上空にうち返しますぞ。

「ブリューナク!」

巨岩に向けてブリューナクを放って、消し炭にし、俺は半壊してしまった宿の二階から、犯人を睨みつけますぞ。

集まっているのは三勇教徒と見て良いですな。

考えられるのは頭数から合唱魔法『巨岩』ですな。

数が多いと儀式魔法、少ないと合唱魔法ですな。

その分、威力は下がりますぞ。

それにしても……無謀にも程がありますな。

俺を殺せなかったのを知って逃げ出し始めましたな。

いきなり町の建物に魔法を放つ犯罪者……など、生きる価値などありませんな。

降りかかる火の粉は払わねばなりませんし、何より、完成が遅れて居たらユキちゃん達の服が破けておりましたぞ。

絶対に許せませんぞ!

その愚かさ、命を持って償ってもらいますぞ!

「エイミングランサーⅩ!」

マルチロック! ターゲットは先ほど居た愚か者共!

愚かにも騒ぎを聞き付けた野次馬達の中に紛れこもうとしておられるようですぞ。

ですがエイミングランサーからはその程度で逃げ切れませんぞ。

発射!

俺は槍を投げると、槍は幾重にも光となって分かれ、宿に向かって魔法を放った三勇教徒を撃ち貫きました。

「きゃああああああああああああ!」

野次馬から叫び声が上がりますが、犯人以外は巻き込まれておりませんぞ。

この元康、無関係な人に被害を出したりは致しません。

そんな事をすればお義父さんやフィーロたん、フィロリアル様に顔向けする事ができませんからな。

俺はフィーロたんと約束した通り、誠実で皆に優しく約束を守り、お義父さんの命令をしっかりと聞く……愛の狩人になるのですぞ!

という訳でお義父さんに逆らう愚か者共は皆殺しですな。

HAHAHA!

「この槍は悪鬼にしか届かないのですぞ!」

「あ……ああ……凄い……神の如き強さ……」

亜人の護衛が声をもらしますな。

「どうやら完全に追いつかれてしまった様ですな。お義父さん達と合流するのに骨が折れそうですぞ」

まったく、お義父さん達が止めていなければクズを含め、三勇教の教皇を今すぐにでも殺しに行く所ですな。