軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 盾の勇者のホワイトデー【5】

フィーロとキールの演目が一区切りついたので、俺はフィロリアルレースの会場へと向かった。

こっちは元康の所のみどり辺りが筆頭で手伝いをしている。

俺が育てる事になったフィロリアルの変種と元康が育てたサラブレッドとの交配種が目玉のキング&クイーン杯だ。

エキシビジョンにフィーロと三色フィロリアルを走らせるか?

という話が持ち上がったが、その日の状況でやると言う話に落ち着いている。

ちなみにこっちでも俺は見てるだけだ。

俺が乗ると勇者補正が作動してドーピングになるからなぁ。

フィーロや他のフィロリアルに乗って走ってたら気付かれた。

関係者からすると一目で見抜けるそうだ。

尚、フィロリアルレースには複数のルールがあるそうだ。

一つは俺の世界の競馬みたいに騎手が乗って走るレース。

これが一番メジャーなモノでフィロリアルと騎手の息が合わなきゃ好成績が出せない……らしい。

もう一つが騎手を乗せず、フィロリアルを自由に走らせるレース。

この場合は、後ろに馬車を繋げ一位には新品の馬車を渡すと言う馬の前にニンジンを垂らす方法で競うらしい。

フィロリアルは地味に知能があるから使われるレースなのだとか。

他に障害物レースとか、妨害ありのバトルレースとか色々存在する。

その度に様々な血統のフィロリアルが選定され、日々競い合っているのがゼルトブルのフィロリアルレースというものだ。

で、今回新設されたのが勇者が育てたフィロリアル限定のキング&クイーン杯。

キング&クイーンはオスメスで差が殆どない為に、合同と言う事になった。

一流の騎手でさえも乗りこなすのが大変だし、勝手が違う為、フィロリアルだけで走らせる。

ゲートには俺の領地で育ったフィロリアル共が今か今かと開始の合図を待ちわびているのが見える。

今回のレースはフィロリアルレースの中でも相当目玉となっていて、観客内で誰が一位になるかを熱く討論している。

最近じゃ、毎日練習している奴等を見てきたから誰がトップになれそうかの予測は出来るが、他の奴等は見分けが付け辛いようだ。

一応、フィロリアルレースの関係者が全てのフィロリアルをチェックしていて、予想表を作っては居るみたいだがな。

ああ、この予想表の売り上げの一部は俺の懐に入る契約ではある。

オッズでは元康が育てたフィロリアルに人気が偏り気味だな。

親が有名なフィロリアルらしい。

元康が管理しているフィロリアル牧場にやってきた奴を思い出す。

確か……元康の三匹が翻訳していた話だと、プライドが高くて嫌な感じだったか?

速さ重視で気性も荒く、プライドが高いとかどんだけだよ。

しかも俺の所のフィロリアルに負けたのが悔しくて再戦を望んでいた……とか言ってたな。

コテンパンにされて落ち込んでいた所を、番の相手に励まされて立ち直ったんだったか。

それで生まれたのが元康のフィロリアル。

親に似てプライド高めで気性も荒い。

まあ、それでも村の連中に負けたりした経験があって、向上心のある性格なんだとか。

気難しい性格って奴?

人化する事は可能だけど滅多にならない。と言うのを報告で聞いた。

プライドがあるんだと。

「クエ、クエクエクエ」

そんな奴のライバルとなっているのが俺の育てたフィロリアルの変種だ。

こっちは……前にも話した通り緊張感が無い食いしん坊。

性格は甘えん坊だ。

だがなー……時々フィーロよりも奇抜な行動に出る時がある。

いろんな意味で危ない。

イミアとか一緒に居ると寒気を覚えたとか執拗に舐められたとか言っていた。

獲物と思われているんじゃないか? とは思うが言わなかった。

ちなみにコイツは人化出来ないし、人の言葉を喋れない。

色々と秘密があるし、生まれに関しても多少は知っている。

正確にはフィロリアルとは呼べない魔物とか……な。

その辺りもちゃんとレースの関係者には伝えてある。

俺の領地にのみ生息するラフ種の連中を集めてレースをするとかも計画していたし……その案の一つなのだそうだ。

人気は中堅だな。

この界隈じゃ元康が調教したフィロリアルの方が有名だし、フィーロは滅多に、というか出してない。

ヒヨちゃんは一応、俺の名義だけどレースに興味を持たないから出てないしな。

必然的に世界を救った盾の勇者よりも、槍の勇者が育てたフィロリアルの方が凄いとか噂になっている。

「そろそろ開始か」

目を凝らしてレース場を見る。

今回はそれなりに大きめのレース会場を使っている。

芝の生えたレース場で一周2800メートルはあるそうだ。

今回のレースはこのレース場を三周以上回った10kmのレースを行うと言う競馬からすると驚きの距離を走破するのだとか。

まあ、キング&クイーンて足が速いからなぁ。

F1とかに例えると理解する人がいるのかもしれない。

俺もよくわからないけど。

F1をキング&クイーン杯に当てはめると、その下……が本来のフィロリアル達が走るレースだ。

この距離だとあっという間にレースが終わってしまう。

だから距離の延長を図って、速さと持久力……その両方を競う事にしたらしい。

監修は元康の三匹フィロリアル共だから大丈夫だろう。

「クエ、クエクエ」

ん? 元康が育てたサラブレッドが俺の育てた変種に何か囁いている。

周りのフィロリアル共が眉を寄せてそのやり取りを見てた。

ぱちくりと僅かに瞬きした変種が首を傾げて「クえ?」とか鳴いている。

何を話しあっているんだ?

さて……そろそろ始まるか。

審判が旗を高らかに掲げて、端を持ってる。

フィロリアル共も観客も息を飲んで開始を待ちわびている。

バッと旗が振られ、ゲートが開くと同時にフィロリアル達が飛び出す。

お? 元康の育てたフィロリアルがスタートダッシュに成功して先頭に躍り出た。

反面、俺の育てたフィロリアルはビリだ。

すげーマイペースに走ってる。

芝である地面を裏返す様にフィロリアル共が走った後の芝が禿げていく。

どれだけ足に力入れてんだよ。

というか……観客共が歓声を出すよりも絶句をしてんぞ。

「は、はやい!」

「まさか、こんなにも速さに差があったのか!」

「これは……新しいフィロリアルレースの幕開けだ!」

って声が各所から聞こえてくる。

キング&クイーンだけで走らせる事は今まで無かったらしい。だから元康の所のフィロリアル共もキング&クイーンじゃない奴相手に本気で走る事はせず、先頭をある程度距離を取る程度で済ませていた。

悪く言えば手加減して走っていた。

だが、今回は違う。

相手も速く、加減などしたら置いてかれる。

だからみんな全力で走り続けている……と。

確かに速いな。

全員、フィーロが良く使うプチクイックやハイクイックを使って加速をしている。

遠くから見ると、わかる。

だが……俺はアレよりも速く走れるフィーロの背中に乗って走っている訳だが……。

車よりも速いんじゃないか?

レースの状況だが、サラブレッドも長くとも短いレースでスタミナを使いきらないように温存しながら走っているようだ。

基礎速度が速い為に温存してても他のフィロリアル共は追いかけるのでやっと見たいだけどな。

親が出来なかった悲願を子が叶える瞬間って奴だろうか?

その親も、元康の管理で魔物紋を受けたら変化出来てある程度は追いぬけるようになったらしいけどさ。

というか……クイーン化とか後天性なんだから先天的に優秀な奴が変化したら超えるんじゃないのか?

だが……フィーロの事例もあるし、一概に言えないのかもしれない。

元値が銀貨100枚相当のフィロリアルが最速なんだ。

何が起こるかわからないのがキング&クイーン化か。

そんな奴の子供となれば更に謎は増える……か。

ラト曰く、おかしくなった俺の研究結果を参考に、勇者が育てるとフィロリアルの遺伝子で今まで不明となっていた部分が活発化するとかなんとか。

要するに、勇者が育てるとそれだけで優秀な個体に変化するし、血統だけで左右できなくなる。

っと、レースが中盤に差し掛かった。

この辺りで、スピードに耐えきれず脱落して行くフィロリアル共が出てくる。

周回遅れになったら失格だ。

だが、無茶をしないようにと俺が命じたからか、体力の限界を感じた奴等は足速にレース場の端に寄って倒れ込んでしまう。

厳しい戦いなんだよな……意識を失っている奴もいるようだ。

それを見て券を投げ、諦めんな! とか怒鳴ってる奴がいるのを見る。

そりゃあ言いたくなるかも……だが、お前の信じたフィロリアルは精一杯頑張ったのを認めてほしい。

次元が違うんだよ。

元々速くても、上には上がいる。

がんばって血反吐を吐いて、元康のフィロリアル牧場内で一番速い奴を決めようとしているんだ。

何も速いだけが存在価値じゃない。

あの中には戦闘が得意な奴や馬車を引いているのが得意な奴だっている。

チョコ作りを覚えて料理組に混じった奴だって居るんだ。

頑張った連中には後で褒美をやるつもりだ。

って……何感情移入しているんだよ。

とはいえ、うちのフィロリアル共に文句を言われるのはなんか複雑な気分だ。

猫かぶりをして俺の前ではクエとしか鳴かない連中だけど……がんばりは評価しよう。

そして……レースが終盤に差し掛かった頃。

それまでノロノロと走っていた俺が育てた変種、今の所ビリなのに不思議と周回遅れになっていない一定の速度で走っていた奴が……目をぱっちりと開けて前のめりの体勢になる。

「クぇえええええええええ!」

尾の先が黒い茶色の尾羽を広げて寝かせ……羽毛を膨らませ、魔力をその身に集める。

その残滓が輝いて後方に光を飛ばし始めた。