軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

共闘

「一体どうなっているんだ!?」

再度樹に尋ねる。

「状況を報告しろ」

「わかりました!」

波から溢れ出る魔物の前に立って流星盾Ⅹを展開し、村の連中を守る。

そこに樹が大きく声を上げて報告してくれていた。

その隣でリーシアが投擲武器を投げて応戦している。

武器の姿が半透明からしっかりとした七星武器になっている。

まあ、盾の精霊とアトラが教えてくれた通り、七星武器を解放したお陰で、リーシアは投擲武器の七星勇者として正式に認定されたのだろう。

波の方はまだ全体を把握しきれないが、戦場が大々的に広がり、拡大してしまっているようだ。

波の根元はどうなっている?

一応、元康と三色フィロリアルがいるようだけど、遠くて、しかも魔物が多くて把握しきれない。

「僕達は波に参加したのですが、魔物のLvが高くて苦戦している、と言う状況です」

俺は次元ノと付く魔物のLvを確認する。

次元ノホロビドリ Lv220

「220!? いきなり数字が跳ね上がったな」

幾らなんでもこんな数字なら確かに苦戦するのも頷ける。

と言うかLv100帯では戦うのも危険な領域だぞ!

まあ、援護魔法さえあればその限りでは無いのだろうが。

樹の援護魔法で辛うじてみんな戦えていると言う状況か。

「それだけじゃないんだろ?」

シュンと言う音と共に後方に杖を持ったクズが現れた。

他にもメルロマルクの兵や連合軍を連れてきてくれた様だ。

「こ、これは……」

「丁度良い所にきた! クズ、指揮を頼む。援護魔法は絶対に切らすなよ」

「わかりましたじゃ!」

クズは杖の勇者だから大抵の魔法を使う事が出来る。

それは勇者の魔法もだ。

俺は魔法屋から魔法書に魔法の書き方を教わって、クズに教えておいた。

まあ、一応概念的な物しか教えていないからリベレイションは唱えられないけれどドライファクラスなら唱えられるはずだ。

「戦場の方はどうなった?」

「メルロマルクと連合軍の圧勝、フォーブレイ軍は投降しておりますじゃ。緊急事態にワシ達とイワタニ様の有能な者達と連合軍でまだ戦える者達を連れてきました」

そこにはキールと谷子、ラトとミー君がいた。

「兄ちゃん! 俺、頑張ったよ!」

「そうか、よくやったな」

キールに労いの言葉を伝える。

これだけ元気という事は、きっと戦場では大活躍だったんだろうな。

ん? よく見ると谷子が見慣れぬ鞭を持っている。

ま、まさか……コイツ……。

いや、魔物好きだし、資質的にはありえるのか?

「どうやらこの子が次の鞭の七星勇者に選ばれたようじゃ」

「キュアアアー!」

ガエリオンが谷子に向かって飛んで行く。

戦闘中だぞ!

「そうだったのか。じゃあ任せたぞ!」

「違う……本当は私じゃない……」

谷子が何やら震えながら俺に答える。

「このババア! 事もあろうに私を盾にしたのよ」

「何言ってんのよ。その鞭はアンタを選んだんじゃない」

「絶対違う!」

「ラフー」

戦車型のミー君が二人を宥めようと声を掛けている。

同様にガエリオンが二人の真ん中に入って止めた。

何をしているのやら……。

「鞭の勇者なんて絶対イヤよ! 私は研究者だもの!」

「私も戦えたらいいと思ってたけど勇者の力なんていらないわ!」

鞭が淡い光を放ちながらラトと谷子を行き来している。

まだ確定していないのか?

戦力になってくれるなら、どっちでもいいけどさ。

精霊の方も大変そうだな。

「お前等……いい加減に戦え! 鞭に選ばれたんだろうが!」

「うー……」

まあ、二人揃って援護系だし、見た感じ援護能力が高そうな鞭なんだから良いじゃないのか?

目立ちたくないとかそういう事か?

勇者に良いイメージ無いだろうしな二人とも。

ラトは、鞭の勇者に国を追われた訳で、谷子は勇者に育ての親を殺されている。

そう言う事なんだろう。

そして鞭と言うのは魔物使い的なイメージが強い。

資格は十分と言う事か。

「キュア!」

ガエリオンの背に谷子は乗って波に向かって飛んで行く。

安心しろ。お前が今乗っているのは今までのガエリオンでは無い。

フォーブレイの竜帝から欠片を奪った、現在世界で一番竜帝の欠片を所持しているドラゴンだ。

「行け! ガエリオン!」

「キュアアアア!」

俺の命令に従って、ガエリオンが巨竜となって戦場に炎を巻き散らす。

おお、凄いパワーアップ。

谷子も鞭の力でガエリオンに援護スキルを使っているようだ。

後で講義してやらないとな。

ラフタリアやフィーロもそうだけど。

「で? 樹、どうなっているんだ?」

俺達は戦いながら口を動かす。

それ位切羽詰まった状態だ。

「はい。ただでさえ、魔物が強くなっているのは元より……尚文さんからしたら前回の赤い砂時計の波で遭遇したグラスという敵までやってきました」

「やはりか……それで?」

「それから先は魔物が溢れてこうして分断されています。後は……波の根元で戦っている元康さんとフィロリアル達に聞いてください!」

「わかった!」

樹やリーシアも状況を全て察している訳ではないと言う事か。

砂時計の残り時間もかなり目減りしている。

警報のように点灯する砂時計が非常に危険なのだと俺達に教えてくれる。

「ラフタリア! フォウル! 波の根元に向かって突っ込む! ついてこい!」

「おう!」

「はい!」

「ラフー!」

俺の号令を汲み取ったのか、後方で戦車をぶっ放していたフィロリアルが、俺達の行く先をなぎ払う。

あれ……多分フィトリアだよな。

あの戦車……まあ良い。後回しだ。

高Lvの魔物を盾で押し込みながら俺達は波の根元に到着した。

「でりゃあああああああああ!」

「く……その盾……お前はナオフミ! やっと本物が到着ですか」

そこには、なんと元康とグラスが力を合わせて波の根源である亀裂に向かってスキルを放っている最中だった。

この二人を守りながら、見慣れぬ斧を所持したみどりが筆頭になって魔物を屠っている。

「いったい……何故お前が元康達と一緒に戦っている」

「最初は、私も命がけで突撃して来ました……ですが、今はそれ所ではありません! 早く波を抑えねば大変な事になります!」

「ああ……知っている。だが、俺は傷付ける術を持っていない。だから……みんなを守る為にここに居る!」

波とはどういう現象なのかを盾の精霊から聞いている。

それが本当なら……グラスが何故ここで味方として戦っているのかもある程度察する事が出来る。

今回は亀裂自体に直接攻撃か。

樹の情報が適応しないタイプか。

俺は盾に意識を集中し、気を込め同時に……放つ。

「流星壁Ⅹ!」

そう、このスキルはアトラが俺に授けてくれた慈悲の盾に内包されていたスキル。

効果は……俺が味方だと思う者全てに流星盾を展開すると言う高度なモノだ。

しかも陣形を組んでいるとその範囲は目に見えて拡大する。

今、波の根源に居る者達全てに掛り、元康をはじめ、グラス、みどりを筆頭としたフィロリアル全てに掛って、大きな結界が形成されている。

もちろん、デメリットも存在する。

この流星壁で受けるダメージの一部は俺が肩代わりする。

俺の防御力を超えられるのならな?

「これは……」

グラスは流星壁のバリアに驚いている。

「これならば……輪舞無ノ型・無想!」

――直後グラスの体が消え、次の瞬間亀裂から大きな打撃音が響く。

ほんの一瞬だけ見えたが、グラスが瞬間移動の如く左右の手に握られた扇子で攻撃を繰り返していた。

その速度はリベレイション・オーラで上昇していた俺の視力でも追うのがやっとだ。

さすがは世界を守る者って事か?

今後どうなるかはわからないが、今は味方でよかったな。

と、思った直後、グラスを守っていた流星壁がバリンと砕ける。

スキルの効果か何かだろう。

実際、少しだけ俺にもダメージが入っている。

直前のグラスの態度から諸刃の刃的な技って所か。

俺は再度流星壁を使い、防御壁を張り直す。

「今だ! 出来る限り早く! 波を抑えろ!」

「わかりました、お義父さん! ブリューナクⅩ!」

「わかった! 輪舞閃ノ型・五月雨!」

「トールハンマー!」

「ラフー」

「キュアアアアア!」

「滅竜烈火拳Ⅹ!」

「アクセルスマッシュ!」

「雷撃鞭!」

それぞれ、波の根元にまで近付いた味方達が各々の必殺技を放つ。

亀裂に向かって大きな衝撃が与えられ、爆発にも似た攻撃が命中する。

しかし、波の亀裂は動じずに、広がろうとしていた。

「く……」

複数の魔物達の妨害から皆を流星壁で守っているが、徐々に厳しくなってきている。

腐っても最低Lv200以上はある魔物だ。

タクトや取り巻きの女共の比では無い程の力を秘めている。

単体ならどうにか出来るが、この数では厳しい。

まだ破られていないのが救いだな。

ブルートオプファーのあるラースシールドは慈悲の盾のお陰で今の所使えない。

タクトに攻撃された時は出来そうだったが、今は無理のようだ。

更にはエアスト・シールドやセカンド・シールド、フロートシールドなどを駆使して、俺は接近してくる敵を吹き飛ばしたり、攻撃に集中している味方を庇う。

それが盾の勇者である俺に課せられた事で、俺にしか出来ない事だ。

「ヘブンズジャッジメントⅩ!」

「クエー!」

後方からも援護射撃が飛んでくる。

ここに居る勇者総出だな。

そのお陰か、波の広がりが……ゆっくりとなり、止まった。

「よし!」

これで止まるはず。

そして……。

ピシっと嫌な音が世界に響いた。

白い閃光が波の根元から溢れだし、俺達は目が眩む。

「辛うじて、最悪の事態を抑えることが出来ましたが……」

グラスの言葉が耳に入る。

そして閃光が過ぎ去ったあと……俺達は波で何が起こったのか、俺が盾の精霊から聞いたことが真実であった事が証明される事となった。