軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三分の二

「さて、これでこっちは片付いたな。照明の魔法を撃ちあげてくれ」

俺はクズとの打ち合わせ通りに指示を出すと、サディナが銛を空に掲げて魔法を放った。

まあ、クズには杖が飛んで行っているはずだから結末はわかりきっているだろうがな。

「ん? な――」

戦場の方を見ると、絶句してしまった。

城下町の方で煙が上がっているのは良い。

火はとっくに鎮火してしまっているみたいだしな。

問題は砦の近くだろう。

フォーブレイの軍隊を二分する程に……何か驚異的な爪痕が残されている。

「尚文」

錬が戦場の先を指差す。

するとチカッと何かが光ったかと思うと、戦場に光線が横切りフォーブレイの軍隊が吹き飛ばされている姿だった。

「何が起こっているかわかるか?」

「……たぶん」

メルロマルクから放たれている訳だし、この攻撃は爪痕から見て四射目だろうか。

その後、空に向けて極太のレーザーらしきものが通り過ぎて行った。

「たぶん、ラトの放った新兵器……と、クズのスキルだな」

馬車型……いや、戦車型のミー君に搭載した兵器が猛威を振るっているのだろう。

フォーブレイの軍隊で蜘蛛の子を散らす様にこっちへ逃げて行くのが半分、残りは投降したらしいな。動く気配がない。

「それよりもだ。タクトとその一味はここで捕縛するのは良いとして、すぐに波へ向かうべきだな」

「ああ」

タクトを奪還しようと言う勢力が居るとも限らないからどうするべきか。

「ヴィッチ、逃げられると……思うなよ」

逃げようとしているヴィッチをラフタリアが槌で牽制して睨みつける。

これまでの事を思えば、誰であろうとヴィッチを許せるはずがない。

どれだけの者がコイツの所為で犠牲になったのか。

「く……」

「お前の人生は既に詰んでいるんだ。苦しみながら死ぬことを覚悟しておけ」

俺が親指を下に向け、サディナに目を向ける。

「あらあら、ドライファ・サンダーボルト!」

俺の求めを察したサディナが、ヴィッチが逃げられないように雷の魔法を当てる。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

凄い悲鳴だな。

「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」

目の前で雷の魔法を浴びせられている光景を見てタクトの女共が悲鳴を上げた。

感電だ。動くのもつらくなる。

絶対に逃がすつもりもないからな。

「腐ってもこいつ等はLvが高いからな。フィーロ、見張っていろ、何かおかしなことをしたら迷うことなく仕留めろよ」

「ごしゅじんさまは?」

「ガエリオンと一緒に波へ行く」

「えーフィーロそっちが良い」

「我慢しろ、こっちで見張っている方がメルティの為になるんだぞ?」

「そうなの? じゃあ、我慢するー」

フィーロにとってメルティは大切な友達だからな。

諸悪の根源を逃げ出さないように見張っているというのは貢献となるだろう。

「ガエリオン。いつまで貪っているんだ。さっさと行くぞ」

「……キュア」

ん? ガエリオンの様子が少しおかしいな。

子竜モードで俺の近くに飛んできたガエリオン。

おい、血まみれで俺に触れるなよ。

俺もタクトの返り血で相当だけどさ。

「キュア」

ガエリオンが水の魔法を唱えて体を洗った。

……水の魔法なんて使えたか?

そして俺の肩に乗っかって、小声で囁く。

「大抵の欠片を手に入れた。殆ど思いだしたと言っても過言ではないぞ」

「そうか。限界突破もか?」

「ああ、そんな事造作も無い。それよりも重要な事が竜帝の欠片にあったぞ」

なんだ? 波に関しては精霊から聞いているし、クズも女王が残した手記からある程度推察している。

「四霊に関してだ。波に関しては汝が前に話していたであろう?」

「ああ、それで?」

「四霊は波から世界を守るために魂を媒介にして、波を防ぐ力を持っているのだ。だから世界を守るために存在する聖武具と眷属器は砂時計の転送で四霊の近くに召喚しないのだ」

なるほど、そう言う因果があるのではないかと推察していたが、やはりそうか。

随分前に一度考えた事があったな。

四霊達は俺達の敵だったが、世界にとっては味方だった。

つまり……。

「我に……いや、竜帝に封じられた応竜を解き放ち、推定世界人口の三分の二を犠牲にすれば波は――」

――止まる。

という所で俺の視界にある砂時計のアイコンが偏重した。

ゼルトブルの砂時計に登録してある俺の視界にはゼルトブルの残り時間が出現している。

だが、それ以外に、残り時間を表すような数字が出現し、世界地図と共に場所を示しているのだ。

そして視界に『応じますか?』と言う文字と『はい/いいえ』

の選択肢が浮かんでいる。

これは相当、危機的状況であるのに他ならないだろう。

場所はメルロマルク近隣の……南西の村近くだ。

転送が出来るらしいがここで勇者全員が飛んだらタクトやヴィッチに逃げられてしまう。

「フィーロ、サディナと錬はここでタクト共を見張っていてくれ、俺達は転送に応じて飛ぶ」

「わかった」

「後はお姉さんに任せなさい」

「フィーロもー」

この三人の布陣ならば逃げられないだろう。

一応錬も援護魔法は少し使えるし、250のLv差など今の勇者には意味がない。

成長補正も掛っている様子がないし、まさしく質が違う。

「いきましょう」

ラフタリアが俺に声を掛ける。

その手には大きな槌が握られている。

七星の武器……いや、聖武器の眷属器だ。

「その武器で大丈夫か?」

「はい。変幻無双流は武器を選びません」

「そういえばそうだったな。フォウル、そいつを甚振るのは後回しだ。わかっているな?」

「……ああ」

気持ちでは納得できなさそうなフォウルが頷く。

そしてラフちゃんがぴょーんと俺に向かって跳ねた。

それを盾の表面に乗せる。

「ラフー」

「ラフちゃんもついてくるか?」

「ラフー!」

子狸モードで剣をぶんぶんと振りまわさないで欲しいが……やる気があるようだから連れていくか。

ガエリオンに意識を集中し、話す。

「波は……止められるが、行くのか?」

推定世界人口の三分の二を犠牲にして延命を図る?

世界を救うという一点を見た選択としては悪い手では無いのかもしれない。

俺達が戦うべき本当の敵を考えれば、難しい問題だ。

だが、その選択をするには犠牲が多過ぎる。

「ああ、それは最後の手段だ」

「……そうであろう。だから過去の勇者は竜帝に頼んで封印したのだ。このような事態に備えて。偽者の勇者も大事に育てたドラゴンを殺す事は出来なかったのが救いであったな」

いや、多分人型になって親しげな美少女だったからじゃね? とは思ったが、黙っておこう。

俺は視界に浮かぶ、選択で『はい』を選ぶ。

その時、パーティーを組んでいた仲間と共に俺達は波へと飛んだ。

今回の波には樹と元康が参加している。

そこで何が起こっているのか。

俺達は確認しなければならないだろう。

と、飛んだ矢先で、何が起こっているのか、唖然とするしかなかった。

空を別つ亀裂が大きく開き、その先に……もう一つの世界が映し出されている。

その亀裂が徐々に広がって行く光景が、今まさに始まろうとしていた。

終焉……という文字が頭に過ぎる。

それ位異常な光景だ。

精霊から大体の事を聞いていた俺でもこれなんだ。

ラフタリア達からしたら驚愕の一言だろう。

俺は辺りを見渡す。

すると村の連中が必死に波から溢れる魔物共に向かって挑んでいる。

他に見覚えの無いフィロリアルの群れと、ラトの馬車に酷似した乗り物に乗るクイーン種。

「クエーーーーー!」

その叫びに応じるように、砲門から光が放たれて波から溢れる魔物共を蹂躙して行く。

「エネルギーブラスター!」

樹が弓をライフルにさせてスキルを放っている。

弓って結構、カテゴリー広いんだな。

銃器もOKとは……少し羨ましい。

なんて考えている場合じゃないな。

俺は波の亀裂への攻撃に集中している樹に叫んだ。

「樹! 援軍に来たぞ!」

「尚文さん! 良い所に来ました! 波を早く……」

「あ、ああ!」

俺が頷くと、連れてきた連中が波に向かって走りはじめる。

考えてみれば実際の波の根元に、戦う意味で行くのは初めてで何をすればいいのだろうか。

「早く、波から出てきた……敵を、元康さんと一緒に倒してください!」

「わ、わかった! アル・リベレイション・オーラⅩ!」

俺の援護魔法を受けて、一緒に転送された者たちが波から出現した魔物に向けて攻撃を始める。

オーラの複数系であるアル・リベレイション・オーラは範囲内の俺が味方だと認識する者全てに掛る援護魔法だ。

「そろそろ掛け直さないといけませんね。アル・リベレイション・ダウンⅩ!」

ああ、忘れていた。

樹がカルミラ島で習得した魔法、それはダウン。

まあ、名前から想像できるかもしれないが援護系統でオーラの真逆の魔法だ。

全能力ダウン。

これは敵に掛ける魔法で、能力を相当下げる物だ。

俺の唱えたオーラと樹の唱えたダウンでかなり戦闘が……楽になるはず!

そう思って戦う者達を見ると、確かに先ほどよりも動きが良くなったが、目に見えて敵が減らない。

見れば波の亀裂以外からも出現している。

これでは倒したその場で増えている様な物だ。