軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

チェンジ・ラフ

「え……」

あ、ラフタリアの笑顔が引きつってる。

まあ自分とそっくりの生物が自分のフリをして、居座っていたら不気味だよな。

あれだ。ドッペルゲンガーみたいな。

そう考えると気持ち悪い生き物に見えるから不思議だ。

でも、見分けは付くだろ。肌触り違うし。

本物のラフタリアの方が言ってはなんだが理想とは少し違う肌触りで、ラフちゃんの方が触った感覚は良い。

あくまで理想であって現実のラフタリアとはズレがある。

「触れば見分けが付くぞ」

「見分けが付くほどラフタリアちゃんを触っているのねーお姉さんも恥ずかしいわー」

「そうだな……これまでの日々で違いがわかる程度にはラフタリアと旅をしていたからな」

「ナオフミ様、その話はそろそろ……」

ラフタリアの顔が赤くなっている。

相変わらずこの手の話題は苦手みたいだな。

「じゃあラフちゃんはラフタリアちゃんの影武者に成れるのねー」

サディナが余計な事を……まあ、そう考えるのが良いかもしれないな。

ラフタリアの記憶まで再現しようとした結果とは……確かにそれならホムンクルスを作るよりも高度なのかもしれない。

方向性は間違っているけど。

「ラフー」

「げ……ミー君のボディとの互換性もあるわ。相性は最悪……ミー君を乗っ取られる」

「手を出すなよ」

「出さないわよ。ただ、ミー君を乗っ取ったりしたらただじゃおかないわよ」

「リーアー」

ラフちゃん、ラトの脅しを理解しているのかコクリと一度だけ頷く。

なんだかんだで物分りは良いみたいだ。

「その理屈だと、今作ろうとしている馬車型のボディを完成させるのに役に立ちそうだな」

「ええ、細胞の活性化も出来るようだから作業効率は上昇するでしょうね」

「そりゃあ良かった。それだけでも収穫があったような物だ」

「あ、侯爵、その子を育てるならちゃんとクラスアップさせなさいよ。供給もそろそろ限界ね」

「わかった」

とはいえ、Lv90をクラスアップって。

そもそもガエリオンの時も思ったが、クラスアップの限界を突破するってどういう理屈なのだろうか?

……考えられるのは奪った相手がクラスアップしているからか?

こうしてラフちゃんの正体が判明した。

おかしくなった俺の遺産だった訳か。

戦力として期待するほかあるまい。

ちなみに後でわかるのだけど、やはりフィロリアルと同じくラフ種の上位種としての地位と強さがある模様。

下位のラフ種は従うみたいだ。

「あ、面白い企画を発見したわ」

「なんだ?」

「侯爵、確かフィロリアル型のファミリアを持ってたわよね」

「ああ、呼んでも無いのに出てくるぞ」

「「ピイ!」」

呼ばれたのか出てきた。

「一匹、ラフちゃんに渡してみて」

「ん?」

一匹、ラフちゃんに手渡すとラフちゃんは両手で小さなフィロリアルを洗い出した。

アライグマみたいだ。

「ラフー」

……なんだこれ?

「ピィ」

それからしばらくするとポンっと一匹、小さなラフ種に変わる。

……は?

「えっと……」

ファミリア・ラフを習得しました。

モードチェンジ・ラフを習得しました。

ファミリアチェンジを習得しました。

「やっぱりできたみたいね」

「何これ?」

「ラフ!」

小さなラフ種が使い魔のフィロリアルと一緒に踊りだす。

少し、使い魔よりも大きいな。

「要約すると侯爵の技能拡張案? フィロリアルと同じ様に色々と出来るみたいね」

「ああ……そう」

「元に戻したかったら……何か使うと戻せるみたいだけど、侯爵わかる?」

「一応」

俺はファミリアチェンジを使ってみる。

するとラフ種になっていたファミリアがフィロリアルになった。

なるほど、状況を考えて使えばラフ種もフィロリアルみたいにモードをチェンジできる訳か……。

手が込んでるなぁ。

「まだ解析は済んでいないけど、こんな所ね」

「ラフちゃんが何者なのかも……色々とわかった」

「ラフー」

ペコリと頭を下げるラフちゃん。

あの石片はお前の説明書かよ。

「第二、第三のラフちゃんが生まれる危険性は?」

「ここには無いけど……」

不安だ……そう思いながらラフタリアと一緒に研究所を後にするのだった。

ああ、サディナとラフちゃんも一緒だぞ。

後は……一人、早く話をしないといけない奴が居たな。

「そう言えば、ババアの息子は……何処だ?」

「みんなと一緒に訓練をしていましたよ」

そう、ババアには息子がいるんだ。

派手な動きをするババアに目を奪われていた。

だけど、忘れてはいけない。

ババアの生死は今の所不明……だけどパーティー編成では既に……。

「一人で話をしたい。付いてこないでほしい」

「わかりました」

ラフタリアや女騎士、フォウルとは話はしているだろう。

夜も大分更けている。訓練を終えて村の連中も眠りに入る時間だ。

この時間帯となるとサディナのように年齢の高い奴隷や村に駐在する兵士は食堂で晩酌をしている事が多い。

俺は食堂に顔を出す、ここに居なかったらババアに割り振った家に行く所だ。

運よく、ババアの息子が酒を飲んでいた。

「ここ、良いか?」

俺はババアの息子の隣の席を指差す。

「……どうぞ」

ババアの息子が頷くので、俺は座った。

「……」

沈黙が辺りを支配する。

「お前の親を守れなくて、すまなかった」

沈黙を破って俺は謝る。

するとババアの息子はコップを置いて考えに耽るように俯く。

「いえ……」

黙りこむババアの息子。

沈黙が重たい。

「ラフタリアさんや他の方々から聞きました。母さんは満足だったと思います」

「しかし」

俺が答えるよりも前に、優しげな笑みでババアの息子は遮る。

「母さんは本来、変幻無双流を後に残すつもりは無かったのです。若かりし頃に色々とあったみたいで」

「俺もそう聞いた」

「ですが……盾の勇者様の活躍を目の当たりにして少しでも力になりたいと、自分にも教えてくれなかった流派を継承させる決意を固めたんです」

「そういえば……お前は、そこまで戦えるようには見えなかった」

今では、普通に戦士として通じるのではないかと言う格好をしている。

最初は村人だと思っていた。

「ええ……自分も母さんがそんな有名な人だなんて知らなかったんです」

「そういえば……父親は?」

見た感じ、ババアとその息子は親子と言うよりも祖母と孫くらいには離れて見える。

「俺、孤児らしいんです。だから母さんと血の繋がりはありません」

「そうか……」

「盾の勇者様」

「なんだ?」

「母さんは、盾の勇者様によって命を救われたんです。ですから何時死ぬようなことがあっても恨むんじゃない、盾の勇者様がワシに時間を与えて下さったのだからと言ってました」

これは……きついな。

フォウルもそうだけど、恨まれる事の方が楽だと思う時があるとは思わなかった。

「盾の勇者様に出会ってから、母さんは、俺が今まで見てきた中で一番、輝いていました。だから俺は盾の勇者様には感謝しかありません。その母さんが、みんなを逃がすため、盾の勇者様を生かすために犠牲になったのなら……」

「……」

「命を永らえさせるために貯蓄を全て使って買ったイグドラシル薬剤でしたが……俺だけだったらきっと母さんをここまで永らえさせれなかった。盾の勇者様の奇跡で時間を増やして貰い、強さを、戦いを教えて貰いました」

フォウルも、似たような事を言った。

イグドラシル薬剤、あの薬は……俺に辛い役目を与える。

因果な物だ。

「変幻無双流は弱者が悪を打ち破るために存在する流派。母さんは無駄死にではありません。盾の勇者様、是非、母さんの意志を……継ぎましょう。ですから、悩むのなら一歩前へ、自分の事は気にしなくて良いです」

「だが……」

「自分には夢が出来ました。母さんが喪失してしまったと言っている変幻無双流の失われた部分、その部分を……ここでなら蘇らせられると信じています。ですから勇者様……世界を守る戦いにご一緒させていただきます。母さんの為にも」

「……わかった。何時死ぬか分からないぞ? それでも良いのか?」

「変幻無双流はこの村で息づいています。例え自分が死ぬ事になっても、完全な死ではありません」

「そうか、強いな」

ならばその願いに応えよう。

俺は、変幻無双流でタクトを倒して見せる。

それから俺はババアの息子と軽く酒を交わし、就寝したのだった。

後数日で、戦争と波がやってくる。

準備は万端だ。やるべき事はやった。

こうして、戦争が始まった。