軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八世代

杖のポータルで即座に村に戻って馬車型のボディを作成中のラトに解析を任せる。

何か良い情報でも入っていれば良いんだが。

「ロックが掛っているわね。侯爵、何かわかる?」

「おかしくなっている時の事なんてわかる訳ないだろ」

頭が凄く良かったらしいけど、知らんがな。

というか、わかったら逆に凄いだろ。

「ラフー?」

「お前は何か知らないのか?」

ラフちゃんに聞く、さすがに答えてくれるはずもないか。

とも思ったが、なにやら神妙な顔で頷いた。

「ラフー」

解析中の石板の上にラフちゃんは飛び乗り、ラフタリアに向けて手招きをする。

「またですか……嫌な予感が」

「そうは言っても、調べた方が良いだろ?」

「わかりました」

ピピピと石板に手を乗せたラフちゃんがラフタリアにも石板を触らせると、ロックが外れて行く。

ここだけSFみたいだ。

「おお」

尻尾を膨らませたラフちゃんが石板の中に入っている何かを解読して行くのだけど、途中で大きく×印が現れて、そこから先は進めなくなってしまった。

「解除にはラフタリアさんの細胞が必要だったようね。後は……ラフちゃん自身が解析したと言う所なんでしょうけど」

ラフちゃんは何処で行き詰ったんだと言わんばかりにラトが石板を叩いて調べる。

「あら、パスワードを要求されたわ。しかも最重要コード」

パスワードって……こんなファンタジーしている異世界でまさか、そんな単語を聞く事になろうとは。

しかし、パスワードを解析するなんてできるのか?

何かヒントでもあれば良いんだが……。

「解除できないのか?」

「ミー君が帰ってくれば簡単でしょうね。あの子はこっち側を自由に出来るように作ってあるようだし」

「ラフー」

ラフちゃんがぶんぶんと首を振る。

「無理らしいぞ?」

「そうなの? あー……ミー君に使われているシステムが搭載されてる。これ、石板型人工生命体だわ。じゃあ無理ね」

「そうなのか?」

「ええ、ミー君と同じ作りで作られた守護者的な役割を持っているわ」

ファンタジー世界のネットみたいな道具に親和性のあるミー君と同じ構造か……そりゃあ分が悪いか。

「戦って勝って開ければ良いけど、負けたら自身を抹消するタイプかもしれないわね」

「強引に開くのは無理か……」

ここまで来て、それ以上の開示は不可能か……。

これだけ厳重にしていると、何か重要な事が隠されていそうなんだけどな。

「パスワードの方も三回ミスしたらアウト。作ったのは侯爵だし、何か心当たりない?」

「そう言われてもな……ラフタリアとか名前じゃないのか?」

「その辺りの安直な物だと良いのだけど」

ラトが石板にラフタリアの名前を入力する。

ビーっと音を立てて、警報が鳴り響く。

「はい。一回失敗」

「どうするか……」

「後二回ね」

最後の一回は一か八かミー君で解除させるとして……おかしくなった俺だろ?

ラフタリアが死んだと思って作ろうとしたと。

今とは違って前の認識だったとしたら、どうだ。

今までの俺は鈍感というか、謎思考だったからな。

ラフタリアの事を娘扱いしていた事もあるし、その方向の可能性もある。

「我が最愛の娘へ、と入力してみてくれ」

「なんですかその単語は! まるで父親じゃないですか!」

ラフタリアのツッコミはもっともだな。

だが、この辺りが思い浮かぶ単語なんだからしょうがないだろ。

「……どうやら正解だったみたいよ」

「ナオフミ様ー!」

「俺の所為じゃないだろ!」

娘って……まあ、ラフタリアは有能な右腕だったし、親がいないから親代わりの気持ちで居たからな。

間違いじゃないだろう。

ピコンと開かれた内容を見て、ラトが頷く。

「ふむふむ……どうやら、第八世代の計画をバイオプラントに継続させていたみたいね。万が一に備えて侯爵自身の加護が無くなっても完成するみたいに」

「ラフ?」

「この子は存在自体がブラックボックス的な役割があるみたいよ」

「解除は出来なかったんだろ?」

「命令優先権はミー君より遥かに上、だから無理にロックの解除をしなかったのね。触ったら壊れるのを知っていたのよ」

「で、そいつは何者なんだ?」

「第八世代にしてラフ種の完成系。言うなれば侯爵が作り出したラフタリアさんね。出来る限界点とでも言うのかしら」

「ラフー!」

どうだ! とでも言うかのように胸を張っている。

ああ、はいはい。

凄いのはわかったから。

しょうがないから頭を撫でてやる。

「第八世代ね……」

「形式上はって、所ね。第七世代とは次元が違う領域に達しているわ」

「そうなのか?」

「侯爵がラフ種を作って第七世代まで作ったのは約一週間だったのよ? その技術の粋を凝らしてその後も研究を継続していたら……どうなるの?」

えっと、おかしくなった俺をラフタリア達が倒して、元に戻ってラフちゃんと出会うまで二週間と半分……。

「その後の研究は人工知能に継続させたのでしょうけど、十分な成果を期待出来たのでしょうね。別口で他のラフ種が次世代を生み出した時にも同様の結果になるように仕組んでいたみたいよ」

なんかー……昔、とある漫画で似たような物を見た覚えがある。

自分の作った実験体に殺された科学者がいるんだけど、科学者が考えていた研究はコンピューターが継続していてって奴。

この場合は万が一にもどちらかが潰えても第八世代は産声を上げると……。

「うわ……」

「どうかしたのか?」

「全てのラフ種と繋がっているみたい。多角的に必要な物、能力を総合して、更に手に入る経験値を一部拝借……って侯爵もその対象に入っていたみたいよ」

「なんだって?」

つまりアレか。

以前、呪いで俺の経験値が減少する事があった時、ラフ種に流れて行った中にラフちゃんへと流れていたのもあると?

ラフちゃんのLvが高い&勝手に上がるのはラフ種が手に入れた経験値を供給されている所為か。

「言語能力も使おうと思えば出来るんじゃないかしら。このスペックだと」

「ラフ?」

「喋れるのか?」

「ラフー?」

首を傾げるラフちゃん。

とぼけている……訳ではなさそうだ。

「侯爵の状況もある程度察知していたみたいだからー……言語能力は無いのかしら?」

俺が喋る魔物はあまり好まないと解析したからラフちゃんは人語を喋れないと。

色々な意味で俺好みの生物なのは、その所為か。

「教えれば出来るとかその辺りじゃないか?」

「かもしれないわね」

開いた情報をラトはどんどん解析して行く。

「フィロリアルの技能もある程度再現出来るみたいね。変化構造を参考にしているみたいよ」

「ああ、だからいろんな姿になれるのか」

「ええ、ラフタリアさんの姿に成れるのもその辺り、と言うか目標にしていたのだから当たり前よね」

まあ、そんな所だろうなとは薄々思っていた。

ラフタリアを蘇らせる研究をしていたらしいし。

「……なんでホムンクルスを作るとかせずにこんな回り道をしたんだ?」

「その辺りは謎ね。ただ、錬金術士として気持ちはわからなくもないわ」

「そうなのか?」

「私もミー君のボディをホムンクルスで再生させるか考えてやめた口よ? あの侯爵の理屈じゃ、あくまでホムンクルスはホムンクルスであって、本物を作りたい侯爵からしたら別物だったのでしょう」

「だからって……これも似たようなモノなんじゃないのか?」

「じゃあ実験しましょうか? ラフちゃん。侯爵と初めて出会った場所は? 1、この村 2、別の場所」

ラトが適当な石を数に照らし合わせて置く。

するとラフちゃんは2の前で座って鳴いた。

「まあ……そうだけどさ」

一応、正解だ。

「多分、侯爵の思い出を補正しながら本物のラフタリアさんを作ろうとしたのでしょ。過去の経験をある程度、捏造に近い補正で再現していると見て良いわ」

「あのナオフミ様は……そんなにも思ってくださったのですね」

「まあ……」

その時の俺がどんな事を考えていたかは知らないが、そうなんだろう。

というか、どんだけラフタリアの事が好きだったんだよ。

自分で作り出した生物を恋人にでもするつもりだったのか?

その癖、パスワードが我が最愛の娘、だ。

「ラフちゃんは理解しているから良いけど、下手したら本物とすり替わる危険性もあったでしょうね」