軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

虎々激突

「くっ!」

フォウルの拳がアトラに命中する度にアトラの体を気が突き抜けて行く。

その突き抜けた気が虎の形で放出されて行った。

点の応用技だな。防御無視をメインに置いた複合技だ。

単純に威力があるからアトラからしたら点なんかよりも遥かに無効化するのが困難だろう。

ま、俺はどうにか出来るがな。点は防御無視と防御力比例攻撃と言う面に特化した、基礎であると同時に、真髄。

だがあの攻撃は防御無視に力を注いでいる所為で防御力比例効果は無い。

しかも内部を這う気の流れを外に流す事を前提にしている。

要するに削り技って奴だ。

格闘ゲームじゃ気力ゲージを減らすタイプの技だな。

「まだだ! タイガー……」

ん? アトラから出て行った気がフォウルの手元に戻って、力を増幅させた?

そう言う使い方もあるのか。

「ラッシュ!」

アトラに向けてフォウルが連打する。

その攻撃一つ一つがアトラに命中する毎にバシンバシンと僅かに衝撃で空気が震えた。

土煙が起き、連打を終えたフォウルがバックステップをしてアトラから離れる。

「どうだ!」

やりすぎじゃないか?

と周りは思っただろうがな。俺は見えていたぞ。

「さすがはお兄様、毎晩その技を受けていますが、日に日に鋭くなっていきますね」

所々ボロボロになりながらもアトラは倒れずにいた。

「ぐ……」

むしろフォウルの方が体勢を崩した。

「攻撃のインパクトの瞬間、私は尚文様と共に考えた技を放っていましたの」

ポウとアトラは手の先に『壁』を出現させる。

「言うなればお兄様はとても硬い壁に拳を叩きこんでいたようなものですわ。その隙に、少しずつ、お兄様の腕に突きをしていましたの」

なるほど、むざむざ殴られていた訳ではない……と言う事か。

範囲防御として作った技だが、フォウルみたいに素手だとそういう効果もあるのか。

それにしてもあんな高速で放った攻撃の隙間を縫うみたいに突きを入れるとか、どんだけイカれてるんだよ。

「さすがはアトラだな。俺をここまで追い込むとは」

「お兄様程ではありませんわ。ゲホ!」

僅かにアトラが吐血する。

攻撃を往なしきれずに、受けた物があったのだ。

「次は私の番ですわ。ほら、お兄様にも見えているのではありませんか?」

アトラの手の上に、気で作られた玉があり、それが膨れ上がって虎が閉じ込められているのがわかる。

「……俺の気か」

「はい。お兄様が私に向かって放った気ですわ。少々往なしきれませんでしたが、こうして閉じ込めておきました。さて、どうするかお分かりでしょう?」

なんとも激しい攻防だな。

『玉』は俺とアトラが一緒に作ったカウンター技だ。

気や魔法攻撃を集めて跳ね返す事が出来る。

やや対人向けの傾向が強いが、霊亀の様に魔法攻撃を使ってくる可能性を考慮して作った。

それと、今まで意外に対人は多かったから一応な。

「では私の番ですわ。お兄様――」

一瞬でアトラはフォウルの懐に入り込み、玉を腹部に当てる。

見た感じ、唯集めた気を跳ね返している訳では無さそうだ。

女騎士とかリーシア、ラフタリアが良く使う点に似ている。

カウンター技の玉に攻撃を上乗せした形だな。

名前を付けるとしたら……。

「まだ仮の名でしかありませんが、玉点とでも名付けましょう」

が――その瞬間、フォウルはアトラに向けて凝縮した気を集めた拳を叩きこんだ。

「変幻無双流拳技! タイガーブロー!」

二人の衝突で地面が盛り上がり、土煙が舞い上がる。

その土煙から二つの影が飛びだし、双方錐揉みしながら吹き飛んで行った。

「あ――ぐ……」

「う……」

二人はそれぞれ地に体を預けた。

それほど強力な攻撃だ。どちらか、あるいは両者ともに戦闘不能になっているかもしれない。

俺は二人のステータスを確認する。

両者ともに死んではいない。それでも相当体力が減っているがな。

若干、アトラの方が不利だ。

「うぐ……」

ふらふらとアトラは立ち上がる。

フォウルも同様に起き上がった。

そして……フォウルが倒れそうになった所を堪える。

同様にグラっとアトラが前のめりに――

「アトラ、兄ちゃんの勝ちだ」

「ま、だです」

ドンと強く大地を踏みしめ、アトラはフォウルに言い放つ。

「そんな……もう立っているのさえやっとのはず」

「お兄様……どうしても引けない戦いの時、お兄様はむざむざ倒れますの?」

「……いいや」

「では、やる事は一つですわ。お兄様だって同じはず」

「……そうだな、次が最後だ」

フォウルが拳をふらふらのアトラに向ける。

そのフォウルも足取りが怪しい。

次が最後、どちらかが死ぬ、とかそういう展開っぽいけど大丈夫か?

さすがに波の前に死人が出ると幸先不安なんだが……。

ん? 錬が俺に向かって何か話し始めた。

「尚文、見ていろ。俺達がアトラがフォウルよりも強いと言うのはこの先だ」

「なんだ?」

普段、アトラが本気で戦っている所を俺は殆ど見ていない。

だから知らないのだけど、錬達は知っているようだ。

「すー……はー……」

アトラの周りに気が集まって行く。

なんだ?

アトラの傷が僅かに治っているような気がする。

「そう、あの子は戦闘中にスタミナを回復させるんだ。だから倒せないのならどんどん戦っている相手が不利になって行く」

どんだけ戦闘能力がある訳?

まあ、フォウルも似たように、呼吸を整えるだけで、体力を回復させているみたいだけどさ。

「てえええええええ!」

アトラが手をフォウルに向け、突き進み、フォウルも拳を振るった。

ドスンと言う音を立てて、両者の攻撃が命中する。

そして……二人揃って動かなくなる。

俺は静かになった二人の様子を見る。

二人揃って、立ったまま気絶していた。

器用な事を……どんだけ脳筋なんだよ。

『力の根源足る盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者等を癒せ』

「アル・ツヴァイト・ヒール!」

俺は範囲回復魔法を唱えて二人の傷を治した。

すると先に意識を回復させたのはフォウルだった。

「ハッ! 俺は……」

「引き分けだ。二人揃って失神してたぞ」

「そうか……」

まだ意識が戻らないアトラをフォウルはお姫様抱っこをして担ぐ。

こいつ必ずお姫様抱っこするけど、趣味か?

まあいい。聞いても微妙な答えが返って来そうだしな。

「で? 留守番をさせるのか?」

「……」

フォウルは俺の質問には答えず、そのまま家へと歩いて行く。

別に俺の事を嫌って、と言う意味では無く、なんか顔が綻んでいた。笑っている……のかな?

何が嬉しいのだろうな。

そしてポツリと、フォウルは俺に言葉を零す。

「アトラをこんなにも強くしてくれて、感謝する……」

翌日、アトラがフォウルと一緒に嬉しそうに俺の所へ来て、フォウルに鳳凰戦の遠征の参加を認めて貰いましたと言った。

「良いのか?」

「ああ、下手に村において行っても勝手に付いて来て、下手に動かれて怪我をされるより良いと思う」

「そう言う物かね?」

「そう言うもんだ。俺がアトラを守ればいいんだ。何も変わらない」

「あっそ」

結局フォウルはアトラに甘いのな。

まあ、戦って勝ったらと言う所で引きわけになった訳だから留守番と言うにはきついか?

なんとなくフォウルの顔が清々しいのがイラっとするけど、無視しよう。

昨日の夜もごっつい抱き枕をしてた訳だし。

「……」

フォウルがなんか俺を見つめている。

そんな目で見るな。俺に男色の趣味は無い。

「ラフー」

今日も今日とてラフ種を撫でてストレス解消だ。

やはり手触りが最高だ。

最近、こういう物に触れるのが趣味になってきた。

別に俺は動物好きという訳ではなかったはずなんだが……。

元の世界でも動物とか飼ってなかったしな。

「あの、尚文様、ラフ種を撫でていらっしゃるのですか?」

「ああ」

「姉貴は?」

「メルティの所へ出かけているぞ」

「あれ? 姉貴と一緒じゃないとダメなんじゃ……」

「いないから良いんだよ」

だから隠れて撫でている訳だし。

「は?」

フォウルの顔が固まっている。

なんだ?

「尚文様」

「どうした?」

何だろう。すごーくイヤな予感がする。

咄嗟にフォウルが見ている方に振り返る。

そこには何の変哲も無い村の風景が広がっていた。

……誰もいないじゃないか。

「誤解させるなよ」

「あ、ああ……」

んー……どうしたんだとまた振り返るんだけど、ラフタリアはいないぞ。

まったく、霊感にでも目覚めたか?

何を見ているんだか……と俺はラフ種を撫でていたのだった。

その後、ラフタリアが凄い微妙な笑顔で帰ってきた。