軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二世代

「今回の反省会を始めるぞ!」

悔しそうにキールが帰って来て早々ワシが指導する前に参加した連中を集めて宣言した。

「俺は今回、兄ちゃんに改造して貰ったのに全然役に立てなかった」

「キールくんは頑張ったよね。その姿は凄いと思うよ」

みどりがキールに向かって素直に称賛の言葉を投げかける。

毒舌だが社交的な様だな。

「キールくんが居なかったらもとやすさんはまだ剣の勇者に苦戦していたと思う」

「そうですぞ」

お? 元康の奴、キールがけるべろす形態だと話が出来るのか?

正直意外だ。

元康と会話が成立するのはメルティ位のものだと思っていた。

「元康、キールの事はどう見えている?」

「頭が三つに分かれた犬です。お義父さん」

「よしキール。元の姿に戻れ!」

「分かったよ兄ちゃん!」

キールが人の姿に戻る。

すると元康は汚い者を見た様に視線を逸らした。

「豚に変身できる犬とは……なんとも汚らわしい能力を持っていますね」

ああ……キールが魔物みたいな姿に変身できるようになったから、女と言う範疇から外れている訳か。

しかし、フィーロは両方大丈夫なのに、キールは人型はダメとは……元康の中でどんな違いがあるんだ?

「兄ちゃん、ごめんな。全然役に立てなかった」

「気にするな。弱点を突かれたのだからしょうがない」

「じゃあどうすれば良いんだ?」

そうだな。

キールを配置する場所を考えるのと、弱点を外的要因で取り除く方法が妥当か。

正直、これ以上の改造はキールの体に負荷が掛りすぎる。元に戻れない領域へと足を踏み入れてしまうだろう。

「キールには耳栓か耳当てを支給する。問題は指示を事前に言っておく程度で細かい命令が出来なくなるのだけどな」

可能性の一つとしてあった訳だけど、まさかその事態が容易く起こるとは思わなかった。

だからキールの弱点となってしまった甘い物に目が無い事と、子守唄に弱いと言う問題をどうにかクリアさせなければならない。

後者は声が聞こえなければ良いのだからどうにか出来なくもないが、前者は難しい。

お菓子を持って来れないように仕掛けを設置すれば……となるが具体案が出てこない。

水中戦でもさせれば出てこないだろうが、そうしたらキールの機動力を犠牲にしてしまう。

とにかく、キールの使い道をもう少し考えるべきだ。

ってよく考えたら……。

「キール、勝てそうな連中相手なら出来る限り犬形態で戦って、改造形態で戦わないでくれ」

「となるとラフタリアちゃんやリーシア姉ちゃん。剣や弓の勇者以外か?」

「一応はそうなる。他にババアの弟子をしていた一軍連中だよなぁ……」

目立つ訳じゃないけど、ババアの教育を受けた奴がラフタリアやリーシア、フォウル以外にも少しはいる。

けるべろす形態のキールに恐れを抱いて今回は手も足も出なかったけど、キールじゃ些か分が悪い。

「三番塔にアクセスして……スキャン機能を搭載しておこう。食い物っぽいのを持っている奴はキールが守護する場所には来られないように細工すれば良いだろう」

若干コストが掛るが、しょうがない。

「あの……」

「ん?」

見れば治療した奴隷共が物怖じ気味にワシに話しかけてくる。

今回の攻防に参加していない連中だ。

「盾の……神様を脅かす存在が居るのですか?」

「ああ、この世界にはそういう連中がひしめいているのだ。特に奴等はここに攻め入ろうとしている。その為にこの者達は死力を尽くしてくれているのだが状況は芳しくない」

二番塔まで破壊されてしまった。

今回の一番の敗因は調整中だったラトの魔物を即座に投入した所為だ。

ワシの判断ミスだろうな。

次はもう少し安全策を練る必要がある。

「ラフー……」

しょぼんとした様子でラトの魔物、通称ミー君は佇んでいる。

戦う意欲はあるようだが暴走してしまい、反省している最中だ。

「では……その……」

「なんだ?」

治療された奴隷共が決意を固めたように前に出て宣言する。

「どうか私達も、あの子のように改造してください!」

「……お前等は三勇教に人体実験をされてしまった哀れな連中だ。出来る限りそんな真似はしないでも良い」

魔力の供給や研究所内の作業に従事してくれていれば十分だ。

実際Lvも適正も戦闘には適していない。

少なくとも、Lvを上げる余裕の無い現在の状況下では戦わせる必要は無い。

「キールちゃんの時にも言ったけど、お姉さんは感心しないな」

「サディナ……役立たずのお前が言うのか?」

「だってナオフミちゃんが大事に作り上げたラフ種と一緒に戦っていたら、本気なんて出せる訳ないじゃない」

「じゃあ、あの偽者はお前が仕留めろ」

「それは無理よーラフタリアちゃんだもん」

「アレはラフタリアを騙った偽者だ」

「……ナオフミちゃんはそう思っているのね。だからお姉さんもやりづらくて本気が出せないの。わかった?」

「ふん」

腐っても外見は本物と瓜二つなんだ。

やり辛いと言う気持ちはわからなくもない。

「という事だ。わかったな」

「……いいえ、助けて下さったこの命、出来る限り盾の神様の命ずるがままに使いたいと私達は思っています」

全員が決意をしてワシに向かって宣言する。

これは中途半端な拒絶では受け入れないと言うのが伝わってくる。

拒むのは簡単だ。

だが拒めばまさしく助けられた命を散らす勢いで塔の攻防に無理やり参加するだろう。

こいつ等のLvは冗談でも高くは無い。むしろ低い。

ワシの力で強制的にLvを上げる事は可能であるが、それも30程度が限界だ。

それ以上は負担が掛るし、割けるエネルギーが足りなくなる。

「……約束しろ。生き残る事を大前提に、戦いに挑むと」

「「「盾の神様がそう望むのなら」」」

「……わかった。後で順番に改造して行く、己が望む形を考えておけ」

「あ、尚文様」

そこでアトラが手を上げる。

「なんだ?」

「私も尚文様の力で強くなりたいです」

「何を言い出すんだアトラ! あんな姿になりたいと思っているのか!?」

「ええ、お兄様。私は尚文様の為なら何にだってなって見せます。それに……お兄様にこそ言われたくありません」

殺気を放ってアトラはフォウルに吐き捨てる。

おそらくはフォウルの獣人形態の事を言っているのだろう。

「知っているのですよ。お兄様がモフモフの獣人姿になって尚文様と一緒に寝た事を……羨ましいです妬ましいです」

「う……あれは違う! 俺は! 俺は!」

「だから私にもモフモフのキール君みたいな可愛らしい姿になりたいのです!」

「戦闘度外視かお前は!」

まったく、こいつらとの温度差が激し過ぎる。

だが……アトラは確かに色々と頑張ってくれている。

出来る範囲で改造してやっても良いだろう。

目が見えないと言う問題も解決すれば、もっと鋭敏に動けるかも知れん。

少なくとも、キールの変身技能が付与されれば、アトラはもっと強くなるはずだ。

「よし、ではアトラを優先的に改造してやろう!」

「貴様――」

「お兄様! 隙あり」

「グフ!」

アトラは激昂したフォウルを後ろから突いて前のめりに倒れさせる。

この二人は相変わらずだな。

「急所を突きました。しばらくの間力が出ないでしょうね。フィーロちゃん、お兄様を動けないように抑えててください」

「うん。わかったー」

フィーロがフォウルの上に圧し掛かる。

アレではさすがのフォウルも動けまい。

「あ、アトラ! やめ、やめろぉおおおぉぉぉぉぉおおおお!」

ワシはアトラに培養槽に入るように指示を出し、人体改造の技能を作動させる。

幾何学模様がアトラを縛り上げ、改造の項目が出現する。

そして開くと同時にワシは結論に至る。

「済まんなアトラ。お前は無理だ」

「な、何故ですか尚文様!」

「お前は改造に対する器が無い。いや、既に限界点すれすれで余地がない」

土台の影響か、アトラを改造するのに必要な要素が致命的にまで足りない。

言うなれば最初から限界まで弄られている。悪く言えば、素質が無い。

元々が病弱で歩けず、目の見えない子なのだ。そんな子が病気もせず、歩いて戦えるまでに至ったのだ。

既にその段階で限界点に達してしまっているのだ。

これ以上の改造は相当なエネルギーを要する。正直、必要なコストが高すぎてワシには手が出せないし、代償を大きく支払わねばならなくなる。これから世界支配をしなくてはならないのに、そこまで面倒は見切れない。

「と言う訳で諦めろ」

「うう……尚文様がそうおっしゃるのなら不本意ですが諦めますわ」

培養槽から出て、アトラはフォウルを抑えるフィーロに退く様に頼み、抱き起こす。

「良かった。アトラが何にもされなくて良かった」

「残念だ。目が見える程度の改造は出来るかと思ったんだがな」

「目が……見えるようになる……だと!?」

信じられないかのような顔をしてフォウルがワシを睨みつける。

本当に忙しい奴だな。

「何故出来ないんだ!」

「さっき話しただろうが」

反対していた癖に出来ない事を怒るとはどういう了見だ。

「う……」

悔しそうな良かったような微妙な顔をしながらフォウルはアトラを連れて一歩下がる。

「では……お兄様を改造してくださいませんか?」

「な――アトラ!」

「お兄様が更に強くなれば、尚文様の守りも盤石になりますわ」

「ふむ……良いだろう。アトラに免じて改造してやる。フィーロ」

「うん。わかった!」

まだ完全に回復しきっていないフォウルはアッサリとフィーロに押さえつけられて培養槽に入る。

「ぬあ! 放せ! 俺はそんな真似、断じて――」

「お兄様」

「う……」

よし、大人しくなった。

ワシは技能を発動してフォウルを見る。

……なんだこれ?

アトラとは違う意味で改造が出来ない。

既に完成された形と言うべきなのだろうか?

まだ未開放だけど、本人の技能が上がればもう一段階変身できる。

ワシがキールに改造を施した様な物が既にフォウルに施されているのだ。

どうなっているんだ?

アトラの場合は……ってアトラの方にもその名残っぽいのがある。血の形と言う奴だろうか?

ハクコ種はそう言う技能を持っているようだ。

「アトラ、フォウルをどういう風にしたいんだ?」

「もふもふじゃないようにしてください」

戦力関係無いだろ。却下だな。

そう言えば、獣人姿のフォウルをキールが大興奮でカッケーカッケーと連呼していたのは何時だったか。

「もっと精進すればワシが改造するまでもなく、キールみたいに変身できるようだ」

「マジか! フォウル兄ちゃんスゲー!」

大興奮でキールがフォウルを褒めたたえる。

妹の言葉以外はどうでもいいと思っているはずのフォウルの事だ。無視するだろ。

「そ、そうか?」

「……どんな姿になるのですか?」

「大きな白い虎だな。弱点が増えるが能力も上がるんじゃないか? 相当、鍛錬しないと無理臭いけど」

と言うか……足りなすぎる。フォウルも結構Lv高いのに、必要技能が半分にも満たない。

ハクコは120まで上がるらしいが、これ……変身できるのに、180は必要だろうと見た。

とにかく、改造する必要性が無い!

そう言えば、シルトヴェルトからの使者も変身技能を持っていた。

なんとなく魔物染みた奴だったが、それと関係があるのだろうか……。

既に改造済みの血族がハクコか。

「とりあえず、三番塔のブーストが切れるまでの間にお前等を望む姿に改造してやる。もちろん、そこに居るアトラのように出来ない奴も出てくるだろう。それは覚悟してくれ」

「「「はい!」」」

良い返事だ。

この様子なら改造後は戦力として期待できるだろう。

「では各自反省点を復習しながら明日に備えて作業に従事しろ」

と、ワシは解散を指示した。

まったく、ワシにはまだすべき事が山ほどあるんだ。

今回はラフ種を改良した第二世代ラフ種とその近隣種、タリ種の創造を行ったばかりなのだ。

第二世代ラフ種は第一世代の問題点であった能力の低さを克服するために基礎能力と知能の向上を行った。

見た目の変化はまだだけど、これで第一世代より役に立つだろう。

タリ種は、ラフ種よりも人に近付ける様に進めた種類だ。

二足歩行を通常状態で出来るようになっている。

と、奴隷共の改造の為にエネルギーを充電している最中だった。

フィーロが魔物共を引き連れてやってきた。

「どうした?」

「あのね。この子達に改造はまだなの? って聞かれたの」

「ああ、そう言う事か、お前はどんな姿になりたい」

ワシがそう尋ねると、魔物共は培養槽に入っているラフ種とタリ種に向かって鳴く。

「ちっちゃいお姉ちゃんの種族に組み込んでほしいんだって、みーくんとは違う感じに」

「ほう……」

なんとも高尚な提案ではないか。

その実験に協力してくれるのなら、ワシの研究は大いに発展する。

元々がそれなりにLvの高い連中だ。

ラフ種の力を備えたら、量産型ラフ種よりも戦力になるだろう。

「それならば簡単だ」

基礎構築が出来ている。

後は魔物共が望む範囲でラフ種系列の情報を植えつけるだけでどうにかできるだろう。

その結果次第で、こちらの研究は大いに進む。

「まあ、何処まで自分の種族を残すかはお前達しだいだがな」

今日は忙しくなりそうだ。

と、ワシは三番塔のブーストが切れるまでの間、奴隷と魔物共の改造に尽力した。

ちなみにその後フィーロがメルちゃんを迎えに行ってくると出かけて、失敗して帰ってきた。

どうやらメルティはワシの提案を受け入れないと突っぱねたらしい。

まったく、メルロマルクの腐った連中は全員浄化してやろうと思っていた中で唯一生かしてやろうと思っていたと言うのに。

頑固な小娘だ。

「そう言えばフィーロ、お前は何か無いのか?」

「えっとねーフィーロは――」

と、フィーロの願望も聞いた。

「そうだな、もう少し後になったらやってやろう」

「わーい!」

メルティに振られて落ち込んでいたフィーロが元気を取り戻して出て行った。

現金な奴だ。

「ああ、尚文様……」

アトラは相変わらず、ワシの近くで眠っている。

フォウルがずっと連れて行こうとして失敗していた。