軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

影分身

ほぼ脊髄だったのか錬が剣でラフミを切りつけましたが、ボン! っとラフミが煙となって少し離れた所に跳躍しました。

「勿体ぶって教えないって……」

「未来の世界で盾の勇者から教わった冗談だ」

「俺なのかぁ……となると元の世界の教授が言っていたCMかな?」

「ラフラフラフラフラフ……未熟な頃のアゾットの攻撃など、まだ当たらんぞ」

などとラフミは不敵な笑みを浮かべて錬に挑発していますな。

「ふざけるな! 教えろ!」

「何でもかんでも知識頼りで行動するのはよくないぞぉ、アゾット。それに私はこんな所でネタバレするようなつまらない事をするゴーレムではない」

「どうかレン様を元に戻して差し上げられないのですか!? お教えください!」

「それは私の任務ではない。答えるかは私の判断に委ねられていて、教えても面白くないので答えない」

意外な反応をラフミはしました。

すぐに犯人は俺だというかと思いましたが違うようですな。

「俺をからかって何の意味がある!」

ボン! ボン! っとラフミは斬りかかる錬の攻撃をすべて分身で避け続けますぞ。

そのたびに挑発的な踊りをしてますな。

激しくうざそうですぞ。

お前は自身の創造主を相手にそんな真似すらするのですな。

「安心しろ。本当に危険な事であれば介入しよう。それは危険ではないし、目を覚ますのに丁度良いだろうという点で私は協力しないだけだ。いずれ分かる時が来る。結果良ければすべて良い」

「よくない! 未来の俺が作ったという癖に命令を聞かないのはどうなんだ!」

「確かに……どうも未来からクロちゃんへの刺客として来たっぽいのに錬の命令に従わないって所が……うーん」

何にしてもラフミは傍観に近いスタンスをとるようですぞ。

「元康くんも何か言う事ない?」

お義父さんから何度目かの探りが入りました。

まあ、ラフミが知っていて俺が知らないのは不自然ですからな。

ですが、俺は黙っていますぞ。

こういう時は答えられる事を答えるのですぞ。

「イヌルトの錬ですな。ルナちゃんに紹介してあげるのが良いと思いますぞ」

「わー……ぶれないなー。確かにキールくんを可愛がっているルナちゃんが見たら飛びつきそうだね」

「まだクロみたいなやつがいるのか! どんだけこんなやつを飼ってるんだお前らは!」

まだまだフィロリアル様を育てたいですぞ!

「ふむ……アゾット、私も別に遊びたい訳ではない。ネタバレはしないが力にはなってやろうと思っている」

「何をする気だ?」

「クロタロウ……ではなくクロだったか。落ち込むこいつの遊び相手くらいしても良いのでな。安心しろ。ほ!」

っと、ラフミはくるんと回転ジャンプをするとボフっと……錬そっくりに化けました。

いえ、顔立ちから若干美化がされてますな。

「フッ……闇の剣士<シャドウセイント>……参上」

ポカーンと口を開けてイヌルト錬がそんなラフミが化けた錬を見てました。

「わー……」

「クロ、いや……漆黒の爪牙よ。何時まで呆けている。破滅の予言<カタストロフ>の完遂を企む邪悪な聖なる女神<ピデスマーキナー>を駆逐するために闇の運命<ディスティニー>に立ち向かうぞ! 遅れるな!」

と、覚醒した錬みたいな口調でおかしな感じに指を曲げつつ顔を半分隠して言いました。

「おー! 闇聖勇者<ダークブレイブ>冒険記<クロニクル>の新たな一ページが刻まれるー」

クロちゃんが凄く楽しそうに合わせてポーズをとりました。

「お前たちも加われ。俺が愛玩の犬となったアゾット<錬金剣>の影分身として闇聖勇者をしてやろう。闇聖騎士団として活動し、破滅の運命を乗り越えるのだ」

「え? あ、は……はい」

「手始めに今後の方針であるが、貴様等のLvから考えて狩場はこの辺りが良いだろう。依頼も適度にこなしつつ十分にLvが上がったら次の獲物を共に倒しに行く」

「た、確かにこの反応はレン様です」

「これならレン様が不在であってもどうにかなりましょう」

リアクションに困る様子でしたが姿は錬そっくりなので錬の仲間たちは会話に混ざっていくようですぞ。

やんややんやといった様子で覚醒した錬でありつつ普段の錬のような切り替えでクロちゃんと仲間たちをしっかり指揮出来そうですな。

まあ、錬が作った存在ですからな。錬の知るゲーム知識もある程度完備しているのでしょう。

そんな……自分そっくりのラフミが指揮をしつつ、クロちゃんが楽し気に相手をしているのを本物のイヌルトになった錬が光沢のない瞳をして見つめていました。

これは我に返って怒る手前ですかな? イヌルト姿になってしまった謎に関する事は忘れているようで何よりですぞ。

「れ、錬が脳を破壊された猫みたいに……」

お義父さん曰く、寝取られらしき場面に直面したような猫の動画があるそうですぞ。

錬がそれにそっくりな空気を纏っていたとか何とかですな。

「おー……よーしよし、大丈夫。ずっと見てると目の毒だから見ないようにしようね。大丈夫だからねー?」

お義父さんが思わずそんな放心状態の錬を抱きかかえて頭を優しく撫でますぞ。

すると我に返った錬が暴れ始めました。

「憐れんで慰めるな!」

グイっと精一杯の抵抗でお義父さんのほほに肉球を押し付けた錬は解放されて着地しましたな。

「完全に動物の慰め方だったぞ!」

「おっとごめん。それで錬、これからどうする? ラフミちゃんが錬の影武者をしてくれるみたいで落ち込んでるクロちゃんの世話もしてくれるし、仲間の指示も代行するみたいだけどさ」

居場所を完全に取られてしまいましたな。

このままラフミがクロちゃんと錬の仲間の相手をしていれば俺もフィーロたんに抱擁を出来ますかな?

ちなみにできませんでしたぞ。

錬の影武者をしているはずなのに飛びついたら「残念! 私だ!」と分身したラフミに代わってました。

く……ラフミは分裂するので厄介極まり無いですぞ。

「群れるのは好きじゃないって言ってたし、このまま平常作業で……その姿で波に備える? それとも大変そうだからうちに来る? 相談に乗るよ? こう……一応商人として裏で情報収集とか出来るし、錬の仲間も国に事情を聴くみたいではあったしさ」

「……」

「元に戻るための手段を探さないとね」

錬がどう答えるか迷っているようですぞ。

「悪いが俺も何が何でも元の姿に戻らないといけないから調べに――」

何やら錬が拒否しようとしていた所で……ノシっとキールを抱えたルナちゃんがやってきました。

今日はキールがこっちに来ていたのでしたな。

ゾウとパンダの所でサーカス稽古をしていたのでしたかな?

「兄ちゃんたちどうしたんだ? ん? なんだその子?」

「あ、キールくんにルナちゃん。えーっとこれはタイミングが良いのか悪いのかって感じなんだけど……」

お義父さんはキールと錬を交互に見ますぞ。

実によく似てますな。

ちなみに錬はイヌルト姿で軽く布を体に巻いているだけですぞ。

「なんか俺に似てね?」

「似てない!」

「あー……事情を説明するとややこしくなるのだけどこの子……じゃなくて彼は錬、本当は剣の勇者で数日前に何者かに突然襲われたそうで、なぜか今の姿になってしまったらしくてね――」

と、説明している所でズイっとルナちゃんが大きく一歩踏み出して錬を凝視しますぞ。

ヒィ……やはりこの気配は怖いものがありますな。

ですがあの時のルナちゃんよりも怖い気配はだいぶ薄いのですぞ。

きっとそれはキールがいるお陰ですな。

そもそもルナちゃんはキールさえいれば大人しいフィロリアル様なのですぞ。

「わー……キールくんによく似た子だよ。キールくん、可愛い」

「可愛くねえ。カッコいいだよな? そこの剣を持った兄ちゃん」

「かっ――」

カッコよくないと答えた場合、キールに喧嘩を売ることになるのは元より自身に降りかかるので錬は言葉に詰まったようでしたぞ。

「凄い。キールくんにここまで似てるという事は……お婿さん?」

「お婿さんじゃねえ! 俺は男だ!」

ちなみにキールは雌であると周囲にはしっかりと説明済みですぞ。

ですが相変わらずキールは雄だと騒いでいるのですな。