軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

サンクコスト効果

「ぎゃあああああ!?」

全裸だった事に気付いた樹が悲鳴を上げて座り込んで体を隠していますぞ。

「ま、まあそうだよね。この姿になった直後、俺達は服が脱げちゃったんだし」

「唱える場所は考え無きゃ樹みたいになるな」

「どうして僕がこんなポジションなんですか! こういうのは元康さんって相場が決まってるでしょうに!」

樹の中で俺はどんな立ち位置なのですかな?

「元康くんの場合、全裸になっても恥じらいとか無く堂々と仁王立ちするんじゃない?」

「間違い無い」

「間違いねーなの」

「HAHAHA! この程度造作もないですぞ! 今すぐしますかな?」

元の姿に戻れる魔法を手に入れたのですから目的は達成ですぞ。

「しなくて良い!」

「ふええええ……」

「確かに元康さんは絶対にしますよね! ここは……緊急避難です! フォーフェアリーモーフ!」

樹が再度リスーカ姿に戻りましたぞ。

折角人間に戻れたのにどういう風の吹き回しですかな?

「急いで近場のポータルに戻ってそっちに行きますからね!」

っと、樹はスタスタと駆け出してポータルを見つけて戻ってきましたぞ。

「ふう……どうにか戻って来れましたね。戻れたのは良いですが、どうしてこんな中途半端な所に目当ての魔法があるんですか!」

「そうだそうだ! 普通は一番最後じゃないのか!」

「人間じゃないと行けない場所とかも用意されてるとか、特定の仕掛けか何かを先にクリアしてたから開いたとかじゃない? 開く前の扉になんかヒントっぽいのが描かれてたし」

「……前回のダンジョンをクリアしているとかでしょうかね……」

「ありそうだ」

腕を組んだ錬が不服そうに樹の意見に同意していますぞ。

「じゃあ目当ての魔法を手に入れたし、もう切り上げて帰ろうか」

そうですな。目標達成ですぞ。

であると同時に任意で開拓生物の姿に変身出来る魔法を習得ですぞ。

これさえあれば人姿のお義父さんに遠慮無く撫でて貰えますぞ! きっと撫でて下さいますな!

冤罪から救えなかったお義父さんもきっと撫でて下さいますぞ!

お義父さんはそんな方ですからな!

「……」

「……」

そうして目標を達成した俺達は帰ろうとしていると、錬と樹が無言でいましたぞ。

「ここまで来たんです! ダンジョンの最奥にまで行って何があるのか全て調査してやりますよ!」

「そうだそうだ! 俺達をこんな姿にまでしてここに導いたんだ! 全部調べなきゃやってられないだろ!」

っと、行くぞ! っとばかりに錬と樹は手を上げて出撃を要請してますぞ。

じゃーん! っと早速とばかりに錬が出発して行きましたぞ。

そんな二人をお義父さんは子供を見るような目で軽くため息をしましたな。

「二人ともサンクコスト効果って知ってる? 目標は達成してるけどね」

俺は知ってますぞ。

日本語訳で埋没費用。既に支払ってしまった取り返せない費用や苦労を取り戻そうとする心理効果ですな。

目当ての物を手に入れられずに多大な労力を支払った状態ですぞ。

そこで切り上げれば損失を抑えられるはずなのに引けなくなってしまっているという事ですぞ。

この場合、開拓生物になって苦労した労力が元に戻れる魔法を手に入れたに止まっているという事ですな。

道中で色々と手に入れたので苦労に見合う物は十分手に入れたと思いますぞ。

ですが錬と樹はまだ引けないと前進をしようとしているという事ですな。

「ここまで恥をかかされた事や苦労が人間に戻るだけで精算されると思ったら大間違いですよ!」

「気持ちは分からなくも無いけど樹、君は魔法学校で講師をする仕事があるんだからね」

「う……分かってますよ! 今回の冒険を授業で語ってあげるんです!」

「ものは言いようだなー……」

今までのとは別に錬と樹はやる気を見せて行きましたぞ。

「単純に経験値効率も良いし、レアアイテムが見つかる事もあって錬も樹も内心やる気を見せていたって事だったのね」

「調査してくれる事に関してはメルロマルク側からしたら非常に助かるわね」

「今後のループでも使えそうな場所だから覚えておくなの」

と、婚約者とライバルが述べていますぞ。

「尚文さんもペックルしか入れない所では出撃して貰いますからね!」

「はいはい。とりあえずみんなの服を持ってくるよ」

そんな訳で錬と樹が主体で休暇となるとカルミラ島でのダンジョン攻略が習慣となって行くのが決定したのですぞ。

各島の奥にある妖精姿じゃないと入れないダンジョンなどを全て攻略して行く事になりましたな。

「事件は解決だね。いつきくんが元に戻れて良かったよ。未来への影響も一安心だね」

「結局はどうなの? 未来のエネルギー源とかになる形?」

お義父さんがラフえもんに尋ねますぞ。

「実はね。ここで得られるエネルギーが将来有効活用される事になるんだ。その始まりの話が勇者達が封じられたエネルギーを復活させたってなるんだよ」

未来が確定したと思ったからかラフえもんが肯定しましたな。

「もしかしたらラフミは、れんくんがここでのエネルギーを利用して開発したんじゃないかな?」

「どうなんだろうね。何にしてもこのまま引けない錬と樹が満足するまで付き合う事になりそうだ」

「ですな!」

そんなこんなでダンジョンをどんどん攻略して行きました。時に人間じゃ無いと進めないギミック等もありましたぞ。

芸が細かかったですな。

攻略をして行く間に俺達は妖精としての能力も色々と授かりましたぞ。

やがてダンジョンの最奥部にいるボス、キングカルマーペングーを倒した先へと俺達はたどり着く事になりましたな。

「ここで最後ですかね!」

樹がボスを倒した先の部屋へと視線を向けて言いましたぞ。

先の部屋では……ファンファーレがなる装置と石碑、そして壁画が描かれておりましたぞ。更に……何やら主治医が弄っているような機材まで設置されていますぞ。

部屋に入ると花吹雪が舞いつつ賑やかなファンファーレが鳴り響いておりました。

「クリアおめでとうって感じだね」

「まずは石碑のチェックですよ。これも勇者が読むことが出来る文字が書かれてますね」

「なになに……」

石碑にはこのような文字が書かれていましたぞ。

『この石碑が読まれているという事はこのダンジョンの全てを達成してくれた証ペン! よくここまで来てくれた事を祝うペン! このダンジョンには聖武器、精霊具と呼ばれる武具を強化したりするドロップがあるからまだまだ探して欲しいペン。そしてここのクリア報酬として限界突破のクラスアップの方法をここに記載しておくペン。秩序の守護者の眷属・ドラゴンに特別な核石を与えてから読んで貰うと良いペン』

と……限界突破のクラスアップの方法がここに記載されていたのですぞ。

「えーっと……どうやらここでも限界突破のクラスアップの方法が分かるみたいだね」

「正式な入手ルートって事ですか!」

「遅すぎだろ!」

錬と樹が青筋を浮かべてぷんすか怒ってますぞ。

報酬が無駄なのも良い所ですぞ。

「レールディアを仕留めた方が早いのは間違いないなのー」

「まあ……ただ、その核石すら長い歴史で失われていたらって事で残されて居たんじゃ無い?」

まだ碑文の文字は続いていますぞ。

『さて、まだまだ色々と作って開拓して居たい所だけどボク達はそろそろ新天地、新世界……新たな開拓地を求めて旅立つペン。出来ればこの場所、島の全てと活性化が来たるべき時に聖武器の勇者達の力になってくれる事を願っているペン。それではさようならペーン』

という文字が刻まれていたのですぞ。

「ペンって語尾……」

「……これを書いて行ったのはペックルですかね。他の開拓地ではピョンとかチューとかワンって書かれてるんでしょうか」

「もはやここまで来たら意地でも良いから巡回して回るか? 他の開拓地」

錬の目が血走っているような気がしますぞ。

そんなにもここが気に入ったのですかな?

ちなみにお義父さんに聞いた所、錬は経験値の入りが良いこのダンジョンを実は大層気に入っていたそうですぞ。