軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第28話 慰謝料ではなく報酬/妻ではない契約

離縁は成立したが、補償金の審理は続いた。裁判所は、私が結婚後に行った外交文書作成を専門労務として評価し、報酬相当額を算定することになった。世間ではそれを慰謝料と呼びたがったが、私は違うと言い続けた。慰めの金ではない。

報酬だ。未払いの仕事に対する対価だ。

「そこまでこだわる必要がありますか」

若い裁判所書記が、悪気なく尋ねた。私は彼を見た。

「あります。慰謝料と言えば、私が傷ついたことへのお金になります。報酬と言えば、仕事が存在したことの記録になります」

彼は慌てて頭を下げた。

「失礼しました」

「次から記録に残してください」

算定は骨が折れた。過去十年分の文書を分類し、作業時間、難度、言語数、緊急度、外交上の影響を評価する。夫の名で出ている文書のうち、私の筆跡、灰色リボン番号、マルタの勤務記録、外務院受付時刻で裏付けられるものだけを対象にする。

すべてを取り戻すことはできない。証拠のない夜もある。私がただ泣かずに書いた紙は、記録されないまま消えたものも多い。それでも、残った分を数えることには意味がある。サラは計算表を見て目を回した。

「イザベル様、こんなに働いてたんですか」

「眠らない日も多かったですから」

「もうしないでください」

「今は、あなたたちが止めてくれます」

オリーヌが真面目な顔で頷く。

「止めます」

マルタも頷く。

「止めます」

私は苦笑した。補償金の一部は、見習い制度の基金に回すつもりだった。外務卿に相談すると、彼は目を細めた。

「自分のために使ってもよいのだぞ」

「使います。住居と書庫を整えます。それでも残る分は、名のない仕事を減らすために使いたいのです」

「君らしい」

「最近、そればかり言われます」

「他に言いようがないからな」

補償審理の終わり、アルマンは支払い義務を認めた。彼は疲れていたが、今回は反論しなかった。

「報酬として記録する」

彼がそう言った時、私は少しだけ驚いた。彼は私の顔を見なかった。

「それが君の望みだろう」

「はい」

「遅すぎるが、少しは正しく払う」

その言葉で過去が許されるわけではない。けれど、間違った名目で片づけられなかったことに、私は安堵した。裁判所を出ると、クロイツ公爵が待っていた。

「報酬になったか」

「はい」

「よかった」

「公爵閣下は、どうしていつも要点だけを聞くのですか」

「あなたが要点を大事にするから」

私は返事に詰まった。彼は少しだけ笑った。

「今日は仕事の話ではないか」

「報酬の話ですから、仕事です」

「では、次に会う時は、仕事ではない話をする」

次。その言葉が、胸に残った。離縁は成立し、報酬も記録された。もう、話を先延ばしにする理由は減っていた。

多言語文書監査官として最初に作った私的な文書は、恋愛に関するものだった。正確に言えば、クロイツ公爵との今後の距離に関する覚書である。オリーヌに見つかったら一週間は笑われるだろうし、サラに見つかったら食堂中に知らせかねない。だから私は、自分の小部屋で一人、深夜にその紙を書いた。

見出しは、私的関係に関する確認事項。書いてすぐ、あまりにも堅いと思った。しかし、ほかにどう書けばよいのか分からない。一、いかなる関係においても、職務上の署名権、報酬、役職は相手の家名に吸収されない。二、双方は相手の私的時間、職務、交友関係を所有しない。

三、保護を名目に行動制限を課す場合は、具体的危険と期間を明示する。四、沈黙は同意とみなさない。ここまで書いたところで、私は額を押さえた。これは恋文ではない。契約でもない。だが、私には必要だった。誰かを好きになることと、再び誰かの家に飲み込まれることを、同じにしたくなかった。

翌日、公爵と会う約束は夕方だった。場所は翻訳組合の庭。冬枯れの庭には小さな月桂樹があり、ベンチは古いが手入れされている。私は紙を持って行った。公爵はそれを受け取り、真剣に読んだ。笑わなかった。そこが、この人の恐ろしいところであり、ありがたいところだ。

「第五項を足してもいいか」

彼が言った。

「どうぞ」

「双方は、感情を職務上の命令に偽装しない」

私は少し驚いた。

「公爵閣下に必要な条項ですか」

「私にも、あなたにも」

「確かに」

彼は紙を返した。

「これは、あなたが私を拒むための紙か」

「違います」

即答できたことに、自分でも驚いた。

「拒むためなら、会いに来ません」

公爵の目がわずかに揺れた。私は続けた。

「これは、私が誰かを好きになる時に、自分を失わないための紙です」

「なら、私も署名したい」

「本気ですか」

「本気だ」

彼は万年筆を出した。私的関係に関する確認事項。その堅い見出しの下に、エルネスト・クロイツの名が書かれた。私は自分の名を書いた。イザベル・レヴィエ。妻ではない。誰かの付属でもない。それでも、誰かと隣に立つ可能性を閉じない署名だった。

紙を折りたたむと、公爵が静かに言った。

「次は、私の言葉を聞いてほしい」

私は頷いた。風が月桂樹の葉を揺らす。今まで何度も、言葉を失った。けれど今日は、聞く準備ができていた。