軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 IF夏の思い出3

「お待たせしましたマスター! ジャジャーン! エク子、サマーバージョンにフォームチェンジ完了です!」

一番手で飛び出してきたのは、エク子だった。

彼女が選んだのは、ビタミンイエローの眩しいビキニに、フリルのついたキュートなスカートがセットになった水着だった。

普段のポップな印象そのままに、元気いっぱいのエネルギーが弾けているようだ。

「マスター! どうですか!? 評価は星5つでお願いします!」

エク子がその場でクルッと回り、アイドルのようなポーズを決める。

「……ああ。すごく似合ってるよ。エク子らしいっていうか、海辺を走り回る姿が目に浮かぶな。星5つだ」

「やったー! マスターに大絶賛されました! 好感度パラメーター上昇確認です!」

俺が素直な感想を伝えると、エク子は両手を叩いて大喜びし、満面の笑みで試着室へと戻っていった。

続いて、隣のカーテンが静かに開く。

「……マスター。装着を完了しました」

「ぶっ!?」

姿を現したトラ子を見た瞬間、俺は思わずむせてしまった。

トラ子が着ていたのは、漆黒のシックなビキニ。

そして、腰には薄いパレオを巻き、首元で紐を結ぶホルターネックタイプだった。

普段はカッチリとしたスーツと銀縁メガネで隙のない彼女だが、その露出度の高い黒の水着は、彼女の透き通るような白い肌と、驚くほど整ったプロポーションを際立たせており、破壊的なまでの『大人の色気』を放っていた。

「こ、これは……。流体抵抗を最小限に抑えるための布面積と、関節の可動域を確保した結果、この形状が最適解だと判断しました。

……何か、問題がありますか?」

トラ子はメガネをクイッと押し上げながら、いつも通りの淡々とした口調で聞いてくるが、その頬はほんのりと赤く染まっていた。

「いや、問題はない。問題はないけど……その、なんだ。

目のやり場に困るくらい、綺麗だ」

「……っ! き、綺麗……。データの記録を確認。マスターからの肯定的な視覚評価を受信しました。

……悪く、ありませんね」

俺が素直に答えると、トラ子はプイッとそっぽを向いたが、パレオを握る手が微かに震えていた。

ポンコツ化せずに照れるトラ子は珍しい。

トラ子と入れ替わるように、今度は葵が元気よく飛び出してきた。

「誠さーん! 私のはどうですか!」

葵が選んだのは、スポーティーなデザインの、オレンジ色を基調としたバンドゥビキニだった。

下はショートパンツタイプになっており、活発な彼女の性格にぴったり合っている。

「おお、葵らしいな。動きやすそうだし、健康的ですごく良いと思うぞ」

「えへへ、やった! ビーチバレーでも水鉄砲でも、これで誠さんに負けませんからね! 覚悟しておいてくださいよ!」

葵は得意げにピースサインを作り、元気よく笑った。

そして、最後。

一番奥の試着室のカーテンが、少しだけ躊躇うように、ゆっくりと開かれた。

「あ、あの……誠さん……」

そこから現れたしずくを見て、俺は言葉を失った。

しずくが選んでいたのは、純白を基調とした、清楚な中にも少し大胆さのあるオフショルダーのビキニだった。

肩から胸元にかけて上品なフリルがあしらわれており、彼女の清楚な顔立ちと、ふわりと下ろした黒髪に恐ろしいほどマッチしている。

普段、ダンジョンで剣を振るう凜々しい姿からは想像もつかないほど、そこには純粋な『女の子』としての可憐さが溢れていた。

「ど、どうでしょうか……。私、こういう露出の多い服、あまり着たことがなくて……変じゃ、ないですか?」

しずくは恥ずかしそうに両手で身を隠すようにしながら、上目遣いで俺を見つめてきた。

「……変なわけないだろ。めちゃくちゃ綺麗だ。正直、見惚れた」

「……ッ!」

俺の言葉に、しずくの顔がポンッと音を立てるように真っ赤に染まった。

彼女は両手で顔を覆い、「み、見惚れたって……誠さんに、そんなこと言われるなんて……」と、しゃがみ込んでしまった。

「しずく、顔真っ赤! 茹でダコみたいになってるよ!」

「葵、笑わないでください……っ! 誠さんが、急にそんなストレートなこと言うから……」

試着室の前で、からかう葵と、恥ずかしがるしずくの楽しげなやり取りが続く。

俺はそれを眺めながら、なんだかんだで付き合って良かったなと、密かに口角を緩めていた。

全員の水着が決まり(ついでに俺の適当な黒の海パンもカゴに入れ)、俺たちはレジへと向かった。

女性用のブランド水着が四着。それにサンダルや小物もろもろ。

「お会計、合計で9万8千円になります」

レジの店員さんが、四人の美女(とAI娘)を引き連れた俺の顔を、尊敬と少しの哀れみが混じった目で見て金額を告げた。

「誠さん、私たちのお金出しますよ!」

「そうですよ! さすがに全額出してもらうのは悪いです!」

しずくと葵が慌てて財布を出そうとするが、俺はそれを手で制した。

「いいって。今日は俺が誘ったんだし、俺に払わせてくれ。

この前のダンジョンで、モンスターハウスの魔物を全部狩って、Dランクとはいえドロップアイテムを大量に精算したからな。

今、俺の財布はかなり温かいんだよ」

「あっ……。あの時の、誠さんが自然災害みたいに魔物を消し飛ばした時の……」

二人はひきつった笑いを浮かべた。

俺は財布の中身が潤っていることに感謝しながら、支払いを済ます。

「マスター、ありがとうございます! この御恩は、海でのイベントでお返ししますね!」

『マスターの寛大な資金提供に感謝します。

この投資に見合うだけの、有意義なデータ収集をお約束しましょう』

水着の入った大きな紙袋を受け取り、俺たちはデパートの外へと出た。

外は相変わらずの熱気だったが、先ほどまでの重苦しい暑さは嘘のように消え、どこかワクワクするような夏の匂いがした。

「それじゃあ、明後日の朝、レンタカーで迎えに行くから」

「はい! 楽しみにしています!」

「誠さん、運転気をつけてくださいね。お弁当、私と葵で作ってきますから!」

夕日に照らされながら、笑顔で手を振るしずくと葵。

俺と、俺の脳内に戻ったエク子とトラ子も、彼女たちの背中を見送った。

『ふふっ。マスター、楽しみですね! 次回、水着だらけの海浜チャプター、期待していてください!』

『日焼け止めの調達と、現地の海流データの分析を進めておきます。

マスター、今日はゆっくり休んでください』

「ああ。……最高の夏休みにしようぜ」

突然の海への遠征計画。

平和な「もしも」の世界線で過ごす、俺たちのささやかで騒がしい夏休みが、いよいよ幕を開けようとしていた。