軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヒロインの陰謀5

「全く……王族ってみんなああなのかしら」

翌日、私は学園の幼等部の子ども達と花摘みをしながら、昨日のことを反芻していた。

「でぃあなさま、どうしたの?」

「かお、こわーい」

自然と顔を顰めていたらしく、子ども達にそんなことを言われてしまった。

「あ、ご、ごめんねみんな。あら、素敵な花束になったわね!」

気を取り直してみんなの手の中の花に視線を送る。

この花、実は幼等部のみんなと一緒に育ててきた花なのだ。

学園のバラ園みたいに立派な花壇ではないが、種植えや世話が簡単で、丈夫なものを選んで色々な花を植えた。

せっかくだから少し摘んで教室や家の自室に飾ろうと、数名の女の子達を連れて、園舎から少し離れた花壇に摘みに来たのだ。

「でぃあなさま、あおいろがすきなの?」

「え?どうして?」

「ほんとだ、あおとか、むらさきいろのはなばっかり。しろいおはなもあるね」

そう言われて自分の手元を見れば、無意識に寒色系の色の花を選んで摘んでいた。

殿下のことを考えていたからだろうか、なんとなくその風貌に近い色合いの花束になっている。……って。

「いやいやいや!たまたま!そう、たまたまよ!元々私、青系の色が好きだし!なんなら私の瞳の色も青だし!」

「ど、どうしたの?」

「たまたまって、なにが〜?」

急に言い訳をしはじめた私に、子ども達が鋭い質問をしてきた。

「うっ、た、たまたま……。そう、青色が好きだから、たまたま青色のお花ばっかり選んじゃったみたい〜。白とか紫も、青い花と合うものね〜」

あははは〜と笑って誤魔化す。

うん、相手は子どもだから大丈夫。

うしろにいるミラがなにか言いたそうに無言でこちらを見ているけど大丈夫!

我ながら苦しい言い訳だなと思いながら腰を上げると、ひとりの少女が声を上げた。

「そういえば、ぱーてぃーででぃあなさまをたすけてくれたひとも、そんないろのおめめ、してたね」

ぴたり。

それを聞いた私は固まった。

「あ!そういえばそうね!あのひと、おうじさまみたいだった〜」

「うんうん!でぃあなさまも、おひめさまみたいだったよね!」

きゃあきゃあと一気に盛り上がってしまった。

ま、まずい。

彼女達は若干五、六歳である。

しかし、性別は女。

女とは、どんなに幼くても女なのだ。

「ねえねえでぃあなさま、あのかたとは、もうおあいしてないんですか?」

「えっと……こんやくはき?したから、あのえらそうなおにいちゃんとは、けっこんしないんだよね?」

「じゃああのおうじさまみたいなひとと、もしかして……?」

きゃーっ!とボルテージは最高潮だ。

「あ、はは……。アル……いや、クロイツェル公爵令息とは婚約破棄したけど、新しい恋人なんていないわよ?あの時助けてくれた人とも、そんなんじゃないし?」

だからね?この話は止めましょう?

そんな圧をかけて少女達の肩をポンと叩く。

ふぅ、この年頃の女の子がおませさんなのは、やはり異世界でも同じのようだ。

年長さんだと時々、男の子の中で誰々がかっこいいとか結婚したいとか、そんな話を耳にする。

相思相愛カップルがいちゃいちゃしていた場面に遭遇した時は、五歳児に先を越された感に打ちひしがれたっけ。

懐かしいわね……と遠い目をする。

―――――その、一瞬の油断がいけなかった。

「きゃああああっ!」

女の子の叫び声に、ばっと反射的にそちらを振り向く。

「たすけて、でぃあなさま!」

見れば、黒ずくめのフードを着た五人組が、一緒に花摘みをしていた子ども達を拘束している。

そしてその手には、ショートソードが握られていた。

さっとミラが私を庇うように、前に出る。

動いては子ども達が危険だ。

「子ども達を放して!」

感情的になっては駄目だ、落ち着け。

たりりと汗を流しながら、必死で心を落ち着かせる。

「あなた達は、誰?」

「…………答える必要はない」

リーダーだろうか、黒フードのひとりがそう応えた。

声の低さと体格からして、たぶん男。

説得が通じるだろうか?

園の不審者訓練で、こういう状況の対応は何回も練習してきたじゃないか、それを思い出せ。

まず最初にやることは――――。

後ろ手に、目立たないように魔法を使う。

魔法で作り出された小さな羽虫のうち何匹かが、そのまま曲者達に気付かれずに飛んで行く。

それを横目で確認し、ほっと息をつく。

「お願い、子ども達を傷つけないで。目的を言って頂戴」

「……ならば、これを着けろ」

ぽいっと投げられ足元に落ちたブレスレットを拾う。

これは……。

「魔法制御装置、ね」

「ご明察。そこの侍女もだ、早くしろ」

隙をついて魔法で攻撃しようかとも考えたのだが、こちらのそんな考えはお見通しということか。

子ども達の無事には替えられない、ここは大人しく言うことを聞いておこう。

「ミラ、お願い」

躊躇うミラにそう伝え、ブレスレットを着ける。

するとブレスレットがぎゅっと手首にぴったりのサイズに締まり、外せなくなった。

うわ……魔力が吸い取られていくような感覚がする。

なるほど、これは無理だわ。

内心焦りながら男達を見る。

こいつらの目的はなんだろう。

とりあえずここはそれを探りながら時間稼ぎをしなくては。

「それで?次はどうしたら良いの?」

「俺がそちらに行き、後ろ手に縄で縛る。動くな」

魔法の次は身体の自由も奪う気か。

護身術も一応習っているから、近づいて来た時に不意をつくことも可能だけれど……子ども達が人質にされているから無理ね。

完全に後手に回っている。

気を付けろ、油断するなよと言われていたのに。

けれど今そんな後悔をしていても、なにも変わらない。

せめて、彼らの目的だけでも分かると良いのだが……。

ミラを縛る男をキッと睨む。

フードを被っている上に黒いマスクをしていて顔がよく見えない。

「子ども達を捕まえて、私達を縛って。それからどうするつもり?」

「さてね?俺達も依頼されただけだ。自分より身分の低い子どもなんて捨て置けば良いものを……あんた、馬鹿だね」

「うるさいわね。子どもを人質に取る卑怯者には分からないでしょうね」

馬鹿だと言われて、ついそう言い返してしまった。

しまった、相手を怒らせてしまったかも。

はっとしたが、意外にもフードの男はふっとマスクの奥で笑った。

「なるほど、聞いていた通りだな」