軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヒロインの陰謀1

殿下達に前世のことを話してからしばらく経ったが、私の生活は特に変わることなく、平穏に過ぎていった。

前世のことを知って、殿下やルッツ様は私に対する態度を変えたりはしなかった。

ミラもまた同様に、今まで通り普通に私付きの侍女として接してくれている。

ミラはひょっとしてお父様達に報告するかもなと思っていたのだが、今のところそんな様子もない。

勝手に誰かに話すことはしませんって宣言していたし、私に気を遣ってくれているのかもね。

記憶を取り戻してすぐの頃はものすごく警戒されていたけれど、随分と穏和になったものだ。

変わったことと言えば、時々騎士団の演習に参加してほしいとの要請が殿下から来たくらい。

どうやらあのケイドロを第一・第三騎士団でも行ってみたらしいのだが、なかなかに好評だったらしい。

……団長や副団長、指導員達 に(・) は(・) 。

実際に見ていたからと、私がやっていたような魔法での妨害は、殿下が担当していたらしい。

……絶対、私がやった時よりもキツかったはず。

その日から殿下は、騎士達から“魔王”呼びされるようになったんですよと、ルッツ様がこっそり教えてくれたもの。

そんなこともあったらしいが、良かったら私も一緒に参加してもらえないだろうかと誘われたのだ。

まあたまにならとのことで、何度かご一緒させてもらったのだが……。

『やはり君は面白いことをポンポン考えつくね。そんな厭らしい妨害の仕方、私には思いつかないよ』

とっても良い笑顔でそう言われて、イラッとしたこともあった。

殿下は前世のことを知っているので、あれは私が考えたわけじゃなくて、前世で見たあるテレビ番組の真似をしたのだと小声で答えれば、『テレビバングミ?なんだそれは?』と興味を持たれてしまった。

説明するのが難しくて、テレビと番組の内容について適当に説明してしまったのだが……。

『異世界にはそんな恐ろしい娯楽があるのか……』と、ものすごく鬼畜体験な話のように受け取られてしまったので、もう面倒になってそのまま放っておいた。

そして、下手に前世の話を持ち出すのは止めようと、自分に言い聞かせた。

ちなみにあの悪女モードは封印している。

なぜか殿下から禁止命令が下ったからだ。

理由はよく分からないけれど、私もさすがに全騎士団内で冷血上官扱いされるのは嫌だったので、分かりましたとふたつ返事で了承した。

そういえば、アイリス様が騎士服姿で見学に来てくれたこともあったのだが、それにはものすごく驚いた。

『見てみて!この前ディアナが着ているのを見て、素敵だなと思ってお兄様に作ってもらったの!ふふ、お揃いね!』だって!

もうなんでそんなにかわいいの〜!とアイリス様に抱きついてしまったのは言うまでもない。

『あの、“おーっほっほっほ!”ってやつ、やらないの?』と言われた時は、なんて答えようかと迷ったけれど。

前はお父様の煽りもあり、ついやりすぎてしまったのだけれど、良く考えればアイリス様の教育には良くないかもなと思い至り、封印しようと改めて決心した。

だから通常モードでしか参加していないのに、第一・第三どちらの騎士団でも、演習前から騎士達の私の扱いが完全に上官へのそれになっていた。

恐らく第二騎士団から話が通っていたせいだろう。

何度か演習に通っても騎士達の中の先入観を変えることはできず……。

こりゃ私、この国の騎士とは結婚できそうにないな。

そう完全に諦めてしまったのだった。

まあでもそれ以外では平穏そのものの暮らしができているし、とりあえず今はこのままでも良いか。

そうのほほんと暮らしていた、ある日。

「ディアナ様。その、大丈夫ですか……?」

いつものように昼食の時間を過ごそうと、学園の食堂に向かおうとしていた私に、キャロル嬢が心配そうな顔をしてそう告げてきた。

「大丈夫って、どういうこと……?」

心当たりのない私が首を傾げると、キャロル嬢は頬に手をあてふうっとため息をついた。

「ご存知ないのですか?その、ディアナ様の元婚約者……クロイツェル公爵令息とのことで……」

「アルフォンス?え、知らない、けど……」

意外な人物の名前が出てきたことに驚きたじろぐ。

たしかアルフォンスは、ユリア嬢とともに将来の勉強のためにと、クロイツェル公爵領へと送られたはず。

まぁ本当に将来のための勉強をしているのかは知らないけれど……。

それはともかく、クロイツェル公爵領は辺境ほど王都から離れてはいないけれど、だからといってすぐ隣の領ほど近くもない。

だから、彼らとは去年の卒業パーティー以来一度も会っていないし、手紙など間接的な関わりも持っていない。

噂が立つようなことなどなにもないと思うのだが……一体なんだと言うのだろう。

ごくりと喉を鳴らして尋ねる。

「クロイツェル公爵令息が、どうされたのですか?」

「いえ、私も父が話しているところをたまたま聞いただけなので、詳細は知りませんが……。その、ディアナ様に――――――」

「え」

予想外も予想外、というか非常識過ぎる内容に、ぴしりと固まる。

けれどそれも一瞬のことで、すぐに驚きやら呆れやら、色々と混ざった感情が流れてきて。

「う、う、う、嘘でしょーーーー!?!?!?」

私はつい、学園の食堂で叫んでしまった。