軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

176 第一試験

「ああ、お手柔らかにな」

ルナス達によって強化された俺達ってかなり強くなっているんだな。

絶対に合格しないとな……ルナス達の期待に応えるためにも。

「ヌマヌマ」

では時間まで待ちましょう。椅子になります。

ってクマールが壁の近くでうつ伏せになって寝転ぶ。

腰掛けろって事か?

まあ、無駄な体力の消耗は抑えておいた方が良いんだろうけどな。

ただ、乗って良いのかと思って居るとクマールが少し緊張して居るのが分かった。

……宥める意味もあって触れてあげていた方が良さそうだ。

俺はクマールの望む通りに腰掛けてクマールの頭を撫でる。

「ヌマァ」

撫でる事でクマールは落ち着きを取り戻したのか気持ちよさそうな声を出す。

うん。レンジャーは冷静に対処しないとな。

と、俺達は試験開始の時間までその場で待機した。

どれくらい時間が経っただろうか、通路の奥からぞろぞろと試験官らしき人達がやってきた。

「えー……これより、中級レンジャー試験を始める。この試験は過酷であり、死者が当然の様に出る。辞退しようと思う者はここで戻るように」

そんな警告の台詞が響くのだけど、ここで引くような奴が中級レンジャー試験に出るはずも無い。

みんな自信に満ちた表情で試験開始を待ちわびている。

「……では始める。受験者達は付いてくるように」

そうして通路の先へと俺達は案内される。

試験官達の案内する先はどうやらこの町に張り巡らされた下水路のようだ。

把握でマップを脳内に描いて確認すると……かなり広いし複雑なのが分かるなぁ。

迷路みたいな下水路を進んで行くと……待たされた部屋によく似た広まった所に出る。

そこには無数の宝箱が転がって居るようだ。

「第一の試験は宝箱の鍵開けと罠解除だ。中には次の試験場へ行くための鍵が入って居る。レンジャーたるもの罠と宝箱の鍵開けは出来て当然だ」

「へへ、楽勝だな」

受験生が自信満々に呟く。

「ただし、鍵開けに失敗した場合、命の保証は出来かねるから注意するのだぞ」

ああ、迷宮内にある危険な宝箱の罠とかが仕込まれているのか。

「わかってるって」

って感じで受験生の一人が手慣れた手つきで鍵開けを行い……。

「ちょ――」

俺が注意するよりも早く受験生はガチャリと宝箱を開けてしまった。

「楽勝らく――」

ズブシュ! っと宝箱から毒矢が放たれて受験生の眉間に突き刺さる。

ドサッと、受験生はそのまま宝箱にもたれ掛ったまま動かなくなった。

複数の罠が宝箱に同時に仕掛けられていたのがわかっていなかったのか。

「ヒィ……」

誰かが小さく声を漏らした。

試験なんだから死にはしないって甘えた考えを持っていた者がまだいたという事か。

試験とは言え油断大敵か。

「っとまあ、油断してるとお前達もコイツの仲間入りとなる。罠の内容も宝箱毎に違うので注意して鍵開けをするように」

試験官はそう言い残して通路の先へと行ってしまった。

「……」

こうして受験生達は各々宝箱を開ける試験を始める事になった。

さて……どうしたものか。

みんな周囲をけん制するように宝箱の吟味をして居るようだ。

仮に解除を失敗しても生き残れるような罠が仕掛けられて居る宝箱が良いって思って居るのだろう。

思い思いにスキルを使って鍵開けをしようとしている。が、一部は傍観するだけに止まっている。

……まあ、やるしかないか。

俺は手頃に転がっている宝箱に近づいて鍵開けを行う。

まずは把握で確認……仕掛けられて居るのは毒霧と硫酸、更に爆発の罠まで仕掛けられてるのか念の入った事で。

ただ、この手の鍵開けは今までやってきたし、見習い時代にしっかりと練習して居たから罠解除は得意だ。

スキルが把握ってだけなので評価はされなかったんだけどな。

そもそも今の俺には念魔法もある。

魔法感知管が仕掛けられていないなら簡単なもんだ。

宝箱に触れる前にサイフロートで中に仕掛けられた罠の配管を切断、爆発の仕掛け部分も外して……カチャカチャと鍵開けをして箱を開ける。

「な……早いーー」

近くで解錠をしていた受験生が宝箱の解除を終えた俺に驚きの声を上げている。

中は……数字の書かれたバッチ?

とにかく、中身を取り出して奥へと行こうとしたその時、俺とクマール目掛けて矢と短剣が飛んで来た。

サッと避けて射手の居る方角を睨む。

するとそこに三人ほど、俺達にヘラヘラと笑みを浮かべる。

「へへへ、悪いがそれを渡してもらおうか」

「それはなぜ?」

「態々言われるまま鍵開けなんてしなくても中身さえ手に入れりゃ第一試験突破だろ? なら弱そうな奴が開けた中身を頂けば良いだけだろ」

「それに宮仕えになったレンジャー様ならこの程度、容易く退ける事が出来るだろー?」

……さっきの会話を聞き耳していたって所か。

冒険者故に血の気と欲深い連中が多いのは分かってるけど試験って意味を分かってるのかね。

こんな手段で試験を突破してもレンジャーとして、迷宮内で宝箱を開ける担当としていられるのか?

宝箱を見つけたら誰かが開けるのを待ってるレンジャーとか本末転倒だと思うんだがな。

これもレンジャーたるもの人の汚い部分を知った上で動ける様になった方が良いという反面教師か。

「試験官様は横取りするななんて言ってねえんだ。いいから寄越せって言ってんだよ。じゃねえと痛いじゃ済まねえぞ」

そうかとばかりに三人に二人ほど加勢して俺を囲み始める。

「降りかかる火の粉は払わせてもらうぞ? ライバルを蹴落としてはいけないとも言われていないしな」

「抜かせ。一人と変な魔物でどうにか出来ると思ってんのか!」

「ヌマ」

っと、俺に向かって投げナイフを投げて接近してくる短剣を取り出した横取り受験生にクマールが立ちはだかり、投げナイフを空中で掴んで投げ返す。

「ぐあ!?」

ドスッと横取り受験生は投げ返された投げナイフが肩に深々と突き刺さり、よろめいた隙を突いてクマールが拳を握って裏拳を放つ。

「ふべぇーー」

ドン! っと勢いよく横取り受験生は吹き飛ばされて壁に叩きつけられぐったりと動かなくなった。

死んではいないみたいだな。

「ヌマ」

ふん! っと声を出したクマールに横取りを画策して囲んで居た受験生達は声を失った様にたたずんでいる。

「よくやったクマール、怪我は無いか?」

「ヌマ!」

この程度、怪我をする事はありません! っとクマールは意思を伝えてくる。

「それで? まだやるのか?」

「チッ! 強い使役魔同伴かよ。宮仕えってのは卑怯な事をしやがる!」

返り討ちに遭った事で同調した受験生達は負け犬の遠吠えを抜かして離れていく。

舐められてるとは思ったけどここまでとは……ガラの悪い奴らが多くて困るな。

「助かったよ、クマール」

「ヌマー」

お前は聞き分けが良くて頼りになる奴だよ。

がんばったと思って俺はクマールを撫でる。

本当、最初に会った頃とは強さが桁違いだな。

俺もお前に負けられないな。

「ヌマ!」

「まあ……これで一次試験は突破って事で良いのかね」

と言った感じで俺はバッチを持って試験官の後を追ったのだった。