作品タイトル不明
175 中級レンジャー試験
「何やってんだ二人とも」
「こ、これはリエル! 奇遇だな! 丁度別件で私達はこの町に来ていてな!」
「そうそう。リエルこそ中級レンジャー試験はどうなんだい?」
もの凄く白々しく言いやがるなルナス達は。
ここぞとばかりに様子を見に来たって事なんだろう。
子供のお使いじゃないって言うのに……心配性とでも思えば良いのかね。
「これから試験に挑むって所だ。さすがに試験会場には入れないと思うから付いてくるなよ? そこはレンジャーの試験なんだからシュタイン、お前の潜伏に気付く奴だって絶対に居るぞ」
シュタインの隠密スキルはセカンドスキルだけど元々は職業に該当する強いスキルだ。
本人曰く、宮仕え勇者パーティーのレンジャー相手でも気付かないくらいには潜伏が得意だとか言うけどな。
「下手に気付かれてお前が俺の仲間だって知られたら困るんだが……」
むしろどこから情報を仕入れた?
いや、教会所属の諜報部隊なんだから分かって居ても不思議じゃ無いけどな。
「しょうがないねルナスさん。僕たちはここでリエルが試験を合格するのを待つしか無さそうだよ」
「全体の日程がどれくらい掛かるのか分からないしな」
「そうか……ではせめて会場の近くまで同行しても良いであろう?」
「それくらいなら……」
「ヌマヌマ」
ヤレヤレってクマールが鳴く。
俺も同意見だ。
という訳で地図に記された会場まで俺達は行く事にした……とは言ってもすぐなんだけどな。
ただ、途中で町の教会前の広場に差し掛かった。
「リエル、リエル。せっかくなので教会で合格を祈るのはどうだ!」
「合格を祈るって奴だね。教会じゃ結構多いんだよ?」
祈りね……死者への冥福を祈ったりは俺もするけど、あんまり神様に自らの将来を祈るのって好きじゃ無いんだけどな。
こう……ハズレスキルを授けられたってイメージが未だにあってさ。
ただ、今の状況はハズレスキルであるはずの死んだフリが起こしたことであるのは変わらないか。
「わかったわかった。じゃあ少しだけな」
「よし、私達もリエルの合格を祈るぞ」
「何か面白い事が起こりますように」
おいシュタイン、何が面白い事が起こりますようにだ。
「ヌマー」
っと俺達は教会に入って……シュタインがプリーストとして教会の人に挨拶をして祭壇へと俺達を誘導して祈りを捧げる。
俺も昔やった神様への祈りをして……。
「……」
ルナスはしっかりと祈って居るようだ。
その期待に答えられるように頑張らないとな。
「ヌマヌマ」
クマールの祈った内容、俺達との出会いを神様という方がいらっしゃるなら感謝いたします……か。
……この中で一番、祈りに遠いのは俺だろうな。
神様、俺はあなたを昔よりも信仰してませんけど、よろしくお願いします。っと。
「よーし、みんなお祈りはしたね。リエル! 絶対に合格出来るから頑張って!」
シュタインが祈りを終えて送り出してくる。
「はいはい。ルナスも大人しくしててくれよ」
「うむ。今度こそ、無事に帰って来るのだぞ」
はは、すぐにレンジャー試験が終われば良いな。出来れば宮仕え冒険者になったって実績だけで即時合格みたいな感じで。
そうすれば帰りはルナス達と雑談でもして気楽に帰れるってもんだ。
と思いながら俺は地図に書かれた酒場にクマールと一緒に入り、カウンターでコップを拭いている店主へと近づく。
店内は……そこそこ賑わっているな。冒険者らしき連中でみんなガラが悪そうな人相をして居る。
こんな昼間から酒を飲んでいるって所が実に冒険者を体現して居る。
「いらっしゃい。注文は?」
「ジャングルビーシロップのミルクカクテル」
ピクッと店主が眉を上げて俺を片目で見てくる。
「氷は?」
「辛子多め」
この合い言葉を言うと会場へと案内されるって話だけど。
と思った所で店主がコップを置いてカウンターから奥への道を開き、手を差し出す。
ああ、ここで身分証明をするのか。
俺はレンジャーの身分証明証を見せる。ちなみにクマールは使役魔であると既に登録済みだ。
「確認した……奥の通路を行け、案内通りに行けばすぐだ」
「はい」
「ヌマー」
と、俺達は酒場の奥にある通路を進むと扉があり、その扉を開けると……地下へと進む階段があった。
階段を降りると……地下通路?
進んで行くと石造りの広い地下通路となった……雰囲気からして町の下水道っぽい。
更に道なりに行った所で……大きな部屋にたどり着いた。
そこには何十人もの人が待機している。
把握で確認すると……31人か。
新しく来た俺とクマールを待機している連中がチラッと見て興味を失った様に視線を逸らされる。
各々弓や短剣、クロスボウ等をチェックしたり使役魔を撫でたり、雑談をして居る。
どうやらここが会場で、彼らは中級レンジャー試験に挑む挑戦者達って事のようだ。
会場の奥にはまだ通路があるがここで待てと看板が立てられている。
そこには中級レンジャー試験と記されて居た。
「ここが会場って事か……」
初挑戦だけどこんな所で試験が始まるんだな。
やっぱりと言うか筆記試験とかは無さそうだ。
中級レンジャー試験に挑むと王宮で魔法を教えてくれる宮廷魔術師へと事情を説明した際、魔法使いの試験は筆記が先だと言われたっけ。
どうやら俺の学力なら簡単に突破できるだろうって言ってくれたけどな。
やっぱり職種毎に試験は違うよな。
ここに居るのはみんな中級レンジャーになるため参加しているレンジャー達なんだけど……見知った顔……あ、何人か居る。
「おやおや? そこにいるのは宮仕えになったリエルじゃないか」
俺の視線を感じて顔見知りのレンジャーが声を掛けてくる。
「随分と試験に挑むのが遅いようだが、どうなんだ?」
お前、受けるの遅いなって皮肉が込められた声音が混じってるなぁ。
クマールが眉を寄せて声を掛けてきたレンジャーへと視線を向ける。
「申請はしたけどお祈り手紙が来ててやっと参加さ。宮仕えになった直後に来た時は唖然としたよ」
「ハッ、ご苦労なこったな。天下の宮仕えになってもそんなもんか。大した実績としてギルドは評価してないって事だな」
宮仕えになるのは大した事じゃないって皮肉をここぞとばかりに当てこすってくるな……。
コイツの気持ちも分からなくも無いけどな。
俺も逆の立場だったら同情せずに僻みを言ったかも知れない。
「そんで宮仕え冒険者のお仕事ってのはどんなもんなんだ? 随分と変わった魔物を使役してるみたいだが」
「高難易度の仕事はしてるさ。ブレイブオーガの討伐任務とか迷宮でファイアジュエルドラゴンの討伐とかもな」
「はいはい」
なんか聞いてきた割に話の内容を聞くつもりは無いって様子だな。
嫉妬って事か。それとも内心俺を見下しているのか。
まあ……こっちの方が宮仕え冒険者なんだから気にする必要は無いんだけどな。
クマールが怒りそうだから念話で宥めて置く。
「ヌマ」
この方、感知能力低いですねーっと怒るか不安に思っていたクマールが答える。
うわ……気付かれない様にしつつ舐めるように把握を思いっきり掛けてる。
分かる奴がいたら引くくらい、クマールが俺へ僻みを言った奴を舐めきってるぞ。
ほ、程々にな? 気付かれたら面倒臭いぞ。
というか……これが習熟とLvの差か。
うん。俺も気付かれない様に把握を試しているのだけど目の前の挑戦者は気付かない。
これが実力差って事なんだろうなぁ……改めて成長を自覚した。
「とにかく、中級レンジャー試験じゃ宮仕えの権力は使えないから覚悟しておけよ」