軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

161 脱出魔法について

帰りの迷宮は順調としか言い様のない行程だった。

何せしっかりとマッピングを行ってきた訳だから、上の階層への道は一本道だ。

「こういう時にしっかりとマッピングしてくれていると助かるな」

「僕も軽くは目印つけるけど、完璧なマッピングはしてもらうに超した事は無いね」

「これが元々俺の仕事だったからな。注意しないといけないのはいつの間にか再設置されたりする罠だけどな」

時間を置くと迷宮内の形が変わってしまうけど数日程度ならそこまで変化は無い。

行きよりも遙かに早い行程で俺達は地上へと進んでいる。

「ただ、正直地上に戻るまでの道が面倒だね。古代での迷宮脱出の魔法とか聞くと、復活してくれないかなって思うよ」

「便利そうであるのになぜ使われなくなったんだね?」

「迷宮の仕組みが変わったのか、使った奴がみんな行方知れずになったんだと」

これは古文書などの記述で記されている情報だ。

その所為で結構な犠牲者が出て、迷宮から脱出する魔法は失われてしまった。

同様に危険な罠として知られる転送の罠が未だに存在するな。

「彼らは一体何処へと行ってしまったのか……考えると恐ろしいね」

「そうだな」

「時系列的には蘇生魔法が失われた時代と同じくらいかな?」

「俺もそこまで詳しく調べて無いけどあり得る話ではあると思う」

「そういえば蘇生魔法が存在したって言われる時代の話なんだけど、死んで蘇生猶予時間が近づいてくると死体が安全な所に転送されるなんて話もあるんだよね。そこに待機している蘇生魔法の使い手が即座に蘇生させる事で事なきを得るってさ」

なんだその非常に便利すぎる状況……そんなのが許されるなら確かに迷宮のどんどん奥へと冒険者達が入って行っても何の不思議も無い。

「便利な話であるな。死すら恐れぬ戦士達の戦いだ」

「神々の世界に招かれた戦士達並の好待遇の話だね。実在するか非常に怪しいけどね」

なんとも羨ましい話……と、言えるのかね。

「命が非常に軽そうな話だな。口封じに消すとかも安易に出来なさそうだ」

「そこは蘇生費とかいろんな所で汚いやりとりがあったんじゃない? 蘇生するのに運が関わっているって話もあるし」

「運、ね」

「そう、確率で蘇生を失敗するんだってさ。そうなったら蘇生は不可能になる。幾ら死んでも大丈夫といっても限度があったとか……神に選ばれた勇者は無制限に蘇生出来たとか資料によって違うからね」

蘇生失敗なんてあるのか……何でも簡単にはいかないんだな。

「そう考えると安易な蘇生を神様って奴は禁じて転送という便利な手段も消し去ったのかも知れないな」

神様を信じてはいないけど、何かしらの法則で死者蘇生という技術は失われてしまったのならありえる。

更なる古代の技術で使えていたけど、壊れたとかでも理由はつけられるからな。

「まあ、傲慢な人々への罰を与えたって考えだね」

「どちらにしても脱出の魔法なんて無いんだ。地道に帰るしかないって事だな」

と……俺達は来た道を戻り36階に到着した。

「それでルナス、シュタイン。この階層で待つ手はずだけど素材集めをしておくか?」

41階層で見つけた装備で使えそうな代物は持ってきている。

それ以外の確保がしやすそうな素材類をここで集めておくかを問う。

「39階で既に素材を渡して加工して貰っているのでな。頼んだ品が届くまではここで物資調達をさせてもらうとしようか」

帰り際に丁度良いからとハイロイヤルビーに貰った装備の強化をお願いしたんだった。

急いで加工するので少しの間待っていて欲しいと言われて俺達はその間、この階層で素材の再度入手をする事にした。

生憎ファイアジュエルドラゴンは再出現していないだろうけど他の魔物はいるだろう。そこまで入念に調査もして居ないし。

「ヌマ!」

という訳で俺達はそのまま36階層でドラゴン素材の確保を行った。

正直……41階層の魔物達を十分に倒した影響か、36階層のドラゴン達をそこまで脅威に感じる事無く倒せる様になっていた。

これが成長って事なんだろう。

「驚くくらい劇的に強くなってきてしまっているね。僕は僕自身が怖いよ。ははは」

シュタインの冗談が冗談に聞こえない位にはルナス達の戦闘が手早く済んでいる。

俺とクマールの死んだフリによる強化もあるけどな。

「ゾンビ操作以外にプリーストとしての魔法をもっと覚えておかないとなー……」

「敵に唱える防御低下の魔法って魔法使いの方だったっけ?」

シュタインは攻撃力増加などの魔法は使えるけど相手を下げる魔法は使っている所を見ない。

「そうそう。墓守とかのスキルじゃそっち方面の魔法は上手く使えなくてね。強化は良くても弱化は認めないみたいなんだよね」

なんだか色々とあるんだな。

「ルナスさんの方はどうなの?」

「私は魔法使いの魔法も網羅しているがその辺りは管轄外だ」

なんだかんだ俺達は痒い所に手が届かずにいるんだなぁ。

やっぱりこの辺りは道具でどうにかしないといけないか。

「ヌマー」

クマールは言うまでも無く魔法は使えないし、俺も念魔法を覚えはしたけどまだしっかりとした使い方が分からない。

念話と……なんとなく相手がどう動くか読める程度じゃな。

早く地上に戻って正式に勉強したい所だ。

「ギー」

そんなこんなで36階層で待機しているとハイロイヤルビーが依頼した武器の強化をして持ってきてくれた。

「ありがとう」

俺達はドラゴン素材で強化された武器を各々受け取る。

持ち手の部分にドラゴンの皮が使用されており、弦の部分はカーボンスパイダーの糸が使われている。

把握で確認するだけで相当強力な武器へと進化しているのを感じる。

「ふむ……悪く無いな」

「そうだね。これだけで前より遙かに楽に戦えるようになったと思うよ」

「ヌマー」

みんな強化して貰った武器を各々確認している。

うん……この武器があれば次に迷宮に来たとき、勇者の怒りに頼らなくても深い所まで来れるだろう。

「ギギ!」

それでは失礼します! とハイロイヤルビーが敬礼して帰って行く。

俺達は手を振って見送ったのだった。

「それでは目的を完全に達した。帰ろう」

「ああ」

こうして武器の強化を終えて俺達は35階層へと戻り……マシュアとルセンが再出現していないか不安に思いながら通過した。

どうやら出てこないようで一安心だ。

……そのまま一直線に迷宮から脱出したのだった。

王宮に戻り、ファイアジュエルドラゴンの討伐依頼の達成を行い、ついでに道中で得た物資で達成出来る依頼も一緒に品を献上した。

当然の事ながら俺が調査した資料なんかも混じっている。

ハイロイヤルビー関連は面倒そうなので少々誤魔化してある。

王宮冒険者のカウンターにいる係員が目を丸くしながら差し出された素材を何度も確認していたぞ。

後は……今回の依頼の達成報酬をみんなで分け合って今回の冒険は成功に終わった。

「皆の者! これが報酬だ! 受けとれぇい!」

またルナスがボケを噛まして俺達の前に金袋をドンと置く。

前回よりも更に重そうな金袋になったなぁ……。

「まずリエルに予定通りの割合で渡そう」

「ルナスとシュタインは?」

「私と少年は残りを分ける。そう決めていたのでな」

なんか道中でそんな話を二人がしていたっけ。