軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

248話 共和国の村

超高速で飛び回る虫や巨大なスライムを退けて、俺たちは湿地帯をクリアした。

湿地帯の先はまた深い森になる。

エルフの話では、あと半日ほどで到着できると言う。

森の人の脚で半日ってことは、車なら2~3時間だとは思うのだが、到着する頃には暗くなりそうだ。

村にお邪魔するなら、明るいうちにしたい。

もし拒絶されたら、泊まる場所を探したりして右往左往することになるしな。

湿地帯の近くはスライムが怖いので、車で30分ほど森に入ってからキャンプを張ることにした。

ラ○クルをアイテムBOXに収納すると、コンテナハウスを3つ出す。

飯の準備をしながらツィッツラに村の話を聞こうとしたのだが、獣人たちがしょんぼりしたままだ。

アイテムBOXからチュ○ルを出して、彼女たちにやる。

「ほら、これでも舐めて元気を出せ」

「でもよぉ……旦那ぁ」「にゃ……」

耳を伏せて、彼女たちの気持ちを表しているかのように尻尾は垂れ下がる。

やっぱり戦闘で逃げ回ることが重なったことを気にしているようだ。

「気にするな。強い敵がいたら、俺やアキラに任せればいいんだ」

「私もいるし!」

アネモネが話を聞いていたのか、椅子を並べながら声を上げた。

「そうそう、うちには大魔導師様もいるしな」

「でもよぉ……」「うにゃー……」

「俺から離れたらブラシをかけてくれる男がいなくなるぞ?」

「「……」」

それはどうしても捨てがたいらしい。

抱き寄せて頭をナデナデしてやったら落ち着いたのか、チュ○ルを舐め始めた。

獣人たちをなでながら、エルフと行き先である村の話をする。

「俺たちが村に行っても大丈夫だろうか?」

見るからに怪しいし、こんな森の中で商人とか言っても信じてもらえない。

まさか本当のことを言うわけにもいかんし。

それに共和国に転移門のことも知られたくない。

「エルフがいれば、拒絶することはないと思うけど」

ツィッツラも、その村に行ったことがあるらしい。

あんな湿地帯を簡単に通り抜けることができるのだから、エルフの身体能力も半端ない。

俺は車や重機がないとなにもできないからな。

「その村ではエルフは歓迎されているのか?」

「ああ――というか、この国自体がエルフの里を模倣して作られているから」

「エルフは偉大な先生みたいな感じか……」

「そうそう、共和国は神様ってやつを拝むのを禁止しているしね」

「もしかして、エルフは神様代わりになっているのか?」

「う~ん、そうなのかなぁ……」

エルフたちも確信は持てないらしいが。

「それじゃ、村に行っても心配はいらないか……」

「村には医者もいないようだし、 回復(ヒール) 魔法を使える人もいなかったから、エルフが歓迎されているだけかもしれないけどね」

共和国の制度は、必要な人材が中央から送られてくるという話だったが……。

「王国で聞いた噂によれば――そういう人材は、各村が平等になるように中央から送られてくるんじゃなかったか?」

「そうなんだろうけど、本当に役に立つ人がいないらしいよ。今から向かう村では、医者だという只人を追い出してしまったらしいし」

「そうなのか」

役に立たずデタラメな治療をするので、村人が医者を追い出してしまったという。

そりゃそうだな、そんなことをしていたら治るものも治らなくなってしまう。

そのような村の運営を巡って、管理をしている役人と村人の対立が絶えないようだ。

夕飯は皆で食えるようにカレーにしたが、エルフたちはカレーが駄目なのでカップ麺にする。

金髪の森の妖精たちがカップ麺でいいと言うのだから悩む必要はないが、いつも同じ麺なので変わったものにしてみるか?

「エルフって辛いの駄目だよな?」

「うん」

――となると、カレー味や、チリトマトも駄目だ。

美味いのに……。

「それじゃシーフードでいってみるか」

「ケンイチ、カップ麺なら俺にも」

アキラはカップ麺も食べるらしい。

「カレーの他にカップ麺も食うのか?」

「俺もカップ麺を食べないと、ツィッツラと一緒に食べられないじゃん」

「あ~はいはい」

俺はちょっと呆れて購入のボタンを押した。

バラバラとシーフードのカップ麺が3つ落ちてくる。

「お湯は俺の魔導コンロを使うから、いいぞ」

「オッケー」

「オッケーにゃ!」

チュ○ルを舐めて、ミャレーもちょっと元気が出たらしい。

森猫たちにもネコ缶を出してやる。

俺たちのカレーもレトルトだが、ぶつ切りのコカトリスの肉をカレー粉で炒めてから、カレーをかけた。

香ばしいカレーのにおいに、獣人たちも鼻をヒクヒクさせている。

ちょっと離れた場所では、ツィッツラとアキラがラーメンを食べながらイチャイチャしている。

エルフたちは箸を使えないので、プラ製のフォークを使う。

アキラとツィッツラを見たセテラが俺の所にやってきた。

「ケンイチ、あーん」

彼女のラーメンをフォークで差し出してくる。

「ちょっと待て――アネモネ、皆にカレーを盛ってくれ」

「うん!」

食事の準備をしているってのに、セテラが待ってくれない。

「ほら、ケンイチ、あーん」

「それはいいが、俺の食べ物じゃエルフは食べられないだろ?」

「ケンイチが食べてから、私に食べさせてくれれば?」

仕方ないので食う。

俺が食ってから、セテラにも食わせると彼女は嬉しそう。

これがエルフ流の愛情表現だっていうのだから、付き合ってやる。

この国はエルフが崇められているわけで、彼女たちがいればかなり優位に交渉が進められるのは想像に容易い。

彼女のご機嫌を取るのもやぶさかではないだろう。

――とはいえ、彼女のことは嫌いではないし、仲良くやって異種族間同士の架け橋になればと思っている。

「ケンイチ! あーん!」

今度はアネモネがカレーの乗ったスプーンを差し出してくる。

「聖騎士様! 妾もじゃ!」

アマランサスも対抗意識を燃やしまくる。

俺が自分で食う前に腹がいっぱいになりそうだ。

アネモネとアマランサスにカレーを食べさせて、獣人たちにも食べさせてやることにした。

「ニャメナ、ここにおいで」

俺は自分の膝を叩いた。

「え? ……いいよ、旦那」

彼女が恥ずかしそうにモジモジしている。

「ほら、俺のことが嫌いになったのか?」

「そ、そんなことねぇけど……」

恥ずかしそうに彼女が俺の膝の上に乗ってきたので、毛皮をなでながらカレーを食わせてやる。

美味しそうにカレーを食べると、俺に擦り寄り喉をゴロゴロと鳴らす。

「ウチもにゃ!」

ミャレーが後ろから抱きついて顔を出してきたので、彼女にもカレーを食わせる。

そのまま顔をスリスリされると、カレーのにおいが顔につきそうだ。

「よしよし、今日は皆で一緒に寝るか」

獣人たちが情緒不安定なので、群れで寝たほうが落ち着けるんじゃなかろうか。

チラリとアネモネやアマランサスを見たが、OKらしい。

彼女たちも解ってくれている。

「セテラはどうする? 1人で寝てもいいが」

「なんでぇ! 私だけなんで仲間外れなのぉ?」

「いや別に仲間外れじゃないから、一緒に寝るなら寝てもいいが」

「それじゃ一緒だしぃ」

皆で夕食を食べ終わったので、コンテナハウスに入った。

3つ出したのだが、1つは収納して、ちょっと離れた場所でアキラとツィッツラが一緒だ。

鉄の箱の中に入れば熱と二酸化炭素に寄ってくるという、あの突撃虫の襲撃もないだろう――多分。

コンテナハウスの中にベッドを3つ出し、獣人たちにブラシかけをしてやる。

「なーん」「うなーん」

ベッドの上にうつ伏せになった獣人の2人が、背中にブラシが這う度に変な声を漏らす。

腰から尻尾にかけてなでてやると、腰がピクピクと上がってくるのが面白い。

「アネモネ、ベルたちにもブラシかけをしてやってくれ」

アイテムBOXから取り出したブラシを彼女に渡した。

「うん」

「にゃー」「みゃ」

森猫たちも、ベッドの上で黒い毛皮にブラシをかけられて、気持ちよさそうにしている。

「ねぇ、私もぉ!」

セテラが俺の背中に抱きついてきた。

「お前に毛皮はないだろ?」

「ちゃんとあるしぃ」

彼女が自分の金髪を指差したので、俺は新しいブラシをシャングリ・ラから購入した。

セテラに後ろを向いてもらうと、金髪にブラシをかける。

綺麗なストレートヘアなのでブラシに髪が絡むことなく、すぐに終わる。

「はい、終了」

「ええ~っ! もっとやってよぉ! そこの獣人たちには沢山やっていたじゃないぃ」

「そんなことを言われても、そもそも毛の量が段違いだし」

「もう! 私に対する愛はないのか」

どうしろってんだ。

困っているとアネモネが手を挙げた。

「はいはい、私も!」

アネモネも俺の所にやってきたので、彼女の黒い髪にもブラシをかける。

初めて彼女に出会ったときにはボサボサだった髪も、今では天使の輪が光っている。

こちらもすぐに終わってしまった。

「はい、おしまい」

「もっと!」

「君もか」

呆れていると、アマランサスが編み込んだ自分の髪を慌てて解き、俺の所にやってきた。

いつも金髪を編み込んでアップにしているが、それを降ろすと背中の辺りまである。

「聖騎士様ぁ、妾もじゃ……」

「アマランサスは髪が長いからブラシのかけがいがあるな」

彼女の柔らかい金髪にブラシをかけ終わると、皆でベッドに寝転ぶ。

俺は獣人たちと一緒に寝ることにした。

彼女たちには早く元気になってもらわないとな。

「それじゃぁ、私はアネモネと一緒に寝るぅ」

セテラがアネモネに抱きついた。

「やめろぉぉ!」

アネモネは本当に嫌そうである。

小さな魔導師に嫌われてしまったエルフが、チラリとアマランサスを見たのだが……。

「貴殿には申し訳ないが……」

エルフと、聖騎士の力を持つらしいアマランサスの身体能力はほぼ互角。

無理やりするのも難しいだろう。

「ケンイチぃ~!」

2人に嫌われたセテラが俺に抱きついてきた。

「獣人たちと一緒になら寝てもいいぞ」

「うん」

なんだか子供みたいなのだが、これで5000歳だからなぁ。

結局、セテラは一番いいポジションを取ってしまった。

まぁ、いいけどね。

------◇◇◇------

――湿地帯をクリアした次の日の朝。

森の深部でのキャンプで少々心配だったのだが、何事もなく朝を迎えることができた。

皆で食事を取る。

エルフたちは普通に食パンを食べているが、バターなどは駄目らしいので、マーガリンにジャムを載せて食べている。

彼らはバターを知らなかったが、においを嗅いで牛由来のものだとすぐに解ったようだ。

一緒に俺は、マーガリンに砂糖を載せて食べる。

俺が暮らしていた北海道だと、こういうパンが普通に売っているのだが、なぜかイギリスサンドという名前で売っている地域もあるらしい。

なぜイギリスなのかは知らん。

「お、ケンイチ。俺もそれ! 北海道で売っているパンだよな」

アキラもマーガリンと砂糖で食べるらしい。

彼は北海道で暮らしていたこともあるので、食べたことがあるみたいだ。

類似品で、マーガリンにジャムを載せたものも商品として売られている――マジで。

気になる獣人たちを見ると、だいぶ元気が出たようだ。

パンを食べている彼女たちの所にいくと座り込んで話す。

「大丈夫か?」

「にゃー」

ミャレーの頭をなでて、顎をなでてやるとゴロゴロと大きな音を出す。

「ニャメナは?」

彼女の頭をなでると、なぜか泣きそうな声を出す。

「旦那ぁ……あまり優しくしないでおくれよぉ……」

「え? 別にいいだろ? 優しくされたら困るのか?」

そこにベルがやってきて、俺の背中に身体を擦り付け始めた。

身体を擦り付けて、180度ターンして反対側を擦り付ける。

手を伸ばして、彼女の黒くて艷やかな毛皮をモフモフ。

この手触り、やはり只者ではない。

「ほら、お母さんにも優しくしてあげてるよな?」

「にゃー」

俺がなでてやっているベルが目を細めていると、いきなりニャメナが抱きついてきて押し倒された。

「うなーん!」

突然のできごとに、ベルも逃げた。

「わぁ! どうした?!」

「なーん!」

俺の言葉に返事もせず、彼女は顔をスリスリしている。

「トラ公! 朝っぱらからなにをしてるにゃ!」

「うるせぇクロ助! いいところなんだから黙ってろ!」

「ははは、喧嘩すんな」

ニャメナの下敷きになったまま、彼女の背中をナデナデ。

尻尾もなでてやると、俺の腕に長い尻尾が絡みついてくる。

「なーん」

「ミャレーもなでてやろうか?」

「要らないにゃ。朝っぱらからトラ公の痴態を見たら、ドン引きしたにゃ」

「痴態って言うな!」

よしよし、会話だけ聞いていると元気が戻ったようだな。

獣人たちも復活したようなので、食事の後片付けをして出発の準備をする。

アイテムBOXから車を出した。

「エルフの脚で半日ってことは、こいつだと2~3時間ってところだろう」

「昼前には着くな」

「そうだな。それにしてもやっと人里だよ……」

「エルフが協力的で助かったな。彼らがいなかったら詰んでたぜ、ははは」

「笑い事じゃないぞ、アキラ。そんな場所に追っかけてきたんだから」

「まぁ、やってきちまったものはしゃーない。それに、あのアマランサスさんを前にしてNOと言える状態じゃなかったし」

「それは悪かったなぁ……」

「聖騎士様! 妾は……」

アマランサスが悲しそうな顔をしている。

俺に非難されていると思っているのだろう。

「アマランサス、別に怒っていないから心配するな。危険な所に敢えて突っ込むのを止めてほしいだけなんだよ」

「妾は聖騎士様の奴隷ゆえ、命を懸けるのは当然でございます」

どうしても止めろって言えば彼女は逆らえないのだろうが……そこまでする必要もない。

「助けにきてくれたことは感謝しているんだよ」

「はい……」

これで彼女やアキラになにかあれば、俺は後悔してもしきれないだろう。

そもそも、こんなことに巻き込んだのは俺なのだ。

――とはいえ、領主になってしまったからには、領主の仕事をしなくてはならんし……。

やはり、森の中でひっそりと暮らして、スローライフを満喫しているべきだったのか。

そんなことを言っても、後のカーニバル。

貴族になってしまったものは、今更覆せない。

万が一のことがあっても、それを受け止めなければならないし、それが責任ある立場にいる人間の義務。

粛々と前に進むだけだ。

皆を車に乗せると、2台の車が暗い森の中を進み始めた。

森の中をエルフがつけた細い道が続く。

2時間半ほど走ると、突然森を抜けて目の前に畑が広がった。

それだけではなく、道がなくなってしまったのだ。

まさか、畑の中を車で爆走して 畝(うね) を破壊するわけにもいくまい。

俺たちは車を止めて周囲を見回した。

「ケンイチ、畑で道がなくなっちゃったね?」

アネモネとアマランサスも畑を眺めている。

作物もまばらで草ボーボー、畑の状態はあまりよろしくない。

木が生えてないから畑だと理解できたが、これだけみたら野原とさほど変わらない。

「そうだな――ツィッツラ、ここからどうやって行くんだ?」

「僕たちは、畑の中を通ってたけど」

「それはマズいな……距離はどのぐらいだ?」

「僕たちの脚ですぐだよ」

距離感覚がまったく解らん。

「ん~、エルフの移動速度が俺たちの2倍だと仮定して――5~6kmって感じかな?」

「にゃー」

ベルが先行して、場所を突き止めてくれると言っているのだが……。

「いや、お母さん。森猫が姿を見せると、狩りの対象になってしまうかもしれないし」

「にゃ」

普通の人間には、森猫は高級な獲物でしかない。

悩んでいると獣人たちが手を挙げてくれた。

「旦那、俺たちが行ってもいいぜ?」「にゃ」

「いや、一緒に行こう。エルフと行動をともにしたほうが安全だ」

「それは言えるよ。僕なら知っている只人がいるかもしれないし」

ツィッツラも俺の意見に賛成してくれる。

「そこの村ができて、どのぐらいたっているんだ?」

「う~ん、10年ぐらいたったのかなぁ……」

ちょっと、あやふやらしい。

エルフたちには暦もないみたいなので、時間の感覚が怪しい。

なにせ時間が無限にある種族なのだから、慌てる必要もないわけだ。

俺はアイテムBOXからドローンを取り出して空に飛ばした。

「なんだ?! すげぇ! あれも召喚獣か?」

空飛ぶドローンにツィッツラがはしゃいでいる。

男子らしく、こういうガジェットにはエルフでも血が騒ぐらしい。

「どうだ、ケンイチ? 村が見えるか?」

一緒にアキラが、ドローンのコントローラーに映る映像を観ている。

「なんだ?! あの召喚獣が観ている景色を見られるのか?」

「ああ」

「すげー! 只人のくせにやるじゃん!」

基本的にエルフが只人より上だと思っているせいか、こういうセリフがナチュラルに出る。

俺は、エルフってのは究極の二足歩行生物だと思っているのでなんとも思わないが、彼らの言葉にカチンとくる只人も多いかもしれない。

「ふ~ん」

セテラもモニタを覗き込む。

「故郷には、もっと高度なものがあったんだろ?」

「う~ん、多分あったと思う」

それはさておき、はるか遠くに村らしきものが見える――気がする。

モニタに移ったのは村だけではなく、ポツポツと人の姿も見える。

「アキラ、村だぞ。あの方角だ」

俺はアイテムBOXから方位磁石を取り出し、方位を確認した。

「おう、やったな」

「多分あと4kmぐらいだな」

「それじゃ、一時間ぐらいか」

「人の姿が見えたから、そこまで行けば道が解るかもしれない」

「お~、そうだな」

アネモネが俺の服を引っ張った。

「ケンイチ、言葉って通じるの?」

「え? 帝国でも文字は違うけど、言葉は通じたから大丈夫なのでは? アマランサス?」

「ここに王国があったときに交流があったが、通じておったぞぇ?」

「それじゃ大丈夫だろう」

俺たちは車を収納すると、畑の 畝(うね) の中を進み始めた。

元世界の畑に比べたら、あまりにも寂しい畑だ。

草取りも十分にされておらず、雑草なのか作物なのか解らん。

そのまま1kmほど進むと、作業をしていた村人とファーストコンタクト。

恰好は―― 一言でいえばボロボロ。

お世辞にもいい格好とは言えず、身体はやせ細り頬はこけ、顔色もよくない。

農具ではなく棒きれのようなものを持っている。

まぁ、この畑の状態であれば、あまり作物が採れていないのが一目瞭然だが。

俺は声をかけてみた。

「こんにちは~!」

俺の言葉に農民たちが驚いて固まった。

予想もしない所から声をかけられて驚いたのだろう。

まさか人が森の中から出てくるなんて思ってみなかったに違いない。

「エルフ様!」

「え?! エルフ様!?」「エルフ様!」

すぐに農民たちが集まってきた。

その数5人。

農具ではなくて棒きれに見えたそれは、やはりただの棒だった。

「エルフ様! 病人がおるのです。また助けていただけますか?」

農民がエルフたちの所にやって来たのだが、ツィッツラは手を振っている。

言葉が解らないのだ。

俺とアキラの言葉は、指輪があるから解るのだろうが、彼らの言っていることはまったく解らない。

「セテラ、通訳してくれ」

「解ったぁ。病人がいるって?」

「おおっ! 私たちの言葉が! エルフ様!」

あのエルフの村には只人の言葉を話せる者がいなかったらしい。

「ツィッツラ――いままで、どうやって村人たちと会話していたんだ?」

「取引の間だけ指輪を貸していた」

「そうなんだ」

「エルフ様の言葉を?!」

農民たちの驚きは、エルフたちとコミュニケーションを取っている俺に向かう。

「俺は商人のケンイチ。エルフたちと取引をしている者だ。そちらの村に伺いたい」

「商人?」「こんな所に?」「なんと?」

「なぁに? 私たちの言うことが信じられないの?」

セテラのちょっと厳しい言葉に、農民たちがたじろいだ。

彼女は、農民たちの訝しがる表情にカチンときたようだ。

「いいえ! そんなエルフ様のおっしゃることを疑うなんて、滅相もねぇ!」

「それじゃ、村に案内してくれるぅ?」

「解りましただ……」

やはり、この先の村ではエルフを信仰しているようだ。

エルフと一緒に行動しててよかったな。

コミュニケーションもすんなりと取れるかもしれない。

それにしても粗末な生活をしているように見える。

王国の貧乏な村でも、もうちょっとマシだ。